イケメン幼馴染の執着愛が重すぎる

さくらんこ

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総受け

誤解キス!④

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∞∞ nayuta side ∞∞


大学の講義があったため夕方の変な時間からバイトに入る事になる。
喫茶【シロフクロウ】は裏口もあるんだけど基本は表から入っていいと言われているのでいつもどおり表から入る。

「帰りましたー。」
「おかえりなさい、那由多くん。すいません、着替えてからでいいので応接室に置いてあるグッズの在庫を持ってきてもらっていいですか?」
「あ、わかりましたー。」
「千星くん、大学終わったところ?おつかれさま~」
「あ、はいっ!…ありがとうございます。…着替えてきまーす。」

常連客は話しかけてきてくれるのは嬉しいんだけど、なかなか打ち解けたりとかはない。
と言うか、なんて話題を繋げていいかがわからないのが現状だ。
他のメンバーは割とうまく会話しているし、晴生なんかもう客として接していないんではないかと思えるほどフランクな相手も居る。
エレベーターで4階まで上がるとロッカーで着替える。
髪を結んで、エプロンを巻いて姿見で確認すると応接室と言われたのでエレベーターではなく階段を使って降りていく。
応接室の扉を開いて中に入るとカーテンが風に靡いていた。
メンソールの香りがふんわりと香ってくる。

「……?あ、千星さん。お疲れ様です。今おかえりですか?」
「お、おう、晴生もおつかれ。…休憩?」
「はい、今日はランチからで今やっと落ち着いて来たんで…あ、すいません、タバコの臭い付いてしまいますね。」
「あ、気にすんなって。つか、吸えよッ、命令な!入ってきて吸うの辞められたら入りづらくなんだろ?ニコチンもタールも入ってないのにしてんだから遠慮なく俺の横では吸っていいぞ。窓開けてるから匂いも付かねーし。」

晴生は窓際に腰を掛けて電子タバコを燻らせていた。
電子タバコの仕組みはあんま良くわかってないけど、どうやら直ぐにやめたりできるようで、ポケットに放り込もうとしていたので慌ててそれを止める。
晴生は昔、未成年でがっつり喫煙タイプだったけど、マスターに言われて電子タバコに切り替えたらしい。
晴生がマスターの言う事を聞くなんて有り得ないと思ったけどトコトン図星をつかれた事、ニコチンタールもない代用品があること、俺が昔やめて欲しいと言ったことも引っ括めての結論でそうなったらしい。
決してマスターに言われたから辞めたわけではないと言い張ってはいるけど…俺はこれで良かったと思ってる。
電子タバコなら晴生に害はないので横で吸われても気にならない。

「すいません、それじゃあお言葉に甘えて…。千星さんどうですか?仕事慣れましたか?」
「んー……まぁまぁかな。」

潮風が吹く窓際に俺も歩み寄り、横へと並ぶ。
薄い唇がタバコの吸口を挟むと緩く息を吸ってから紫煙を吐き出す。
火が付いている訳ではないのに普通のタバコと同じように吐き出される煙に自然と視線が向かった。
そして、そのまま俺の視線は晴生の唇に移る。
潮風に前髪が遊ばれて両眼が見えると本当に整った顔立ちをしているし、唇も薄く透き通っている。

「どうかしましたか…?」

俺があまりにも晴生を見ていたからか、少し困ったように微笑みながら質問を投げかけられた。
深い意味はなかったので俺は一気にテンパって余計なことを喋り始める。

「いや、その…晴生とはキスできるかな………て」
「………き、キスッスか!?しろと言われればいくらでも…し、しますけど。」
「いや、その!しろっていってる訳じゃくてさっき剣成とキスしたんだけど…」
「はぁ!?なんで明智の野郎と千星さんがキスするんスか?アイツ…なにとち狂ってやがるんだッ!」
「いや、剣成はちょっと色々あって……俺が、その…同性のキスが気持ち悪いかって話ばっかりしちゃったからムラっとしたみたいで…」
「……天夜のせいですか?」
「え、あ!違ッ、なんで、巽が…!?」
「……?千星さん《idea─イデア─》 化するときに天夜と、その、き、キスしねぇといけないのでその関係で悩んでるのかと…違いましたか?」
「あ、そ、そうなんだっ!だから少しでも慣れたら違うのか……て。」
「…………明智とはキスしたんですよね?」
「あ、う、うん。めちゃくちゃ謝られたけど…」
「舌は?」
「い、入れマシタ…いや、入れられました…」
「………アイツ、殺す。」
「え!?もう謝ってくれた……、はる………き、ん。」

珍しく晴生からの羞恥プレイが始まったかと思ったがそれはキスによって打ち切られた。
俺達を包むようにカーテンが風によって揺らめく。
タバコを指に挟んだままの手が俺の顎をすくい上げてゆっくりと唇を啄まれた。
完全に俺は固まってしまっていたけど晴生は何度も何度も優しく唇を啄んで俺の緊張を解して行く。

「………ん、はぁ、はる…き、んッ、おれ…ん」
「練習…なら、俺も…っ、付き合いますよ…明智には、……負けません……ん」

なんか、なんか勘違いされてるっ!
と、思ったけど後の祭りだった。
少し遠慮がちに侵入してくる薄い舌に自然と肩が尖る。
突っぱねても良かったんだけど懐かしく感じる感覚に、もっとしたい、晴生とキスをしたいと思ってしまった。
自分から導くように隙間を開けると、晴生はその隙間を縫って舌を侵入させてきた。
俺からも舌を合わせると、メンソールのスッのした感覚が鼻から抜けていく。
初めてするはずなのに慣れ親しんだ感覚に体が震える。
晴生が舌を絡めてくるのを追いかけるように自分からも舌を絡めてすり合わせる。
気持ち悪い、気持ち悪くないの次元じゃなくて、満たされていく感覚に自然と呼吸が上がっていく。

「ふぁっ、…はる、き…はぁ♡ん………ふ、ぁ」
「ん、………っ、は………ん、ん」

頬に添えられた手の親指が俺の頬を撫でる。
優しい手つきとどこか懐かしい香りに目元を蕩けさせて、ゴクリと大きく喉を動かした。
何度も角度を変え舌先を合わせているだけなのに、何故こんなに満ち足りた気持ちになるのだろうか。
頭もボーッとするけどそれ以上に俺の体が反応していた。
何度も舌を合わせ、晴生の薄い舌が丁寧に俺の咥内を愛撫する。
段々と呼吸が上がっていくと俺の睫毛が小さく震え、頬にある手に自分の手を重ねた。

「はる……ん、ふ………………。」

一際カーテンが大きくはためくと、どちらとも無く唇を引いていく。
唇同士を繋ぐ銀糸がめちゃくちゃエロい。
うっとりとした表情のまま、風で前髪が退いて覗いている翡翠の双眸をじっと見つめた。
すると晴生は小首を傾げるようにして微笑を浮かべた。

「は、…ッ……明智の奴よりは練習代になれましたか?」
「…………お、お…おう、そうだなッ、悪い、ありがとッ。あ、俺マスターに頼まれごとしてたんだった。先戻るな!」
「はい。俺もすぐ戻りますね。」

そう言って俺は机の上に出されていたグッズを両手に抱えてホールへと早足に向かっていく。
扉の隙間から抜けるようにするとそこにはキッチンで仕事をしているエプロン姿の巽が立っていて、何となく目を合わせる事が出来ずに視線を逸らせた。
一瞬見られたかとも思ったけど、巽はいつもの調子だったのでこのまま変に喋って墓穴を掘るのは避けたかったのでホールへと急いだ。

「巽、おつかれ。俺、急いでるから…ッ」
「お疲れさま、那由多……。」

短いやり取りをかわしてすぐ俺はホールへと出た。
この胸を締め付けるような感覚は何なんだろうか。
巽を見た瞬間頭の中は巽の事でいっぱいになるのに、晴生とキスをしたとき俺の頭は晴生のことしか考えられなかった。
俺の中に2つの感覚があるようにすら錯覚する思いに、息を抜いて思考を振り切る。
俺は巽との行為の気持ち悪さを解消させたくて動いていたはず。
巽の事で頭がいっぱいだったのに晴生の事を考えてしまう自分を叱咤するように首を降ると、マスターの元へと俺は向かった。



End
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