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【千星 那由多】


あの戦いの後、晴生に病院に行けと説得したが、医学に強いだのなんだの言い頑なに行こうとしなかったので、
結局そのまま一緒に自宅へと帰宅することになった。 


その帰り道でイデアに(裏)生徒会のことやレゲネラツィオンの事を聞いた。

(裏)生徒会は学校の治安を守るだけじゃなく今回のように「逃亡ヒューマノイドの捕獲」と言ったような
政府から依頼された仕事もしなければならないようだ。
俺たちが理不尽だと感じるような依頼ももちろんあるだろう、と言っていた。

レゲネについては俺はどうしても納得していなかったので、
イデアにあんな所へこれからも罪を犯した能力者を送らなければいけないのは嫌だと言ったら

「逆に人間的より力をモッタモノをどう処理するンダ」

という言葉に言い返すこともできなかった。
結局俺の力ではどうにもならない。ということをまた痛感するだけになってしまった。 


今後のことは明日学校で話し合おうということで、俺は巽の家で手当をしてもらってから家へと帰宅した。
顔に殴られた痕があるぼろぼろの俺にさすがに家族は驚き、疲労MAXの中数時間も問いただされたが、「巽と大喧嘩した」とごまかしておいた。 

まぁ…間違ってはいないんだけど。
やっぱり怪我をして帰ると親に心配をかけてしまうため、精神的にちょっと辛いものがある。 


そして今日はゴールデンウィークまっただ中の、5月4日。
身体中は筋肉痛や打撲痕などでかなり傷むが、そうも言っていられない。
いつもならこんな休みの日は家でずっとゲームとかしてるんだけどな。

俺はため息をつくと、準備を整え学校へと向かった。 


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【天夜 巽】


「那由多、おはよ。体大丈夫?」

那由多との大喧嘩の次の日。
さっそく、(裏)生徒会から呼び出しが掛かった。
休日まで活動があるなんて結構ハードだな。 

今日は私服でいいらしく、俺は着なれたパーカーを着て那由多の家まで迎えに言った。

朝起きて驚いたけど久々の筋肉痛だった。
昔はよくなってたけど、最近はどのスポーツをしてもこんなに酷いことは無いので驚いた。

特殊能力ってのはやっぱり凄いみたいだ。

俺の携帯は今、ヒューマノイドのイデアちゃんが修理してくれてる。
あれが帰ってくると左手が治せるんだけど。

俺は包帯が巻かれている左手を見つめ肩を落としてから家から出てきた那由多と学校に向かった。
日当瀬は用事があるからと先に向かったようだ。 


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【千星 那由多】


巽と一緒に学校へ着くと、(裏)生徒会室へと向かった。
巽は実習棟の中のどこに(裏)生徒会室があるのかは知らなかったので、理科準備室へと案内をしてやる。
不思議そうに辺りを見回していたので、俺はこっそり人体模型の隠しボタンを押すと、横の壁がスライドし、巽はその光景に物凄く驚いて楽しそうにしていた。 
昨日のことがあった今日だったが、俺達は普段通りの俺達に戻っていた。

そして、その壁が開いた先へといつものように足を踏み入れると。



何故か会長がテーブルで優雅に紅茶を飲んでいた。



「うええええええ!!!???」

俺は驚いて大げさな反応をしたが、それを見た会長はにっこりと笑って「おはようございます」と言っただけであった。
昨日会長はレゲネラツィオンに連れて行かれたのに、もう帰ってきたのか?
まるで暫くいなくなるから…みたいな雰囲気だったので、今日はここに来ないと思ってたんだけど…。

色々問いただしたかったが、俺は「おはようございます…」とぼそぼそと返すと巽と一緒に室内へと入った。 


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【三木 柚子由】


日当瀬君と書類整理を終わって奥から戻ると調度、千星君がきたところだった。
千星君は会長、左千夫様をみて驚いたみたいだったけど、私と日当瀬君は自然と俯いてしまう。

「おはようございます!千星さん!
…会長、予算下ろしてきましたよ。」

気を取り直したように日当瀬君が会長のもとに向かったのを見て、私は千星君の元に向かった。

「おはよう、千星君。
昨日はありがとう、ごめんね。迷惑かけて」

昨日の帰りに気が付いた私は、皆に謝ったんだけどそれでも謝り切れなくてまた謝罪をしてしまう。
そして、私を助けてくれた左千夫様のことを思うと更に気が沈んでしまい逃げるようコーヒーをいれにむかった。 

「コーヒー、淹れてくるね。」 


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【千星 那由多】


室内へ入ると、奥の部屋から晴生と三木さんが現れた。
驚いた俺を見て二人が俯いたのに疑問を持ったが、晴生はいつも通り俺に挨拶をしてきた。
アイツあんだけ大けがしておきながら見た感じはピンピンしてて安心したけど、どんだけタフなんだ。
今まで何度もああ言う修羅場はくぐってきたんだろうな。

そして、三木さんがこちらの方へ来ると、昨日のことを謝って来た。

「いや、もう謝らないでください。
怖い思いさせてしまってこっちこそすいません。
もっと早く行けてればよかったんですけど…」

俯きながら自分の不備を詫びると、コーヒーを淹れるというので巽と一緒に手伝うことにした。


なんだか少し三木さんと晴生の様子がおかしい。
昨日のこともあるが、もっと何か別のことで悩んでいるような、隠しているような…そんなそぶりが見えた。

俺達はキッチンの方へと行くと、三木さんの言う通りに手伝いをする。
淡々と準備をする三木さんは、やはり元気がないようだったので、思い切って聞いてみることにした。


「…何か、ありました?昨日のことでまだ悩んでます?」 


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【三木 柚子由】


千星君も会長に認められて、天夜君も新しい仲間になった。
それなのに私が捕まったりしたから…。

そんなことばかり考えていたからか、千星君に疑問がられてしまった。
私は数度瞬いた後、左千夫さまから口止めされている訳ではないのでコーヒーが沸くのを待つ間言葉を落とした。

「私のせいで…左千夫様がレゲネに拘束されてしまったから…」


ギュッどスカートを握る。
しかし、千星君も天夜君も私の言葉を理解出来ないようすで直ぐ様、ここから見える、日当瀬君と話し込んでいる左千夫様の後ろ姿を見つめる。 

「会長ならあそこにいるけど…?」


「あれは…。
左千夫様の能力で精神と肉体を分離させて実体化させているだけ。
左千夫様の肉体はまだレゲネにある…。」 


それだけ告げると首からかけていた黒い携帯を握り締めた。 


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【千星 那由多】


三木さんの悩みの原因は、自分のせいで会長がレゲネに連れて行かれた、ということだった。
会長の肉体はレゲネにあって、精神を実体化させたものがここにある…と言っているが、それを聞いてもまだ理解することができなかった。
だけど三木さんの落ち込み様と、昨日のあのガスマスクの人物のことを考えると、
肉体があちらにあるということは、それなりに危険なことが起きている可能性はあるかもしれない。 

「あ、あんまり悩まないでください。
ほら、会長強そうだし…絶対大丈夫ですよ!
それに精神がここにあるなら、無事ってことでしょうし!
わかってない俺が言うのもなんですけど…」

俺はどう声をかけていいかわからなかったが、思っていることをどもりながらも三木さんに伝えた。

「それに、ほら!
三木さんが落ち込んでたら会長も心配しますよ!
今は信じて待ちましょう!」

人を励ますのは苦手だったが、三木さんを見ているとどうもいつもと違う自分が発動してしまう。
うまく俺の言いたいことは伝わっただろうか。
巽は横でいつもと違う俺を見てやけにニコニコしていた。 


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【三木 柚子由】


「…レゲネでは実験データを取るだけだから、…危なくはないと思う。

でも、左千夫様は…」


不意に口に仕掛けた、言葉を慌てて止める。
その後、一生懸命な那由多君に励まされて、少し元気が出た私は泣きそう なりながらも笑みを浮かべた。 

「うん。折角助けてくれた、左千夫様に悪いよね。
ありがとう、千星君。」

それから、千星君たちに手伝ってもらいコーヒーを用意して会議机へと向かう。
左千夫様がブラックオウルは幹部以外のしたっぱは特殊能力の開花が無かった為、記憶の消去のみで解放される予定とのことを、告げた。 
こうして見ていると、本当にそこに左千夫様がいるみたいだけど、私にはそれが幻術だとわかってしまう。 


「さて、これからですが、今日は皆さん満身創痍の様子ですので、
任務は休みにして買い出しに行きます。
何か質問は?」


そういった左千夫様はとても楽しそうに笑った。 


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【千星 那由多】


俺の言葉にいつもの困ったような笑みを浮かべたのを見て、俺はとっさに俯いた。
三木さんはなにか言いかけたようだったが、介入するのを躊躇った俺は、問い詰めないことにした。
他にもきっと何か原因があるんだろう。
だけど、俺には何もできない気がしたから。


コーヒーを配り終わると、全員席に着く。
会長は昨日レゲネに連れて行かれたブラックオウルの件を少し話す。
能力が開花しなかった下っ端が解放されたと言うことは、能力が開花した新井達はまだ拘束されたままなんだろう。
昨日のうめき声をあげる新井達を思い出し、拳を握る。
俯きながら聞いていると、会長は思わぬ言葉を発した。 


「任務は休みにして買い出しに行きます。」


俺は心の中で小躍りするほどテンションが上がったのを無表情で隠した。
昨日の今日でまた過酷な任務が来たら俺絶対死ぬ。
これがイデアだったら確実に任務の流れであっただろう。
俺の中で会長の株が一気に上がった。

質問は、と聞かれたけれどさっき晴生が「予算を降ろした」と言っていたので、きっと備品の買い出しかなんかだろう。
ついでに自分が欲しかった物も見て回ろう…なんて邪心を抱きながら俺は「ないです」と、首を横に振った。 


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【日当瀬 晴生】


今日は千星さんを迎えに行けなかったが、正直、俺も傷が酷かったので、ここに先に来れて良かったかもしれない。


昨日、俺は生徒会室に寄って手当てをした。
今日も、先に来れたので、包帯を変える事ができた。
ここには、会長の趣味なのか薬剤が揃っているので、手当てには事欠かない。
イデアさんも三木も、頼まなくても手伝ってくれることは、少し擽ったいけど。


(裏)生徒会の予算は、主に表生徒会からの割り振り、依頼達成の際に出た御心遣い、学校・政府からの褒賞金、不良更正の授業料から成り立っている。
まぁ、殆んど会長が取ってきてるのを俺が運用・管理してんだけど。

会長自体は行け好かねぇが、全て任せる形で仕事をふってくれるのでやりがいはある。

会長が班割を言っていく。
俺と千星さんと天夜の野郎。
三木とイデアさん。
会長は一人でいくようだ。
会長が買い出しのリストを三木と俺に渡した後イデアさんに地下通路を案内され学校の外に出た後、ショッピングセンターまで歩いていく。 

会長は今日は任務では無いので、髪を纏めて眼鏡、ショートカットの姿だったが、長身とのこともあり矢張人目につく。
その後に大体俺も視線を感じるのはどうしても慣れない。

そんなことを考えていると、天夜が千星さんの横を陣取りやがったので俺はそこに割って入った。
千星さんは天夜の事をもう許したみたいだけど俺はまだこいつがいけすかねぇ。
そんなこんなしているとショッピングセンターに付き別行動になった。 


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【千星 那由多】


買い出しの班は、巽、晴生と一緒だった。
俺の隣の取り合いをしている二人を見ていると、ブラックオウル戦前の二人を見ているようで、なんだか嬉しいような嬉しくないような複雑な気持ちだった。
それでなくても二人は結構イケメンなので目立つから、その上ぎゃーぎゃー騒がれると視線がすごい。
しかも男三人でなんでこんなに密着してんのかも意味わからん。
俺はそんな二人を無視しながら、なるべく目立たないように店内を歩いて行く。 


やはりゴールデンウィークなため、ショッピングセンターには人が多い。
親子連れ、カップル、時々顔見知りのクラスメイトらしき生徒ともすれ違う。
みんな満喫してるねえ…かくいう俺は…。
と二人に視線を向けると相変わらず険悪そうなムードだった。主に晴生が。 


買い出しメモに載っている備品を買うためにうろついていると、ところどころに張り紙がしてあるのが目についた。 

『子供を一人にしないこと!』

と書かれた張り紙に泣いてるこどものイラストが描いてあった。

そう言えば最近小さい子供が行方不明になる事件が多いらしい。
誘拐とかそういう類みたいなんだが、堂々とショッピングセンターの迷子を狙うらしいって、妹が言ってた。 

そんな張り紙に視線を向けていると、文具店の前まで来たので三人で中へと入る。
ついでにシャーペンの芯買っておこう。 


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【天夜 巽】


どうやら日当瀬は俺の事をまだ怒っているらしい。
あんなことをしたからにはそんなに直ぐ心を開いて繰れるとは思ってないので気長に行くことにした。 

勿論、那由多の横を譲る気は無いけど。


日当瀬はまだ、傷の具合が良くないみたいだった。
俺はさっきイデアちゃんから直した携帯を貰ったので自己治癒で治してしまった。
今は携帯が無いと使えないけど特殊能力は自分が本来持ってる力なので携帯が無くても使えるようになるらしい。 
あのヒューマノイドに貰った携帯には機能を起動させるのにパズルのようなものはついてなかったので戸惑ったけど
俺の得意分野だったのでなんとか解くと横で那由多が悔しそうにしていた。 

もしかして那由多の寝不足ってこれが原因だったのかな…。


イデアちゃんが、体は大丈夫かと心配してくれていた。
あの少年ヒューマノイドはかなり無理に身体能力を上げるプログラミングを組んでいたらしい。
那由多には秘密らしいけどブラックオウルの幹部がレゲネに連れていかれたのはその方が良かったかもしれないってイデアちゃんが言ってた。 
普通の病院じゃあ、そんなことは手当て出来ないけどレゲネは能力者専用の機関だからそれが出来るみたい。 
会長がそこまで考えていたのかは知らないけど。 


どうにしろ、俺の焼けただれた腕は綺麗に治った。
疲労は一日寝たらだいぶ取れたしね。


「あ。千星さん、これリストです。
俺、カゴ持ちますね。…シャー芯くらいなら一緒に買っても会長怒らないと思いますよ。」 

俺といがみ合っていた日当瀬は那由多が離れてしまったら、さっさと走って行ってしまった。
那由多も那由多でシャー芯一つでとっても嬉しそうだった。
俺も仲間にいれてもらおうと想ったら、日当瀬がメモを突き付けてきた。 


「これ。会長から。元気そうだからお前の買い出し分だってよ。雑用。」 


え!会長から?
って、雑用ってなに?

聞きたいことは山ほどあったが、俺はメモに書かれたかさの高い、重たい荷物の羅列を見て一度固まってしまった。
どうやら神功会長もまだ、俺に気を許した訳ではないのか、これでチャラにしてくれるのか。
俺は笑みを浮かべながら溜め息をついた。 


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【千星 那由多】


晴生にリストを渡され、文具店の中をうろつく。
どうやら巽は(裏)生徒会では雑用、という位置にいるらしい。
確かに会長、副会長、会計、書記…となると残りは雑用か。
普通なら俺が雑用の立ち位置なんだろうけどな。
字が上手くてよかった。

そんなことを考えながらボールペンやノート、いつも使ってるシャー芯を選び籠に入れていく。
ゲームやってる時以外でのこういう時間が結構好きだ。
俺は男にしては色々文具を揃えてしまうタイプで、無駄に新しいペンやらノートやらが増えていく。
まぁ授業で使わないし、ほとんど妹にとられていくんだけどな。


リストの物をすべて揃え終わると、晴生と合流する。
巽は…ばかデカイ組立式の本棚を担いでいた。

昨日の今日でのこのバカ力はほんと賞賛するわ。 


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【三木 柚子由】


見失っちゃった。
左千夫様からイデアちゃんは無駄なものをよく買うから目を離さないようにって言われてたんだけど…。 


ちょっとペットショップにいた珍しいニワトリに目を奪われている内に見失ってしまった。
もう買い物は終わって配達の手続きもしたからこれ以上なに買うことは無いと思うけど。 

待ち合わせ場所に向かったのかなと、思った私はショッピングセンターの外へと出た。
キョロキョロと辺りを見渡していると、数人の若い男性に取り囲まれてしまった。 


「よぉ、ねーちゃん!暇だろ?俺らとお茶しない?」

「いい店しってんだ、いこ?後悔させないから」 


男の人が私の腕を掴む。
どうやって、断ろうかと考えてるうちに引っ張られて行ってしまう。

「あの…、友達が……きゃっ!!」

そのときどこからか、声が聞こえて私と男性の間に誰かが割って入った。 


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【千星 那由多】


買い物を済ませると、俺達は待ち合わせ場所へと向かった。
途中巽の持っている箱がハルキの頭に直撃したり、俺のケツに当たったりと散々で、帰りも相変わらず男三人で騒ぎながら外へと向かう。 
すると、待ち合わせ場所付近で、数人の男に囲まれている女性を見つけた。
何やら揉めているようだったが、目を凝らしてみるとその女性は三木さんだった。

背の低い三木さんは、男たちの背の高さもあってかすごく小さく見え、いかにもチャラそうな男に腕を掴まれおどおどとしていた。
いつもの俺なら知らない女性ならスルーしている所だったが、さすがにこの状況を無視することはできない。


大きい荷物を持っている巽は走れなさそうなので、俺と晴生は三木さんの元へと駆け寄った。

「三木さん」

男達を無視して三木さんに声をかける。
すると取り囲んでいた男達は俺達に気づき、睨みを利かせた。

「あぁ?なんだチビ?」


こいつらの睨みに比べたら、巽の冷めた笑顔の方が怖かった。 


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【三木 柚子由】


「誰がチビだ!!失礼にも程があるだろう!!」

日当瀬くんの声がこだまする。
しかも、そのまま男の人を蹴りつけてしまった。
なんとなくこうなることは予想出来ていたので、怖くは無かったんだけど出来れば絡まれたくなかった。 

その間に那由多くんが私の近くに来てくれた。
「大丈夫?」の言葉に深く頷く。

日当瀬くんはかなり重症だったのにあんなに動いて大丈夫なのかな。
いつも通り私はあわあわしてしまった。


「このやろう!!っ……あだ!!あだだだっ!!」

「大丈夫!那由多!?」

他のチンピラが私たちに掛かってこようと身構えたんだけど、後から来た天夜くんが、重たそうな段ボールを振り回して割ってはいって来た。 
勿論、その硬く痛そうな荷物は男性の頭やら体やらを殴打する。

「ん?」 

漸く、天夜くんは自分が男に段ボールを当てた事に気付いたらしく、軽そうな男性たちの方に振り返ると、
今度はこっちに段ボールが回ってきて皆で慌ててしゃがむ。 


「きゃぁっ!」
「おい!!天夜!!」
「おい!!巽!!」


千星くんと日当瀬くんの声が重なるのが少しおかしかった。 


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【千星 那由多】


晴生が男達に蹴りかなんか入れるだろうなと思っていたら、案の定思いっきり攻撃していた。
こうなったら止めることもできないし、その間に三木さんを彼らから離す。

だけど荷物を持った巽が来たのが悪かった。


巽は担いでいるデカい段ボールを無意識に振り回し、それが男達を薙ぎ払って行く。
遂には俺達の方にもぐるりとその段ボールが回って来て俺と三木さんと晴生はしゃがんでなんとかそれを避けた。


「っ…あぶねーだろーが!!」

ごめんごめん、と謝ってる割に巽の段ボールは止まらず、立ち上がろうとした男達の頭に再度直撃した。
全員が地面にひれ伏し、辺りではまばらに拍手が巻き起こっていたが、この状況はまずい。


「とりあえず……逃げよう!!」


俺は三木さんの手を引いてその場からダッシュで逃げた。
昨日の今日でなんでショッピングセンターで走らなきゃならないんだ…。 


人ゴミの中をすり抜け、再び店内の中へ入り息を整える。
大荷物を抱えた巽が後から合流し、笑ってる巽にチョップをくらわすと、初めてそこで異変に気付いた。 


「あれ、そういやイデアは?」 


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【三木 柚子由】


千星くんに連れられて人混みの中へと戻る。
なぜだか左千夫様に連れられているような安心感があって、その後ろ姿を見詰める。 

流石の日当瀬くんも傷が痛む様子で肩で呼吸している。
そこに元気な天夜くんが現れて、千星くんが叩いても楽しそうな様子に私も笑ってしまった。


「あれ、そういやイデアは?」


千星くんの言葉に私はハッとして当初の目的を思い出した。

「ごめんなさい!!私…イデアちゃんとはぐれちゃって…!」

そう告げながら、俯く。 その瞬間に金髪の少女が、中年の男性に手を引かれ駐車場に入っていくのか視界に入った。 「今のって…」 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


三木さんの声にみんな駐車場の方へと目をやる。

調度死角でこの位置からしかわからなさそうな場所に車を止めてあり、
中年の男らしき後姿と、そいつに手を引かれている金髪で赤いワンピースの少女がいるのが見えた。
見た感じ男に無理矢理引っ張られている様子だった。


「イデア…!?」


その瞬間に俺はあの張り紙を思い出す。
もしかしてアイツは噂の誘拐犯じゃ…。

「誘拐…」


俺は考える間もなく痛む身体を無視して走り出していた。
その後に三木さん達も着いてくる。

駐車場まで走りその車の側まで行くと、男は少女を車の中へと入れた後だった。

「…っちょっと、待ってくれませんか…!」

走ってばかりで息が上がりっぱなしだったが、すぐに声をかける。
男は少し静止した後こちらへ振り向くと、にっこりと笑った。
真っ黒いサングラスの奥の目は見えない。

「なに…かな?」

窓にはスモークが張られ中の少女を確認できない上に、それを隠すように男が立っている。

「…あの…っちょっと中にいる子…確認させてもらえませんかっ…」

俺がそう言うとサングラスの男の口元は微笑んだまま、小首をかしげる。


「うちの娘に何か用かい?」 


----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


胡散臭そうな男が自分の娘だといった瞬間に耳がいい俺は車内で「助けて!」と言う少女の、声を聞き取った。
少し違和感を感じたが今はそれどころではないと運転席の扉を開き、車全体のロックを解除する。 

「どうしたの~?」

調度遅れて来た天夜が知ってか知らずか、割ってはいって来た為、前に突き出していた、組み立て式の机の角が男の額にぶち当たる。


「ぐぅ!!」

「千星くん、お願い!」

天夜にしてはナイスだと思っていると男がふらついている間にすかさず三木が後部座席の扉を開ける。
見事な連携プレイが項をそうしてか、無事車から助け出すことが出来た。

そこから少女は千星さんに向かって飛び出して行った。 


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【千星 那由多】


巽の段ボールが直撃してふらついている間にロックが開いた後部座席のドアを三木さんが開く。
中から出てきたイデアは俺にすぐさま飛びついた。

「…?」

俺の腹の辺りに顔を埋めたまましがみ付いているがなんかおかしい。
そもそもイデアなら優雅に降りてきそうなもんだが…。


「…イデア?」

そう言って頭を撫でると金髪の髪の毛がずり落ちた。


「!!!???」


すると黒髪が露になり、イデアと思われる少女は泣きじゃくった顔で上を向く。

「怖かったよお~!!」



…イデアじゃない。 


いや、とにかくこの少女は誘拐されそうになったのは確定だった。
男の方へと向くと、すでに晴生に足蹴にされている男がいた。 

「この子、迷子センター連れてくか……」

俺は苦笑しながら頭を掻いた。 


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【天夜 巽】


その後、日当瀬がお店に連絡したり、警察に連絡したりと後始末をしている間、俺たちは迷子センターで母親を待つ。
俺たちがイデアちゃんと間違えた女の子は、今流行りのアニメの格好をしていただけの普通の日本人の女の子だった。
その後、お母様が迎えに来られて、お礼を言われている那由多があたふたしている様子がおかしかった。

日当瀬も日当瀬で、警察からの表彰があると言われると、それよりも金か物をくれと言っているのが印象的だった。
三木さんはずっとキョロキョロと辺りを見回している、どうやらイデアちゃんを探している様子だ。


「あー、どこいったんだよ!!イデア!!」

少女を母親に引き渡した後、俺達はまたイデアちゃんの捜索を開始したがなかなか見つからず。 心配なのか那由多が叫び始めた。 



(裏)生徒会。
怨みしか無かったけれどいざ入ってみると那由多の気持ちが少し分かった気がした。 


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【神功 左千夫】


買い過ぎたかな。 


精神体の僕は食べる必要はない。
勿論本体に栄養剤を投与してもらわないと死んでしまうのは人間と変わらない。
それでも食べれないことはないのでこの姿になっても甘いものだけは食べてしまう。
約束の場所には誰も居なかったので紙袋いっぱいの荷物を抱えながら店内を歩く。
そうすると一際賑やかな集団と、その集団を影で隠れて見詰めるヒューマノイドを発見した。

どうやら柚子由たちはイデアを探しているようだが、当の本人はその後ろをひっそりと着いていっているのだから、見つかるはずもない。


「ふふ。意地悪ですね、イデア。」


僕は、イデア用に買ったお菓子を彼女に手渡す。
彼女は表情も感情も無いがこういうことをしはじめると言うのは何かが芽生え始めているのか忍耐力の訓練か。

どちらにしろ、買い物もメンバーも揃ったのでイデアの手を取り、柚子由達の元に向かう。



「さて、帰りましょう。(裏)生徒会へ」 




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