あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

リコール宣言

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【弟月 太一】


神功左千夫に急に呼び出された。
正直言って俺はこいつが余り好きではない。
なぜって?
俺達は殺されかけたからだ。

俺達と言っても日当瀬は神功の催眠術で使い物にならなかったので、俺と陣が、だが。
戦ったときのこいつは容赦、情けという言葉を知らないのかと言うほど非情だった。
まぁ、もう、陣のヤツはそれを忘れたかのように馴れ馴れしく神功に近付いているが。

「受験生を引っ張り出すとは感心しないな。」

「仕方ありませんよ、人手不足なんです。
大体、夏岡陣太郎の代が少数精鋭過ぎたんですよ。」 

俺の言葉にも顔色変えずさらっと、返してくる。
陣が頭を撫でようとしていたが、流石にそれは上手くさけていた。

「あっれぇ?今日はイデアちゃん、居ないの?」

「彼女は今日はアトリエに籠って貰ってます。」


そう告げられてから、晴生達が待っている水上公園へと移動しながら、地区聖戦の話を聞く。
成る程、厄介な対戦があるもんだ。 


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【千星 那由多】


水上公園で会長が先輩たちを連れてくるまで、俺達は基礎訓練をしていた。
今日はイデアがいないので、各々で準備運動や基礎を固めていく。
本気でやるとこれだけでも結構疲れるってことに最近気づいた。

そうこうしていると、会長が夏岡先輩と弟月先輩を連れて姿を現した。
結界の中へと入ってくると、夏岡先輩の声が会長よりも先に響く。 

「ういーッス!!おっひさー!!」

速攻夏岡先輩は晴生と俺にタックルをかました。
横できょとんとしている巽に夏岡先輩のマシンガントークが飛ぶ。

「あっ君もしかして新人君!?色々あったみたいで大変だったねー!
千星くん落ち込んじゃった時太一に泣きついてたよー!親友なんでしょ君たち!俺も太一と――」

そう言ったところで弟月先輩に頭を叩かれていた。
弟月先輩にはあの日お世話になったっきり中々会う機会がなかったので、
あの日のお礼を言うと弟月先輩は気にするなと言ってくれ、俺は何度もお辞儀を返した。
そんなやりとりをしていると、後ろでにこやかに笑っている会長に気づく。
いつも通りの笑顔、なのだがなんだか怖い。

「あっごめんごめん!!会長どぞ~!!」

スーっと夏岡先輩が手を差し伸べる仕草をして後ずさりをする。 


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【神功 左千夫】


夏岡陣太郎。
彼は僕を(裏)生徒会長にした男だ。


僕が転校してきて直ぐにぶつかった大きな敵だった。
今は基本(裏)生徒会室の更に地下に僕は住んでいるが昔は柚子由と、同じ廃墟を改造したアジトにストリートチルドレンや訳ありの仲間達と暮らしていた。
勿論、資金繰りが必要だったためその辺の不良狩りをしたりしていた。
今は元手がかなりできたので仲間達がそれを資本に上手く回している。

その時に会ったのが夏岡陣太郎。
彼は僕を制裁しに来たようだった。 


“組織に入って悪を倒すなら正義になる!
でも、お前がやっていることは犯罪者と変わらない。
だから、俺の後を継いでくれないか、神功左千夫。”


僕と戦いながら彼はこういった、彼が正しいとは思わなかったがその方が都合がいいと思ったので、僕は彼の後を継ぐことにした。 

そんな物思いに耽っていると相変わらずのマシンガントークで、晴生くんたちに絡んでいるようだ。
那由多くんがいち早く僕の存在に気付いた様子ですかさず、夏岡陣太郎も僕に主導権を譲ってくる。


「さて。これより実践訓練を行います、チーム編成は……―――――――。」 


「その必要はないよ」


僕たち以外から声が響く。
それは聞き覚えのある声だった。 


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【千星 那由多】


その声の主はまるで柔らかい羽が地面へとひらりと舞い落ちるように、空から地面へと緩やかに降り立った。 

周りのみんなが咄嗟に身構えたので、俺も遅れて身構える。
そいつはだらりと俯いていた顔を俺達を見下げるようにゆっくりと上げた。
銀色の髪、同じように透き通った白い瞳、細い三つ編みを後ろで結い、それらが太陽の光で水面のようにキラキラと輝いている。
吊り上った糸目は今の状況を笑っているように思えた。


「だって僕たちがアテネの裏生徒会になるからネ」


その銀髪の男が不敵な笑みをこぼすと同時に、俺たちの周りを囲むように金髪の奴等が降り立って来た。 

「…お前ら…誰だ…?」

夏岡先輩が先に一声を放つ。
顔はさっきと打って変わって険しく、どうやら銀髪の男達は夏岡先輩達も知り合いでは無いようだった。 

「僕は九鬼だよ。ここの生徒」 

そう言いながら胸元の校章をぐいっと引っ張った。


「でもって…愛輝凪高校の(裏)生徒会の副会長…だヨ」


みんなの顔色が一瞬にして変わる。
特に夏岡先輩と弟月先輩の表情は更に険しくなった。

「副会長は…椎名……椎名優月だろ!!!」

夏岡先輩の怒鳴り声が飛ぶ。
その声に耳を塞ぐような仕草をした九鬼という人物は、舌を出しながら更に細い目を笑顔で吊り上げた。 


「ああ、あの人ならもういないヨ。だから僕が副会長。そうなるよネ?」 


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【弟月 太一】


あり得ない…。
あの、椎名が倒されたなんて。

(裏)生徒会の副会長は会長と同じ様に、倒してその座を奪い取るか、副会長が後継者を決め譲り渡すかだ。 
椎名優月は彼が一年の時から(裏)生徒会副会長で、俺達も何度も手合わせしたが、彼は無類の戦闘狂でかなり強い。 
はっきり言って俺なんか相手にならず楽しまれていただけだった。
その、彼を倒したと、なれば只者ではない。
なんの特殊能力か彼は上から降りてきた。身体能力が異常に発達しているのかもしれないが。 

対峙するだけでひしひしと伝わってくる殺気に萎縮する。
しかも、彼だけではなく回りにも人が降りてきた。
その中には、俺と陣のクラスにショートステイに来た、ローレンツという金髪の男と、フリーデルというツインテールの赤毛の女もいた。 


「おや、誰かと思えば九鬼では無いですか。」


そう告げながら、神功は一歩前に出た。
そのとき、俺達全員の頭に直接神功の声が響く。


“戦闘になったら撤退します。夏岡陣太郎、弟月太一はサポートを”


「残念ながらあなたが僕を倒しても、会長にはなれませんよ。
只、僕が会長の座を退き、あたらしい会長が決まるだけです。
あなたが先に副会長の座についたのが仇となりましたね」

神功の声を頭で聞きながら、口からでるこえも聞き分ける。
神功の言っていることは嘘ではない。

三木は会長を手伝うための副会長だが、(裏)生徒会にはもう一人会長を止めるための副会長が、いる。
それが、椎名優月だったのだが、今は目の前の男に変わったようだ。


椎名優月はただの戦闘狂だったので、その役割をちゃんと担っていたかは分からなかった。
あいつはなんとなく、ただ強いやつと戦いたくて副会長で居たようなものだ。

(裏)生徒会の会長はその能力に溺れ、独裁に走るものも少なくない。
生徒を手駒にしたり、宗教的なことをしだしたり。
それを制裁するのが、もう一人の副会長の仕事だ。

その為、アテネ高校の(裏)生徒会には当てはまらないが、副会長は会長に対抗しうる能力をもっている場合が多い。 

ストッパー役の副会長が会長を倒した場合、通常であればその会長が解任されるだけだ。
通常であれば、だが。
取り敢えず、俺は二人のやり取りを見守ることにした。 


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【千星 那由多】


俺は息を飲み、今の状況を傍観していた。
巽と晴生もどうやら彼らの気迫に圧倒されているようだった。
こんな俺でもわかる、この嫌な感じ。

会長の声が脳内に響き、戦闘になれば撤退という指示が出た。
嫌な冷や汗が流れたのを袖で拭う。


「あれ?ボクが君を倒して会長になりたいってのバレバレ?
さすがだね、左千夫クン」


そう言って九鬼という男はポケットから包まれた飴玉を取り出し、それを口の中へと放り込んだ。

「…副会長だったら君を倒してもダメなんだネ~…ザンネン…」

コロコロと口の中で飴玉を転がし、落胆した表情をした後すぐ、瞑っていた細い目が微かに開いたのがわかった。 


「って俺が言うと思う?」


周りの金髪達が全員同じように戦闘態勢を取る。
よく見てみると、俺のクラスに留学してきたキノコ頭がいる。
そいつに視線を向けると、キノコ頭もこちらをチラリと死んだ魚のような目で見据えた。 

「待って待ってみんな、まだ話終わってないから」

九鬼がそう言うと、ショートカットの金髪のチビが舌打ちをした。

「ごめんネ、血の気が多くてサ。
…さて、本題。僕が会長になりたいってのはもうわかってもらえてるだろうケド…。
正直君たちに愛輝凪高校の(裏)生徒会任せてらんないんだよネ。
だからー………エイドスきてー」

九鬼がそう言うと、木の向こうからイデアぐらいの背の少年が出てきた。
前髪も後ろの髪も同じ長さの金髪で長い髪。
目は青く……顔はイデアにそっくりだった。

もしかしてヒューマノイドか?

九鬼はそのエイドスという少年の頭をポンポンと撫でるように叩くと、また両方の口端を吊り上げて笑った。 



「リコール宣言、させてもらうヨ」 


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【神功 左千夫】


臨戦態勢になると益々彼等の能力の高さが分かった。
僕一人で瞬殺するのは矢張無理そうだ。

姿を現したヒューマノイドに僕は瞠目する。
まずい。ヒューマノイドが現れたということは……。


「リコール宣言、させてもらうヨ」


思った通りの言葉が結界内に響き渡る。
気持ち悪いほどの静けさの中に肌を焼くような緊張が走る。


「…………リコール宣言?」


沈黙を破るように那由多君が小さく反芻した。
そうだ、リコール宣言と言うことは。


「では、決戦の日は………ッ!!!」 


やられた、肝心のヒューマノイドの姿がもうない。
と、なるとこの現状を打破するためには一度身を引くしか無さそうだ。 


「リコール宣言とは、僕が率いる(裏)生徒会と副会長、
すなわち彼が率いるメンバーが抗争し勝った方が新しい(裏)生徒会になるという、所謂解散宣言です。」 


簡単に内容を要約して僕は味方に説明する。
九鬼を鋭く睨み上げるが相変わらずの笑顔を崩す事はない。 

「ウン!正解♪
やっぱり、左千夫クンは賢いネ。
ボク、ますます気に入っちゃったヨ!」

つり目の彼の瞳が薄く開く。
その透き通った瞳に自然と体に力が入る。
怒りか?彼から発せられている感情が読めないこんなことは久しぶりだ。 


「だからネ、許せないんだ。
こんな、お遊びで(裏)生徒会やってる奴等を仲間にするなんて」 


九鬼から戦闘のオーラが発せられると、周りの仲間の緊張が一気に高まる。
僕は一気にイデアアプリを展開させ、夏岡陣太郎に視線を向ける。
彼も雰囲気の変化を肌で感じたようでアプリを展開していた。
携帯はマントへと姿を変え、自分の背中へと装着した。 

「兎に角、詳しく説明している暇は有りません。
君達はイデアの元に、晴生くん先導してください…。
元会長、ほかのメンバーを頼みましたよ。」

「ちょ!お前はどうすんだよ!!」

「僕は今、精神体ですからお気にせず」


夏岡陣太郎に笑みを浮かべてから突破口を開くべく、唯一の女性を槍で凪ぎ払う。
少し違和感のある避けかたで僕の攻撃を避けた。
そのお陰で逃げ道が出来たため晴生くんが走り始める。 

なるべく多くの人数を引き付けようとした矢先に射抜くような視線を感じ、重心を下にへと落とした。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


会長にイデアの元へと言われ、俺は目を丸くした。
どうやら一人でこの状況を打開する気らしい。

「待ってくださ…!」

そう言いかけたところで、夏岡先輩に腕を掴まれた。

「行くぞ」

いつもの夏岡先輩と違う表情で凄まれ、体が強張る。
そのまま引っ張られるようにして結界の外へと出た。


晴生の先導で全員が全速力で走っていく。
俺は会長が気になって仕方がなかったが、みんな何も言わないだけで表情は固いままだった。 

「…いいんですか…っこれで!」

「お前が行っても余計に戦いにくくなるだけだ」

弟月先輩の言葉にハッとして唇を噛みしめた。
その表情に俺を引っ張っている夏岡先輩が気づいたのか、頬を緩めて笑う。

「左千夫は会長だよ、信じないと」

俺はその言葉に険しい顔で小さく頷いた。 


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【神功 左千夫】


さて、どうするか。


全員のターゲットが自分なら、引き付けるのは簡単な話。
しかし、リコール宣言の特質から考えるときっとターゲットは(裏)生徒会全員だ。 

九鬼からのプレッシャーを感じていると、ボブカットの男とオールバックの男が僕の横をすり抜けようとする。 
舐められたものだ。

ふわりと僕の髪が揺れる。
その瞬間、九鬼を含む五人が火柱の中に包まれる。 


「うわぁぁぁああああ!!」


悲鳴が聞こえる。
勿論この業火はまやかし。
しかし、脳に直接送り込んでいる映像はリアルで少しでも信じると火傷すらする。
上手く行けばブラックオウルの要青山伊一郎のように火だるまになるだろう。


しかし、そうは上手くは行かなかった。
以外にも早く僕の幻術は破られる、中から出てきたのは
金髪のオールバックの男だった。
同じにおいがする、きっとかれも僕と同じ特殊能力だ。
その男は直ぐに横の火柱の中の男を本のようなもので殴る。
すると、その男も幻術から解き放たれたようだ。
しかし、服が焼け焦げているところを見るとこちらは少しはダメージを与えられただろう。 


「行くぞ。」

「そう簡単には行かせませんよ。」

そのとき、僕の背後からとてつもない殺意を感じた。
振り向こうと体を回転させるが精神体の僕の実力では間に合わないかもしれない。 


----------------------------------------------------------------------- 


【九鬼】


ああ、なんて嬉しいんだ。彼と戦えるなんて。
全身に快感が駆け巡るようにゾクゾクと波打つ。
あの日は、こんなことになるなんて想像もしなかった。

彼の放った幻術で、全身が業火に包まれる感覚を感じた。
だけど幻術なんてボクには効かない。
ボクは自分の目に映るモノさえも、信じていないからネ。
暫く業火に焼かれる快感に浸っていると、ローレンツのせいで僕らの身を包んでいた炎の幻術が解けた。
もうちょっと彼のマヤカシを楽しみたかったのに。 

「ちぇっ」


ボクに背を向けている彼を見て、自分の右手の甲にキスを落とし両の口端を吊り上げ笑う。


「よそ見するなんて、シンガイだナ」


彼が振り向くのは予測していた。
その振り向きざまを狙って、彼の左目に指を突き付ける。
なんとも言えない血や肉の温い感触と、神経が切れる音が指から伝わってくる。
潰さないように彼のキレイな目玉を掴むと、そのまま一気に引き抜いた。 

彼の左目からは血が吹き出し、目を抑えながら地面へと膝を付いたのを見て、かわいそうに、と第三者のように眉が下がる。
鮮血が彼の透き通った肌を染めていき、声を上げずに顔を歪めた彼は、この世の何よりも美しかった。 


「やっぱり、アルビノだったんだネ」

抜きだした目玉からは黒いコンタクトが剥がれ落ち、淡紅色の瞳が輝いている。
口の中で転がしていた飴を吐きだし、ボクは手に掴んでいる彼の目玉に舌全体を這わせた。 


----------------------------------------------------------------------- 


【神功 左千夫】


「――――――ッ!!!」


矢張間に合わなかった。
容赦なく抉られていく眼球に激痛が走る。 

僕の精神体は実体に限り無く近い。
精神体の眼球が抉られたからといって本体の眼球が潰れるわけではないが、沸き起こる痛みは同じだ。 

それにしても、なんて格闘センスだ。
いくら、精神体だからと言っても、まだ彼の実力すら出させていない。 


「フフフフフ…そんな、まやかし物でいいなら、差し上げますよ。
アルビノですよ、それがなにか?
僕のデータをどこで手に入れたのか、教えて欲しいものですね。」 

鮮血が僕の頬を、首を伝い制服を赤く染めていく。
アドレナリンで痛みもかなり薄れてきた。

確かに僕はアルビノ遺伝子を有するものだ。
遺伝子の型式上、瞳が淡紅色、肌の色が白い程度しか外見には表れていないが。
紫外線が天敵なので、外に出るときは長袖長ズボンだ、野外訓練の時に脱がなかったのはそれが理由だった。 

彼はきっと僕の過去を知っている。
しかし、僕は彼に見覚えは無い。

眼球が無くなった目を閉じ、片目でじっと九鬼を見据え立ち上がり槍を構えた。
久々のレアな獲物に体が興奮するのが分かる。
しかし、今の目的は時間稼ぎだ、冷静さを保つようにグッと、奥歯を噛み締めた。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


だいぶ距離が開いただろうか、夏岡先輩に引っ張られたまま俺はやはり会長のことが気にかかっていた。
後ろを振り向くと、膝を地面についている会長が小さく見えた。

「…っ!!」

「後ろを見るな、前だけ向いて走れ」

夏岡先輩にそう言われ歯を食いしばり前を向いた。
その瞬間、先頭の晴生の目の前に二人の男が降り立った。

一人は俺のクラスの留学生のきのこ頭、そしてもう一人はオールバックの長髪だった。
全員が走っていた足を即座に止め、辺りに砂埃が舞う。


「逃がしませんヨ…」


オールバックの男が不敵に笑う。
なぜかそいつの瞳はずっと閉じられたままだった。

全員がすでに携帯を展開させて武器にしていたのを見て、俺も急がなくてはとポケットを探って携帯を探す。
が、探る指先になにも触れないことに気づき、イデアに携帯を渡したままだったのを思い出した。


また、戦えないのか。


そんなことが脳裏に過り眉を顰めると、夏岡先輩が俺を庇うように前に立った。 


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【弟月 太一】


「はっ、てめぇらの好きにはさせねぇよ。」

そういって日当瀬が銃を構えるがそれは全くの別の方向だった。 
まさか…!

そう思った瞬間に目を閉じたままの金髪オールバックから嫌なオーラが流れる。
俺は右手の銃でオールバックの男を牽制するために銃を打つ。
その独特なオーラは寸前で留めることが出来た。
きっと、彼は神功と同じ幻術使いだ。

「日当瀬!走れ!お前では、こいつの相手は務まらない。」

「晴生、ここは俺達に任せとけって!たまには先輩面させろよな。」

陣の表情が完全に戦闘モードになっている。
もう一人の金髪がわっかのような物を投げ付けてきたが陣のマントが広がるようにして攻撃から身を守る。 

「分かりました!お願いします!!夏岡さん。
おい、弟月!夏岡さんの足ひっぱんじゃねーぞ!」

相変わらずの日当瀬の物言いに青筋が立つが隙を与えている余裕は無さそうだ。
日当瀬はルートを変え、横へとそれて走っていく。
俺は敵と味方を分けるようにその間へと降り立つ、陣も隣へとくる。 


「俺は夏岡陣太郎、んで、こっちは弟月太一。
お前ら名前は?」


相手の名前を聞くのは陣の癖のようなものだ。
戦う相手に敬意をとか言ってたが正直俺はそんなことどうでもいい。
日当瀬なしでどう戦うか、そればかりを考えていた。 


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【千星 那由多】


「先輩…っ!」


今の俺ではどう足掻いたって戦うことなんて無理だ。
俺達は夏岡先輩たちにこの場を任せ、巽に腕を引っ張られながらその場を後にする。
そのまま(裏)生徒会室へ行く途中数人の生徒とすれ違ったが、どうやら夏岡先輩たちの戦いはオールバックの幻術師によって見えなくなっているようだった。 



俺達は息も絶え絶えで(裏)生徒会室へと帰ることができた。
荒っぽく入って来た俺達を見て、三木さんが驚いた声をあげる。

「ナニかアッタようダナ」

調度イデアがアトリエから出てきたところで、どうやら状況は知ら無いようだった。

「はっ…はぁ…会長が…っ…変な…銀髪にっ…!」

「落ち着ケ、ユズユ、水を持ってキテクレ」

三木さんが急いで持って来てくれた水を飲み干し、肩でしている息をどうにかして整えた。

「っ……白髪の妙な男と外人が急に来やがった…会長が一人で足止めして…っ夏岡さん達も戦ってる…」 

晴生が先に眉間に皺を寄せて机に拳を突き立てた。
俺はそれを見て、晴生もあの時戦いたかったのだろうと胸をつまらせた。
それを聞いた三木さんの顔も強張っていくのがわかった。 

心臓の音がおさまらない。
俺は小刻みに息を繰り返しながら、イデアに質問をした。



「イデア…っ…リコール宣言って…なんだよ!」 





   



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