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【1-2】次は失敗しない
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×× tatumi side ××
部屋に戻って今日の授業の復習をしていると、那由多の叫び声がベランダ越しに聞こえたような気がした。
いや、聞こえた。
今日は日当瀬と明智と三人でネコを探して疲れているはずだからゲームしてるってことではないと思うけど。
うーん‥‥。
と、少し悩んだが、俺は那由多の部屋へ行くことにした。
実は大学になって暫く那由多とは距離を置いていた。
昼間は普通の付き合いをしていたので那由多は気づかない程度だが、プライベートで近づく機会を極端に減らしていた。
しかし那由多は、そんなこととは露知らず、再び俺のプライベートゾーンに踏み込んでくることになる。
‥‥日当瀬にバイトに誘われたという形ではあるけど。
実家から通っていた那由多が俺と同じフロアの部屋に住み始めたのだ。
「那由多ー、どうしたのー?大丈夫ー??」
ノックと同時に声をかけると、勢い良く鍵が開き、中からパジャマ姿の那由多が出てきた。
青く紫がかった髪は濡れ、風呂上がりなのか頬は少し赤らんでいた。
濡れた唇に自然と視線を奪われていたが、那由多はそれどころではなかったようですごい形相で言葉を捲し立てた。
「い、いいま、そ、そこにミクちゃんが、いて、ミクちゃんつーのは、‥‥あの、その、取り敢えず、なんか居たんだ!!」
青褪めた那由多は、何もない那由多の部屋の空中を指差しながら、支離滅裂な言葉を並べる。
えーと、要約すると。
「昼間探していた猫の飼い主の女の子が、おばけになって那由多の部屋に出たってことかな?」
俺がそう言葉を落とすと、那由多は面白い程に首を縦に振った。
「なんで分かったの?」と言う困惑と、「そうそれ!」という同意で目を白黒させていた。
変わらないその様子にクスッと笑みを溢してから、自然と視線を注ぐ。
俺は那由多のことだったら何でもわかるんだよなぁ。
それだけ、那由多のこと見ているから。
「んー‥‥きっと、マスターの“もう一つの仕事”のせいじゃないかなぁ。
俺もまだ流石に幽霊は見たことないけど、変な現象はたまに起きるよー?」
そのまま玄関の中へと滑り込み、那由多をソファーへと誘導する。
簡易キッチンへと経つと電子ケトルのスイッチをいれ、ドリップコーヒーへと湯を注いでいく。
周りに立ち籠める湯気と香りに那由多は落ち着きを取り戻したようで濡れた髪のまま他愛ない話をはじめた。
∞ nayuta side ∞
いつもそうだ。
巽は俺がどんな状態であれ、俺の伝えたいことは伝わってしまう。
俺の身が危険に迫ること以外で、巽が俺を否定することはない。
俺が見た“おばけ”はやっぱり“もう一つの仕事”に関連しているようで、がっくしと肩を落とした。
マスター達はあいつ等と一体何を繰り広げているんだろう。
っていうか、マスターってお化け嫌いじゃなかったっけ?
嫌いってことは、もしかして問答無用に捕まえてこいとか言われるんじゃ‥‥‥!!
さっき見た、お化けの少女は宙に飛んでいた。
俺は空を飛ぶ覚悟もしといたほうがいいかも知れない。
巽と他愛ない話をしながらも頭は“もう一つの仕事”一直線だったが、頭を抱えて項垂れた俺の前にコーヒーが差し出される。
俺は巽の入れたコーヒーが好きだ。
何も言わなくてもちゃんとミルクも入ってるし、濃さも調度いい濃さになっている。
巽が実家から出てしまったので、巽の入れたコーヒーを飲む回数は極端に減ったのだけど、俺がバイトを始めたことによりまたこの時間が戻ってきた。
味わいも温かさも丁度よいコーヒーを一口含むと自然と柔らかい笑みが溢れる。
「那由多、髪乾かさないで寝るつもりだったんでしょ。
風邪ひくよー。」
既に巽は俺の部屋に何があるか全て熟知しているようで、タオルを引っ張り出してくると向かい合わせのまま優しく髪を拭き始めた。
俺のオカンか、と、言いたくなったが、巽の世話焼きは今に始まったことではない。
それに久しぶりのこの感覚はどこか懐かしさすら感じた。
そのまま俺達は他愛無い話を続け、いつの間にか寝てしまっていた。
バイトの中身は散々かもしれないけど、こうやってこいつとまた過ごせるのはいいな、と、思ったのは内緒だ。
End
部屋に戻って今日の授業の復習をしていると、那由多の叫び声がベランダ越しに聞こえたような気がした。
いや、聞こえた。
今日は日当瀬と明智と三人でネコを探して疲れているはずだからゲームしてるってことではないと思うけど。
うーん‥‥。
と、少し悩んだが、俺は那由多の部屋へ行くことにした。
実は大学になって暫く那由多とは距離を置いていた。
昼間は普通の付き合いをしていたので那由多は気づかない程度だが、プライベートで近づく機会を極端に減らしていた。
しかし那由多は、そんなこととは露知らず、再び俺のプライベートゾーンに踏み込んでくることになる。
‥‥日当瀬にバイトに誘われたという形ではあるけど。
実家から通っていた那由多が俺と同じフロアの部屋に住み始めたのだ。
「那由多ー、どうしたのー?大丈夫ー??」
ノックと同時に声をかけると、勢い良く鍵が開き、中からパジャマ姿の那由多が出てきた。
青く紫がかった髪は濡れ、風呂上がりなのか頬は少し赤らんでいた。
濡れた唇に自然と視線を奪われていたが、那由多はそれどころではなかったようですごい形相で言葉を捲し立てた。
「い、いいま、そ、そこにミクちゃんが、いて、ミクちゃんつーのは、‥‥あの、その、取り敢えず、なんか居たんだ!!」
青褪めた那由多は、何もない那由多の部屋の空中を指差しながら、支離滅裂な言葉を並べる。
えーと、要約すると。
「昼間探していた猫の飼い主の女の子が、おばけになって那由多の部屋に出たってことかな?」
俺がそう言葉を落とすと、那由多は面白い程に首を縦に振った。
「なんで分かったの?」と言う困惑と、「そうそれ!」という同意で目を白黒させていた。
変わらないその様子にクスッと笑みを溢してから、自然と視線を注ぐ。
俺は那由多のことだったら何でもわかるんだよなぁ。
それだけ、那由多のこと見ているから。
「んー‥‥きっと、マスターの“もう一つの仕事”のせいじゃないかなぁ。
俺もまだ流石に幽霊は見たことないけど、変な現象はたまに起きるよー?」
そのまま玄関の中へと滑り込み、那由多をソファーへと誘導する。
簡易キッチンへと経つと電子ケトルのスイッチをいれ、ドリップコーヒーへと湯を注いでいく。
周りに立ち籠める湯気と香りに那由多は落ち着きを取り戻したようで濡れた髪のまま他愛ない話をはじめた。
∞ nayuta side ∞
いつもそうだ。
巽は俺がどんな状態であれ、俺の伝えたいことは伝わってしまう。
俺の身が危険に迫ること以外で、巽が俺を否定することはない。
俺が見た“おばけ”はやっぱり“もう一つの仕事”に関連しているようで、がっくしと肩を落とした。
マスター達はあいつ等と一体何を繰り広げているんだろう。
っていうか、マスターってお化け嫌いじゃなかったっけ?
嫌いってことは、もしかして問答無用に捕まえてこいとか言われるんじゃ‥‥‥!!
さっき見た、お化けの少女は宙に飛んでいた。
俺は空を飛ぶ覚悟もしといたほうがいいかも知れない。
巽と他愛ない話をしながらも頭は“もう一つの仕事”一直線だったが、頭を抱えて項垂れた俺の前にコーヒーが差し出される。
俺は巽の入れたコーヒーが好きだ。
何も言わなくてもちゃんとミルクも入ってるし、濃さも調度いい濃さになっている。
巽が実家から出てしまったので、巽の入れたコーヒーを飲む回数は極端に減ったのだけど、俺がバイトを始めたことによりまたこの時間が戻ってきた。
味わいも温かさも丁度よいコーヒーを一口含むと自然と柔らかい笑みが溢れる。
「那由多、髪乾かさないで寝るつもりだったんでしょ。
風邪ひくよー。」
既に巽は俺の部屋に何があるか全て熟知しているようで、タオルを引っ張り出してくると向かい合わせのまま優しく髪を拭き始めた。
俺のオカンか、と、言いたくなったが、巽の世話焼きは今に始まったことではない。
それに久しぶりのこの感覚はどこか懐かしさすら感じた。
そのまま俺達は他愛無い話を続け、いつの間にか寝てしまっていた。
バイトの中身は散々かもしれないけど、こうやってこいつとまた過ごせるのはいいな、と、思ったのは内緒だ。
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