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isc(裏)生徒会
親友だからこそ
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【天夜 巽】
今日もいつもどおり部活を終え、すっかり暗くなった道程をとぼとぼ歩く。
最近は部活中でも授業中でも那由多の事ばかり考えている。
今だってそうだ。
那由多の睡眠不足は相変わらず解消されて無いみたいだし、生傷も絶えない。
今日だって顔に絆創膏を貼っていた。
どうやったら顔に怪我するんだろ。
那由多がいくらドジだからと言って早々顔なんて怪我できない。
那由多に聞いてもはぐらかされるし、日当瀬くんを見ていても用心深いのか尻尾を出す事はしない。
そんなこんなで八方塞がりな俺は大きな溜息を吐いた。
「良いことを教えてやろうカ?」
「…っ!!誰だ!!」
急に細い横筋から聞こえる声に俺は身構えた。
ゆっくりとした小さな足音が聞こえる、すると俺の前に小学校低学年位の小さな金髪の男の子が現れた。
「ボクの名前はセーマ。オニィチャンが気になってるのは、千星那由多?」
「何物なんだ…君は…」
図星。まるで頭の中を読まれたような言葉に俺は更に警戒を強くするが、その小さな男の子はニコニコ笑って居るだけだった。
「あ、怪しいものじゃないヨ。…十分怪しいか…。
ま、いいや!取り敢えず、多分、オニィチャンの味方ダヨ?
千星那由多。カレの情報を教えてあげル。
正直邪魔なんだよね。カレが(裏)生徒会にいるの。」
「(裏)生徒会?」
「ウン。(裏)生徒会。
因みに秘密の部室は実習棟から繋がってルみたい、マダ、場所までは特定出来てないケド。
(裏)生徒会の情報は学校にたくさん転がってるカラ、オニィチャンなら余裕で見つけられるんじゃないかナ。
取り敢えず…危ない仕事なのはタシカだから。」
「危ない…?」
「うん。勿論、信じる信じないはオニィチャンの勝手だけど、カレ、このままあそこに居たらシンジャウと思うな…。
あ、時間だ行かなきゃ…またね、オニィチャン。」
「ま、待って!!!君は?(裏)生徒会って!?……っ、いっちゃった…」
男の子は瞬く間にその場から姿を消してしまった。
那由多の事を詳しく知ってそうだったのでガックリ肩を落としたが。
その子から貰った(裏)生徒会と言うワードを自分で調べてみることにした。
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【千星 那由多】
ここ最近は(裏)生徒会の任務も落ち着いていて、風紀委員の時のように武器を使う任務はまったくなかった。
でもまぁたまにイデアアプリ解いておかないと次あんなことになったら大変だしな、と一人になった暇な時は起動するようにしている。
ちょっとコツは掴めてきている・・・ような気もする。
6時限目の社会の授業、先生の話をかるーく聞きながら、俺は物思いにふけっていた。
嫌々始めた(裏)生徒会だったけど、思えばけっこう俺頑張ってるよな。
なんか最近は任務をやることもあまり苦じゃなくなってきたし、楽しい時もたまにある。
まぁイデアのスパルタだったり変な任務の時は辞めたいなって思うけど、それでもどこか充実している自分がいた。
意外とこういう高校生活もいいかもしれないな、なんて。
特殊な生活という体験が俺を少しは変えたのかもしれない。
まぁでも無理はしないでおこう。
最近親や巽も俺の変化に気付いてるみたいだし、あまり心配はかけられない。
それにこのことが周りにバレるようなことがあったら、(裏)生徒会自体にも迷惑がかかる。
その時は俺、書記クビになんのかな。
・・・・・・・・・つーか俺書記の仕事してなくね?
そうこうしている内にチャイムが鳴り、今日の授業は全て終了した。
今日も(裏)生徒会があるので日当瀬に呼びかける。
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【天夜 巽】
あれから俺は(裏)生徒会について調べてみた。
生徒会…表向きの生徒会と言ったほうがいいか。
その副会長の三木さんが(裏)生徒会にも絡んでいる。
実は(裏)生徒会では三木が会長だ。
姉が(裏)生徒会のせいで意識不明に追いやられた。
生徒から金を巻き上げてそれを資金源に動いている。
等、余りいい噂は耳にしない。
アンチ(裏)生徒会のような反対勢力もあるみたいだ。
しかし誰に聞いても(裏)生徒会のメンバーの名前は副会長の三木柚子由しか出てこない。
それもまた不思議な現象で、俺は頭を悩ませる。
調度ホームルームが終わった頃、また日当瀬君を誘いに行く那由多が視界に入った。
どうやら日当瀬君は日直の様子で、那由多の誘いを断ったようだ。
あの少年の言っている事が本当ならこのまま那由多は実習棟に向かうはずだ。
俺は気付かれないように那由多の後をつけた。
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【千星 那由多】
日当瀬に今日日直だから先に行っておいてくれと言われたので、(裏)生徒会室には先に一人で行くことにした。
思えば放課後はいつも二人で行動していたので、一人で(裏)生徒会室へ行くのは今日が始めてだ。
カバンの中に入れた実習棟の鍵を探しながら本舎を出て、実習棟への通路を渡る。
周りに誰もいないか確認をするために辺りを見回した。
放課後にもなると実習棟付近には人も少ないため、これもクリア。
ま、あんまりコソコソしない方が逆にいいって言われてるから、堂々と入ろう。
俺は実習棟に入り鍵をかけ、理科準備室にある(裏)生徒会室へと向かった。
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【天夜 巽】
どうやら那由多は後をつけている俺には気付かない様子で、一人で歩いていった。
明らかにその方向は校門では無く実習棟の方であり、俺は眉を潜めた。
柱の陰から顔を出して伺っていると那由多は辺りを軽く確認した後、そこに入っていった。
本来、実習棟は放課後は入れるものではない。なぜ那由多がこんなところの鍵を持っているかも謎だった。
少しして、那由多が消えた実習棟の扉を開けようとしてみたが矢張り開くことは無かった。
本当に那由多が(裏)生徒会に入っているならやめさせなければいけない。
そう考えながら俺はクラブに向かった。
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【千星 那由多】
(裏)生徒会の今日の任務は野球部が校外へ打ったボールが無くなっている原因を探る・・・
といったものだったのだが、結局これは野良犬が持って帰って遊んでいた、という結果だった。
たんまり溜め込んだボールを取り返すことはできなかったので、とりあえず事情だけ報告。
その犬の住処を探すのに苦労したので、終わった頃には19時を回ってしまっていた。
腹減ったなーなんて言いながら、日当瀬と共に自宅へと帰る。
こいつと一緒に帰るのもなんだか慣れてしまった。
家の門の前で日当瀬と別れると、家の中へと入る。
「ただいまー」と言いながら靴を脱いであがろうとすると、俺のとは違うローファーがキレイに並んでいた。
誰のだ?妹の友達・・・にしてはデカイな。
そう思った時に妹がリビングの方から現れて、「巽さん来てるよ!おにーちゃんの部屋にいる!」と嬉しそうに呼びかけてきた。
「巽・・・?」
こんな遅くに巽が来るなんて久しぶりだな。
今日は何か約束をしていただろうか、最近は巽もあまり絡んで来ないので学校でも話をする機会がなかったが、
何かあれば事前にメールや電話をくれるはずなんだけど。
少し不安な気持ちにはなっていたが、俺はそれを隠しながら二階の自室への階段を登った。
ドアを開けると青い小さなソファに巽がちょこんと座っていた。
「おー巽、どした?こんな遅くに?」
俺は鞄と携帯を勉強机に置き、上着を脱いでハンガーへとかける。
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【天夜 巽】
部活が終わった俺は真相を聞き出す為に那由多の家に向かった。
本当は自分の家も手伝わないといけないんだけど。
俺の母さんは居酒屋をやっていて女手一つで俺を育ててくれた。
母さん一人で大変だろうに結構好きにやらせてくれてる。
そんな事を考えていたら那由多の家に着いた。
チャイムを押して出てきたのは那由多のお母さんで、那由多はまだ帰って来てないらしい、お母さんの言葉に甘えて部屋で待たせて貰う事にした。
那由多の部屋の時計を確認すると、もう時間は19時を過ぎている。入口でお母さんに伺ったところ最近は毎日遅いらしい。
那由多は基本めんどく下がりやなのでこんな時間まで何かをすることはない。
クラブや部活だって今まで帰宅部に近い、活動が少ないものしか入った事が無い。
そんな那由多が本当に(裏)生徒会に入っているなら、それはきっと無理矢理させられてるにちがいない。
俺は那由多の部屋にあるソファーに腰掛けて待っていると、直ぐに階段の音が聞こえて那由多が入ってきた。
「那由多こそ、お疲れさん。」
いつもと同じような那由多の対応に、小さく苦笑を零す。
それから椅子に腰掛けて、手を組み、肘を膝に乗せて格好のまま俯き、親指通しをこすり合わせる。
それから意を決したように那由多を見つめながら唇を開く。
「今日の放課後、実習棟でなにしてたの?」
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【千星 那由多】
調度勉強机の椅子に腰をおろした時、巽から思わぬ質問が飛んだ。
実習棟でなにしてたの…?
「え…?」
俺は思わず巽の方へと目を向け聞き返したが、巽の目が本気だったため、すぐに目を逸らしてしてまった。
どういうことだ?
実習棟に行ったことバレてる?
見られてた?
あの時の情景が頭にぐるぐる回ったが、それより今はこの質問に対しての言い訳をしなければならない。
目を合わせると巽には嘘だとバレてしまうため、俺は机に置いた鞄の中身を出しながら、返事をする。
「あ~ちょっと、帰り際に先生に頼まれ事されて、なんか実験室に荷物忘れたとかなんとかでさ…その後も色々手伝わされちゃって…」
こういう時の巽はうまくかわせる気がしなかったが、俺はなるべく冷静に嘘をついた。
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【天夜 巽】
那由多が俺の目を見ずに視線を逸らした。
これはきっと嘘を言っているに違いない。
那由多は余りうまく嘘を吐けるタイプではない。
俺に嘘までつかなくちゃいけないなんて、何か弱みでも握られているのか?
俺はソファーから立ち上がり、こちらに背中を向ける那由多の右肩を左手で軽く握りこんだ。
「(裏)生徒会って何?」
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【千星 那由多】
巽の左手が俺の右肩に触れて、「(裏)生徒会」の名前が出た時一瞬びっくりしたが、なるべく冷静に対応できるように自分を落ち着かせる。
こういう状況には慣れてないから、すぐにテンパり癖が出てきてしまう。
きっとどこかで(裏)生徒会のこと調べたんだ。
完全に嗅ぎつけられてる。
さっきのも嘘だって完全にバレてるし…。
冷静になるようにと落ち着かせようとしたのが逆に仇となったのか、俺の心拍数はどんどん増していった。
(裏)生徒会の存在がバレてしまってはこいつも記憶操作されてしまうし、色んな部分で巻き込んでしまう。
それだけは絶対にイヤだ。
俺は視線をまだ逸らしたまま答える。
「(裏)生徒会?…ああ、なんか学校で噂の?俺に聞いてどうすんの?知らないし」
なんとかひきつる顔を笑わせてごまかすが、巽の目は未だに俺を見つめていた。
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【天夜 巽】
「那由多。ちゃんとこっち見て?」
肩を掴んだだけでも那由多の動揺が分かる。
どうして、自分に嘘を吐くかが分からなくて自然に眉は寄り、肩を持つ手に力が入ってしまう。
「那由多が、話してくれないなら、日当瀬君に聞いたほうがいい?ああ、副会長の三木柚子由。彼女でもいいかな?」
自分の顔はちゃんと笑えているだろうか、口角を持ち上げるが、
凍てつく視線は真っ直ぐに相手を見つめたまま、なんとか優しい声音を保ちながら更に追い詰めるように言葉を続け。
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【千星 那由多】
巽の口から日当瀬と三木さんの名前が出た。
ますます俺のなかで動揺が広がる。
肩を持つ手に力が入ったのを感じ、少し痛かったがそれよりもこいつの表情の方が気になった。
巽の顔は笑ってるフリしてるけど、かなり怒ってる。
こんな表情は今まで一緒に居て見たことがない。
「…なんで日当瀬と三木さんが出てくんだよ…今の話にその二人は関係ねーだろ…」
本当のことを言えない歯がゆさと、嘘をついている自分に対して罪悪感が募る。
巽が肩を握っている手を振り払おうとしたが、俺の力では到底振り払えない。
「おまえ…何怒ってんだよ!」
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【天夜 巽】
「心配だからに決まってるだろ!!……ッ」
那由多が自分の怒りを分かってくれない事に俺は肩を掴んだ手で無理矢理此方を向かせ声を荒げてしまった。
何かが切れたように失った冷静さを取り戻そうとするがなかなか落ち着く事ができない。
「……悪いと思ったんだけど…この前那由多が倒れた時、保健室で携帯見たんだ。」
後ろめたさが無いわけでは無いので俯きながら告げる。
それからもう一度此方に向けた那由多の両肩を掴みながら視線を合わせ。
「……無理に入れられてるんだよね?なら、俺がどうにかするから、そんなとこ止めよう?」
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【千星 那由多】
正面に巽の顔がある、顔が近いとかそんなことより、こいつの「心配」してるって言葉が引っ掛かった。
いっつもこうだ、ちょっと危ないことしたら心配心配…
それは確かに嬉しいし俺が迷惑かけてんのも悪い。
だけどこいつの俺への過保護はたまに酷い時がある。
そんなことを考えていると、巽は俺の携帯を見たと言い出した。
保健室へ運ばれた日の日当瀬からのメールか。
すぐにメールに気づかなかった理由がわかった。
その時点で段々と巽に対しての苛立ちが募り始めていた。
「無理に入れられてる…?なんでお前にそんなことわかんの…?」
俺を見つめる巽の目が見れない。
「どうにかするとか…そういうお前の性格…………うっとーしいんだよ!!」
俺は怒りなのか悲しみなのかよくわからない感情で体が震えていた。
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【天夜 巽】
向き合った那由多から帰って来た言葉は俺が想像したものとはだいぶ違っていた。
先程までのおどおどしている那由多ではなく、怒りを露にしながら言葉をぶつけられた。
今までこんな事が無かった俺は那由多からの言葉に傷付き、更に怒りまでも増幅していった。
両肩を更に掴み直すと更に体を寄せ。
「鬱陶しいってなんだよ!!
俺は那由多の事を心配して言ってんだからな!!
兎に角、(裏)生徒会は直ぐに止めろ!!
どうせ日当瀬君か、副会長さんに弱みでも握られてるんだろ!!」
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【千星 那由多】
掴まれた両肩がじんじんと痛む。
どこまでバカ力なんだよこいつ。
ぐっと近づいた巽の顔は俺の言葉で更に怒りを増していた。
こいつ怒ると余計に距離が近づくんだな、なんてどこか冷静な自分がいたが、俺もここまで言われては黙っていられなかった。
「ってぇな………お前なんにも知らないだろ!!勝手なこと想像して勝手なこと言うな!!
それに…日当瀬や三木さんをバカにすんな!!おまえがあの二人の何知ってんだよ!!
どうせ(裏)生徒会のことだって悪い噂しか聞いてねーんだろ!!」
もうこの時点で(裏)生徒会のことは隠すつもりもなかったし、巽に対しても怒りの感情しかないことに気づいていた。
「…痛いからいい加減手ぇ離せよ!!!…俺のやることに口出すな!!!それに…(裏)生徒会は………辞めない!!!」
数週間前の俺では、絶対にこの言葉は出てこなかったと思う。
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【天夜 巽】
「な!!!何でだよ!!何で分かってくれないんだよ、那由多!!」
掴んだ肩を小さく前後に揺する。
痛いと言う声が聞こえるとハッとして両手を離し。
自分の横でその震える手を握り締め、視線を逸らした。
「(裏)生徒会は危ないこと沢山してんだろ…!?
おまえが身を削ってまで、アイツ等に尽くさなくたって…
それに、お前じゃ無くても構わないじゃないか!!」
どうして、俺の言うことをきいてくれない。昔はこんなことは無かった。
俺の頭はそればかりを考え、那由多を軽んじる言葉をゆっくりと刻んだ。
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【千星 那由多】
巽が離した肩を摩りながら、目を逸らした巽をじっと見据える。
なんでこんなことになってんだよ…!
さっき言ったことは後悔はしてない。
巽が俺を心配してくれているのも本当はわかっている。
だけど…だけどやっぱり今日の俺は今の巽を許せなかった。
いつもと違う巽を見て動揺はしていたが、怒鳴ってばかりじゃダメだ。
落ち着くために深く息を吐いた。
「…わかってないのはお前の方だろ…。
危ないことをする時だってある、でもそればっかりじゃない。
それに、俺じゃなくてもいいのかもしれない、だけど、今は(裏)生徒会の一員でいたい」
どうして(裏)生徒会にいたいと思ったのか。
自分でもよくわかっていなかった。
巽が言うことに反発してるだけなのか、それとも本当に自分の意思なのか。
けど、今はもっと(裏)生徒会で色々な世界を知りたい。
何かをやりたいなんて、生まれて初めて思ったよ。
「……これ以上言うとお前にももっと迷惑かかるから……もう帰れ…」
俺は床に置いてある巽の鞄を手に取り、俯いている巽の腕にぐっと押しつけるようにして渡した。
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【天夜 巽】
「……ッ!!那由多のわからず屋!!絶対、止めさせるから!!」
帰れと言われたのが余程ショックだったのか、その後の事は余り覚えて居ない。
気が付くと鞄を手にトボトボと自分の家への道を歩いていた。
那由多はもう、俺が知っている那由多では無かった。
きっと(裏)生徒会が那由多を変えてしまったんだ。
俺が知っている那由多は俺にあんなこと言わない。
俺が知っている那由多はあんなに一つの事に固着しない。
俺が知っている那由多は俺を傷つけたりしない。
なぜ…なぜ…なぜ…
いや、那由多が悪いのではない、悪いのは(裏)生徒会だ。
(裏)生徒会なんて無くなればいいんだ。そうしたらきっと俺と仲が良かった頃の那由多が戻ってくるに違いない。
そうだ、悪いのは(裏)生徒会だ。
「待ってて、那由多。絶対救うから」
すっかり暗んだ空の下、那由多の家があるほうを見つめながらそう呟いた。
次の日、俺はアンチ(裏)生徒会の組織に入隊することとなった。
今日もいつもどおり部活を終え、すっかり暗くなった道程をとぼとぼ歩く。
最近は部活中でも授業中でも那由多の事ばかり考えている。
今だってそうだ。
那由多の睡眠不足は相変わらず解消されて無いみたいだし、生傷も絶えない。
今日だって顔に絆創膏を貼っていた。
どうやったら顔に怪我するんだろ。
那由多がいくらドジだからと言って早々顔なんて怪我できない。
那由多に聞いてもはぐらかされるし、日当瀬くんを見ていても用心深いのか尻尾を出す事はしない。
そんなこんなで八方塞がりな俺は大きな溜息を吐いた。
「良いことを教えてやろうカ?」
「…っ!!誰だ!!」
急に細い横筋から聞こえる声に俺は身構えた。
ゆっくりとした小さな足音が聞こえる、すると俺の前に小学校低学年位の小さな金髪の男の子が現れた。
「ボクの名前はセーマ。オニィチャンが気になってるのは、千星那由多?」
「何物なんだ…君は…」
図星。まるで頭の中を読まれたような言葉に俺は更に警戒を強くするが、その小さな男の子はニコニコ笑って居るだけだった。
「あ、怪しいものじゃないヨ。…十分怪しいか…。
ま、いいや!取り敢えず、多分、オニィチャンの味方ダヨ?
千星那由多。カレの情報を教えてあげル。
正直邪魔なんだよね。カレが(裏)生徒会にいるの。」
「(裏)生徒会?」
「ウン。(裏)生徒会。
因みに秘密の部室は実習棟から繋がってルみたい、マダ、場所までは特定出来てないケド。
(裏)生徒会の情報は学校にたくさん転がってるカラ、オニィチャンなら余裕で見つけられるんじゃないかナ。
取り敢えず…危ない仕事なのはタシカだから。」
「危ない…?」
「うん。勿論、信じる信じないはオニィチャンの勝手だけど、カレ、このままあそこに居たらシンジャウと思うな…。
あ、時間だ行かなきゃ…またね、オニィチャン。」
「ま、待って!!!君は?(裏)生徒会って!?……っ、いっちゃった…」
男の子は瞬く間にその場から姿を消してしまった。
那由多の事を詳しく知ってそうだったのでガックリ肩を落としたが。
その子から貰った(裏)生徒会と言うワードを自分で調べてみることにした。
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【千星 那由多】
ここ最近は(裏)生徒会の任務も落ち着いていて、風紀委員の時のように武器を使う任務はまったくなかった。
でもまぁたまにイデアアプリ解いておかないと次あんなことになったら大変だしな、と一人になった暇な時は起動するようにしている。
ちょっとコツは掴めてきている・・・ような気もする。
6時限目の社会の授業、先生の話をかるーく聞きながら、俺は物思いにふけっていた。
嫌々始めた(裏)生徒会だったけど、思えばけっこう俺頑張ってるよな。
なんか最近は任務をやることもあまり苦じゃなくなってきたし、楽しい時もたまにある。
まぁイデアのスパルタだったり変な任務の時は辞めたいなって思うけど、それでもどこか充実している自分がいた。
意外とこういう高校生活もいいかもしれないな、なんて。
特殊な生活という体験が俺を少しは変えたのかもしれない。
まぁでも無理はしないでおこう。
最近親や巽も俺の変化に気付いてるみたいだし、あまり心配はかけられない。
それにこのことが周りにバレるようなことがあったら、(裏)生徒会自体にも迷惑がかかる。
その時は俺、書記クビになんのかな。
・・・・・・・・・つーか俺書記の仕事してなくね?
そうこうしている内にチャイムが鳴り、今日の授業は全て終了した。
今日も(裏)生徒会があるので日当瀬に呼びかける。
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【天夜 巽】
あれから俺は(裏)生徒会について調べてみた。
生徒会…表向きの生徒会と言ったほうがいいか。
その副会長の三木さんが(裏)生徒会にも絡んでいる。
実は(裏)生徒会では三木が会長だ。
姉が(裏)生徒会のせいで意識不明に追いやられた。
生徒から金を巻き上げてそれを資金源に動いている。
等、余りいい噂は耳にしない。
アンチ(裏)生徒会のような反対勢力もあるみたいだ。
しかし誰に聞いても(裏)生徒会のメンバーの名前は副会長の三木柚子由しか出てこない。
それもまた不思議な現象で、俺は頭を悩ませる。
調度ホームルームが終わった頃、また日当瀬君を誘いに行く那由多が視界に入った。
どうやら日当瀬君は日直の様子で、那由多の誘いを断ったようだ。
あの少年の言っている事が本当ならこのまま那由多は実習棟に向かうはずだ。
俺は気付かれないように那由多の後をつけた。
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【千星 那由多】
日当瀬に今日日直だから先に行っておいてくれと言われたので、(裏)生徒会室には先に一人で行くことにした。
思えば放課後はいつも二人で行動していたので、一人で(裏)生徒会室へ行くのは今日が始めてだ。
カバンの中に入れた実習棟の鍵を探しながら本舎を出て、実習棟への通路を渡る。
周りに誰もいないか確認をするために辺りを見回した。
放課後にもなると実習棟付近には人も少ないため、これもクリア。
ま、あんまりコソコソしない方が逆にいいって言われてるから、堂々と入ろう。
俺は実習棟に入り鍵をかけ、理科準備室にある(裏)生徒会室へと向かった。
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【天夜 巽】
どうやら那由多は後をつけている俺には気付かない様子で、一人で歩いていった。
明らかにその方向は校門では無く実習棟の方であり、俺は眉を潜めた。
柱の陰から顔を出して伺っていると那由多は辺りを軽く確認した後、そこに入っていった。
本来、実習棟は放課後は入れるものではない。なぜ那由多がこんなところの鍵を持っているかも謎だった。
少しして、那由多が消えた実習棟の扉を開けようとしてみたが矢張り開くことは無かった。
本当に那由多が(裏)生徒会に入っているならやめさせなければいけない。
そう考えながら俺はクラブに向かった。
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【千星 那由多】
(裏)生徒会の今日の任務は野球部が校外へ打ったボールが無くなっている原因を探る・・・
といったものだったのだが、結局これは野良犬が持って帰って遊んでいた、という結果だった。
たんまり溜め込んだボールを取り返すことはできなかったので、とりあえず事情だけ報告。
その犬の住処を探すのに苦労したので、終わった頃には19時を回ってしまっていた。
腹減ったなーなんて言いながら、日当瀬と共に自宅へと帰る。
こいつと一緒に帰るのもなんだか慣れてしまった。
家の門の前で日当瀬と別れると、家の中へと入る。
「ただいまー」と言いながら靴を脱いであがろうとすると、俺のとは違うローファーがキレイに並んでいた。
誰のだ?妹の友達・・・にしてはデカイな。
そう思った時に妹がリビングの方から現れて、「巽さん来てるよ!おにーちゃんの部屋にいる!」と嬉しそうに呼びかけてきた。
「巽・・・?」
こんな遅くに巽が来るなんて久しぶりだな。
今日は何か約束をしていただろうか、最近は巽もあまり絡んで来ないので学校でも話をする機会がなかったが、
何かあれば事前にメールや電話をくれるはずなんだけど。
少し不安な気持ちにはなっていたが、俺はそれを隠しながら二階の自室への階段を登った。
ドアを開けると青い小さなソファに巽がちょこんと座っていた。
「おー巽、どした?こんな遅くに?」
俺は鞄と携帯を勉強机に置き、上着を脱いでハンガーへとかける。
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【天夜 巽】
部活が終わった俺は真相を聞き出す為に那由多の家に向かった。
本当は自分の家も手伝わないといけないんだけど。
俺の母さんは居酒屋をやっていて女手一つで俺を育ててくれた。
母さん一人で大変だろうに結構好きにやらせてくれてる。
そんな事を考えていたら那由多の家に着いた。
チャイムを押して出てきたのは那由多のお母さんで、那由多はまだ帰って来てないらしい、お母さんの言葉に甘えて部屋で待たせて貰う事にした。
那由多の部屋の時計を確認すると、もう時間は19時を過ぎている。入口でお母さんに伺ったところ最近は毎日遅いらしい。
那由多は基本めんどく下がりやなのでこんな時間まで何かをすることはない。
クラブや部活だって今まで帰宅部に近い、活動が少ないものしか入った事が無い。
そんな那由多が本当に(裏)生徒会に入っているなら、それはきっと無理矢理させられてるにちがいない。
俺は那由多の部屋にあるソファーに腰掛けて待っていると、直ぐに階段の音が聞こえて那由多が入ってきた。
「那由多こそ、お疲れさん。」
いつもと同じような那由多の対応に、小さく苦笑を零す。
それから椅子に腰掛けて、手を組み、肘を膝に乗せて格好のまま俯き、親指通しをこすり合わせる。
それから意を決したように那由多を見つめながら唇を開く。
「今日の放課後、実習棟でなにしてたの?」
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【千星 那由多】
調度勉強机の椅子に腰をおろした時、巽から思わぬ質問が飛んだ。
実習棟でなにしてたの…?
「え…?」
俺は思わず巽の方へと目を向け聞き返したが、巽の目が本気だったため、すぐに目を逸らしてしてまった。
どういうことだ?
実習棟に行ったことバレてる?
見られてた?
あの時の情景が頭にぐるぐる回ったが、それより今はこの質問に対しての言い訳をしなければならない。
目を合わせると巽には嘘だとバレてしまうため、俺は机に置いた鞄の中身を出しながら、返事をする。
「あ~ちょっと、帰り際に先生に頼まれ事されて、なんか実験室に荷物忘れたとかなんとかでさ…その後も色々手伝わされちゃって…」
こういう時の巽はうまくかわせる気がしなかったが、俺はなるべく冷静に嘘をついた。
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【天夜 巽】
那由多が俺の目を見ずに視線を逸らした。
これはきっと嘘を言っているに違いない。
那由多は余りうまく嘘を吐けるタイプではない。
俺に嘘までつかなくちゃいけないなんて、何か弱みでも握られているのか?
俺はソファーから立ち上がり、こちらに背中を向ける那由多の右肩を左手で軽く握りこんだ。
「(裏)生徒会って何?」
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【千星 那由多】
巽の左手が俺の右肩に触れて、「(裏)生徒会」の名前が出た時一瞬びっくりしたが、なるべく冷静に対応できるように自分を落ち着かせる。
こういう状況には慣れてないから、すぐにテンパり癖が出てきてしまう。
きっとどこかで(裏)生徒会のこと調べたんだ。
完全に嗅ぎつけられてる。
さっきのも嘘だって完全にバレてるし…。
冷静になるようにと落ち着かせようとしたのが逆に仇となったのか、俺の心拍数はどんどん増していった。
(裏)生徒会の存在がバレてしまってはこいつも記憶操作されてしまうし、色んな部分で巻き込んでしまう。
それだけは絶対にイヤだ。
俺は視線をまだ逸らしたまま答える。
「(裏)生徒会?…ああ、なんか学校で噂の?俺に聞いてどうすんの?知らないし」
なんとかひきつる顔を笑わせてごまかすが、巽の目は未だに俺を見つめていた。
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【天夜 巽】
「那由多。ちゃんとこっち見て?」
肩を掴んだだけでも那由多の動揺が分かる。
どうして、自分に嘘を吐くかが分からなくて自然に眉は寄り、肩を持つ手に力が入ってしまう。
「那由多が、話してくれないなら、日当瀬君に聞いたほうがいい?ああ、副会長の三木柚子由。彼女でもいいかな?」
自分の顔はちゃんと笑えているだろうか、口角を持ち上げるが、
凍てつく視線は真っ直ぐに相手を見つめたまま、なんとか優しい声音を保ちながら更に追い詰めるように言葉を続け。
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【千星 那由多】
巽の口から日当瀬と三木さんの名前が出た。
ますます俺のなかで動揺が広がる。
肩を持つ手に力が入ったのを感じ、少し痛かったがそれよりもこいつの表情の方が気になった。
巽の顔は笑ってるフリしてるけど、かなり怒ってる。
こんな表情は今まで一緒に居て見たことがない。
「…なんで日当瀬と三木さんが出てくんだよ…今の話にその二人は関係ねーだろ…」
本当のことを言えない歯がゆさと、嘘をついている自分に対して罪悪感が募る。
巽が肩を握っている手を振り払おうとしたが、俺の力では到底振り払えない。
「おまえ…何怒ってんだよ!」
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【天夜 巽】
「心配だからに決まってるだろ!!……ッ」
那由多が自分の怒りを分かってくれない事に俺は肩を掴んだ手で無理矢理此方を向かせ声を荒げてしまった。
何かが切れたように失った冷静さを取り戻そうとするがなかなか落ち着く事ができない。
「……悪いと思ったんだけど…この前那由多が倒れた時、保健室で携帯見たんだ。」
後ろめたさが無いわけでは無いので俯きながら告げる。
それからもう一度此方に向けた那由多の両肩を掴みながら視線を合わせ。
「……無理に入れられてるんだよね?なら、俺がどうにかするから、そんなとこ止めよう?」
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【千星 那由多】
正面に巽の顔がある、顔が近いとかそんなことより、こいつの「心配」してるって言葉が引っ掛かった。
いっつもこうだ、ちょっと危ないことしたら心配心配…
それは確かに嬉しいし俺が迷惑かけてんのも悪い。
だけどこいつの俺への過保護はたまに酷い時がある。
そんなことを考えていると、巽は俺の携帯を見たと言い出した。
保健室へ運ばれた日の日当瀬からのメールか。
すぐにメールに気づかなかった理由がわかった。
その時点で段々と巽に対しての苛立ちが募り始めていた。
「無理に入れられてる…?なんでお前にそんなことわかんの…?」
俺を見つめる巽の目が見れない。
「どうにかするとか…そういうお前の性格…………うっとーしいんだよ!!」
俺は怒りなのか悲しみなのかよくわからない感情で体が震えていた。
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【天夜 巽】
向き合った那由多から帰って来た言葉は俺が想像したものとはだいぶ違っていた。
先程までのおどおどしている那由多ではなく、怒りを露にしながら言葉をぶつけられた。
今までこんな事が無かった俺は那由多からの言葉に傷付き、更に怒りまでも増幅していった。
両肩を更に掴み直すと更に体を寄せ。
「鬱陶しいってなんだよ!!
俺は那由多の事を心配して言ってんだからな!!
兎に角、(裏)生徒会は直ぐに止めろ!!
どうせ日当瀬君か、副会長さんに弱みでも握られてるんだろ!!」
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【千星 那由多】
掴まれた両肩がじんじんと痛む。
どこまでバカ力なんだよこいつ。
ぐっと近づいた巽の顔は俺の言葉で更に怒りを増していた。
こいつ怒ると余計に距離が近づくんだな、なんてどこか冷静な自分がいたが、俺もここまで言われては黙っていられなかった。
「ってぇな………お前なんにも知らないだろ!!勝手なこと想像して勝手なこと言うな!!
それに…日当瀬や三木さんをバカにすんな!!おまえがあの二人の何知ってんだよ!!
どうせ(裏)生徒会のことだって悪い噂しか聞いてねーんだろ!!」
もうこの時点で(裏)生徒会のことは隠すつもりもなかったし、巽に対しても怒りの感情しかないことに気づいていた。
「…痛いからいい加減手ぇ離せよ!!!…俺のやることに口出すな!!!それに…(裏)生徒会は………辞めない!!!」
数週間前の俺では、絶対にこの言葉は出てこなかったと思う。
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【天夜 巽】
「な!!!何でだよ!!何で分かってくれないんだよ、那由多!!」
掴んだ肩を小さく前後に揺する。
痛いと言う声が聞こえるとハッとして両手を離し。
自分の横でその震える手を握り締め、視線を逸らした。
「(裏)生徒会は危ないこと沢山してんだろ…!?
おまえが身を削ってまで、アイツ等に尽くさなくたって…
それに、お前じゃ無くても構わないじゃないか!!」
どうして、俺の言うことをきいてくれない。昔はこんなことは無かった。
俺の頭はそればかりを考え、那由多を軽んじる言葉をゆっくりと刻んだ。
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【千星 那由多】
巽が離した肩を摩りながら、目を逸らした巽をじっと見据える。
なんでこんなことになってんだよ…!
さっき言ったことは後悔はしてない。
巽が俺を心配してくれているのも本当はわかっている。
だけど…だけどやっぱり今日の俺は今の巽を許せなかった。
いつもと違う巽を見て動揺はしていたが、怒鳴ってばかりじゃダメだ。
落ち着くために深く息を吐いた。
「…わかってないのはお前の方だろ…。
危ないことをする時だってある、でもそればっかりじゃない。
それに、俺じゃなくてもいいのかもしれない、だけど、今は(裏)生徒会の一員でいたい」
どうして(裏)生徒会にいたいと思ったのか。
自分でもよくわかっていなかった。
巽が言うことに反発してるだけなのか、それとも本当に自分の意思なのか。
けど、今はもっと(裏)生徒会で色々な世界を知りたい。
何かをやりたいなんて、生まれて初めて思ったよ。
「……これ以上言うとお前にももっと迷惑かかるから……もう帰れ…」
俺は床に置いてある巽の鞄を手に取り、俯いている巽の腕にぐっと押しつけるようにして渡した。
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【天夜 巽】
「……ッ!!那由多のわからず屋!!絶対、止めさせるから!!」
帰れと言われたのが余程ショックだったのか、その後の事は余り覚えて居ない。
気が付くと鞄を手にトボトボと自分の家への道を歩いていた。
那由多はもう、俺が知っている那由多では無かった。
きっと(裏)生徒会が那由多を変えてしまったんだ。
俺が知っている那由多は俺にあんなこと言わない。
俺が知っている那由多はあんなに一つの事に固着しない。
俺が知っている那由多は俺を傷つけたりしない。
なぜ…なぜ…なぜ…
いや、那由多が悪いのではない、悪いのは(裏)生徒会だ。
(裏)生徒会なんて無くなればいいんだ。そうしたらきっと俺と仲が良かった頃の那由多が戻ってくるに違いない。
そうだ、悪いのは(裏)生徒会だ。
「待ってて、那由多。絶対救うから」
すっかり暗んだ空の下、那由多の家があるほうを見つめながらそう呟いた。
次の日、俺はアンチ(裏)生徒会の組織に入隊することとなった。
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