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俺のこと愛してる幼馴染が彼女持ちだった件聞く?①
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∞∞ nayuta side ∞∞
今日もいつも通り講義を終えて、一般教養の授業だったので幼馴染の巽と一緒だった。巽は優秀だしノートの取り方もうまいので横に座ってくれてると正直ありがたい。
1時間半もある講義時間は二回昼寝してもお釣りが来る。
今日は巽が居るので昼寝させては貰えず終了の時間になったのでグーッと大きく両手を伸ばして背伸びをしていると人影が俺の机に映った。
「……巽、どうして返事返してくれないの?」
「あ、梢《こずえ》ちゃん、久しぶりだね。どうしたの?」
「どうしたじゃないわ。なんで返事をくれないのよ……私、私、……」
「んー……ちょっとここじゃ目立つから他に行こうか?」
「なんでよっ!私、あんたの彼女なんだからいいでしょ!ほら、最近は私ばかり呼び出されてたし、髪もパーマ当てて青い色にしたんだよ!似合ってるって言ってくれたじゃない」
か、か、か、彼女……………!?
あ、あれ、今、この女の子?梢《こずえ》さん?彼女って言ったよな。え、なんだよ、どういう事だよ。だって巽は俺のこと好きだって………。
俺が横の巽を見上げると巽と真っ直ぐに目が合った。
その顔はいつものように微笑んでいたけど物凄く威圧的に見えて完全に部外者になってしまった俺は何も言えなくてまた俯いた。
俺のこと好きなんじゃなかったのか……!?
もしかして、ただ体だけが目当てだったとか!?いやいや、待て。そもそも俺は男だ。これが可愛い女の子だったらわかる。だけど目の前のめちゃくちゃ可愛い女の子を差し置いて俺に好きだって嘘をついて、せ、せ、せ、セックスするメリットは無いだろう……!?頭の悪い俺でもわかる。
じゃ、なんで、巽は俺のこと好きだって言ったんだろ……あんな我慢できない、堪らないって顔しながら俺のことを抱いたんだろうか。もしかして、全部俺の思い違い……?遊ばれてた……?
「梢《こずえ》ちゃん……!」
「なによ美由紀……!」
「駄目だよ、天夜くんと付き合うならちゃんと順番を守らないと……ッ!」
じゅ、じゅ、順番……!?付き合うのに順番とかあるのか?え?どういう事だよ巽。何なんだよこの修羅場。
しかも、二人目に現れた美由紀という女の子も髪色が青でパーマを掛けていた。地毛では無さそうな様子に今年の流行りも考えたけど今の所そんな情報はない。
「なによ!良い人面して、美由紀だって巽ともっと会いたいって言ってたでしょ?」
「そ、そうだけど……でも、そんな事したら今の関係が……」
「それは美由紀だからでしょ?アタシは違うわ……だって、私は巽に愛されてるもの……ッ、何人彼女が居ても最終的に、選ばれるのは私……ねえ、そうでしょ、巽……!アタシの髪型可愛いっていってくれたもんね?ほら、見て?更に色落としてきたんだから……!」
「梢ちゃん、いい加減にしなよ……ッ!天夜くんが梢ちゃんのこと好きなわけ無いでしょ!」
「な!な!二番目の癖して私に逆らうの……ッ!」
「……二人共、いい加減にしないと終わりにするけど」
一触即発とはまさにこの事だ。女の子同士のいがみ合いは怖すぎる。もう、俺の頭は完全にメモリーオーバーして存在を消すしか無かったが巽の一言で二人共黙ってしまった。そしてこっちが見てて可哀想になるほど怯え始める。
「ご、ごめんさい、そうじゃないの。い、いこ、美由紀」
「天夜くん、ごめんね……」
「いや、ちゃんと連絡しなかった俺もわるいから、またね、梢ちゃん、美由紀ちゃん」
そそくさと去っていくと教室に残っていたメンバーの視線が一気にこちらに向いた。居心地が悪過ぎるし、なんつーか色々流されて失われた俺の貞操と、この気持ちを返してくれ、と言いたくなったがそれよりも早く巽が俺の手を引いて教室の外に出た。
今日は間違いなく厄日である。
手を引かれて連れてこられた先は巽の自室だった。
大学からの帰り道はめちゃくちゃ気まずくて一言も話す事が出来なかった。普段なら絶対怒ってたと思うし、なんならこんなにすんなりつれて来られたりもしなかったと思うけど、なんつーか、多分、結構、かなーり俺自身もショックだったんだと思う。
さっきは女の子と巽の修羅場を見たけど、今度は俺と巽の修羅場かと思うと部屋のソファーに座ったままゴクリと喉を鳴らした。いや、でも、何て言おう。そもそも俺と巽は付き合ってないわけで、そうなるとあっちの女の子達のほうが優先順位が上?つーか俺になんか言う権利ある?
そんな事を考えてたら、巽が淹れるコーヒーの香りがしてきた。コーヒーに罪はない、コーヒー罪は無いんだけど絶対今から上手く丸め込まれる未来しか見えなくて俺はいきり立つことにした。
「あ、あれ!どういう事だよ……お前彼女居たのかよ……しかも、二人って……二股かけてんのかよ」
よし、那由多!よく言った。
これならきっと巽は謝ってくる、ほら今だって驚いた顔でこっちを見てるじゃないか!これなら絶対俺のほうが有利に…………。
「え?……うーん、何人か覚えてないけど。ごめんね、彼女は沢山いるよ」
なんの悪びれも無く俺の幼馴染から聞かされた事実に怒りを通り越して唖然としてしまった。
「ふ、二人でもねぇのかよ!」
「え……うん」
「三股!?」
「……三人?三人で収まるわけないよ?」
「……ッ!悪いとか思わねぇの?申し訳ねぇとか……!」
「え?誰に対して?彼女達?」
「そ、そうに決まってんだろ!?」
「……うーん、そこは一応ちゃんと伝えてるよ?」
「…………は?」
「俺は一人に決められないから他の子とも付き合うよって」
ヤバイ。コイツヤバイだろ。
マジでいってんのか?
巽は昔からモテた。確かにモテたけど俺の知ってる巽は一人としか付き合ってなかった。
しかも、ほぼほぼ俺が好きになった相手と……!
全く悪びれも無く首を傾げる巽に俺の眉がグッと寄った。
「……それ、俺聞いてねぇし」
「え?どれ?」
「……なんもねぇー……つーか、お前一人にしとけよ」
「え?無理だよ」
「なんで?」
「だって、那由多の代わりを一人の女の子が務めれるわけ無いよね?」
そう言った巽は清々しい程の笑顔を浮かべていて俺の背筋が凍った。
俺の代わり…………?
ちょっと待て、もう今日は混乱しすぎてヤバイ。
あんな可愛い女の子達が俺の代わりなわけない、これは絶対巽が嘘をついている。
そう思うんだけど巽の表情はいつも通りだった。
そして、思い返してみると梢と呼ばれた女性も、美由紀と呼ばれた女性も確かに髪色が青くて、パーマだった……それってもしかして俺の髪型を真似させて………。
そこまで思い至ってしまうとゾッとした。
巽は彼女達のことをもしかしたらこれっぽっちも愛してないのかもしれない、本当に俺の代わりだとしたら……?
急に俺の幼馴染が恐ろしいものに見えて俺はゆっくりとソファーの隅へと後退っていく。
「あ。やっと気付いた?」
「……ちょっと待て……巽」
「長かったよ……どさくさに紛れて愛してることは伝えちゃったけど……」
「…………ッ!」
「那由多。俺、那由多の事あいしてるよ……でも、この愛受け止められないよね?」
「……む、無理に決まってんだろ」
「うん。だからさ…………」
そう言った巽は俺じゃない誰かを相手にしている時のように綺麗に笑っていた。
「今日の事は見なかったことにしてよ……。俺、那由多に嫌われたら生きていけないから」
そう言って巽は俺の事を抱き寄せて、背中に手を回して目一杯抱擁していた。「俺だけにしとけ」とも「気持ち悪いから近寄るな」とも言えない俺が卑怯な気がして来て仕方なく俺からも背中に手を回した。
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今日もいつも通り講義を終えて、一般教養の授業だったので幼馴染の巽と一緒だった。巽は優秀だしノートの取り方もうまいので横に座ってくれてると正直ありがたい。
1時間半もある講義時間は二回昼寝してもお釣りが来る。
今日は巽が居るので昼寝させては貰えず終了の時間になったのでグーッと大きく両手を伸ばして背伸びをしていると人影が俺の机に映った。
「……巽、どうして返事返してくれないの?」
「あ、梢《こずえ》ちゃん、久しぶりだね。どうしたの?」
「どうしたじゃないわ。なんで返事をくれないのよ……私、私、……」
「んー……ちょっとここじゃ目立つから他に行こうか?」
「なんでよっ!私、あんたの彼女なんだからいいでしょ!ほら、最近は私ばかり呼び出されてたし、髪もパーマ当てて青い色にしたんだよ!似合ってるって言ってくれたじゃない」
か、か、か、彼女……………!?
あ、あれ、今、この女の子?梢《こずえ》さん?彼女って言ったよな。え、なんだよ、どういう事だよ。だって巽は俺のこと好きだって………。
俺が横の巽を見上げると巽と真っ直ぐに目が合った。
その顔はいつものように微笑んでいたけど物凄く威圧的に見えて完全に部外者になってしまった俺は何も言えなくてまた俯いた。
俺のこと好きなんじゃなかったのか……!?
もしかして、ただ体だけが目当てだったとか!?いやいや、待て。そもそも俺は男だ。これが可愛い女の子だったらわかる。だけど目の前のめちゃくちゃ可愛い女の子を差し置いて俺に好きだって嘘をついて、せ、せ、せ、セックスするメリットは無いだろう……!?頭の悪い俺でもわかる。
じゃ、なんで、巽は俺のこと好きだって言ったんだろ……あんな我慢できない、堪らないって顔しながら俺のことを抱いたんだろうか。もしかして、全部俺の思い違い……?遊ばれてた……?
「梢《こずえ》ちゃん……!」
「なによ美由紀……!」
「駄目だよ、天夜くんと付き合うならちゃんと順番を守らないと……ッ!」
じゅ、じゅ、順番……!?付き合うのに順番とかあるのか?え?どういう事だよ巽。何なんだよこの修羅場。
しかも、二人目に現れた美由紀という女の子も髪色が青でパーマを掛けていた。地毛では無さそうな様子に今年の流行りも考えたけど今の所そんな情報はない。
「なによ!良い人面して、美由紀だって巽ともっと会いたいって言ってたでしょ?」
「そ、そうだけど……でも、そんな事したら今の関係が……」
「それは美由紀だからでしょ?アタシは違うわ……だって、私は巽に愛されてるもの……ッ、何人彼女が居ても最終的に、選ばれるのは私……ねえ、そうでしょ、巽……!アタシの髪型可愛いっていってくれたもんね?ほら、見て?更に色落としてきたんだから……!」
「梢ちゃん、いい加減にしなよ……ッ!天夜くんが梢ちゃんのこと好きなわけ無いでしょ!」
「な!な!二番目の癖して私に逆らうの……ッ!」
「……二人共、いい加減にしないと終わりにするけど」
一触即発とはまさにこの事だ。女の子同士のいがみ合いは怖すぎる。もう、俺の頭は完全にメモリーオーバーして存在を消すしか無かったが巽の一言で二人共黙ってしまった。そしてこっちが見てて可哀想になるほど怯え始める。
「ご、ごめんさい、そうじゃないの。い、いこ、美由紀」
「天夜くん、ごめんね……」
「いや、ちゃんと連絡しなかった俺もわるいから、またね、梢ちゃん、美由紀ちゃん」
そそくさと去っていくと教室に残っていたメンバーの視線が一気にこちらに向いた。居心地が悪過ぎるし、なんつーか色々流されて失われた俺の貞操と、この気持ちを返してくれ、と言いたくなったがそれよりも早く巽が俺の手を引いて教室の外に出た。
今日は間違いなく厄日である。
手を引かれて連れてこられた先は巽の自室だった。
大学からの帰り道はめちゃくちゃ気まずくて一言も話す事が出来なかった。普段なら絶対怒ってたと思うし、なんならこんなにすんなりつれて来られたりもしなかったと思うけど、なんつーか、多分、結構、かなーり俺自身もショックだったんだと思う。
さっきは女の子と巽の修羅場を見たけど、今度は俺と巽の修羅場かと思うと部屋のソファーに座ったままゴクリと喉を鳴らした。いや、でも、何て言おう。そもそも俺と巽は付き合ってないわけで、そうなるとあっちの女の子達のほうが優先順位が上?つーか俺になんか言う権利ある?
そんな事を考えてたら、巽が淹れるコーヒーの香りがしてきた。コーヒーに罪はない、コーヒー罪は無いんだけど絶対今から上手く丸め込まれる未来しか見えなくて俺はいきり立つことにした。
「あ、あれ!どういう事だよ……お前彼女居たのかよ……しかも、二人って……二股かけてんのかよ」
よし、那由多!よく言った。
これならきっと巽は謝ってくる、ほら今だって驚いた顔でこっちを見てるじゃないか!これなら絶対俺のほうが有利に…………。
「え?……うーん、何人か覚えてないけど。ごめんね、彼女は沢山いるよ」
なんの悪びれも無く俺の幼馴染から聞かされた事実に怒りを通り越して唖然としてしまった。
「ふ、二人でもねぇのかよ!」
「え……うん」
「三股!?」
「……三人?三人で収まるわけないよ?」
「……ッ!悪いとか思わねぇの?申し訳ねぇとか……!」
「え?誰に対して?彼女達?」
「そ、そうに決まってんだろ!?」
「……うーん、そこは一応ちゃんと伝えてるよ?」
「…………は?」
「俺は一人に決められないから他の子とも付き合うよって」
ヤバイ。コイツヤバイだろ。
マジでいってんのか?
巽は昔からモテた。確かにモテたけど俺の知ってる巽は一人としか付き合ってなかった。
しかも、ほぼほぼ俺が好きになった相手と……!
全く悪びれも無く首を傾げる巽に俺の眉がグッと寄った。
「……それ、俺聞いてねぇし」
「え?どれ?」
「……なんもねぇー……つーか、お前一人にしとけよ」
「え?無理だよ」
「なんで?」
「だって、那由多の代わりを一人の女の子が務めれるわけ無いよね?」
そう言った巽は清々しい程の笑顔を浮かべていて俺の背筋が凍った。
俺の代わり…………?
ちょっと待て、もう今日は混乱しすぎてヤバイ。
あんな可愛い女の子達が俺の代わりなわけない、これは絶対巽が嘘をついている。
そう思うんだけど巽の表情はいつも通りだった。
そして、思い返してみると梢と呼ばれた女性も、美由紀と呼ばれた女性も確かに髪色が青くて、パーマだった……それってもしかして俺の髪型を真似させて………。
そこまで思い至ってしまうとゾッとした。
巽は彼女達のことをもしかしたらこれっぽっちも愛してないのかもしれない、本当に俺の代わりだとしたら……?
急に俺の幼馴染が恐ろしいものに見えて俺はゆっくりとソファーの隅へと後退っていく。
「あ。やっと気付いた?」
「……ちょっと待て……巽」
「長かったよ……どさくさに紛れて愛してることは伝えちゃったけど……」
「…………ッ!」
「那由多。俺、那由多の事あいしてるよ……でも、この愛受け止められないよね?」
「……む、無理に決まってんだろ」
「うん。だからさ…………」
そう言った巽は俺じゃない誰かを相手にしている時のように綺麗に笑っていた。
「今日の事は見なかったことにしてよ……。俺、那由多に嫌われたら生きていけないから」
そう言って巽は俺の事を抱き寄せて、背中に手を回して目一杯抱擁していた。「俺だけにしとけ」とも「気持ち悪いから近寄るな」とも言えない俺が卑怯な気がして来て仕方なく俺からも背中に手を回した。
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