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isc(裏)生徒会
ギリギリの
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【千星 那由多】
俺は少しテンパっていた。
こういう任務は(裏)生徒会へ入ってから初めてのことだったからだ。
今まではしょっぼい何でも屋みたいな任務ばっかりだったけど・・・今回だけはいつもと違う。
昨日は大変だったがゆっくり休めたので一応体力は万全。自分の中で、だけれど。
俺は自分におちつけーおちつけーと心の中で念じながら、囮の三木さんを距離を開けて追尾していた。
今回の任務は匿名依頼の「風紀委員をギャフンと言わせてくれ」・・・だそうだ。
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昼休み、俺達は(裏)生徒会室に集まっていた。
新しい任務が入り、その作戦を日当瀬が机に手を付きながら指示をする。
「それじゃあ、作戦を言います。
今回の首謀者は風紀委員長の御神圭、その側近の鮫島修也、谷口衞。
まず、三木は一人になってくれ。それであのクソ三人組を引き摺りだす。」
「それから、この校舎二階の空き教室に誘い込む。ここでイデアさん、お願いします。」
日当瀬がイデアの方へと視線を送る、イデアは無表情で頷いた。
「三木は教壇に隠れてくれ。イデアさんは追い込まれた振り、
俺の予想では、薄暗いから、三木がイデアさんに変わった事は気付かない。
特にアイツは思い込みが激しい奴みてぇだし。」
「イデアさんに網が絡んだところで俺と、千星さんで空き教室に鍵を掛けて、退路を断つ……そっからは・・・」
淡々と作戦を伝える日当瀬と目が合い、こいつの目の色が変わっていることに気が付いた。
ギラギラと燃える闘志のような・・・日当瀬を初めて見た時のあのトラウマになりそうな眼付き。
不敵な笑いを浮かべる日当瀬はまるで悪魔の化身のようであった。
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あー怖い。何が怖いってアイツが怖い。
あの目は絶対「風紀委員皆殺し」って顔だった。
「ギャフン・・・だよ、ギャフン・・・」
そんなことを呟きながら身を隠すように走る。
三木さんが走っている後ろを、どうやら風紀委員が追いかけているみたいだが、生憎俺にはわからない。
奴等のひとりに「気配を消せる」能力?を持っている奴がいるらしい。
そういう能力ってのがなんなのかわからなかったが、昨日のあのハエタタキの網みたいな武器を持っているぐらいだ、
きっと何かしらスゴイ技術があるんだと思う。
三木さんが息を切らしながら実習棟の2階へ繋がる階段を登っていく。
俺も少ししてから辺りを確認しつつ三木さんを追った。
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【三木 柚子由】
「はぁ……はぁ、はぁ…」
一人になった途端にストーカーの気配を感じて、日当瀬君の作戦通りに動こうと必至に走った。
気配を消す能力者が居るみたいだけど、確かに少し離れたら分からない、
けれど近くまでくるとついてきているのがわかる。
千星君もちゃんと着いてきてくれているのでいつもより怖くないな、
と、思いながら階段を駆け上がり、予定どおりの空き教室に駆け込んだ。
私と同じ制服を着ているイデアちゃんに大きく頭を下げてから私は言われた通りの教壇に駆け込み精一杯息を殺した。
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【風紀委員長:御神】
あの女が一人きりになるチャンスを狙って、俺様達は再びあの女を捕まえるために尾行していた。
尾行、というよりもあの女を疲れ切るまで走らせて、また俺様のフライスウェイターで縛り上げる作戦だ。
とある筋から貰ったバカ島の気配を消す能力と、サルの尾行能力で周りにはあの女がただ走っているようにだけ見える。
クズでもたまには役に立つもんだ。
あの女は実習棟の鍵を開け、二階へと登っていく。
行き止まりへ行くなんてやっぱりバカな女だ。
隠れれると思ったのか、女は空き教室へと入っていった。
もしやあそこが(裏)生徒会の奴等の溜まり場か??
「バカ島、能力を止めろ!」
俺様の言葉にバカ島は気配を消す能力を解く。
「フッ・・・あいつこんな空き部屋に入っていったぞ?バカだろ?さて・・・どう縛り上げてやろうか・・・」
俺様は走って乱れた髪を櫛で整えながら舌なめずりをする。
あの女が媚び諂い、俺様のフライスウェイターに苦しめられながら(裏)生徒会のことを暴露するいいシナリオができそうだ・・・。
「サルっドアを開けろ!」
「はいっ!」
サルに俺様の指示であの女が入って行った部屋のドアを開けさせる。
教室の中はカーテンが閉められているのか、薄暗く少し見えにくい。
だが、女は教室の端で後ろを向いて立ち尽くしているのがすぐに見えた。
「・・・やぁっと観念したか?・・・」
俺様はフライスウェイターを女の方へと構える。
「さあ、子猫ちゃん・・・俺様の愛の縄で縛られるんだな!!!!」
フライスウェイターを力強く振り上げると、先についた網目状のものが大きくなり、女の体を強引に縛り上げた。
絡みつく網目が女の身体のラインを強調させる。
「ククッ・・・恥ずかしいだろう!!!!泣け!!喚いて媚びろ!!・・・そして(裏)生徒会の奴等を呼べ!!!!」
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【日当瀬 晴生】
掛かった!!!
俺の読み通りイデアさんを間違えて縛り上げる風紀の野郎。御神だっけな。
三人組が全員教室に入ったところで、俺は後ろの扉。
三木を追い掛けていた千星さんは前の扉の鍵を掛けた。
「はんっ!!やること為すこと下衆いんだよ、テメェ等は!!聞いてて反吐が出るぜ!
いきますよ、千星さん!
イデアさん、もう良いですよ。」
そう言いながら三人組の方に歩みを進める、薄暗い中、
“イデアアプリ”を起動させ、画面に広がるパズルを視界の端に捉え、真っ直ぐ三人組を睨み付けたまま、リミッターを外す。
「解除。」
すると輝きを放つようにして携帯が銃の形に変化していき。
それを手に取るとイデアさんを解放するために網の付け根を数発打ち抜いた。
するとイデアさんは何事もなかったように傷一つ無い体で此方へと舞い戻る。
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【風紀委員長:御神】
女を縛り上げた途端に、見知らぬ男二人が教室の鍵をかけた。
「!?」
薄暗くて顔はハッキリとは見えなかったが、一人は金髪であることはわかった。
その金髪の男は俺様に対して暴言を吐くと、俺様たちと同じように携帯を武器へと変化させていた。
その携帯が銃になり、フライスウェイターの根元に数発打ち込んだかと思うと、縛り上げていた女がふわりと地面に降りた。
しかもその女は良く見ると副会長ではなく、金髪の小さな少女・・・。
まさか・・・
「俺様達をハメたなぁ・・・?」
俺様はフライスウウェイターを元の大きさに戻し、わなわなと怒りに肩を震わせた。
「貴様らァ・・・(裏)生徒会かぁッ!!!!!!」
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【千星 那由多】
日当瀬が慣れた手つきでイデアアプリをクリアし静かに「解除。」というと眩い光で包まれた携帯が形を変えて武器になったのが見えた。
「おお・・・あんなのになるのか・・・」
日当瀬と風紀が何か言い合っている間、俺はイデアアプリをせっせと解こうと携帯にしがみついていた。
うわーちゃんと解けないって日当瀬に言っておくべきだった!
なんだかんだで作戦会議の時から言い出せる雰囲気じゃなくて、まぁなんとかなるかなんて適当なこと考えてた俺がバカだった!!
「お前らが(裏)生徒会かぁ!!」
と言われた時も、俺は風紀委員と日当瀬をチラ見しながらイデアアプリにかじりついている。
俺今すっげえダサい気がする。
だってここで絶対武器を振りかざしながら「そうだ!!俺達が(裏)生徒会だ!!!」とか言うもんだろ?
なんかそういうカッコよさって必要じゃね?!
ああ・・・もうちょっと、もうちょっとなんだよ、多分!!!
一生懸命携帯をいじっている俺の姿に先に気付いたのは風紀委員の方だった。
「?・・・貴様・・・あの時の生徒かッ!!!」
御神って奴は目がだいぶ慣れて来たのか、俺の顔を見て気が狂ったように叫ぶ。
「あっいやっそうなんだけどっ今ちょっとタンマ!!」
俺は片手で待ったというポーズを取りながら、必死にイデアアプリを解こうとしていた。
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【日当瀬 晴生】
奴らのものは押収してみないと分からないが、俺たちの特殊武器、“イデアアプリ”はパズルを解かないと変形しない仕組みになっている。 他人が使えないようにするためのロック機能のようなものだ。
パズルは毎回異なり国・数・科・物・社・英なんでもこいだ。
しかも解くとレベルが上がっていく優れ物だ。因みに俺は暇なときに弄っているのでとんでもないレベルまで達している。
「ちっ、いちいちうるせー野郎だぜ。
千星さん、俺は雑魚二人を叩きますんで、頭お願いします。」
千星さんはまだ画面と戦っている様子だったが暇な時間はずっとアプリに齧りついていたのを俺は知っている。
きっと解除一歩手前までを何度も練習していたんだろう。
たまたま難しいのでも出たのかも知れないが、彼なら大丈夫だろう。
俺は自分の仕事を終わらせる為に地を蹴り、銃で地面を撃ち、御島から鮫島、谷口を引き離すように教室の後ろの方に誘導していく。
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【千星 那由多】
「えっ!?ちょっと!俺イデアアプリ・・・解けない・・・・・・のに・・・」
日当瀬に「頭を頼む」とか言われてしまったが、俺のイデアアプリのパズルはいつもと変わらずぐちゃぐちゃであった。
ただ型式にそってスライドさせていく簡単そうなパズルなんだけど、何か規則的なものがあるらしく俺は未だにそれが理解できていない。
こんな一大事の時に、だ。
日当瀬はもちろん俺がイデアアプリを解けないことを知らないので、こういう状況になってしまったのはあいつに罪は無いわけだが・・・。
やばい!ひじょーにヤバイ!!
見事に鮫島と谷口を御神から引き離して行く日当瀬を横目に、俺は御神、そしてイデアアプリと対峙していた。
追い詰められた状況に頭がどんどんパニックになっていくのがわかった。
冷や汗をかいてイデアアプリの操作さえままらなくなってくる。
「・・・貴様・・・もしや・・・」
そんな俺に御神は気付いたのか、ニヤリとほくそ笑んだ。
「武器を使えないな・・・?」
その顔はなんとも嫌な表情で、元々御神は顔立ちは整っているのに見るも無残に汚く崩れていく。
気付かれる、よなあそりゃあ・・・。
御神はハエタタキを高らかに掲げ、日当瀬に聞こえないようにささやいた。
「貴様を縛りあげたあの時、もっと痛い目に合わせておけばよかったよ・・・だけどもう大丈夫。
今度はきちんと意識を失わせてやろう・・・そして(裏)生徒会の一員であることを恨むがいいさ」
―――――ダメだ。ごめんみんな。
日当瀬、こんな俺が言うのもなんだけど、俺の変わりにみんなを守ってください。
こんなバカですいませんでした。俺やっぱ(裏)生徒会には向いてない気がするわ。
御神のハエタタキが俺に向かって振りかざされる。
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【三木 柚子由】
「ダメ…ッ!!千星君はまだ、イデアアプリ解けないの―――ッ!!」
間一髪だった。
私は教壇の裏にじっと身を潜めていたが、日当瀬君の「頭を頼む」との言葉を聞いた時、嫌な予感がして戦闘風景を覗いてみた。
日当瀬君は教室の後ろにいて何をしているか分からなかったが、いつものように銃声が響いているので問題無いと思う。
でも、千星君は風紀委員長と対峙しているがその手には携帯が握られたままだった。
やっぱりまだ、解除出来ないんだ…。
千星君に近付いていく風紀委員長を見て、咄嗟に掃除用具入れから箒を取り出して二人の間に割って入った。
「………ッ!!!」
上下を片方ずつの手で持ち、ハエタタキの柄を支えるようにして防ぐ。
やっぱり、日当瀬君の言った通りハエタタキは面の部分に触れなければ大丈夫な様子。
「逃げて…、ここは…私が時間を稼ぐ…から」
「ククッ…やっと出てきたな!!子猫ちゃん!!俺様を騙した罪は重い!!
さぁ、早く!!俺様の前で鳴け!!媚びろ!!フライスウェイターの餌食となれ!!」
「―――ッ!!!」
第二打が私に降り掛かる。しかし、それは日当瀬君の拳銃の弾によって阻止される。
ホッとして後ろに軽く飛ぶようにして間合いを取り、呆気に取られている千星君に声を掛ける。
「早く逃げて…、…私は大丈夫だから…」
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【日当瀬 晴生】
「ダメ…ッ!!千星君はまだ、イデアアプリ解けないの―――ッ!!」
なんだって、千星さんに限ってそんなこと。
しかし、視線を其方に向けると御神と千星さんの間に三木が割って入っていた。
マジかよ…。
三木の戦闘能力は会長がいなければ皆無に等しい。
護身術位は教え込まれているようだが、しかし、会長がいても彼女は補助的役割でしかない。
その彼女が自ら前戦にでたと言うことは彼女が嘘を言っていない証である。
「…ちっ。」
暗がりだか闇に慣れた眼で教室前方の戦闘を見やり、
第二打を繰り出す、御神のハエタタキ目がけてトリガーを引き横槍をいれてやる。
俺も武器の形状から言うと支援型だ。
一人で数人相手にする事は慣れていても誰かを守りながら、しかもこんな狭い場所で戦う事は慣れていない。
「イデアさん、千星さんを連れて一旦引いて―――――ッ!!!!!」
完全に、千星さんと三木に意識を取られていたため俺は鮫島の放ったスプレーをまともに食らってしまった。
「――――ッ…にげ…て」
声が擦れる。息が出来ない。
俺はその場に跪いた。
じっとしていれば呼吸位は出来る。しかし動こうとすれば酷い酸欠状態に襲われる。
体内の酸素濃度を狂わされたようだ。
千星さん達も気になるのだが俺は次にくる谷口の先の尖ったトングのような武器を避けるのがいっぱいいっぱいになってしまった。
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【千星 那由多】
三木さんが俺の前に立ち、武器にもならなさそうな箒を構え御神から俺を守ってくれている。
俺はその瞬間に一気にテンパっていた頭が冷静になっていくのがわかった。
このままだと昨日と一緒の展開になってしまう。
御神の第二打は日当瀬が阻止してくれたが、その日当瀬も何やら鮫島にスプレーを吹きかけられて苦しそうにしていた。
二人の「逃げて」という言葉に身の毛が逆立つような感覚に襲われる。
この二人は、俺を守ってくれているんだ。
何もできないどころか足を引っ張ってばかりの俺を身を挺して。
この戦いでは一歩間違えば怪我人が出る。
もちろんそれは俺ではなく、この守ってくれている二人のどちらかが先だ。
・・・俺がイデアアプリを解ければいいんだ!!
俺は三木さんの後ろで震える手を堪えて再びパズルを解き始める。
「ハッハー!!バカめ!!足手まといを庇うなんてどうかしているな!!
・・・あの金髪野郎も暫くは動けないだろう・・・さあ、大人しく負けを認めるんだなァ!!!!」
御神のハエタタキが再度ゆっくり振りかざされたのが視界の端でわかった。
「後悔しろォッ!!!!!!」
もうダメだと思った瞬間、携帯の画面に「complete stage!」という英語が出てきたのがわかった。
それがイデアアプリのパズルが解けたことだと瞬時に悟り、御神のハエタタキが振り下ろされる前に力いっぱい叫んだ。
「か、解除ぉぉおぉぉぉおおおおッッ!!!!!」
大声で叫ぶと両手で掴んでいた携帯が青い光を放ち出す。
あまりの眩しさに目を細め視界を狭くする。
こちら側を見ていた御神はこの光を直接見てしまったのか、振りかざしていたハエタタキの動きを止めた。
俺の目の前にいた三木さんは眩しそうに振り向き、少し笑った気がした。
その青い光を放った携帯は俺の手を離れ宙に浮き、奇妙に形を変えながら何かを造り出して行く。
「これは・・・剣・・・?」
そこにはとても重そうな銀色の刃を携えた「剣」が浮いていた。
俺は一瞬の出来事でなにがなにやら理解ができなかったが、
その剣が完全な形になった瞬間に地面へと落下しそうになったため、急いでグリップ部分を握った。
思った以上に軽い。
剣道の授業で竹刀を握ったことはあったが、真剣なんて生で見たことも触ったこともなかった。
目の前の剣のグリップ部分を両手で恐る恐る掴みながら今の情況を忘れて全体をじっと眺める。
その間に御神の目は回復したのか、叫び声にハッと我に返る。
「グッ・・・眩しいじゃないカァアアアアアア!!!」
御神は片目を抑えながらハエタタキを再度俺の目の前にいる三木さんに振りかざした。
「三木さん!!」
俺は三木さんの前に出て、振りかざされたハエタタキの柄の部分にこの剣の刃を突き当てた。
見事にハエタタキは柄の部分から真っ二つに折れ、先の網の部分が地面に落ちたのがわかった。
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【日当瀬 晴生】
「か、解除ぉぉおぉぉぉおおおおッッ!!!!!」
ヤバイっと思った瞬間に教室内に千星さんの声がこだました。
その瞬間に覚えのある光が室内に広がり、俺はぐっと拳を握りこんだ。
そうと分かれば机の陰に身を潜め、ゆっくりと息を整える。
するとスプレーの効果が消えたようで上手く呼吸が出来るようになった。
キョロキョロと辺りを探す鮫島と谷口の間を縫って、御神と三木、千星さんの間を割るように入って、
手をかざすようにして全員を数歩下がらせる。
視界に入る御神の折れたハエタタキに自然と口角が上がり。
「やりましたね、千星さん!!おい、テメェ!!さっさと降伏しやがれ!!今なら半殺しで許してやるぜ!」
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【風紀:御神】
パーマ野郎が形成した武器で俺様のフライスウェイターが折れてしまった・・・。
何もない柄の先に視線を落としながら体が震えるのがわかった。
だが、怒りで震えているのではない。
最強の俺様は、これだけが武器ではないからな・・・!!
金髪野郎がバカ島とサルの目を盗んでパーマ野郎と女の方へと合流する。
あの無能共は本当に役立たずだ・・・!後で厳しいお仕置きを科さねばならない。
俺様はぼんやりしているバカ島とサルに睨みを利かせた後、「半殺しで許してやる」などとほざく金髪野郎の方へと向きなおした。
「・・・はっ・・・本当にお前達はバカだ・・・。俺様がフライスウェイターが無くなっただけで降参すると思うか・・・?」
俺様は柄だけになったフライスウェイターを投げ捨て、静かに呟くと、麗しき瞳を瞑り大きく息を吸い込んだ。
「ブルームプロフュージョン・・・ッ」
そう言って目を見開くと、言いようのない空気が教室内に広がる。
そして、目の前の金髪野郎共は体を大きく波打たせた。
「ククク・・・どうだ・・・俺様の幻術は?世界が歪んで見えるだろう・・・?」
この術を使った時の快感はたまらない。
俺様の体は全身の血が沸騰するように熱くなり、興奮で小刻みに震えていた。
俺は少しテンパっていた。
こういう任務は(裏)生徒会へ入ってから初めてのことだったからだ。
今まではしょっぼい何でも屋みたいな任務ばっかりだったけど・・・今回だけはいつもと違う。
昨日は大変だったがゆっくり休めたので一応体力は万全。自分の中で、だけれど。
俺は自分におちつけーおちつけーと心の中で念じながら、囮の三木さんを距離を開けて追尾していた。
今回の任務は匿名依頼の「風紀委員をギャフンと言わせてくれ」・・・だそうだ。
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昼休み、俺達は(裏)生徒会室に集まっていた。
新しい任務が入り、その作戦を日当瀬が机に手を付きながら指示をする。
「それじゃあ、作戦を言います。
今回の首謀者は風紀委員長の御神圭、その側近の鮫島修也、谷口衞。
まず、三木は一人になってくれ。それであのクソ三人組を引き摺りだす。」
「それから、この校舎二階の空き教室に誘い込む。ここでイデアさん、お願いします。」
日当瀬がイデアの方へと視線を送る、イデアは無表情で頷いた。
「三木は教壇に隠れてくれ。イデアさんは追い込まれた振り、
俺の予想では、薄暗いから、三木がイデアさんに変わった事は気付かない。
特にアイツは思い込みが激しい奴みてぇだし。」
「イデアさんに網が絡んだところで俺と、千星さんで空き教室に鍵を掛けて、退路を断つ……そっからは・・・」
淡々と作戦を伝える日当瀬と目が合い、こいつの目の色が変わっていることに気が付いた。
ギラギラと燃える闘志のような・・・日当瀬を初めて見た時のあのトラウマになりそうな眼付き。
不敵な笑いを浮かべる日当瀬はまるで悪魔の化身のようであった。
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あー怖い。何が怖いってアイツが怖い。
あの目は絶対「風紀委員皆殺し」って顔だった。
「ギャフン・・・だよ、ギャフン・・・」
そんなことを呟きながら身を隠すように走る。
三木さんが走っている後ろを、どうやら風紀委員が追いかけているみたいだが、生憎俺にはわからない。
奴等のひとりに「気配を消せる」能力?を持っている奴がいるらしい。
そういう能力ってのがなんなのかわからなかったが、昨日のあのハエタタキの網みたいな武器を持っているぐらいだ、
きっと何かしらスゴイ技術があるんだと思う。
三木さんが息を切らしながら実習棟の2階へ繋がる階段を登っていく。
俺も少ししてから辺りを確認しつつ三木さんを追った。
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【三木 柚子由】
「はぁ……はぁ、はぁ…」
一人になった途端にストーカーの気配を感じて、日当瀬君の作戦通りに動こうと必至に走った。
気配を消す能力者が居るみたいだけど、確かに少し離れたら分からない、
けれど近くまでくるとついてきているのがわかる。
千星君もちゃんと着いてきてくれているのでいつもより怖くないな、
と、思いながら階段を駆け上がり、予定どおりの空き教室に駆け込んだ。
私と同じ制服を着ているイデアちゃんに大きく頭を下げてから私は言われた通りの教壇に駆け込み精一杯息を殺した。
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【風紀委員長:御神】
あの女が一人きりになるチャンスを狙って、俺様達は再びあの女を捕まえるために尾行していた。
尾行、というよりもあの女を疲れ切るまで走らせて、また俺様のフライスウェイターで縛り上げる作戦だ。
とある筋から貰ったバカ島の気配を消す能力と、サルの尾行能力で周りにはあの女がただ走っているようにだけ見える。
クズでもたまには役に立つもんだ。
あの女は実習棟の鍵を開け、二階へと登っていく。
行き止まりへ行くなんてやっぱりバカな女だ。
隠れれると思ったのか、女は空き教室へと入っていった。
もしやあそこが(裏)生徒会の奴等の溜まり場か??
「バカ島、能力を止めろ!」
俺様の言葉にバカ島は気配を消す能力を解く。
「フッ・・・あいつこんな空き部屋に入っていったぞ?バカだろ?さて・・・どう縛り上げてやろうか・・・」
俺様は走って乱れた髪を櫛で整えながら舌なめずりをする。
あの女が媚び諂い、俺様のフライスウェイターに苦しめられながら(裏)生徒会のことを暴露するいいシナリオができそうだ・・・。
「サルっドアを開けろ!」
「はいっ!」
サルに俺様の指示であの女が入って行った部屋のドアを開けさせる。
教室の中はカーテンが閉められているのか、薄暗く少し見えにくい。
だが、女は教室の端で後ろを向いて立ち尽くしているのがすぐに見えた。
「・・・やぁっと観念したか?・・・」
俺様はフライスウェイターを女の方へと構える。
「さあ、子猫ちゃん・・・俺様の愛の縄で縛られるんだな!!!!」
フライスウェイターを力強く振り上げると、先についた網目状のものが大きくなり、女の体を強引に縛り上げた。
絡みつく網目が女の身体のラインを強調させる。
「ククッ・・・恥ずかしいだろう!!!!泣け!!喚いて媚びろ!!・・・そして(裏)生徒会の奴等を呼べ!!!!」
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【日当瀬 晴生】
掛かった!!!
俺の読み通りイデアさんを間違えて縛り上げる風紀の野郎。御神だっけな。
三人組が全員教室に入ったところで、俺は後ろの扉。
三木を追い掛けていた千星さんは前の扉の鍵を掛けた。
「はんっ!!やること為すこと下衆いんだよ、テメェ等は!!聞いてて反吐が出るぜ!
いきますよ、千星さん!
イデアさん、もう良いですよ。」
そう言いながら三人組の方に歩みを進める、薄暗い中、
“イデアアプリ”を起動させ、画面に広がるパズルを視界の端に捉え、真っ直ぐ三人組を睨み付けたまま、リミッターを外す。
「解除。」
すると輝きを放つようにして携帯が銃の形に変化していき。
それを手に取るとイデアさんを解放するために網の付け根を数発打ち抜いた。
するとイデアさんは何事もなかったように傷一つ無い体で此方へと舞い戻る。
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【風紀委員長:御神】
女を縛り上げた途端に、見知らぬ男二人が教室の鍵をかけた。
「!?」
薄暗くて顔はハッキリとは見えなかったが、一人は金髪であることはわかった。
その金髪の男は俺様に対して暴言を吐くと、俺様たちと同じように携帯を武器へと変化させていた。
その携帯が銃になり、フライスウェイターの根元に数発打ち込んだかと思うと、縛り上げていた女がふわりと地面に降りた。
しかもその女は良く見ると副会長ではなく、金髪の小さな少女・・・。
まさか・・・
「俺様達をハメたなぁ・・・?」
俺様はフライスウウェイターを元の大きさに戻し、わなわなと怒りに肩を震わせた。
「貴様らァ・・・(裏)生徒会かぁッ!!!!!!」
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【千星 那由多】
日当瀬が慣れた手つきでイデアアプリをクリアし静かに「解除。」というと眩い光で包まれた携帯が形を変えて武器になったのが見えた。
「おお・・・あんなのになるのか・・・」
日当瀬と風紀が何か言い合っている間、俺はイデアアプリをせっせと解こうと携帯にしがみついていた。
うわーちゃんと解けないって日当瀬に言っておくべきだった!
なんだかんだで作戦会議の時から言い出せる雰囲気じゃなくて、まぁなんとかなるかなんて適当なこと考えてた俺がバカだった!!
「お前らが(裏)生徒会かぁ!!」
と言われた時も、俺は風紀委員と日当瀬をチラ見しながらイデアアプリにかじりついている。
俺今すっげえダサい気がする。
だってここで絶対武器を振りかざしながら「そうだ!!俺達が(裏)生徒会だ!!!」とか言うもんだろ?
なんかそういうカッコよさって必要じゃね?!
ああ・・・もうちょっと、もうちょっとなんだよ、多分!!!
一生懸命携帯をいじっている俺の姿に先に気付いたのは風紀委員の方だった。
「?・・・貴様・・・あの時の生徒かッ!!!」
御神って奴は目がだいぶ慣れて来たのか、俺の顔を見て気が狂ったように叫ぶ。
「あっいやっそうなんだけどっ今ちょっとタンマ!!」
俺は片手で待ったというポーズを取りながら、必死にイデアアプリを解こうとしていた。
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【日当瀬 晴生】
奴らのものは押収してみないと分からないが、俺たちの特殊武器、“イデアアプリ”はパズルを解かないと変形しない仕組みになっている。 他人が使えないようにするためのロック機能のようなものだ。
パズルは毎回異なり国・数・科・物・社・英なんでもこいだ。
しかも解くとレベルが上がっていく優れ物だ。因みに俺は暇なときに弄っているのでとんでもないレベルまで達している。
「ちっ、いちいちうるせー野郎だぜ。
千星さん、俺は雑魚二人を叩きますんで、頭お願いします。」
千星さんはまだ画面と戦っている様子だったが暇な時間はずっとアプリに齧りついていたのを俺は知っている。
きっと解除一歩手前までを何度も練習していたんだろう。
たまたま難しいのでも出たのかも知れないが、彼なら大丈夫だろう。
俺は自分の仕事を終わらせる為に地を蹴り、銃で地面を撃ち、御島から鮫島、谷口を引き離すように教室の後ろの方に誘導していく。
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【千星 那由多】
「えっ!?ちょっと!俺イデアアプリ・・・解けない・・・・・・のに・・・」
日当瀬に「頭を頼む」とか言われてしまったが、俺のイデアアプリのパズルはいつもと変わらずぐちゃぐちゃであった。
ただ型式にそってスライドさせていく簡単そうなパズルなんだけど、何か規則的なものがあるらしく俺は未だにそれが理解できていない。
こんな一大事の時に、だ。
日当瀬はもちろん俺がイデアアプリを解けないことを知らないので、こういう状況になってしまったのはあいつに罪は無いわけだが・・・。
やばい!ひじょーにヤバイ!!
見事に鮫島と谷口を御神から引き離して行く日当瀬を横目に、俺は御神、そしてイデアアプリと対峙していた。
追い詰められた状況に頭がどんどんパニックになっていくのがわかった。
冷や汗をかいてイデアアプリの操作さえままらなくなってくる。
「・・・貴様・・・もしや・・・」
そんな俺に御神は気付いたのか、ニヤリとほくそ笑んだ。
「武器を使えないな・・・?」
その顔はなんとも嫌な表情で、元々御神は顔立ちは整っているのに見るも無残に汚く崩れていく。
気付かれる、よなあそりゃあ・・・。
御神はハエタタキを高らかに掲げ、日当瀬に聞こえないようにささやいた。
「貴様を縛りあげたあの時、もっと痛い目に合わせておけばよかったよ・・・だけどもう大丈夫。
今度はきちんと意識を失わせてやろう・・・そして(裏)生徒会の一員であることを恨むがいいさ」
―――――ダメだ。ごめんみんな。
日当瀬、こんな俺が言うのもなんだけど、俺の変わりにみんなを守ってください。
こんなバカですいませんでした。俺やっぱ(裏)生徒会には向いてない気がするわ。
御神のハエタタキが俺に向かって振りかざされる。
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【三木 柚子由】
「ダメ…ッ!!千星君はまだ、イデアアプリ解けないの―――ッ!!」
間一髪だった。
私は教壇の裏にじっと身を潜めていたが、日当瀬君の「頭を頼む」との言葉を聞いた時、嫌な予感がして戦闘風景を覗いてみた。
日当瀬君は教室の後ろにいて何をしているか分からなかったが、いつものように銃声が響いているので問題無いと思う。
でも、千星君は風紀委員長と対峙しているがその手には携帯が握られたままだった。
やっぱりまだ、解除出来ないんだ…。
千星君に近付いていく風紀委員長を見て、咄嗟に掃除用具入れから箒を取り出して二人の間に割って入った。
「………ッ!!!」
上下を片方ずつの手で持ち、ハエタタキの柄を支えるようにして防ぐ。
やっぱり、日当瀬君の言った通りハエタタキは面の部分に触れなければ大丈夫な様子。
「逃げて…、ここは…私が時間を稼ぐ…から」
「ククッ…やっと出てきたな!!子猫ちゃん!!俺様を騙した罪は重い!!
さぁ、早く!!俺様の前で鳴け!!媚びろ!!フライスウェイターの餌食となれ!!」
「―――ッ!!!」
第二打が私に降り掛かる。しかし、それは日当瀬君の拳銃の弾によって阻止される。
ホッとして後ろに軽く飛ぶようにして間合いを取り、呆気に取られている千星君に声を掛ける。
「早く逃げて…、…私は大丈夫だから…」
-----------------------------------------------------------------------
【日当瀬 晴生】
「ダメ…ッ!!千星君はまだ、イデアアプリ解けないの―――ッ!!」
なんだって、千星さんに限ってそんなこと。
しかし、視線を其方に向けると御神と千星さんの間に三木が割って入っていた。
マジかよ…。
三木の戦闘能力は会長がいなければ皆無に等しい。
護身術位は教え込まれているようだが、しかし、会長がいても彼女は補助的役割でしかない。
その彼女が自ら前戦にでたと言うことは彼女が嘘を言っていない証である。
「…ちっ。」
暗がりだか闇に慣れた眼で教室前方の戦闘を見やり、
第二打を繰り出す、御神のハエタタキ目がけてトリガーを引き横槍をいれてやる。
俺も武器の形状から言うと支援型だ。
一人で数人相手にする事は慣れていても誰かを守りながら、しかもこんな狭い場所で戦う事は慣れていない。
「イデアさん、千星さんを連れて一旦引いて―――――ッ!!!!!」
完全に、千星さんと三木に意識を取られていたため俺は鮫島の放ったスプレーをまともに食らってしまった。
「――――ッ…にげ…て」
声が擦れる。息が出来ない。
俺はその場に跪いた。
じっとしていれば呼吸位は出来る。しかし動こうとすれば酷い酸欠状態に襲われる。
体内の酸素濃度を狂わされたようだ。
千星さん達も気になるのだが俺は次にくる谷口の先の尖ったトングのような武器を避けるのがいっぱいいっぱいになってしまった。
-----------------------------------------------------------------------
【千星 那由多】
三木さんが俺の前に立ち、武器にもならなさそうな箒を構え御神から俺を守ってくれている。
俺はその瞬間に一気にテンパっていた頭が冷静になっていくのがわかった。
このままだと昨日と一緒の展開になってしまう。
御神の第二打は日当瀬が阻止してくれたが、その日当瀬も何やら鮫島にスプレーを吹きかけられて苦しそうにしていた。
二人の「逃げて」という言葉に身の毛が逆立つような感覚に襲われる。
この二人は、俺を守ってくれているんだ。
何もできないどころか足を引っ張ってばかりの俺を身を挺して。
この戦いでは一歩間違えば怪我人が出る。
もちろんそれは俺ではなく、この守ってくれている二人のどちらかが先だ。
・・・俺がイデアアプリを解ければいいんだ!!
俺は三木さんの後ろで震える手を堪えて再びパズルを解き始める。
「ハッハー!!バカめ!!足手まといを庇うなんてどうかしているな!!
・・・あの金髪野郎も暫くは動けないだろう・・・さあ、大人しく負けを認めるんだなァ!!!!」
御神のハエタタキが再度ゆっくり振りかざされたのが視界の端でわかった。
「後悔しろォッ!!!!!!」
もうダメだと思った瞬間、携帯の画面に「complete stage!」という英語が出てきたのがわかった。
それがイデアアプリのパズルが解けたことだと瞬時に悟り、御神のハエタタキが振り下ろされる前に力いっぱい叫んだ。
「か、解除ぉぉおぉぉぉおおおおッッ!!!!!」
大声で叫ぶと両手で掴んでいた携帯が青い光を放ち出す。
あまりの眩しさに目を細め視界を狭くする。
こちら側を見ていた御神はこの光を直接見てしまったのか、振りかざしていたハエタタキの動きを止めた。
俺の目の前にいた三木さんは眩しそうに振り向き、少し笑った気がした。
その青い光を放った携帯は俺の手を離れ宙に浮き、奇妙に形を変えながら何かを造り出して行く。
「これは・・・剣・・・?」
そこにはとても重そうな銀色の刃を携えた「剣」が浮いていた。
俺は一瞬の出来事でなにがなにやら理解ができなかったが、
その剣が完全な形になった瞬間に地面へと落下しそうになったため、急いでグリップ部分を握った。
思った以上に軽い。
剣道の授業で竹刀を握ったことはあったが、真剣なんて生で見たことも触ったこともなかった。
目の前の剣のグリップ部分を両手で恐る恐る掴みながら今の情況を忘れて全体をじっと眺める。
その間に御神の目は回復したのか、叫び声にハッと我に返る。
「グッ・・・眩しいじゃないカァアアアアアア!!!」
御神は片目を抑えながらハエタタキを再度俺の目の前にいる三木さんに振りかざした。
「三木さん!!」
俺は三木さんの前に出て、振りかざされたハエタタキの柄の部分にこの剣の刃を突き当てた。
見事にハエタタキは柄の部分から真っ二つに折れ、先の網の部分が地面に落ちたのがわかった。
-----------------------------------------------------------------------
【日当瀬 晴生】
「か、解除ぉぉおぉぉぉおおおおッッ!!!!!」
ヤバイっと思った瞬間に教室内に千星さんの声がこだました。
その瞬間に覚えのある光が室内に広がり、俺はぐっと拳を握りこんだ。
そうと分かれば机の陰に身を潜め、ゆっくりと息を整える。
するとスプレーの効果が消えたようで上手く呼吸が出来るようになった。
キョロキョロと辺りを探す鮫島と谷口の間を縫って、御神と三木、千星さんの間を割るように入って、
手をかざすようにして全員を数歩下がらせる。
視界に入る御神の折れたハエタタキに自然と口角が上がり。
「やりましたね、千星さん!!おい、テメェ!!さっさと降伏しやがれ!!今なら半殺しで許してやるぜ!」
-----------------------------------------------------------------------
【風紀:御神】
パーマ野郎が形成した武器で俺様のフライスウェイターが折れてしまった・・・。
何もない柄の先に視線を落としながら体が震えるのがわかった。
だが、怒りで震えているのではない。
最強の俺様は、これだけが武器ではないからな・・・!!
金髪野郎がバカ島とサルの目を盗んでパーマ野郎と女の方へと合流する。
あの無能共は本当に役立たずだ・・・!後で厳しいお仕置きを科さねばならない。
俺様はぼんやりしているバカ島とサルに睨みを利かせた後、「半殺しで許してやる」などとほざく金髪野郎の方へと向きなおした。
「・・・はっ・・・本当にお前達はバカだ・・・。俺様がフライスウェイターが無くなっただけで降参すると思うか・・・?」
俺様は柄だけになったフライスウェイターを投げ捨て、静かに呟くと、麗しき瞳を瞑り大きく息を吸い込んだ。
「ブルームプロフュージョン・・・ッ」
そう言って目を見開くと、言いようのない空気が教室内に広がる。
そして、目の前の金髪野郎共は体を大きく波打たせた。
「ククク・・・どうだ・・・俺様の幻術は?世界が歪んで見えるだろう・・・?」
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俺様の体は全身の血が沸騰するように熱くなり、興奮で小刻みに震えていた。
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