上 下
41 / 88
総受け

【12-3/3】誤解キス!①

しおりを挟む
∞∞ nayuta side ∞∞

昨日は結局寝れなかった。
しかも何か涙腺崩壊しちまったのか結構泣いた。
あの後巽は俺が落ち着くまで居てくれたんだけど、多分《霊ヤラレ》 で辛かったと思う。
一緒に居たら居たで俺もあいつも辛いかと思って追い返すように帰らせたけど、良く考えたら最悪だよな俺…。

自己嫌悪に陥りながら喫茶【シロフクロウ】のモーニングへと向かう。
まだ開店よりはだいぶ早い時間だけどマスターはいつものようにカウンターに居た。
一人でじっとしていると色々考えてしまうから出てきたけど迷惑だったかもしれない。

調度こっちに背中を向けていだんだけど俺がフロアに入るなり気づいて視線と微笑みを向けてくる。
マスターは本当に気配には鋭い。

「おはようございます、はやいです……少し待ってて下さいね。」
「おはようございます…マスター?」

カウンター近くまで歩いてくる途中で挨拶を返したんだけど、マスターはカウンターの中で中腰になってしまったので見えなくなってしまう。
俺がカウンターの傍まで来るとマスターはカウンターから出てきて、手にはおしぼりが握られていた。

「冷たいのとどちらが良いですかね…目閉じてて下さい。」

寝不足もあり俺の周りにはてなマークが飛び散っている間に事は進んでいく。
マスターはカウンターの席に腰掛けて俺の脇と腰を寄せるようにして彼の膝の上に座らされてしまう。
一瞬ギョッとしたが自然な手付きに肩の力が抜けた。
マスターは中性的な見た目とは裏腹にかなり鍛え抜かれた体をしているので、膝の上に対面に座らされてもすごく安定していた。
熱いおしぼりを冷ますように空気に触れさせてから、きれいに畳んで俺の目許に置いてくれた。
少しだけ温かくて血行がよくなって行く。
片手はしっかりと俺の腰を抱いてくれていて、何だかとても安心できて自然と脱力してしまう。
鏡で見たときはそんなに酷く目が腫れているとは思わなかったが、マスターから見たらバレバレだったのだろう。

「持っていてもらえますか?後、無理しないで休まれますか?九鬼も降りてきてくれますので…」
「あ、いえ……仕事させてもらってもいいですか、なんか…色々一人だと考えてしまって…」
「それなら…構いませんが…タオル変えますね。」

自分で温かいタオルを持っているとマスターは別のおしぼりを器用に片手で折り畳んでいた。
大の大人が向き合って抱っこされている状況はかなりおかしいんだが、マスターはそういう所はわりと無頓着だ。
彼が総括している“エーテル”という組織は孤児院のような役割もあるので小さい子も多い。
だからこうやって慰めることが有るんだろう。
と言うことは、俺ってその小さい子と変わらないという事になるが…。

マスターからみた俺ってそんなに頼りないのか…?

思考がネガティブになっているのでもう考えが負の方面にしか進まない。
温かいおしぼりをカウンターの上に置くと、次は冷たいおしぼりを当てられる。

おしぼりからもすごくいい匂いがするけど、近くにいるマスターからはもっといい香りがする。
タオルを上にずらして瞼だけにすると直ぐ目の前のマスターの姿が瞳に大きく映る。
真っ直ぐに合う視線に自然と心臓が高鳴った。
そう言えば昨日は巽とのキスまでも何故か気持ち悪かった。
いつもムラムラしてたから気にならなかったのか?
そもそも男同士のキスは気持ち悪いものなのか?

マスターの不思議な色合いの瞳を見詰めたまま自然と眉根が寄っていく。
それをあやすようにゆったりとした手つきで背中を撫でてくれて何だか申し訳ない気持ちになる。

「少しは落ち着きましたか?…なにか言えることがあれば聞きますが…」
「えっと……その、……変なこと聞いても…良いですか?」
「はい、なんでも構いませんよ。」
「おと、男…同士…の、キスって、き、き、気持ち悪いんですか…ッ!?」
「……はい?いえ…、そんなことは…、いや、それは相手によるかと。
……………………してみますか?」
「はい。…え?…は?」
「僕も男ですから、してみたら分かり易いんではないでしょうか?」

いつものごとく俺がイエスと言ってしまったので、ぐっと俺の腰にあるマスター手に力が入る。
顔立ちは中性的だがこの辺の力の掛け方は本当に男そのものだとは思う。
マスターの顔が至近距離まで近づいてくる。
でもきっと俺はまたなんか変な勘違いをしているはずだ。
マスターが俺にキスするなんて、そんなこと………………あった。

薄く、冷たい唇が角度を付けて俺の唇に重なった。
自然とタオルを顔から外してしまいぐっと握りしめる。
念入りに手入れを施されているようなハリツヤのある唇に自然と体は強張る。
マスターは瞳を閉じていなかったので至近距離で俺達の視線は絡み合った。
小さくリップ音を立ててマスターの唇が離れていく。

俺、今…………………間違いなくマスターとキスをした。
めちゃくちゃ甘い香りがして卒倒しそうだ。
今まで幾度となく想像したけどその想像を遥かに覆すほど薄いのに柔らかい唇だった。
もうきっと顔は真っ赤に違いない。

「どうでしたか?」
「や!その!違くてッ!!…そういうのじゃ」
「嗚呼、すいません。フレンチじゃなくてディープですか…それでは失礼しますね。」
「え!?マス……………!!!??……っ、ふ…」

おかしいッ!
違うッ
そもそもキスをしてみたいって言ってるわけじゃないって言いたかったのに、言い方が悪くてマスターは更に勘違いを重ねた。
そして唇も重ねようとしている。
でも今度こそ、…今度こそ俺の勘違いかもしれない。
杞憂に終わるんだ!

俺の考えは何のその。
腰に手を回されたまま顎を持ち上げられ、角度を付けたマスターの唇が俺の唇に重なった。
テンパってしまった俺はギュッと瞼を落とし、突っぱねることすら忘れて持っていたタオルを握りしめる。
マスターは俺をあやすかのように何度も優しく唇を啄んでくる。
薄く形のいい唇が何度も俺の唇に触れて自然と力が抜けていった。
柔らかいタッチがとても気持ちよくて少しは唇を突き出すようにするとマスターの薄い舌が唇の隙間を撫で、歯列を割って俺の口の中へと侵入してきた。
舌に硬さを持たせて俺の歯列を確かめるようにゆっくりとなぞっていく。
急かすのではなくゆっくり、ゆっくりと気持ちを昂ぶらせていくような舌使いに目元がとろんと緩んでいく。

「マス……らぁ………ん……はっ……」

口内の色んなところを尖らせた舌先でなぞられた後、ゆったりと俺の舌にマスターの舌が絡まっていく。
角度を付けると器用に舌の表面同士を擦り合わせ、短く上がる気持ちよさに俺の肩は小さく震えた。
口の中の刺激だけでもいっぱいいっぱいなのに鼻腔から感じるマスターの甘い香りに更に酔いしれていく。
顎の手が頬を滑るように後ろに流れ髪を撫でられるともうたまらなかった。

やばい。めちゃくちゃ気持ちいい───ッッ!!!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

処理中です...