元戦闘奴隷なのに、チャイニーズマフィアの香主《跡取り》と原住民族の族長からの寵愛を受けて困っています

さくらんこ

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令和6年最新話★★★

1〜14

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①くきさちかこ

キミの臓器にキスをして。

※グロエロ注意


▽▽ KUKI side ▽▽

「九鬼」
「なーにー?」
「欲しいものがあります」
「え!?欲しいもの!?ナニ?ボクからの愛!?」
「…………」
「う、ウソだから。ゴメンって。槍で刺されたら死んじゃう~死んじゃう。で、本題なんだケド。時期的に左千夫クンの誕生日プレゼントに。だよネ?ナニナニ~?左千夫クンからおねだりたんて珍しいジャン♪何でも──」
「愛輝凪大学付近の海沿いの土地がほしいです。出来ればプライベートビーチ付きで」

……流石左千夫クン。
普段から欲しいものを聞いても「なにも」としか返答してくれない彼から初めてねだられたものが〝土地〟とは。

「──費用は。……九鬼。聞いてますか?九鬼」
「へ、はっ!?トリップしてた。ごめんごめーん。何?期限?」
「納期は特にありませんよ。早ければ早いほどいいですが中々難しい条件かと。神功系列でも探してみたんですが……。無理そうなら妥協して押さえた土地はありますので聞かなかった事にしてください」
「ノンノンノン♪このボクに不可能はなーい!て、言うか左千夫クンに妥協案とか似合わなすぎるカラ……!」
「そうですね。それではよろしくお願いしますね」

とは言ったものの愛輝凪《アテネ》大学の付近は割と都会である。決してリゾート地とかではない。そんな場所で、海沿いをしかもプライベートビーチまでつくるとなるとかなり好条件の土地を押さえなければならない。金はあるので場所さえ見つかれば簡単だと思ったが調べてみると候補地は限られていた。とある一角は民家ばかりが立ち並んでいて、ここの土地を買い取るとなるとかなーり説得に時間がかかる。まぁ、ボクはマフィアの御曹司なので強硬手段に及んでもいいんだけど、左千夫クンはそう言うのは好きじゃないだろう。なるべくは金だけ使って穏便に行きたい。
次の土地は水脈が走っていて開拓できない事はないけど、元の地形をいじくることになる。ココもなんか違うなーと思っていると、めちゃくちゃ好条件な土地を見つけた。ばっちり海沿いだし、建物の建方を考えればプライベートビーチを造れる。ちょっぴり違法だけど♪でも逆にそんな土地がなんで今ままで余ってるかと言うと…………………………。
「帰れ若造!いくら積んでもこの土地はやらん!」
と、まぁソッコー頑固なジイサンに追い返された。この辺では繁《しげ》と呼ばれているその老人は財界でも有名な頑固ジジイらしい。まぁ、ボクはマフィアなので気にせず極悪非道な手段を使って地上げしちゃってもいいんだケド。
問答無用で追い返された玄関先で既に真っ暗な夜空を見上げた。初めて左千夫クンから頼まれたものでもあるので、なんと無くそういう手段は取りたくなかった。ボクが産まれながらにして持っているチカラ【親の権力】は使いたく無かった。
「ニンゲンって面倒くさいよネ~。契約書書かせて殺しても手に入るのにー」
叩き出された先の砂浜にゴロンと寝転がった。決してきれいとは言い難い砂浜だけど、何も手が食わわっていない自然な感じで嫌いじゃない。ますます手に入れたくなってボクの瞳は弧を描いた。


▲▲ sachio side ▲▲

能力者の組織【エーテル】を表立って 【ETHER Co.】エーテル カンパニーとして立ち上げると僕は一気に多忙になった。父にお願いして買ってもらった廃病院を拠点にしていたので、医療施設としての分院を立ち上げ同時に研究施設も作った。それと平行作業で Glass Plant factoryガラスプラントファクトリー【ether Co.】という名前で植物工場を立ち上げた。内部環境をコントロールした半閉鎖的な空間で、太陽光も併用し野菜や食用花のエディブルフラワーなどを目玉とし、レストランへの卸売りや通販に力を入れた。神功の名前と無農薬、更に安定した品質を供給できる工場栽培なので瞬く間に事業は軌道に乗った。働き手には救出した能力者を採用したので費用対効果も申し分ない。うまく行けば数年で僕の手から離せる組織になるだろう。
次にもう一つ。晴生くんの呼び掛けでイデアの修復を進めていた。彼女を破壊する前に抜いた記憶メモリーの修復は終わったと告げられた。ただ、次の段階に移るためには彼女の基盤である、レアメタルを探さなければならない。僕も微力ながら探しては居るが中々必要量は集まらなかった。
それに加えて、もう一つ新しい事業を考えていたがそれに関してはいい土地が見つからない。全て思い通りには進んではいるけれど、発展途中な事ばかりで気だけが焦り始めていた。
そんな僕に一つの大きな出来事が降りかかる。いつものように【エーテル】の中を見回りしていると医療施設を担当している和奏わかなさんに呼び出された。
「左千夫君忙しいのにごめんなさい。蛍さんの容態が急変して」
「……!蛍さんが?彼女は動けるようになっていた筈では?」
「そうなの。数時間前までは何事も無かったのだけど、急に腹痛を訴えてね。今は集中治療室にいるわ。それにしても不可解な点が多くて……彼女妊娠してるみたいなの」
「妊娠……ですか?」
蛍と呼ばれる少女は、〝サチオ〟絶有主ゼウス高校では薬師河悠都やくしがわ ゆうとと名乗っていた僕の旧友で、そして恩人だ。全ては絶有主ゼウス高校と戦い、悠都ゆうとが……二度目の死を迎えた後に知った事だが僕が昔悠都ゆうとの肉体を殺した。その事実は間違いなかったようだ。
しかし悠都ゆうとは彼自身の能力のお陰で魂だけになっても生存できたようでその悠都ゆうとの魂を実験体であった蛍さんが捕まえた。ただ、悠都ゆうとは人の体内に入るとその魂すらも自分へと変えてしまう能力を持っていたので僕と出会ったとき蛍さんの魂は欠けていた。それを僕の精神で補填したので彼女は普通の生活を送れるようになったはずだった。なのに……集中治療室で医療器具に繋がれている彼女は魂ではなく肉体の死期が近づいているようだった。蛍さんの見た目は10代半ばの筈なのになぜ。
「蛍さん、しっかりしてください」
「あなたが、神功さん?」
「申し訳ありません。彼を殺した僕に会いたくないと思い極力姿を見せないようにしていたのですが」
「ふふ。……あえてとても嬉しいわ〝サチオ〟からいつもあなたの事聞いていたのよ」
「…………ッ」
「神功さん。自分をせめないで〝サチオ〟もきっとそんな事は望んでないと思う。それに私の事も……。私はある能力者のクローンだから……これでもすごく長く生きれたの。だから、ね?神功さんのおかげでとても楽しく過ごせたわ」
「蛍さん……」
「後、……はぁ……最後のお願い……よ。少し力を貸して貰えるかしら」
「僕にできる事なら」
白いベッドに横たわった蛍さんから片手が伸ばされる。僕はその場に膝を付くとギュとその手を両手で握った。その瞬間に僕の精神に蛍さんが入ってきた。悠都ゆうとの魂を捕まえただけあって柚子由と同じようになんの抵抗もなく精神同調できた。温かい彼女の気配を感じる。少しでも苦痛を和らげようと優しい気配を送ろうとしたが逆に僕が引きずり込まれた。
「…………ッ、…………く」
「左千夫君?大丈夫?」
「大丈夫です。蛍さん……は?」
「出産が始まりそうだわ。ただ、エコーで見ても胎児は居ないの」
和奏わかなさんに言われた言葉に僕は眉間に皺を寄せた。血液や体内の数値では確かに妊娠と同じ反応が出ているのに肝心のエコーには何も映らないようだ。腹部はここ数時間で急に膨らんだと言っていた。僕達は能力者であり実験体でもあるのでイレギュラーはつきものである。
〝神功さんごめんなさい。体内のエネルギーを出すにはこれしか方法が思い浮かばなくて〟
『いえ……大丈夫です』
〝思ったより……完全に同調してしまったの〟
『僕の事は気にしないで……ッください』
僕の表情が一気に苦痛に歪んだ。前回の九鬼とのセックスで僕の体の中に子宮がある事を認識してしまった。元からあったものではなく九鬼の〝創造〟で作られたものだが電脳空間で造られた筈の女性器は現実世界でも僕の体内に存在している。そこがドクッドクッ……っと脈打つように痛んだ。そして、恥骨の辺り、いや下半身が痛い。無理矢理骨を開こうとしているような感覚が襲ってきた。
「左千夫君?どうしたの?」
「いえ……蛍さんと精神共有してしまって……はぁ……」
「それはもしかして左千夫君にも陣痛が来てる?」
「そんな、感じ……ですね」
「出産って男の人には耐えれないっていうけど左千夫君なら大丈夫そうね。ほら、蛍さんをリードしてあげて」
「……ッ。リードと言われましても」
「呼吸は止めちゃ駄目だからね。ラマーズ法聞いたことあるでしょ?」
「そうでした。痛いのに……はぁ、我慢せずに呼吸するって……ッ、母親は大変……ッ、く、ふっ、はぁ」
「そうそう。波が来たらちゃんと呼吸しながら子宮口を開いていくの。準備するから蛍さんの事お願いね」
初期陣痛の為の波があった。痛くない期間が長く、痛い時間は短いが下半身が砕けるかと思うほど痛かった。僕は痛みに強いはずなのに重い鈍痛に汗が滲む。そしてその感覚がどんどんと狭くなっていくと痛みに気が遠くなりそうだった。蛍さんの体は今にも心臓が止まりそうなほど弱っているので僕がしっかりしなくてはと朦朧としながらも彼女の手を再び握りしめた。
「はぁ…………ふ、和奏わかなさん、どうですか?」
「私は普通の人間だけど、それでも。何もないけど何かがいる気がするし、破水もしてちゃんと子宮口は完全に開いてる」
「そうで……すか」
「そんな真っ青な左千夫君始めて見たわ。大丈夫じゃなさそうね」
「お見苦しいところを……はぁ……ぁ、またっ、ふっ、はぁ」
「そうそう。上手ね蛍ちゃん。左千夫君、次来たらイキんでね」
「そんな簡単に言われまして……も、く、はぁ、はぁ……」
「逃がしちゃだめよ。息吸って、はい、今、んーってイキんで。力入れて」
「…………っんっっ!!…………っはぁっはっ」
「まだよ、次もっかいくるからね。頭出る頃かしら。はい、今」
和奏わかなさんには何も見えないようだったが、彼女は沢山の被験体を見ているのでこんなイレギュラーな出産も医療器具の心拍や数値を見て熟してしまう。流石エーテル唯一の一般人で女医なだけある。僕の表情が歪むと蛍さんの表情も歪む。なるべく彼女に負担をかけないようにリードしたいが僕も初めての事ばかりであるし、教科書のようにうまくは行かなかった。それでも和奏わかなさんは僕と蛍さんを褒めて誘導して、最後にはっはっはっはっ!と短いながらにしっかり呼吸してから腹圧を意識してぐっといきむと、ズルんっと急に下腹部が軽くなった。
「左千夫君!産まれたわっ!こんなこともあるのね。私にもはっきり見える……」
蛍さんから生まれたものは僕の瞳には輝く高エネルギー体に見えたが和奏わかなさんには光り輝く赤ちゃんのカタチをしたものに見えたらしい。そこからは彼女らしく「初乳」と称して蛍さんのおっぱいを吸わせて、何故か僕の乳首にも吸い付かせていた。放心状態であった僕は反応する事ができなかったが僕の胸に抱かされるなりその高エネルギー体は僕の体内へと取り込まれてしまった。
「これは……一体」
〝ありがとう〟
ピーピーピーピー!!
そしてそのエネルギーの塊が僕の体に取り込まれた瞬間、蛍さんのすべての数値が0となった。煩く鳴り響く医療器具に抗うように和奏わかなさんが処置を行い、僕も彼女を必死に呼び止めたが直ぐ様同調が解かれてしまった。結局蛍さんはそのまま帰らぬ人となった。エーテルでは急変して能力者が死ぬ事はよくある事だが、最後に悠都ゆうとから託された相手すら僕は守れなかった。色んな感情が浮かんだが何故か最後に彼女から授かった高エネルギー体が僕を慰めるように優しく体内で渦を巻いていた。僕のエネルギーにする事も出来るものだが別の人物のエネルギーのような気もして体内の奥深くにしまい込むことにした。
そして、この事から僕は能力を作り出すための電磁波を見つけ出す事が出来るようになった。イデアは燃料に加えて政府が作り出した電磁波増強装置から発生されるエネルギーを元にして動いていた。なので、そのエネルギーの代わりになるものをずっと探して居たのだが僕がえるようになったこのエネルギーが使えそうだ。紅くて丸く揺らめいてみえるものが多いので〈紅い魂あかいたましい〉と名付けた。〈紅い魂あかいたましい〉は思念が集まる場所に多く居たので自ら体内に取り入れて、そのエネルギーだけを取り出す作業を繰り返し模索した。いくつか体内に溜め込むと高エネルギー体を形成し取り出して置いておくことができるようになった。これが後に他のメンバーに伝えた〈食霊〉と ideaイデア化である。

そして、更にイデアに関しては進展する事になる。


▽▽ KUKI side ▽▽

「やっほ~、シゲちゃんまた来たヨ~」
「カー!!お前もこりんやつじゃな!ここは売らないと何度言ったら分かる」
「ほら、人って心変わりするジャン?そろそろこのボクのあつ~~~い熱意に折れてくれるかなぁって!」
「帰れ!若造には絶対売らん!」
「きゃー♪乱暴なしげちゃんも素敵★」

これでホウキで叩きだされるのは112回目である。因みに一言も聞いてくれなかったのは22回、日本刀を振り回されたのは3回、その他は……覚えてないかな♪
そんなこんなしている間にボク達は大学生になった。左千夫クンが愛輝凪あてな大学を受けると言っていたのでボクもそこを受けた。モチロン合格、はなまる100点満点である。ただ、本国でのイザコザの片付けが終わってないし、このシゲちゃんを説得できないので自ずと左千夫クンと会う時間は減っていた。逆に毎日のようにシゲちゃんには会いに来てるのでそろそろ折れてくれないと左千夫クンロスになりそうでヤバイ。折角恋人になれたのに濃厚で濃密な日々は過ごせていない。左千夫クンも新しい事業を展開したからか忙しそうだった。
今日もきれいに手入れされた玄関先から外の海沿いの砂浜まで追い出された。何度転がっても手入れされていないこの砂浜は飽きない。
「ホントめんどくさーい!普通ってめんどくサーイ!!」
バタバタと手足を動かしていたらいのっちが迎えに来て中国へと連行された。自家用ジェットを飛ばしまくっているのでもう少し節約して下さいと、説教されていたようだけどボクの頭はあの土地を手に入れることでいっぱいだった。金でもつれない、物でもつれない。モチロンおんなでも無理。だったらなにでつれるんだろうか。
考えがまとまらないけど次の日も繁爺の家にきた。いつもは日が暮れる頃なんだけど今日は割と早めに来れたので大声で呼びながらチャイムを連打する。
「シゲちゃーん、シゲちゃん!クッキーが遊びに来たヨ。あれ、出てこない」
「繁《しげ》さんなら先日入院したぞ」
近くを通りかかった親切な人が教えてくれた。確かに入院してもおかしくない歳だ。このまま死なれちゃうと相続人とか探すの面倒だなーとかそんな考えも浮かんだけど、繁《しげ》爺より頑固な人物はそうそういないと思う。だからってサッサとくたばれとも思えなかった。ただ、一つ気がかりなのはこの旧家である。もうぶっちゃけ潮風にやられてぼっろぼろのぎっとぎとのただの古い家だ。だけど、潮風にやられている外壁はこまめに水洗いされ、砂がたまる玄関はきれいにホウキがかけられていて、室内は湿気がたまらないように時間を見て換気されていた。ここを数日でも放っておくと火を見るよりも明らかだ。
「ん~。ま、不法侵入くらいならいいよネ~」
鍵なんてボクの能力を使うと複製するのは朝飯前だ。そこからは毎日、この旧家のメンテナンスをする為だけに通った。室内も想像以上にきれいに保たれていて、特に縁側が生活感はないのに飛び抜けてキレイにしてあって繁《しげ》爺ののっぴきならない思いを感じた。まーどーでもいいケド。それでもボクはこう言う拘りは嫌いじゃない。土地は売ってもらう予定だけどネ~。
そんなこんなで左千夫クンに会えない日が二週間続いた辺りで繁《しげ》爺が帰ってきた。ちょうど三角巾を頭に巻いて割烹着を着て埃をハタキで落としていたときに鉢合わせた。
「やっほ~シゲちゃん。おっかえりー!調子はどう?」
「な!な!なぁぁ!なぜ若造がここに!!げほっげほっ!」
「老体は労らなきゃだヨ♪細かいこと言わない~。じゃ、ボクはまた改めてくるネ~」
呆然としている繁《しげ》爺を他所に、さっさと掃除機をかけるとボクは家から出た。病み上がりで見た感じも生気がない年寄りをいじめても楽しくないなーい。と、思ったがガシっと肩を鷲掴みにされた。
「待て!」
「え?ちょ、シゲちゃん思ったより元気そう。力つよーい♪」
「なぜこんな事をしたんじゃ」
「だってー、いつ来てもキレイだったジャン?」
「……ッ!?」
なんでと問われればただの気まぐれである。当たり障りない返事をして帰ろうとすると更に首根っこを掴まれて引き摺って行かれる。そして今の掘り炬燵に座らされてお茶を出された。
「え、……わっ、ちょ」
「ところで小僧。なぜこの土地が欲しい」
「え?売ってくれる気になったの?」
「誰もそんな事言うとらん!儂の質問にだけ答えろ」
「え~ケチー。ボクの恋人が海沿いで喫茶店開きたいっていってるカラかな」
「古民家カフェでも開くのか?」
「へ?無理無理~そんなのボクに似合わないし、ここにでっっっかいマンション建てる予定♪」
「なら何故、わざわざこの古い家を掃除したんじゃ?」
「だから気まぐれだってー。海沿い家って直ぐに潮にやられちゃうじゃん?キレイにしてるとこ見てたから仕方なくー」
繁《しげ》爺はボクがこの家を掃除していたことがよっぽど気になっているようだった。そしてその視線が縁側へと向く。海側が見えるようになっている縁側は二つの座布団と小さなちゃぶ台が置いてあった。ただその二つの座布団はどちらも使われている形跡は無いものの埃は被っておらず手入れをされていた。
「儂がくたばるまでは待てんか?」
「え~。ムリー!待てなーい」
「なんじゃと!若造が!せっかく人が妥協案を出してやってるのに!」
「繁《しげ》爺ぜっっっったいくたばんない顔してるし~」
「なんじゃと!ぐぬぬ、ではこの家が潰れるまででどうじゃ?」
「それもー……って、シゲちゃんってもしかしてこの家潰したくないだけだったりする?」
「そうじゃが」
「え~ナニソレ。早く行ってよネ~」
「なにそれとはなんじゃ!!儂と妻の思い出が詰まったこの家に文句があるのか!」
「そうじゃなくて。なら、この家をそのまま他に移すことが出来たらこの土地貰ってもいい?」
「は?そんな事出来るわけが」
「それが出来ちゃうんだよネ~。クッキーって魔法使いだから♪そーときまれば早速!あ、因みに移す先ってどこがいい?」
「へ?なんじゃと?待て、儂はいいとは……!」
そーんな感じで話は進んで結局繁《しげ》爺はボクに土地を売ってくれた。繁《しげ》爺の旧家は海から少し離れた奥さんのお墓の近くに移転させた。けんけんの能力で地面を掘り起こして、目隠しにははるるのステルス機能を使って、いのっちの能力で家丸ごと持ち上げて移動させれば一件落着である。
「儂は夢でも見てるのか」
「まだ死ぬには早いんじゃないカナ~」
「うるさいぞ小僧!どうやったかは知らんが約束じゃからな。ほれ、権利書と契約書じゃ」
「シゲちゃん♪サンキュー」
「しかし高い買い物じゃな。手に入れてどうする?その子にプロポーズでもするのか?」
「プ、プロポーズ!?しないしない。いや、してもいいのカ?考えてなかったや。でもしても断られるだろうしナァ……元はといえば誕生日プレゼントだし」
「土地を買わせときながら断る女なんて聞いたことがない。お主の惚れた相手を見てみたいもんじゃ」
「なら喫茶店が出来たら来てネ~。急ピッチですすめるカラ♪」

やっと手に入れた権利書を手に久々に自分のマンションへと戻る。左千夫クンにも連絡を入れてあるので直ぐに来るはずだ。流石にプロポーズは無理だけど土地を手に入れたご褒美にどんなプレイをねだろうかナァと考えているとゴロゴロゴロゴロッ!と大きな雷が鳴って雨が降り始めた。急な土砂降りに左千夫クンを迎えに行こうとスマホを手にするとガシャンとけたたましいガラスが割れると音と共に真っ黒な衣装を真っ赤に汚した左千夫クンが倒れ込んできた。
「さ、左千夫クンっ!?」


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