あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

VS丸井

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【千星 那由多】


晴生の元へと来てみると、辺りの壁や天井は崩れ、この階に来た時に天井に吊るされていたはずのシャンデリアが
向こう側で粉々になっているのがわかった。
これまただいぶ派手に……こんなにぶっ壊して大丈夫なんだろうか、なんて無駄な心配を起こす。

晴生は薮塚を抱きしめていた、というよりも薮塚が離れないようだった。
どうやら大きな怪我もなく、苦笑している晴生を見て、こちらも終わったのだなと確信した。
俺が近づいて晴生の側へ来ると薮塚は晴生からサッと離れて胸元を直していた。
なんだかさっきとまったく胸のボリュームが違うし、顔がすごく赤い。
ああ…晴生に惚れたんだな、と呆れ顔でその表情を見て察した。


「新井はなんとかなった…と思う」

座り込んでいる晴生に手を差し伸べて立ち上がらせる。
薮塚はブツブツと何か言っていたが、こちらを見ると「早く行きなさいよ!!」と顔を赤らめながらこちらへと投げかけた。 


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【日当瀬 晴生】


「流石千星さん!!
こっちも千星さんのおかげで片が付きました!
アドバイスありがとうございます。」

女が俺から離れていくと俺は千星さんに手を引いて貰い立ち上がる。
勢いよく礼を言ったのは良いが、どうやら怪我の様子は俺よりひどい様子で眉をしかめる。 

しかし、タイムリミットが迫ってきていたので俺たちは急いで女から三木の居場所を聞き出すと、階段を駆け上がる。
どうやら、三木は最上階に居るらしい。
正午まで後二時間も無い。


俺たちが六階に差し掛かり廊下を走っていると急に背後に殺気を感じた。

「千星さん!!!前に飛んで下さい!!!!」

後ろから現れた大男が両指を組み、頭上に上げた手を大きく地面に降り下ろす。
間一髪で避けたのが幸いでその手は床に大穴を開けた。

その穴から階下が見えるほどの破壊力で俺は息を飲む。
それから、銃を構えた。


「次はてめぇか!!!!」 


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【千星 那由多】


さっきの新井との戦いでついた俺の傷を見て晴生が眉をしかめたのがわかったが、手当している時間もない。
正直ちょっと痛かったが、動けないほどではないので、俺たちは急いで最上階へと急いだ。


その途中、晴生が急に大声で俺に叫んだ。

「え?」

前に飛べと言われ意味がわからなかったが、後ろから風を切るような音がしたことにより、
俺は晴生に言われたように前に思い切り飛んだ、というより前に転げ飛んだ。
後ろを見ると馬鹿でかい巨体が蹲っていた。

その巨体の男がゆらりと地面にたたきつけた両腕を床から離す。
さっきまで俺たちがいた床に穴が空き、あれに当たっていたらと思うと顔が青ざめた。 

こいつ…あの時のでけー男か…!

銃を構える晴生と一緒に俺も体勢を整えすぐさま剣を構える。

「そうだ!!!次はこの俺…丸田勇!!次、というよりも最期が俺だ!!!
貴様らに次などない!!!」


大男、丸田は白い歯をむき出しにして不気味に笑う。
明らかに人を殴ることに躊躇などないようだった。
そして組んだ両手を俺達めがけて横に大きく振りかざす。

「―――!」

俺と晴生は後ろへと飛びそれを避けるが、腕を振っただけでかなりの風力があり、尋常じゃない力だと感じた。
動きが鈍いだけにマシだけど、これに当たったら身も骨も砕かれそうだ。

その両拳は壁に穴を空け、丸田はまたそこからゆっくり手を抜き、こちらをまるで飢えた野獣のような眼で見る。 


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【日当瀬 晴生】


俺は此方に向かってくる巨体に一発空気砲を打ち付けて見るが手をクロスし、意図も簡単に受け止められてしまい、奥歯を噛み締める。
その時の異様な筋肉の動きに俺は核心しながカートリッジを取り替える。

「どうやら、こいつは特殊能力で筋力が上がってるみたいですね。」

俺も千星さんもまだ特殊能力は目覚めていない。
それを考えればかなり不利だが、ここはやるしかない。

筋力が上がると言うなら、筋肉が無い場所を狙えばいい。
俺は千星さんにばれないように小さい声で話す。 


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【千星 那由多】


晴生が撃った空気砲が丸田のクロスした腕に直撃したにも関わらず、奴の身体は微動だにしなかった。

全然効いてねえ…!どんだけ丈夫なんだよ!
俺の力じゃこいつの筋肉に剣は叩き込めそうにない…。

その光景を見て息を飲んでいると、晴生が小声で話しかけてきた。


「俺が時間を稼ぎますから、逃げたふりをして部屋に入ってください。
そこからベランダを伝って、隣の部屋に渡った後、奴の背後をついてください」


それを俺は丸田を見ながら聞いていた。
晴生は何か策があるに違いない。

俺は小さく頷いてからぐっと手を握りしめた。
そして大きく息を吸い


「う…うわあああああこええええええ!!!」


わざとらしい。
大根にもほどがある演技。

丸田は俺の叫び声に呆気にとられていたようだったが、構わず続ける。

「お、俺、逃げる!!!」


自分の行動を言葉にしてしまっているが、演技だってバレなきゃどうでもいい。
俺は踵を返して右後ろにあった部屋へとダッシュで入る。 

晴生も「千星さん!」とか俺並みに大根っぽい芝居してたけど、とりあえず言われた通り自分のやるべき事をやろう。 


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【丸田 勇】


金髪野郎が俺に銃を撃つ。
どうやら空気砲だったようで、普通の人間なら直撃すれば吹き飛ぶぐらいの威力だが、俺には効くわけがない。
この筋肉、この身体!!
特殊能力とやらで俺様の肉体は最強になっていた。

グフフ…すごいぞ…これは!!

こんな軟弱な男二人俺の手で捻りつぶしてやる!!!


クロスしていた手を離した時、千星が叫びだした。
どうやら俺の力に恐れおののいてしまったようだ。無理もあるまい。
そのまま千星は右後ろのドアを開け部屋へと消えていく。


「グフフ…どうやら一人逃げたようだな…?」

俺は白い歯を見せにやりと笑った。

「まあアイツは根性の無い男だったからな…」

指の骨をポキポキと鳴らし、ファイティングポーズを取る。


「貴様は…少しは楽しませてくれよ!!!」


地を蹴り前方へと勢いよく突進し、右腕を左上から金髪野郎めがけて振りかざす。 


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【日当瀬 晴生】


流石千星さん!!
ナイス演技です。

俺は心の中でぐっと親指を立てた。

奴の特殊能力は筋力の上昇。
と、言うことは筋肉がない場所を狙えばいい。
顔も狙えないことも無いが俺達の攻撃じゃあ腕で塞がれてしまうのがオチだろう。 

と、言うことは残りは後頭部しかない。
こんな細い廊下じゃ回り込むことも難しいので千星さんに部屋づたいに回ってもらう事にした。 


丸田からの攻撃を壁に付いているランプにぶら下がって避ける。

「は!てめぇのノロマな攻撃なんかあたんねーよ!!」

そのまま飛び降り様に蹴り下ろしてみるが分厚いタイヤを蹴っている気分だ。
びくともしないと分かりながらも牽制に銃を撃ちながら行き止まりへと追い込まれて行くふりをする。 


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【千星 那由多】


どうやら丸田は俺のあんな演技でまんまと騙されたようだった。
あいつ俺よりバカだな。ちょっとは疑えよ。こっちとしては好都合だけど。


さて…。

俺は部屋の奥にあるベランダの方へと移動する。
割れた窓ガラスを開けると風が結構きつい。

外の天気は曇り空で、遠くの方で黒い雲が覗いている。

ベランダの横を見ると少し距離はあるが、飛び移れば隣の部屋に行けそうだった。


だがしかし。


「俺高所恐怖症なんだよな…」


確かここは6階だ。6階って結構な高さだよな…。
ベランダの手すりから恐る恐る下を覗く。


うおおおおおおお高い!!!やっぱ高い!!!!!


俺は下を見るのをやめ、震える足を叩き、気合を入れた。
廊下の方では爆発音や何かを破壊している音が聞こえる。
急がないと晴生の作戦を決行できない。
俺は早くなる心臓の音を感じながら息を飲み、ぐっと拳に力を入れた。

ベランダの手すりに足をかけ、その上に中腰になりながらそっと立ち上がる。
いける…いけるぞ那由多!!

下を見ずに飛ぼう、距離的には問題はない。
ぐっと勢いをつけようとしたその時、少し強めの風が吹き、俺の身体は外側へとバランスを崩しながら重力に従っていく。 


「――――!」


やばい、落ちる!! 



とっさに持っていた剣をベランダとベランダの間の壁に突き刺す。
その剣の支えによって俺は下へと落ちずにすんだ。

「………もうやだ」


少しちびりそうだった。 


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【丸田 勇】


「攻撃したって無駄だ!おまえのそんな細っこい足じゃ俺の筋肉には傷ひとつもつけられん!」

金髪野郎は諦めもせず銃を撃って来るが、それさえもこの筋肉で跳ね飛ばしてしまう。
俺の筋肉は裏切らない。
俺はブンブンと勢いよく右、左、と交互に金髪野郎目がけて両腕を振りかざす。
その度に壁や床などに拳が掠り、ガラガラと崩れていった。

「ヒャッハー!どうしたどうしたどうした!!!!
俺のノロマな攻撃が当たらないと言いながら逃げているだけじゃないか!!
もうすぐ行き止まりだぞ!さあどうする!!!」 


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【日当瀬 晴生】


千星さんの到着を待ちながら俺は攻撃を避ける。
もうすぐ行き止まりだが恐怖は全く無かった。

しかし風圧が酷く、飛んできた小石が俺の頬を傷付ける。
調度、背中に壁が当たった所で千星さんの姿が見えた。
俺はなるべく自然に頭を狙って欲しい事を銃で頭を掻くようにしてジェスチャーで伝えた。

「ヒャッハー!!!絶体絶命だな!!!焼却炉でやられた仲間の仇、晴らしてやるぜ!!!」


丸田はそう言うと一番人気初めと同じように両指を組み、頭上に掲げた。


「今です!!千星さん!!!!」

俺はその瞬間に丸田の足元に空気砲を撃ち込む。
そうすると丸田の体はバランスを崩し後ろによろめく。 


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【千星 那由多】


なんとか隣の部屋に渡れた俺は、廊下へと急ぐ。
ドアに隠れて廊下側へと顔を出すと晴生が壁へと追いやられていた。
丸田は両腕をぶんぶんと振りまくってて、目の前の事にしか興味がいっていないようだ。
ここで出ても丸田は俺には気づかないだろう。

廊下へと姿を現すと、晴生は俺に気づいたのかこちらへ一瞬目を向けた。
その後丸田へと視線を戻すと、銃で頭を掻く仕草をする。


頭を狙えってことか?

剣を構えると同時に晴生は丸田の足元へと空気砲を打ち込んだ。
巨体が後ろへとバランスを崩したところで、俺は距離を取り助走をつけ飛び上がる。
そして一気に剣を丸田の頭へと叩き込んだ。



が、甲高い金属音を立て、思い切り叩き込んだ剣が跳ね返り俺は後ろへと吹っ飛ぶ。


…こいつ脳味噌まで筋肉かよ!!!


頭を叩かれたことで丸田は俺に気づき、バランスを崩しかけた巨体を保ちながらこちらへとゆっくり振り向いた。 

「ああ?おまえ逃げたんじゃねえのか…?」


ゆらりと揺れる鋭い眼には苛立ちが宿っていた。 


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【日当瀬 晴生】


「おし!!」

ナイスです!千星さん!!

俺の作戦通り剣は丸田の頭を殴打した。
しかし、全くきかなかった。

「な!バカな!?
千星さん!逃げて下さい!!」


お互いに丸田の間合いに入ってしまっている。
慌てて俺は丸田の足場を崩すように空気砲を連射する。

すると苛立ちを含んだ鋭い瞳が此方に向く。

何かくる!!!

そう思った瞬間に丸田からバレーボール位の鉄球のようなものが無数に飛んできた。

「――――――ぐ!!!」


調度弾切れだった俺は、腹に球をくらい壁にぶっ飛んだ。 


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【千星 那由多】


「晴生!!!」

俺の方を向いていた丸田は、晴生の空気砲によってそちらにへと踵を返し、どでかい鉄球がいくつも連なったもので晴生に攻撃をする。
直にその鉄球を受けた晴生は吹っ飛ばされてしまった。

なんだあれ!?
あいつあんなもん隠し持ってたのかよ…!
普通の力だけでも勝てる気がしないのに武器とか…。

続けて丸田が再び晴生目がけてその鉄球を振りかざそうと腕をあげた。

まずい!

俺はさっきの丸田への攻撃で倒れた身体を起こし、その行為を止めに走る。


「やめ、ろおおおおお!!!!」


振りかざされた丸田の右手に剣を一発叩き込む。
しかしやはり丸田の身体は鋼鉄のように固く、剣が甲高い悲鳴をあげるだけであった。
ゆっくりと瞳だけが俺の方を見据える。

だめだ、こんなこと繰り返したってこいつには勝てない!!

俺を見ていた丸田の口元がニィと薄気味悪く笑うと、次は俺目がけてその鉄球を振りかざしてくる。 


「――――っ!!!」


とっさに剣でその鉄球を弾いたが、威力が少し半減しただけで俺の身体は晴生と同じように後ろの壁へと吹き飛ばされてしまった。 


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【丸田 勇】


俺の武器、シャイニングパールを金髪野郎の腹にぶち込んだ後、千星が俺の右手に攻撃をしてくる。
それさえも蚊が止まっているほどにしか感じず、そのまま千星にもシャイニングパールをお見舞いしてやった。


雑魚め雑魚め雑魚め!!!!!


筋力が上がったことだけでも無敵だというのに、シャイニングパールがあれば更にパワーは増す!
こんなガキみたいに細っこい奴らに俺の肉体は破壊できん!!


「ヒャッハー!!!!どうだ!!!手も足も出んだろう!!
どこを攻撃しても無駄だ!!!俺は全てが筋肉なのだからな!!!」

俺がシャイニングパールをブンブンと振り回すと、辺りの天井や壁に鉄球がぶち当たり、ガラガラと音を立てて崩れていった。 


「さて…どちらから先に餌食にしてやろうか…」

倒れている二人の顔を交互に見る。

「…さっき頭にブチ込んできた…貴様からだな…。
痛くはない…痛くはないが……ムカついた!!!!」


千星の方へと一歩一歩歩みを進める、その度に振り回してるシャイニングパールがそこら中を破壊していく。 


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【日当瀬 晴生】


いってぇ……。


骨が軋む。久々のピンチに自然と身体が高揚するのが分かる。
肋骨が痛んだが今はそんなどころではない、千星さんがピンチだ。

千星さんが俺をかばって弾き飛ばされる様が視界に入った。


「千星さん!!!!てめぇ…!!」

俺は怒りにまかせてカートリッジを交換した銃で数発、丸田に撃ち込むがやっぱり全く効いてないようだ。
しかも、相手はそこらじゅうを破壊しているので堪ったもんじゃない。

「テメェ、下にいる仲間のことは考えてねぇのかよ!」

自分に冷静になる様に言い聞かす。
何度も肩で呼吸を繰り返し、座ったままだった身体を何とか立ち上がらせる。

その間にも丸田は千星さんに近づいていく。
何とかしなければと考え、カートリッジを一本ホルダから取り出すと手の中で弾の種類を再構築させ、銃へと取り付ける。 


「ヒャッハ―!!!!!やっぱりどっちもしね!!!」 


その瞬間連なっていた鉄球がバラバラになり、こちらと千星さんに向かって飛んでいく。 

俺は好都合と口角を上げ、一つ残らず銃で撃ち軌道を逸らした。 


「ちっ、壊すまではいかねぇか。」 


空気砲の空気を更に圧縮させ、貫通式の弾に変えても丸田の武器は破壊できず、
千星さんの周りや俺の周りに鉄球がゴツン、ゴツンとけたたましい音を立てて落ちて行く。 

とりあえず、体勢を立て直すべく四方に何発か撃ち込み、砂埃を立てそれに姿を暗ましながら千星さんのもとへ向かった。 

「大丈夫ですか!?千星さん。」 


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【千星 那由多】


俺は壁にもたれかける感じで打ち付けられた身体の痛みと戦っていた。
前からゆっくりと向かってくる丸田を見据えながら、この状況をどうにかしようと考える、が俺のスッカスカの頭が好転するはずがない。 

剣を床に付き体勢を整えたところで、こちらに向かっていた丸田がまた白い歯を見せて笑った。 

「ヒャッハ―!!!!!やっぱりどっちもしね!!!」


そういうと鉄球がバラバラになってこちらに飛んでくるのがわかった。
飛び道具化すんのもアリかよ!!??
俺は逃げようとしたが間に合いそうにない。
剣で弾けるかはわからないが…と目の前に刃を構えたところで、晴生の銃声が響く。
晴生のおかげでその鉄球は軌道を逸らし、俺には当たることなく辺りにけたたましい音を立てながら落下していった。 

その後晴生が砂埃の中こちらへと向かってくる。 


「大丈夫…いや、結構痛いけど…お前も痛そうだったな」

苦笑いで返すが、そうこうしている暇もない。

「こいつへの攻撃…力技じゃ絶対無理だな…。どうする?」

砂埃の中の巨体を見据えながら晴生に問いかけた。 


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【丸田 勇】


一人を狙う…と見せかけてどっちも攻撃する俺の狙いは完璧であった。
しかし、先ほどと威力の違う金髪野郎の空気砲がバラバラになったシャイニングパールに当たると、
千星と金髪野郎の方へと飛んでいったシャイニングパールの軌道が逸れる。

「チッ!!」


砂埃が上がり、攻撃が来るかと思ったが、後ろにいた金髪野郎がいなくなっている。
前を向くと人影がふたつ暗闇の中でちらついた。
いつどんな状況でも仲間を大事にする心意気は認めてやろう。
だがそんなことでは俺は倒せん!!


俺にも慕ってくれる仲間がいた。
しかしそれをぶっ壊したのはこいつらだ!!!
あの焼却炉での事件の後、見る見る内に元気が無くなって行き、仲間と俺との距離は開いていった。
人が変わったように、俺を避けるようになった。
「俺たち怖いんです。丸田さんももうこんなことやめましょう」そう怯えながら言っていた。
大事な仲間を傷つけ、俺から奪ったこいつらは絶対に許せん!!


砂埃の中、俺は仲間のことを思い出し、更に怒りが増していった。 


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【日当瀬 晴生】


「俺は大丈夫です、慣れてますから。」

口内に溜まった血の塊を吐き出す。
それから、千星さんの言葉に悩むように眉を顰めながら重心は落としたままで臨戦態勢を取る。 

どうやら、丸田は俺が攻撃すると思っていたようで直ぐにはこちらには来ないようだ。
しかし、タイムリミットはもうすぐ迫っている。
俺が立てた砂埃もゆっくりとまた地面に帰っていく中、色々なパターンを頭の中で考える。 


考えろ、俺!
頭が効かないんじゃ、もう、どこを狙っても無理だ。
つーことは、外側は全て無理ってことだ。
そうすると後は、内側…。
内側…!?


俺は一つの案を思いついたがそれはするにはかなりのリスクを伴うため、ごくりと生唾を飲み込む。 


「一つ案があります…聞いてください。」


そして千星さんに耳打ちした直後、周りに落ちた鉄球が一気に宙に上がり、丸田の元へと帰っていく。
その際に起こされた風により砂埃が一掃されてしまった。

「みぃつけた…。」

丸田は白い歯を見せながらにやりと嫌な笑みを浮かべる。
先ほどよりも理性がなくなっているようだった。


「っ!!千星さん、頼みますね!!」


そういって俺は一歩下がった。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


砂埃がどんどん静まって行く、丸田の巨体が徐々に視界に映るようになってきた。

晴生は何かを少し考えた後、俺に耳打ちをする。
その内容はこうだった。


「少しだけ時間を稼いでください。俺はその間にカートリッジに弾を詰めます。
一つは先ほどの貫通式の弾、もう一つは催眠弾。
カートリッジはイデアさんが作った特殊なものなので、これはすぐに終わりますが、その間俺はサポートできません。
次に、やつがあの鉄球をまた分解させたときが勝負です。
分解した瞬間に俺が全て撃ち落としますんで…。どうにか、丸田の口を開いてもらえますか?」


要するに、俺が晴生が弾を詰めている間は一人で丸田の注意を引き、その後バラバラに離れてから口を開け…ということだった。
多分晴生は丸田を眠らせる作戦を考え付いたようだった。

確かに普通に殴っても効かないのであれば、あの巨体の動きを封じればいいことだ。
それには眠らせるのが一番てっとり早い。

「お、オッケーなんとか頑張る…」


そう俺が言った後、丸田は鉄球を自分の元へと戻らせ、また連なった武器を掲げて見せた。
晴生が一歩下がった時俺は息を吸い込む。


「こ、こんの…筋肉だるま!!!丸田じゃなくてだるまだな!!!」


その言葉に顔をしかめた丸田が苛立ったように歯を見せて笑う。
続いて連なった鉄球を頭の上で回し、俺の方へと振りかざす。

鉄球を剣で弾くイメージを持ちながら野球のバッドのように打ち返す。
身体も同時に吹っ飛んだが、自分には当たらなくてすんだ。
手がビリビリと痺れるように痛く、剣を握る力が無くなりそうだった。


「あーくっそ…俺野球苦手なんだよ!!」 


----------------------------------------------------------------------- 


【丸田 勇】


砂埃が無くなり、千星と金髪野郎の姿が見えてきた。
それと同時にあちこちに落ちたシャイニングパールを俺の手元のチェーンに戻す。
シャイニングパールは柄についているボタンを押せば磁石のように離れた弾もこちらに戻ってくるようになっている仕様だ。 


「みぃつけた…。」


にやりと笑う。
さっさとこいつらを始末してしまいたい。
恨みを晴らしたい。


殺してしまいたい!!!


金髪野郎が後ろへ下がったと思うと、千星がこちらに向けて「おまえはだるま」だとか言ってきやがった。
こいつおちょくってんのか?


「…いくら俺が温厚な紳士だからって………なめるなよ!!」


俺は二人を見下げながらシャイニングパールを千星に思い切りふりかざす。
だが鉄球は千星の剣に弾き飛ばされ、壁へと激突した。

「ほう…その剣もなかなかいいじゃないか…」

千星の身体は吹っ飛んだが、剣は折れていない。
俺達と一緒の特殊な武器か…。

「…じゃあもっと威力を増すために勢いを付けてやろう…受け止めても無駄なようにな!!」


俺はシャイニングパールを頭上に掲げ、徐々に速く回していく。
重くにぶい風を切る音とともに、砂埃や瓦礫が一気に舞い上がった。 


----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


俺の拳銃のカートリッジには予め弾が仕込まれている。
今回は大多数が空気砲だったのでもう、その一種類しか残っていない。

しかし、この武器のいいところは弾を再構築できるところだ。
まぁ、イデアさん曰くそんなことを出来るのは俺だけだって言われたけど。

俺は二つのカートリッジを握り締めその側面にキーボードの様なボタンを浮き出させると内部を再構築していく。
物理的には分かってやっているがこれを説明しろと言われても、少し難しい。
なんとなく、出来てしまうと、いう感覚に近い。

丁度、千星さんが一発をはじき終えたところで俺は二つの弾の再構築を終えた。

そして、カートリッジを詰め直すと俺も丸田のほうに走った。


「オイ筋肉だるま!!俺もいるぜ!
まぁ、のろまなお前には、二人攻撃なんて無理か?
この筋肉馬鹿が!!!!」 


そう告げると更に丸田の頭に血が昇って行くのが分かる。
きっと次に来る、アイツはでかい声を上げながらまた、鉄球を分解させるだろう。
俺はそのことを伝えるために千星さんに目配せをした。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


鉄球を弾いた後、晴生は準備が終わったのか、丸田の方へと走った。
俺はさっきの衝撃で吹っ飛ばされた身体を起こし、痺れている拳をぎゅっと握る。

よし…後は口が開いた所を押さえる…んだけど、どうするか…。
辺りを見回すと、丸田が壊した壁や天井の瓦礫が山になって調度いい高さになっている。

あそこに登って丸田に飛びつくか。


晴生があちら側に行った時、丸田がぐるりとそちらの方へと向いたのを確認し、横の瓦礫へとよじ登る。
どうやら筋肉だるまだのなんだの言われて頭に血が上って、こちらのことは気にも止めていない様子だった。
どこが温厚な紳士だよ!

「ちょこまかとウザい奴らめ!!!
二人攻撃なんぞ容易いことがまだわからんのか!!」

丸田の頭の上で振り回していた鉄球が再び分解され飛び散る。


「潰されろ!!シャイニングパールによって!!!!」


…今だ!!
俺は後ろの瓦礫から丸田の肩へと飛びつき、反りかえる体勢で大口開けて笑ってる丸田の口をそのままこじ開けるように剣の柄を入れ込んだ。 身体が振り落とされないように必死に丸田にしがみつき、俺はそのままの体勢で晴生の名前を呼ぶ。


「晴生!!!」 


----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


どうやら本当に脳みそまで筋肉だった様子で、俺の言葉に簡単に逆上してくれた。
その瞬間相手の連なっていた鉄球が離れる。


今だ―――!!!!!


俺はカートリッジの全ての弾を使って、丸田から離れた鉄球を撃ち落とす。
さっきの様子からしてこの鉄球を動かすには少し時間が必要な様子だ。
その瞬間をついて、千星さんは大口を開いていた丸田に飛びかかってくれた。

作戦通りに丸田は千星さんの剣の柄によって口を閉じられなくなっている。
すかさず、俺はカートリッジを入れ替えて、丸田の口に叩きこみやすく、千星さんに当たらないように横に飛びながら銃を放つ。


「暫く、ねんねしてな。」


「あががががががががが!!!!!!」


相手の巨体を考えて構成した麻酔弾は、口を閉めれず青ざめ間抜けな声を上げる丸田の口内へと一直線に入っていった。
角度からしてきっと頬の裏にでも突き刺さっただろうか。
それを確認しながら俺は足裏で滑る様にしながら地面に着地する。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


「よっしゃ!!」 


丸田の口の中に入った麻酔弾を確認した後、俺は口を開くように支えていた剣を抜き取ると、下へと飛び降り丸田から離れる。

丸田は口の中に手を入れ、必死で麻酔弾を取り出そうとしていたが、刺さっているのか取れないようだった。
しばらく足掻くように暴れていたようだったが、ふと急に動きが止まり、そのまま丸田は地面へと激しい音を立てて倒れた。

まったく動かない丸田の側へ静かに寄ると、いびきをかきながらぐっすりと眠っている。


「……終わった…」


一時はどうなることかと思ったが、晴生の作戦は大成功だった。
少し気が抜けそうになったが、まだ上まで到達していない。
俺は額の汗を拭い息を吐いた。


「晴生、おつかれ…」

寝ている丸田とそこかしこに空いた穴を避けながら晴生の元へ行こうとしたその時だった。


「!!?」


床が俺の後ろの方から崩れてきている。
というよりも建物自体が崩壊するようにゴゴゴゴと嫌な音を立て始めていた。

「……これって…」

そう思った瞬間に足元の床が崩れた。



落ちる――――!! 



      
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