イケメン幼馴染の執着愛が重すぎる

さくらんこ

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【12-3/3】誤解キス!①

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∞∞ nayuta side ∞∞

昨日は結局寝れなかった。
しかも何か涙腺崩壊しちまったのか結構泣いた。
あの後巽は俺が落ち着くまで居てくれたんだけど、多分《霊ヤラレ》 で辛かったと思う。
一緒に居たら居たで俺もあいつも辛いかと思って追い返すように帰らせたけど、良く考えたら最悪だよな俺…。

自己嫌悪に陥りながら喫茶【シロフクロウ】のモーニングへと向かう。
まだ開店よりはだいぶ早い時間だけどマスターはいつものようにカウンターに居た。
一人でじっとしていると色々考えてしまうから出てきたけど迷惑だったかもしれない。

調度こっちに背中を向けていだんだけど俺がフロアに入るなり気づいて視線と微笑みを向けてくる。
マスターは本当に気配には鋭い。

「おはようございます、はやいです……少し待ってて下さいね。」
「おはようございます…マスター?」

カウンター近くまで歩いてくる途中で挨拶を返したんだけど、マスターはカウンターの中で中腰になってしまったので見えなくなってしまう。
俺がカウンターの傍まで来るとマスターはカウンターから出てきて、手にはおしぼりが握られていた。

「冷たいのとどちらが良いですかね…目閉じてて下さい。」

寝不足もあり俺の周りにはてなマークが飛び散っている間に事は進んでいく。
マスターはカウンターの席に腰掛けて俺の脇と腰を寄せるようにして彼の膝の上に座らされてしまう。
一瞬ギョッとしたが自然な手付きに肩の力が抜けた。
マスターは中性的な見た目とは裏腹にかなり鍛え抜かれた体をしているので、膝の上に対面に座らされてもすごく安定していた。
熱いおしぼりを冷ますように空気に触れさせてから、きれいに畳んで俺の目許に置いてくれた。
少しだけ温かくて血行がよくなって行く。
片手はしっかりと俺の腰を抱いてくれていて、何だかとても安心できて自然と脱力してしまう。
鏡で見たときはそんなに酷く目が腫れているとは思わなかったが、マスターから見たらバレバレだったのだろう。

「持っていてもらえますか?後、無理しないで休まれますか?九鬼も降りてきてくれますので…」
「あ、いえ……仕事させてもらってもいいですか、なんか…色々一人だと考えてしまって…」
「それなら…構いませんが…タオル変えますね。」

自分で温かいタオルを持っているとマスターは別のおしぼりを器用に片手で折り畳んでいた。
大の大人が向き合って抱っこされている状況はかなりおかしいんだが、マスターはそういう所はわりと無頓着だ。
彼が総括している“エーテル”という組織は孤児院のような役割もあるので小さい子も多い。
だからこうやって慰めることが有るんだろう。
と言うことは、俺ってその小さい子と変わらないという事になるが…。

マスターからみた俺ってそんなに頼りないのか…?

思考がネガティブになっているのでもう考えが負の方面にしか進まない。
温かいおしぼりをカウンターの上に置くと、次は冷たいおしぼりを当てられる。

おしぼりからもすごくいい匂いがするけど、近くにいるマスターからはもっといい香りがする。
タオルを上にずらして瞼だけにすると直ぐ目の前のマスターの姿が瞳に大きく映る。
真っ直ぐに合う視線に自然と心臓が高鳴った。
そう言えば昨日は巽とのキスまでも何故か気持ち悪かった。
いつもムラムラしてたから気にならなかったのか?
そもそも男同士のキスは気持ち悪いものなのか?

マスターの不思議な色合いの瞳を見詰めたまま自然と眉根が寄っていく。
それをあやすようにゆったりとした手つきで背中を撫でてくれて何だか申し訳ない気持ちになる。

「少しは落ち着きましたか?…なにか言えることがあれば聞きますが…」
「えっと……その、……変なこと聞いても…良いですか?」
「はい、なんでも構いませんよ。」
「おと、男…同士…の、キスって、き、き、気持ち悪いんですか…ッ!?」
「……はい?いえ…、そんなことは…、いや、それは相手によるかと。
……………………してみますか?」
「はい。…え?…は?」
「僕も男ですから、してみたら分かり易いんではないでしょうか?」

いつものごとく俺がイエスと言ってしまったので、ぐっと俺の腰にあるマスター手に力が入る。
顔立ちは中性的だがこの辺の力の掛け方は本当に男そのものだとは思う。
マスターの顔が至近距離まで近づいてくる。
でもきっと俺はまたなんか変な勘違いをしているはずだ。
マスターが俺にキスするなんて、そんなこと………………あった。

薄く、冷たい唇が角度を付けて俺の唇に重なった。
自然とタオルを顔から外してしまいぐっと握りしめる。
念入りに手入れを施されているようなハリツヤのある唇に自然と体は強張る。
マスターは瞳を閉じていなかったので至近距離で俺達の視線は絡み合った。
小さくリップ音を立ててマスターの唇が離れていく。

俺、今…………………間違いなくマスターとキスをした。
めちゃくちゃ甘い香りがして卒倒しそうだ。
今まで幾度となく想像したけどその想像を遥かに覆すほど薄いのに柔らかい唇だった。
もうきっと顔は真っ赤に違いない。

「どうでしたか?」
「や!その!違くてッ!!…そういうのじゃ」
「嗚呼、すいません。フレンチじゃなくてディープですか…それでは失礼しますね。」
「え!?マス……………!!!??……っ、ふ…」

おかしいッ!
違うッ
そもそもキスをしてみたいって言ってるわけじゃないって言いたかったのに、言い方が悪くてマスターは更に勘違いを重ねた。
そして唇も重ねようとしている。
でも今度こそ、…今度こそ俺の勘違いかもしれない。
杞憂に終わるんだ!

俺の考えは何のその。
腰に手を回されたまま顎を持ち上げられ、角度を付けたマスターの唇が俺の唇に重なった。
テンパってしまった俺はギュッと瞼を落とし、突っぱねることすら忘れて持っていたタオルを握りしめる。
マスターは俺をあやすかのように何度も優しく唇を啄んでくる。
薄く形のいい唇が何度も俺の唇に触れて自然と力が抜けていった。
柔らかいタッチがとても気持ちよくて少しは唇を突き出すようにするとマスターの薄い舌が唇の隙間を撫で、歯列を割って俺の口の中へと侵入してきた。
舌に硬さを持たせて俺の歯列を確かめるようにゆっくりとなぞっていく。
急かすのではなくゆっくり、ゆっくりと気持ちを昂ぶらせていくような舌使いに目元がとろんと緩んでいく。

「マス……らぁ………ん……はっ……」

口内の色んなところを尖らせた舌先でなぞられた後、ゆったりと俺の舌にマスターの舌が絡まっていく。
角度を付けると器用に舌の表面同士を擦り合わせ、短く上がる気持ちよさに俺の肩は小さく震えた。
口の中の刺激だけでもいっぱいいっぱいなのに鼻腔から感じるマスターの甘い香りに更に酔いしれていく。
顎の手が頬を滑るように後ろに流れ髪を撫でられるともうたまらなかった。

やばい。めちゃくちゃ気持ちいい───ッッ!!!!

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