あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

庭からDT

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【三木 柚子由】


ピンポンパンポン

IKKIのLunch break!!!バーン☆

ちわー!! 今日もDJ IKKIによるLunch break始まるゼ☆

そうそう!!
まずは皆さんにお知らせ?!!
二階の一番奥の開き教室!!
知らない子はイイケレド…
知ってる子はキヲツケテ☆ 

この前、科学の先生が!!
なーんと。
実験に失敗!?
教室がドロドロなってるよ!

ちゃんと実験室でしてって感じ!?

名誉の為にも、てんてぇの名前はひ・み・つ☆

以上お知らせでした☆


それじゃ、リクエストにいっきます!!


~♪



いつもの通り昼休みはDJ IKKI、放送委員長の万葉一輝くんの声で始まる。
チャラチャラして嫌いという人も居るけれど、皆を元気にしてくれるこの放送は私は嫌いじゃない。

今日はお願いした、先日の風紀委員との抗争でめちゃくちゃになった空き教室の情報操作をしてくれたみたい。




そして放課後。
今日の任務は「変な声が聞こえるからどうにかして欲しい」だった。

場所が沢山あってどこから聞こえるかは日によって違うみたい。

取り敢えず、私は「校舎裏とプール裏」
千星君と日当瀬君は「トイレと屋上」最後に中庭で合流することになっていた。 


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【千星 那由多】


体中が痛い・・・。
肩から腕、腰から足・・・もう全体的にとにかく痛い!

昨日の任務は無事(?)に終了し、俺は放課後新しい任務で日当瀬と学校中のトイレを巡り歩いていた。
俺は筋肉痛で歩くのも遅いため、日当瀬はゆっくりと横を歩いてくれている。
階段の上り下りの時は、心配そうに「止まりましょうか?」と言ってくれたが、俺は大丈夫と足腰に鞭を打って歩き続けた。
ああいう任務の後は休みにしてほしいというのが本音だけど、そこんとこイデアは容赦ない。 

早く来い来い日曜日・・・。



今回の任務は「変な声が聞こえるからどうにかして欲しい」とかいう曖昧な内容だった。

特定できる場所がないので、こうやって割り振ってうろついているわけだが、今のところ本舎のトイレはほぼ全滅だった。


「日当瀬、変な声ってなんだと思う?・・・オバケとか・・・?」

俺は横にいる日当瀬に質問をした。 


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【日当瀬 晴生】


「大丈夫ですか?イデアアプリは身体能力を最大限まで引き上げますからね。俺も最初そんな感じでした。」 


イデアアプリを起動させると身体能力があがる。
それは身体のリミッターを外しているからであるので、翌日凄い筋肉痛に襲われる。

まぁ、筋トレする手間が省けていいんだけど。

俺も始めは凄かったけど、だいぶ身体能力が向上したのか、向上の度合いが緩やかになったのか、体が慣れたのか、何れにせよ昔よりはマシになった。 


校舎内は全滅だったので次は屋上へと向ったがそこも爽やかな風が吹くだけで何もなかった。


「なんでしょうね…。凄い音痴が歌っているとか……。」


変な声か。
おばけならおばけで見てみたい気もするけど、全く想像がつかねぇ…。

千星さんに合わせて歩調を緩めながら次は外のトイレを回るために下駄箱を空けると何通かの手紙が落ちてきて俺は溜息を溢した。 

それを無造作に自分のポケットに突っ込むと何事も無かったように千星さんと自分の靴を並べる。 


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【千星 那由多】


下駄箱の少し離れた所で靴に履き替えていると、日当瀬の靴箱からなにか落ちたのがわかった。
溜息を付きながらポケットにその何かを突っ込む姿を見て俺はピンと来た。


「もしかして・・・ラブレター?」


少しにやにやしながら日当瀬の膨らんだポケットに目をやった。
日当瀬はこんなのいらないのにと言うような顔をしながら曖昧に返事をする。

まぁこいつモテそうだしな。
実際クラスの中だけでも女子の目はこいつに対して全然違うのがわかるし、顔は見た通りのイケメンだし・・・
まぁ周りに対しての態度はアレだけど。
その態度が俺に対する態度と同じであったら、モテモテどころではないような気もする。

世の中は不平等だ!!

「ヒュ~モテモテ~」

少しやっかみも含んでいたが、からかってやろうと日当瀬の腕を指でつついた。

「つーかおまえそんだけモテんなら彼女とかいるんじゃないの?」

俺たちは靴に履き替え終わると、校外へと向かった。 


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【日当瀬晴生】


「もしかして・・・ラブレター?」



まさか千星さんに突っ込まれると思って無かった俺は靴を履きながら数度瞬いた。
囃し立てるようにつつかれると先程ラブレターを突っ込んだポケットに視線だけ向けて小さく苦笑する。


「そうなんですよ。
なんといいますか、俺全然興味無くてですね…。
それに女つーと思い浮かぶのが、姉貴か義母になるんで…。
全くいい思い出も無いと、いいますか。」


自分の身内女二人を思い出すだけでどこかげんなりとしてしまい。
大きく溜息を吐く。


先程までと打って変わって心配しているような顔を見ると小さく笑みを返し。

「大丈夫っすよ。もう会うことも殆ど無いと思いますし。
取り敢えず、今は興味無いのでお断りしてます。」

だいたい名前も書いてないものが多いので放置になるのだが。



そうこうしているうちに運動部が練習しているグラウンド、その横のトイレが見えてきた。 


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【千星 那由多】


少しからかってやろうと思っていたら、思わぬ日当瀬の過去を掘り返してしまった。

詳しくはわからないけど、こいつはややこしい家庭で育ってきてるのは確かだった。
あまり思い出したくなさそうだったので、茜の任務の時以降そういうことには触れないでおこうと思ってたんだが・・・。

「そ、そうか・・・」

俺がしゅんとしているのに気がついたのか、日当瀬は気を遣って笑ってくれた。

過去の出来事のトラウマで、こんなイケメンなのに青春を楽しめないのはかわいそうだな。
いつか日当瀬は乗り越えることができるんだろうか?
そしたらこいつは色んな意味で最強になる気がする。 


グラウンドの横を日当瀬と歩いていると、野球部やサッカー部、テニス部と言った運動部が部活に励んでいた。
おーおーみんな頑張ってんなー俺絶対無理ー、とサッカー部に目をやると見慣れた顔を発見。

「あ、巽だ」

あいつ今日はサッカー部か、なんて思って見ていたら見事にシュート。華麗にゴールを決めていた。
その時に俺に気付いたのか、あいつが少し飛び跳ねながら手を振ったのが見えた。
それと同時に数人の生徒がこちらを向いたので、恥ずかしかったが軽く手をあげておいた。

どこにいても俺を見つける機能かなんかついてんのか、あいつは。集中しろ!!



グラウンドに沿って歩いて行くと、外のトイレがある。
俺たちはそこを一通りぐるりと回って男子トイレの中を確認するが、結局ここにも何もなく、運動部が部活に励む声しか聞こえなかった。 


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【天夜 巽】


調度ボールをゴールに蹴り付けた瞬間、視界の端の那由多が映った。

那由多は恥ずかしがり屋で大きくアピールしないと気付いていても気付いていない振りをされるので、
俺はピョンピョンと飛び跳ねながら手を振ったら、手を振り返してくれた。 
それが嬉しくて振り続けていたら、目立つのが嫌な那由多は行ってしまった。

周りのチームメイトが「なになに」と、言い始めたのだが再開のホイッスルがなったので、「友達!」っと言っておいた。 

ボールを追い掛けながら那由多の背中に視線を向ける。
また、横に居たのは日当瀬だった。
昔はあそこには俺がずっとはりついていたのに。


不意に頭を過るよこしまな思考振り払うように、ボール目がけてスライディングした。 


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【日当瀬 晴生】


千星さんの声と視線の先には幼なじみと言っていた、天夜の姿があった。

あんな奴のなにがいいんだろ。
つーか、なぜか奴は気に食わねぇ。
なんつーか、これだけ突き放してんのに俺にまで話し掛けてくる態度は変わらねぇしな。


そう思っていると千星さんが歩き始めてしまったので自分も後を追う。
結局ここもハズレでゆっくりと中庭に向かって歩き始める。 


「ったく。誤情報じゃねぇよな…」

「おつかれ!晴生!」


ポケットに手を突っ込みタバコを吸いたくてウズウズし始めた体をいなすようにポケットの中でライターを弄っていると後方より聞き覚えのある声がした。


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【夏岡 陣太郎】


あー図書室で太一と話ししてたら長引いた・・・。
まぁほとんど俺の独壇場で気付いたらこんな時間になってだだけなんだけど。
このままじゃバイトに間に合わないと思い急ぎ足で校門へと向かっていたら、見慣れた金髪頭が横を通りすぎるのがわかった。
その隣にはパーマの男子がいた。

おっ、もしかして!


「おつかれ!晴生!」


すれ違ったことに気付かなかった晴生に後ろから声をかける。
すぐさまこっちを見た晴生のこの笑顔、久々だな~。

「今任務中?真面目にやってんな~!偉いぞ!!」

晴生の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、照れくさそうにやめてくださいよ、と笑った。
その横にいるパーマの男子が一歩引きながら俺を見ていた。

「もしかして君が千・・・千・・・星君?!晴生が世話になってんなー!
俺夏岡陣太郎!もしかしたらみんなから聞いてるかもしれないけど、元(裏)生徒会会長でーす!」

ずいっと千星君と思われる男子に詰め寄り、勝手に手を握って力強く握手をした。
彼がいでででっと痛そうな声を上げたので、ごめんごめんとすぐに手を離す。
「いやーなんかいい人そうで安心したよ!なんか今の(裏)生徒会怖いじゃん?
晴生うまくやってけんのかなーって心配しててさー!
こいつこんな性格だろ?素直じゃないっつーかなんつーか!でも顔に似合わずけっこう――――」 

俺のマシンガントークが花を咲かせ始める。 


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【日当瀬 晴生】


「も、やめてくださいよ、夏岡さん!」


彼は元(裏)生徒会長の夏岡陣太郎さん。
俺はこの学院で尊敬するもう一人の方に出会えて自然に顔が綻ぶ。
いつものように頭をクシャクシャに撫でられると、なんつーか、顔を隠すようにセットしている髪が乱れてしまい、小さく苦笑する。 
でも全く悪い気はせずに笑みのまま相手を見つめた。

しかし、今は人気が無いと言え(裏)生徒会と連発し始める夏岡さんの口を慌てて塞ぎ。


「ちょ!!夏岡さん!!そんないっぱい口にしないで下さい。誰も居ないとは故、いつ人がくるか…!!
それに、現会長を選んだのはあなたでしょ?」

最後の部分はヒソヒソと相手の耳に言葉を千星さんに聞こえる程度に投げ掛けた。

「でも、久しぶりに会えて嬉しかったです。
またいつでも誘って下さい。」 


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【千星 那由多】


晴生?・・・ああ日当瀬のことか・・・って日当瀬を名前で呼ぶ猛者が!?
俺と日当瀬が声の方へと振り返ると、そこには短髪で赤茶色の髪の男が満面の笑みで立っていた。

その二人のやり取りを一歩引いてみていると、どうやらこの人はもしかしたら三木さんや日当瀬が言ってた「夏岡」という人物かもしれない。 

その男が日当瀬の頭をぐしゃぐしゃと撫でた後、俺の方へと近づき無理矢理握手をして自己紹介をする。
やっぱり夏岡・・・


「いでででっ!」


俺の筋肉痛で痛んだ腕が更に痛み、思わず声をあげてしまった。
その後も彼はベラベラと一人ごとのように喋り、ついには日当瀬に口まで塞がれてしまっていた。
なんだこのコントは。

日当瀬を手なずけるぐらいの人だから、どんな怖い人かと思っていたけど・・・普通・・・いや、普通よりけっこううるさい感じの人だったのにはビックリだ。 
それに日当瀬もすごく嬉しそうだし。
なんか俺以上にこの人のこと尊敬してるんだなと思うと、少し寂しいような気もした。

口を塞がれていた夏岡…先輩は少しだけ声のボリュームを小さくして喋る。

「あはーごめん!俺声でかくてよく怒られんだよな!
ま、あいつ選んだのは俺自身だけども、あいつなんかこえーじゃん!
昔あいつが食ってたケーキ一口貰ったら、ニコニコ笑ってたんだけどいつの間にか知らない場所にいてさーいやーまいったまいった!
千星くんも気をつけてねー!で、なんの任務してんの?」 


現会長のことを言っているんだろうか?
俺は会ったことがないからわからないが、話を聞いていると、今の(裏)生徒会の会長はこの人とは違う人種なんだなと感じた。 


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【日当瀬 晴生】


いつものように楽しくお話しして下さる夏岡さん。
なんだか俺も楽しくなって聞いていると、自然と表情が緩んだ。


流石、夏岡さん、あの会長のケーキを食うなんて俺にはできません。
目をキラキラと輝かせながら夏岡さんの話を聞いていると、任務内容を聞かれたので任務中だった事を思い出したように目を丸くする。 

「あ。“変な声が聞こえるからどうにかして欲しい”って任務なんです。
でも、千星さんも俺も“変な声”ってのが全く検討つかなくて…。夏岡さんわかりますか?」


そう言うと。
夏岡さんは腕を組んで一度押し黙ったがそれから何か閃いたように表情を明るませた。


流石、夏岡さん!


と、思ったんだけど。
俺と千星さんを交互に見つめた後、困ったように笑みを浮かべた。

「それって君たち二人で?」

「いえ、三木も探してます。」

「あー、柚子由ちゃんが居るなら大丈夫かな…。最悪会長が動くだろうし…。
ま、頑張って!見つけてもそんなに驚いちゃ駄目だよ?
世の中にはいろんな人がいるからね!!
あ、ヤバイ!!バイトだったんだ。それじゃあ、またね。お二人さん!」


そういうと俺達の頭をくしゃくしゃ撫でてから校門へと走っていった。
相変らず頼りがいがあるその背中を見つめ俺は手を振った。 


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【千星 那由多】


生まれて初めて男に頭撫でられたよ・・・。
天パが更にぐしゃぐしゃになってしまったので、手で直しながら、嵐のように去って行った夏岡先輩を見送る日当瀬の背中を見ていた。 
うるさい人だったけど、この任務のこと聞いただけで勘付いたってことは、やっぱり鋭い人なんだろうか。
ちょっと苦手なタイプだけど、皆に慕われそうな雰囲気は感じられた。

つーか・・・俺なにも喋れてない・・・。


「なんか、色んな意味で意外だった」

俺は手を振る日当瀬より先に、筋肉痛の重い足をゆっくり中庭へと足を進める。
あんなタイプと俺ではまったく違う気がするのに、日当瀬が俺に懐くのはやっぱり何か未だによくわからなかった。

日当瀬はそんな俺の言葉の意味がわからなかったみたいだけど、まあいいや。


また今度夏岡先輩に会った時は、ひとことでもいいから喋らないといけないな。



そうして俺達は中庭へと到着。
愛輝凪高校はだだっぴろいからいくつか庭園みたいなものがある。
そして、この庭園は生徒達には中庭と呼ばれている。
花や植物がたくさん植えられていて生徒達の憩いの場にもなっているが、放課後となるとあまり人気もなかった。
道成りに歩いてバラのアーチをくぐったところで、何かが聞こえてきた。

「日当瀬、聞こえる?」

俺の言葉に日当瀬が静かに頷くと、足を止めてその声のする方へとゆっくりと向かった。
その声は木々が生い茂った中庭の奥の方から聞こえてきていた。


「・・・・・・・っ・・・・ぁ・・・・・・・ぁ・・・・・・・・」


なんだ?人の声か?あんまりよく聞こえない。 


----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


嵐のように夏岡さんは行ってしまった。
いつも思うけど家族の為に働く彼は凄いと思う。


「そうなんですか?あ、そう言えば夏岡さんもイデアアプリ解くの苦手でしたよ、千星さんと一緒ですね。」



中庭に着き、進んでいると不意に何かが聞こえた。

「はい。ここがビンゴのようですね。」

そう告げると更に声らしきものが聞こえる方へと歩みを進め。


「あ………は、……ぇ?……もぅ?」


聞こえるのは女の声?
俺は息を潜め千星さんに目配せし中腰になりながら進んでいく。
現場は近づいてきた様子で少し鮮明に声が聞こえはじめた。

俺は一番その現場から近い、身を隠せそうな木にぺったりと張りついて、千星さんを呼び、ヒソヒソと話す。


「先に覗きます。後、頼みますね。」

そういって木から顔を出した俺はそのまま固まってしまった。
…顔を真っ赤にして。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


先に覗いた日当瀬が覗いたまま暫く反応がない。

「日当瀬?」

小声で名前を呼ぶと、体をビクつかせサッとこちらに体勢を戻した。
なんだ?なんかヤバイことでもあったか?
まだ固まっている日当瀬の表情が前髪でわからなかったので、覗き込むと・・・顔が真っ赤だった。

「え・・・なに・・・なんなの・・・」

こんな日当瀬の表情は見たことがないってくらい耳まで真っ赤で、俺はあちらで何が起こっているのかわからないでいた。
ちょっと怖かったが日当瀬は何も喋らないので、俺も反対側から顔を覗かせた。



そこには半裸の男女が二人寝そべっていた。
寝そべっていた、というより男が女の上に乗っかって執拗に腰を振っている感じ。
その光景はリアルAVだった。
この場合のAVはもちろんアニマルビデオではない。



「・・・・・・!!!!!」

俺は思わず声をあげそうになったが、自分の手で口を塞ぎ元の体勢に戻る。
口を押さえていた手から、自分の顔が熱くなっていくのがわかった。

やばいやばいやばい。俺こんなの生で初めて見た・・・!
つーかこんなとこでヤんなよ!!!!!!


「もうちょっと・・・・・・あっ・・・ダメッ・・・ぁたしも・・・っ」 


うわああああああああああああああああ!!!
俺は口を塞いでいた手を離し、次は耳を思い切り塞いだ。

・・・実を言うと俺は童貞だ。
彼女はいたがそんなことは一切起こらなかったし、そこまでこういう行為に興味もなかった。
だからこういうのは見慣れてないというか・・・なんというか・・・。
いや!俺のことはどうでもいい!
それより隣にいる日当瀬が固まったゆでだこ状態なのをどうにかしないといけない。




----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


「ん。……俺も……く……―――――――はッ。」


「あっ!!あぁっ!!激しいッ、はげしいよぉっ!!ハルキッ!!ぁああああアッ!!」



慌てて木の後ろに戻ったが二人の行為は最終段階に達したようだ。

つーか、こんなとこですんなよ!!
でかい声上げやがって。
そういう事は静かなムードの上でだなぁ…。
――――――ハルキ!?
しかも同名かよ!!
う、わ…やべ、千星さんがこっち見てる。


千星さんがこっち見てるのはきっとどうしたら良いかと言う問いかけだったんだろうけど。
もう、俺の頭はショートしちまって動かねぇ。
その場に立ち尽くしたまま耳まで真っ赤にして、一歩も動けなくなっちまった。

そうしているうちに二人の行為は終わったようで辺りがシン…と静まり返る。

勿論だからと言って俺のフリーズが解けるわけでは無いが。



「ダメです…」 



その時、どこからともなく三木の声が聞こえた。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


塞いでいた耳をも貫いて、女の最後を迎える声が聞こえた。
その端からハルキ・・・・・・なんて言葉を聞いてしまった俺は、一瞬噴出しそうになったがなんとか堪える。
どうしていいかわからず事が終わるまで日当瀬の事をおろおろと見ていたが、こいつもどうしていいのかわからないのか未だに顔を真っ赤にして固まっていた。 

そりゃあそう、だよな・・・。
こいつ女性経験無さそうだし、そもそもこんな現場見て堂々としてられる方がすごい。


カップルが静かになったようなので、俺は塞いでいた耳から手を離した。
その瞬間に、聞き覚えのある声が聞こえる。


ダメです…?


その声は三木さんの声のように聞こえた。
驚いた俺は再び木の向こう側へとゆっくり顔を覗かせた。



まさかな、と思っていたが、半裸のカップルの前に堂々と三木さんが突っ立ってカメラを構えていた。



勇者だ!勇者すぎる!!!
こういう非常時?に女性は強いと言うけれど、あの三木さんが俺達より先にあんな状態のカップルの前に登場するなんて思いもしなかった。 
絶対三木さんなら俺達同様あたふたすると思っていたんだが・・・。
おそろしや副会長・・・!


俺はその一部始終をまるでテレビの向こう側のような感覚で、目を見開きながら覗いていた。 


----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


声だけが聞こえる。
三木の声だ。

千星さんは果敢にも覗いているようだが俺はまだ固まって動けない。


「私は副会長の三木柚子由。
あなた達の行為は…えっと、これに記憶しました。
今回は厳重注意に留めますが、以降このような事を繰り返すようなら…。
この証拠を先生に渡し退学処分になります。」

三木がいつもより喋ってる…。
それもスラスラと、女はこんな生き物なのか…。

そう告げると先程まで行為を行っていた二人は着衣を整えるのも程々に「は、はい…!!」と、その場から立ち去っていった。


それから直ぐに三木も立ち去った様子だ。
俺はホッとしてこちらを見てくる千星さんに向かって苦笑を溢した。

「女って…怖いっすね…」

「う、…うん。」


何も出来なかった事を悔いながら三木を探しに歩き始めるとイデアさんから携帯に電話があり、そのままお開きになった。 


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【三木 柚子由】


あれ…。私…。



確か今日の任務は“変な声が聞こえるからどうにかして欲しい”と、言うものだったはず。
校舎裏とプール裏は特に変わった様子は無くて、合流地点へ行くとヒソヒソと男女の会話が聞こえてきたのでこっそり覗いてみたら…。 



そこから私の記憶は無くて気が付いたら(裏)生徒会の仮眠室で眠っていた。

仮眠室を出て見ると会長がソファーに腰掛けていた。


「起きましたか。柚子由。」

「あ、あの…」

「今回の任務はお前達には荷が重かったようなので僕が代わりに片付けました。
証拠写真は机の上にあります。
保管場所に片付けて置いてください。」

「あ、はい!!
その…。ごめんなさい。」

机の上にある、封をした写真に視線を落とした。
会長が出てきたと言うことは千星君達も任務に失敗したんだろう。
ちゃんと期待に応えられなかった事に落ち込んだ私に彼は紅茶を淹れてくれた。

「誰にでも、得手、不得手はありますからね。
柚子由はよくやってくれますよ。
紅茶、のみますか?」

そういうと彼は何時ものように綺麗に笑ってくれた。
長い白い指にソーサーに乗ったカップを差し出され、私は嬉しくなってそれに口を付けた。
それは私の好みの甘い紅茶で、温度も調度良くて自然に笑みが零れる。 



次の日、なんだか千星君も日当瀬君も私に対していつもより低姿勢で、昨日何かあったのかなとも思ったんだけど。
会長から、“柚子由の姿を借りた”と、言われたので黙っておく事にした。


そう言えば、「変な声」ってなんだったのかな。 





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