あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

トラウマ

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【千星 那由多】


身体があったかい…。
なんだろう、心地よい。
優しく包み込まれるような、全部、忘れてしまうような。 



「……ん…」

目を覚ますと、見慣れない天井があった。
暫く頭の中を整理しようと目だけを動かし辺りを見渡す。

視界にすぐ入って来たのは日当瀬で、次いで三木さんとイデアの顔がぼんやりと認識できた。
イデア以外はものすごく心配そうな顔で、俺は一体なにをしでかしてしまったのかとみんなの表情を見たときには記憶が追いつかなかった。 
そして、どうやらここは(裏)生徒会の仮眠室のようだ。


「俺…なに……」

ゆっくり曖昧な記憶を辿っていくと、ある光景がフラッシュバックのように蘇って来たのがわかった。

「!!!!」

起き上がって身体を確認する。服、は着ている。
手首などに付いた赤い痕と無理な体勢にさせられていた全身の痛みがじわじわと感じとられていき、俺の記憶は完全に戻ったのがわかった。


「………俺…っ…」


手が自然に震え、隣で見ている日当瀬は更に心配そうな表情になるのがわかった。
シーツの中に震える手を隠すように入れ、自分の身体を小さく小さく抱く。

「………助けてくれたのか…」

膝に顔を埋めながらみんなに表情を悟られないように籠ったように言葉を発した。 


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【日当瀬 晴生】


千星さんが目を覚ました。
必死に隠そうとなさっていたが矢張りあんなことまでされて、普通で居られる筈は無い。
小さく震える千星さんを目の前に俺は何もできず、奥歯を噛み締めた。


「すいません。遅くなって…。」

どういう状態であったかまでは、三木やイデアさんに詳しくは言っていない。
ただ、余りいい状況では無かった事だけは伝えてある。

「三木。イデアさん。ちょっと、席、外してもらえますか?」

そう言うと三木は慌てて立ち上がり、「欲しいものとかあったらいって…」と、言いながら、いつも通りのイデアさんと共に部屋から出ていった。 


「あの二人に詳しくは話してませんから安心して下さい。後、一応カメラだけは持ち出してきました。
そこに置いてますんで好きにして下さい。…見るのも嫌なら俺が処分しておきます。」


出来るだけ感情を逆撫でしないようにゆっくりと言葉を並べ、どうしていいか分からないなりに背中を撫でてやり。 

「すいません。その…俺にはこれくらいしか出来なくて、…帰るなら送って行きますんで。」 


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【千星 那由多】


自分の身体をぎゅっと抱きながら、色々と世話をかけてしまった日当瀬の言葉を聞いていた。
日当瀬の声がやけに今日は奥底にひびく。

「カメラ、は…処分してくれ…」

ぼそぼそと喋る俺の背中を優しく撫でてくれる日当瀬の手の感触に少し身体が強張ったが、ぐっと拳を握りしめて我慢する。
このくらいしか出来ない、なんてとんでもなかった。
俺は込み上げてくる嗚咽やら恐怖を喉元から出ないように抑え込んだ。
送ってくれると言ってくれた日当瀬の言葉を断ろうとしたが、帰り道一人になるとまた何があるかわからない。


「……頼んだ…心配かけて、ごめん、あり、がとう」


不甲斐ない自分が嫌いだ。
今ここで日当瀬の優しさに寄り添ってしまったら、もっと迷惑をかける。
俺はのそのそと立ち上がり、横に置いてあった自分の鞄を手に取って仮眠室から出た。


「三木さん、イデア、ごめん、今日はもう帰るよ、ありがとう」

なるべく三木さんの表情を見ず、俯きながら逃げるように(裏)生徒会室の隠し扉を開けて外へと出た。



日はどっぷりと暮れ、時間は何時かわからない。
帰宅時は何もしゃべれなかった。
日当瀬は気をきかして少し喋ってくれたようだったが、何を話しているのかもあまり頭に入ってこなかった。

門の前で、日当瀬に礼を言ったまま顔をあげずにすぐさま玄関へと向かう。
この時点で俺の心の線は切れかかっていた。

家に入ると妹に「遅かったね」と言われたが、ご飯はいらないとだけ伝えると、階段を駆け上るようにして自室へと走り込む。 


扉をゆっくり閉めると我慢していた感情が一気にはち切れた。
すぐに脱力して座り込み、また身体を小さく抱きながらなるべく静かに泣いた。 


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【日当瀬 晴生】


矢張り千星さんは相当ショックな様子で自分がもっと早くに気付けなかった事に後悔した。

なるべく刺激しないように差し障りのない言葉を並べて千星さんを家まで送る。

「ゆっくり休んで下さい。」

頭だけ下げて千星さんの家まで入るのを見送ると俺は千星さんに告げることなく天夜巽の捜索を開始した。
しかし奴はどこに隠れたのか居場所を見つけることは出来なかった。 


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【天夜 巽】


……―――ッ、どこだここは。
頭が割れるように痛い。
霞む視界がはっきりしてくると同時に甦る記憶は残酷なものだった。

体を起こし、那由多を探すように辺りを見渡すが入るはずも無く、俺はその場に膝を付いたまま拳を握り締める。 


「気が付いたか?」

「…?誰?」

「俺も(裏)生徒会に恨みを持つものだ。」

俺の目の前に現われたのは白髪混じりの黒髪を七三に分けた、ショートカットの中肉中背の男性だった。年齢は50代と言ったところだ。 
(裏)生徒会。その名前を聞くだけで腹の中に憎悪が巻き起こる。
俺は睨むようにその男性を見つめる。

「それで、どうして俺をこんなところへ?」

「あのまま、あそこで居たら記憶を消されてしまうと思ってね、連れてきて上げたんだよ。
君は力が欲しくないかい?親友を守る力が。」

そう言って笑った男の顔は醜いものだったが、こいつは俺の素性を全て知っているようだ。
ならば話は早い、俺はもうなりふりなんて構ってられない、力をくれるなら悪魔に魂を売ってもいいと思う位今回の敗北は悔しかった。 

そう告げる男の後ろから姿を現したのはこの前那由多の事を教えてくれた金髪の少年で俺は数度瞬いた。 


「君は……」


「また会ったネ、オニィチャン。
残念だなァ、オニィチャン、強いからそのままでも大丈夫ダト思ったんだけド。
千星那由多は救えなかったノ?」

「―――――――ッ!!!!」

「大丈夫ダヨ。オニィチャン…。
オニィチャンにもちゃんと武器をあげるから…。
(裏)生徒会の奴らダケ持ってるなんてズルいモンね?
大丈夫、次は勝てるヨ。」


そう告げた少年は綺麗に残酷な笑みを浮かべた。 






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【三木 柚子由】


千星君が捕らえられた事件から二日経った。
今日も遅くなってしまったので、もうすっかり日は暮れていた。
私は生徒会の(裏)と(表)を繋ぐものだから、追い掛けられたり、付けられたりすることはよくある。

だから気配には鋭くなったし、風紀委員みたいに特殊能力者がいない限りまけるんだけど、今回はそうは行かないみたい。 
念のために風紀の件があってからイデアちゃんが携帯に付けてくれた非常用のボタンを押す。 

今は千星君も無理してるみたいだし、会長も留守だからこんなところで捕まる訳には行かない。 


しかし、私の考えとは裏腹にどんどん追い詰められていく。
息も切れ始めたし、本当にこれは危ない。


「はぁ…はぁっ!誰……誰なの!?」


そう言った私の前に現われたのは千星君のクラスメイトの天夜巽君だったけど見たことも無いほど冷たい表情をしていて私は震えてしまった。 


「どうして?…あなたは千星君のともだ――――っくぅ!!」

「馴れ馴れしく那由多の名前を呼ぶな!!!」


天夜君の気に障ったのか私は首を締め付けられるように持ち上げられる。
片手で軽々と私の身体は宙に浮き、どんどん酸素が無くなっていく。
息苦しさに藻掻きながら相手の手を離そうとしたが全くびくともしない。


「君が那由多を(裏)生徒会に誘ったのか?
…まぁ、いい、時間はあるしゆっくり聞かせてもらうよ。女の子にこんなことするのは好きじゃないんだけどね。」 

「……どうし…て……」

「捕まえたのか?」

もう酸欠で意識が保てない中、天夜君の後ろから現れた人物に私は目を見開いた。


「あなた…は……」


白髪混じりの男性に私は見覚えがあった。
あれは春休み。私はもう副会長になる事が決まっていたので学校に登校して(裏)生徒会の任務を行っていた。
私が(裏)生徒会になっての初任務が横領をしていた、彼、青山伊一郎先生の解雇だった。


イデアちゃんに伝えなきゃならないのにもう私の視界は白くなり初めてしまって、そのまま意識を手放した。 


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【千星 那由多】


また悪夢で目が覚めた。

あの事件から二日、なるべく迷惑をかけまいと普通の生活を送るように努力はし、学校にも行っていたが、やっぱり精神的にキツいものがあるみたいだ。 

俺は顔や首元にかいた汗をタオルで拭い、水を飲みに台所へ行こうとベッドから降りる。
その時枕元の携帯が鳴った。
画面を見ると日当瀬からの電話であった。
こんな夜中に一体なんだ?


「…もしもし?」


携帯に出ると日当瀬は冷静であったが、少し心配しているような声なのが分かった。
そしてそこで俺は初めて「今日の夜に三木さんが何者かに誘拐された」という事実を知る。
先に日当瀬は動いていたようだったが、とりあえず今から学校の(裏)生徒会室に集合ということであった。

まさか、とは思ったがそのまさかだ。
きっと三木さんは巽達に誘拐されたに違いない。

その時またフラッシュバックであの光景が蘇る。


「…っ……」


三木さんを助けなきゃ、助けに行かなきゃ、早く学校に……そう思う度に心臓の音が早く大きくなった。
服に袖を通す身体が鉛のように重い。

震える身体をなんとか抑え、私服に着替えてから俺はそっと家を出る。
肌寒いくらいの気温であったが、俺の身体はそれ以上にまだ震えていた。


ぐっと拳を握りしめて冷静になれと心を落ち着かせる。



学校に向かって走っていると、目の前に何か人影が見えた。
月の逆光で暗く見えにくかったが、俺は心がざわついたのを感じて、走る速度を徐々に緩める。


そこに立っていたのは―――――――巽だった。 


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【日当瀬 晴生】


イデアさんから連絡を受けて俺は三木の電波が途切れたところに向かったが何の痕跡も残って居なかった。
その後、捜索したが全く手掛かりは見つからない。

心配になって千星さんにも連絡すると彼は無事のようだ。
取り敢えず理由を話し、一緒に探してもらうことにした。


千星さんも狙われる可能があるので急いで迎えに行く事にした。
学校方面から走って行ったので調度此方に向かっている千星さんが見えたと思ったらその間に立ちはだかるように天夜巽が姿を現した。 


「テメェ!!!!――――ッ!!」


イデアアプリを展開し銃を撃とうとしたがそれは巽から飛んできた縄に何か、鉤爪がついたような武器により阻止されてしまう。

「相変わらず手が早いね、君は。」

「――――ッく!!!」

「今日は戦いに来たんじゃない。」

そう言うと俺に二枚のカードを投げ付けた。
それを親指と人差し指で挟むように受け取るとそこに映し出されて居たのは、縄で縛られている三木と場所が印されている地図だった。
更に裏には「Black Owl」と組織名らしきものが書かれていた。

「そこで待ってるよ。
三木柚子由の処刑は正午に行う。勿論、見捨てても構わないけどね、那由多?」

そう言って冷たく優しく笑いながら天夜は千星さんを見つめる。
自分が眼中に入っていない気がして酷く苛立ちを覚えた。

「ふざけんな、テメェ!!!さっさと三木を返しやがれ!!」

頭に血が登った俺は天夜に銃をぶっぱなすがいとも簡単に俺の弾を避け、弾は地面にぶつかった。

「本当に、手が早いね。まぁ、いいや。俺はちゃんと伝えたから。
メンバーが何人居るか知らないけど全員で来たほうがいいよ?
あ、少なくても頭は連れてきて。
那由多を辞めさせるように俺が説得するから。」

そう言って笑った天夜の表情はゾッとするもので笑っていたが全く笑って居なかった。
それだけ告げるとヤツは闇の中へと消えていった。


「大丈夫ですか、千星さん。取り敢えず、学校行きましょうか?」

俺は千星さんの元に走ると彼と一緒に学校に急いだ。
千星さんの異変に、また気付く事はなく。 


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【千星 那由多】


その姿が巽だと認識した瞬間、身体が強張って動かなくなった。
一歩一歩近づいてくる巽を乱れる視界で見ながら、俺は冷や汗が吹き出し、動悸で息がうまくできなかった。


怖い、目の前にいる巽が。


巽の顔がはっきりとわかる距離になった時、聞いたことのある声が遠くから聞こえ、巽はその方向へと何かを投げつけた。

暗くてあまり見えないが、金髪の髪が月夜に映えたのがわかり、それが日当瀬であることを認識した。
彼が来たことの安堵で、強張っていた身体の力が少し抜けてこの場崩れそうになったが、なんとか持ちこたえる。


やはり三木さんを誘拐したのは巽達であった。
巽と日当瀬が何やら揉めていたが、俺はそれを見ていることしかできなかった。

見捨ててもいいよ、と言って振り向いた巽の声と顔はおぞましく、全身の身の毛がよだつのを感じる。
返答さえできない。見捨てる気なんて……ない、はずなのに。


そして巽はそのままどこかへ行ってしまった。
いなくなった瞬間に、自分が息を止めていたことに気づき、荒く息を吐く。

日当瀬にこんな精神状態を知られてしまってはいけないと思い、手の平に爪を立て自分の恐怖をなんとか抑え込み、言われるがままに学校へと向かった。 



(裏)生徒会室に着くと、イデアは腕を組んで立っていた。

「キタカ。状況ハわかってイルナ?」

俺はその言葉にまた心臓が早くなり、震える唇を噛みしめながら小さく頷いた。 


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【日当瀬 晴生】


(裏)生徒会に着くなり、俺は手に入れた情報を元にパソコンで目的地を割り出していく。
場所は廃墟のようだ。


更に詳しい見取り図を調べる為に衛星を利用する。
どうやら元はラブホテルでかなり入り組んだ構造になっている。
「ロ」の字のような建物になっていて中庭もある。

「俺はこれから見取り図を作ります。出発は朝の八時。それまで千星さんは仮眠取っておいてください。」

千星さんが小さく頷くのを確認すると俺はパソコンの画面に集中した。

「イデアさん…会長は……。間に合う……訳ねぇつーか、こんな罠です、つーところにアイツが飛び込む訳ねぇか…」

真摯な表情でイデアに途中まで質問をぶつけていたが不意に我に帰ったように言葉を荒げる。
アイツを頼りにしようとした俺が馬鹿だった。
溜息を吐きながらパソコン画面へと集中していく。 


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【千星 那由多】


日当瀬に言われるがままに仮眠室へと向かったが、ベッドに入る気にもなれず、自分のまだ震えている身体を抑えようと立ち尽くしていた。 

だめだ、まだ怖い。
巽を見るとあの光景とともに、裏切られたような気持ちがどんどん出てきてまともに向き合える気がしない。
裏切られた、のだろうか。
いや、あいつはきっと今でも俺を(裏)生徒会を辞めさせたいと思っているはずだ。
きっとそれは俺のためで、自分のためなんかではない、怖がっているのは俺だけだ。 

なんとか落ち着かせようとしたが、興奮していて中々頭も回らない。


コーヒーでも飲もう…。


俺は給湯室へ行き、インスタントのコーヒーを二つ準備した。
そして、パソコンに向かっている日当瀬がいる部屋へと行く。

日当瀬は俺が入ってきたことに気づいて、寝てなかったんですか?と言ってきたが、俺は寝付けなくてと言って静かに笑った。
コーヒーを手渡し、カップへと口をつける。
甘苦い味が舌の奥で広がった。

パソコンに向かって作業をしている日当瀬をじっと見ていると、申し訳なくなってくる。
俺がこんな状態でなかったとしても、二人で三木さんを助けることができるだろうか。
勝つことができるだろうか、あの巽に。


巽のことを思い出した瞬間、フラッシュがたかれる光景と巽の冷めた瞳を思い出し、また身体が強張る。
カップを持っていた手が震えて力が緩み、ゴトンと大きな音を立てて床へと落下した。
絨毯に茶色い染みが広がる。

そんな俺を見て慌てて落ちたカップを拾い上げようとする日当瀬に、俺は言葉を放った。 


「ご、ごめん…俺……っ行け、ない…っ」


噛みしめていた唇は震えていた。 


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【日当瀬 晴生】


八時と言ったが衛星で確認しただけでもかなりの人数が居るようだ。
夜明けと共に出発しなければ間に合わないかもしれない。
しかも敷地内は見れたが建物内は特殊なジャミングか、どうしても見ることが出来ない。

私服の為ゴツイハードアクセが邪魔になってきたため指輪等を外して机の上に転がす。
そうして椅子に深くもたれているとカードの裏側が視界に入った。
そこに書いてあるのは「Black Owl」黒い梟だ。
俺たち(裏)生徒会の正装には白い梟、「White Owl」が刻まれている。
これは明らかな皮肉であり、挑戦状だ。
内部に俺達についてかなり詳しい奴が居るに違いない。

二枚のカードを指先で擦り合わせるようにして物思い耽っていると千星さんがいらっしゃった。

「分かります。俺も戦闘がある任務の前には寝れませんから。」

千星さんが淹れてくれたコーヒー。本当はインスタントは飲まないんだけどこの時は酷くおいしく感じられた。
疲れも一気に吹っ飛んだのでまた作業に戻る。

「出発時間ですが…少し早くなるかも――――ッ!!!
大丈夫ですか!?千星さん!」

慌てカップを拾い上げようとした俺に聞こえた言葉に落胆した。


ああ、俺はまた、この人の異変に気付けなかったって。


それからカップを拾い上げると机に置き。
幸い絨毯は汚れたがお互いに怪我は無かったためホッと息を落とし。

「わかりました。
すいませんでした、俺勝手に頭数に入れてしまって。
そう言えば千星さんはまだ仮入部みたいなものですから、こんな汚い仕事はしなくていいですよ!
こんな奴等俺一人でなんとでもなりますから!!」

仮入部なんて嘘だ。
本当は、もう千星さんは(裏)生徒会の一員で、三木は連れさらわれる前に千星さんの正装を嬉しそうに用意していた。
その机の上に折り畳まれた服にちらりとだけ視線を送る。千星さんに気付かれないように。


「さ、ここは俺が片付けて置きますから、千星さんはゆっくりしててください。
あ、ここなら安全なのでずっと居てて貰ってもいいですし、もし帰るなら日が上ってからのほうがいいですよ?
すいません、送って行けなくて。」

俺は深々と頭を下げる。
あの天夜と会った時点で千星さんがあの時の事を思い出すのは分かっていたのに浅はかだった自分を悔いた。 


結局俺は千星さんが部屋に戻るまで頭をあげることは出来なかった。 

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