86 / 208
過去編
ずるい取引
しおりを挟む
リコール決戦後。 九鬼×左千夫(ブジー使用あり)
【神功 左千夫】
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう意識が戻る。
瞼を開くと天井が広がった。
この天井は見たことが有る。
少なくとも、病院では無いことは確かだ。
そう、ここは九鬼の私室。
戦いを終えてからの記憶が欠落しているので多分また僕は意識を失ったのだろう。
あの状態で柚子由の体を借りたのだから当たり前の結果なのだけど。
「――――――――――ッ。」
意識がはっきりしてくると全身の痛みに体が強張った。
しかし、想像していたよりもはるかに傷が軽度だ。
どうやら、九鬼の仲間の能力によって手当を施されたらしい。
体中に巻かれている包帯から不思議なエネルギーを感じた。
僕は上半身を起こすと両腕に刺さっている輸血と点滴を忌々しげに睨みつけてから早々に引き抜いて捨てる。
「駄目だよ。外しちゃ、一応キミ、重症なんだから。」
声がした方を見ると、ソファーに腰掛けた九鬼が居た。
彼も僕と同じように点滴を付けていた。
しかし、その表情は先程までの黒鬼と呼ばれていた欠片もなくニコニコと僕を見つめていて不快だった。
「もう充分です。ありがとうございました。
折角の御招待ですが、色々やることが有るので帰っていいですか?」
余り長居するといいことが無い、僕の本能はそう告げている。
僕はそれに従い、疑問の様に告げながらも早々に腰を上げる、視界が歪むが気にせず彼の横を通り抜けようとした。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
闘いが終わった後、左千夫クンを連れてマンションへと戻った。
彼が眠っている間にフリーデルの薬でお互いの治療を終え、目を覚ますまでソファでじっと待つ。
目覚めた彼はやはりふてぶてしく、闘っていた時の楽しそうな笑顔はまったく見せなかったった。
点滴を取って横をすり抜ける彼の腕を掴む。
掴んだ手を振り払われた勢いで自分に刺していた点滴が抜けた。
「もーなんでそう無茶ばっかりするのカナ」
深くため息を付くと、ボクはポケットから小さなケースを取り出した。
眉を顰めた彼に向かって見えるようにケースを開くと、口端をあげて笑う。
「ほら、約束の物」
それは、彼に返すと約束したピンキーリングだった。
実のところ、これはボクが持っていたものなので、彼が大事にしていたピンキーリングはすでにボクの左小指にはめられている。
サイズは手直ししているが、デザインは一緒なので、彼はこれがボクがつけていたものだと気づくことは多分ないだろう。
ボクの家系では生まれた時にこのピンキーリングを二つ渡されている。
婚約者に渡すという名目があり、実際これもボクの婚約者へ渡さなければならないものだったが、周りには無くしたと嘘をついていた。
もちろん父親には酷いお仕置きを受けたが。
ケースから指輪を取り出すと、彼の左手を掴み小指へゆっくりとはめていく。
「ん、サイズぴったりダネ!ボクからの愛のしるし♪」
そう言って指輪がはめられた小指へとキスを落とした。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
嗚呼。やはり僕の嫌な予感は当たったようだ。
彼は僕の手を掬い上げるそして小指にリングが嵌められた。
前のものは小さくて指には入らなかった。
しかし、質感は同じなので、サイズを直したのだろう。
そう、これは彼に奪われた、幼い僕が彼から貰った指輪。
僕にとってはこれは既に役目を終えたものだ。
ずっと持っていたのは、彼に返したかったから持っていただけだ。
そして、本当に友達になりたかった。
幼い僕の思いはそうだ。
いや、もっと大きな欲が有ったのかもしれないが。
指にキスされると慌てて手を引く、その勢いでぴったりと嵌っているリングを指から引き抜く。
そのまま、それを壁に向かって投げようとしたが、思いとどまった。
…と、言うよりは投げることが出来ない。
小さな僕でもこの高価さは分かった。
大きくなった今はこれの意味が分かるからだ。
彼がそう言った意味で渡しているとは思えないが…。
彼の小指にも同じリングが嵌っている。
これは彼がかの有名なマフィアの後継だという証拠。
僕は九鬼のところから逃げ帰った後、彼について調べた。
彼の父親はマフィアのドンだ、その父親の小指にも同じようにピンキーリングが嵌っていた。
デザインは異なっていたが、きっと、産まれたときか、祝いの時かに作られるものだろう。
投げ捨てようとして握った手をゆっくりと開き、手の中のリングを見つめる。
シンプルなデザインでその裏に石が嵌めこまれたものだ。
小さな僕はこれを九鬼に返したい一心で必死に持っていた。
そして、それと同じくらい欲しかったものが今、僕の手の中にある。
「いりません。何度も言ってますがこんな高価なもの受け取れません。
それに、重たすぎます。」
思いつく限りの辛辣な言葉と一緒に勢いに任せて相手の胸に突き返す。
表情はかなり真剣だったかも知れない。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
やっぱり指輪は突き返されてしまった。
ボクは更にそれを彼へと突き返す。
「酷い!せっかくの愛の告白だったのに、なんでそんなこと言うの!
愛の告白は重いに決まってるでショ!!」
頬を膨らませて怒ったような表情を見せた。
しかし彼は更にまた指輪を突き返してくる。
「受け取れません」
「あげるってば!!」
「受け取れません」
「貰ってよ!!!」
突き返せば突き返される、その行動を数度繰り返すと、傷は治って来ているとも言えどさすがに疲労で息があがってくる。
「はっ…はぁ…っ……お願いだから…受け取って…ゲホッゴホッ」
突き返された指輪をぐっと彼の胸元へ押し込むように渡したと同時に、ボクは咳き込みながら口元を抑えた。
口端から血が流れ、手のひらにべっとりと血が付く。
「ほら…素直に受け取らないからボクの状態悪化したじゃんか……」
息を荒げながらじとっとした瞳で彼を見つめた。
まぁ、これ血じゃなくてケチャップなんだけどネ。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
僕の息も自然と上がる。
暫く押し問答を繰り返していると、急に彼が吐血した。
僕、同様彼もかなりの傷を負っていたのでそれに触ったのかと手を緩める。
結局指輪は自分の胸の前の手の中にある。
仕方なく溜息を落としてから、それを指に嵌める。
勿論、無くしたら駄目なので嵌めるだけでずっとここにしておく気は無い。
「仕方がないので預かっときますよ。
返してほしくなったらいつでも、言って下さい。」
いつか、これは僕以外の手に渡ることになるのだろう。
それを大切に保存する自分の滑稽さに思わず、俯いたまま苦笑してしまう。
彼がこれを返してと言うときは、やはり、いつものように笑って言われるのだろうか。
「それだけですか?なら、僕は帰りますが。」
そんな無駄なことを考えた後にさらっと言葉を告げて僕はまた歩き出す。
しかし、用はまだ終わっていないのか、無理矢理腕を引っ張られた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
なんとか受け取ってはくれた。
まぁかなり嫌々な感じは漂ってるけど。
ピンキーリングが小指にはめられると、自然と笑みが零れた。
でも、彼に本気で愛の告白をしても、きっと届かないんだろう。
それはやっぱり少し寂しい気もする。
冗談口調じゃないと告げることができないボクも、相当ずるいのかもしれないが。
「待ってヨ」
帰ろうとする左千夫クンの手を掴み、口元のケチャップを拭うフリをして、一緒に増血剤をいくつか口に含んだ。
「指輪をはめた後って何するか知ってる?」
そう言いながら笑うと、彼の口の中へ無理矢理増血剤を押し込むようにキスをした。
舌を絡め、奥へと押しやり飲み込ませる。
飲み込んだのを確認した後も、彼は抵抗していたが、そのままベッドへと押し倒すように座り込ませた。
「んっ……」
彼の下半身に自分の下半身を擦りつけながら、咥内を無茶苦茶に犯していく。
頭を押し付けるように指に髪を絡め、離さないようにしっかりと抱き寄せた。
珍しく酷い抵抗は見せなかったが、唇を離した時、彼の赤い瞳はボクを睨みつけていた。
その瞳にさえ腰が疼いてしまう。
「セックスしよっか」
イタズラににっこりと笑うと、彼は深くため息をついた。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
彼の質問には正直答えたくなかった。
その考えが彼に届いたかのように、僕は口を塞がれる。
まるで指輪の礼をくれと言わんばかりにキスをされる。
一緒に口内に送り込まれた増血剤は今、僕には必要なものだったので仕方なく貰うが、
もっと、他の方法で渡してくれてもいいと思った。
「――――はっ、………ふ、……ン。」
いなすように舌を絡め、ベッドへと腰を下ろす。
深く、呼吸さえ奪うような口付けに酔いそうになるが、それはその後の言葉にかき消された。
僕は盛大に溜息を吐いた。
「僕はもう、貴方の捕虜ではありませんよ。
会長、副会長と言う存在に、セックスは必要ありません。
それに、…そんなことをしなくても、貴方から離れて行ったりしませんので安心して下さい。」
男を抱いて何が愉しいと言うのだ。
彼の思考が全く分からなかった。
新しいおもちゃが欲しいだけなのか?
それならば、それで少し複雑な気分なので、僕は冷たい言葉を返す。
ただ、彼が、昔の様に僕がどこかに行くのを体で繋ぎ止めようとしているなら、その必要は無いと告げてやった。
本当は今すぐにも蹴り飛ばしてやりたかったが、また吐血されたら困るのでそこは大人しくしておく。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
「セックスなんてしなくても、ボクから離れて行かない」といった左千夫クンの言葉にボクはにやけるように口角があがってしまう。
そうか、ボクと彼はきちんとトモダチになれたんだ。
今日、切れて無くなった後ろ髪を無意識に撫でた。
「彼を見つけて絶対にトモダチになる」と願掛けのように伸ばして長くなっていた髪は、もうそこにはない。
ボクはにやついてしまう顔を俯いて隠す。
「別に君はもう捕虜でもなんでもないヨ、でもさ、会長副会長以前にボク達は人で男で…トモダチでショ?
ま、だからってセックスする必要も意味も無いって言うかもしれないけどサ。
存在を確かめる作業だって必要だよ、ボクはとっても寂しがり屋だからネ。
…だから…お願い。したい。これが本当に最後でいいから」
切羽詰まった声で彼に問いかけた。
なるべく真剣な表情で。
正直このセックスが最後とは微塵も思ってはいない。
うまくセックスへ持っていくつもりの言葉だったが、少し本心も交じっていた。
彼がいるから、もう寂しくなんてないはずなんだけどネ。
彼の髪を指に絡ませながら、顔の輪郭を指先でなぞっていき濡れた唇を親指で優しく押さえる。
間近で見る彼の瞳にうっすらとボクが映っているのが見えた。
彼の返答を促すように、細い腰へと手を伸ばし、抱く様に彼と密着する。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
彼の言い分に僕はもう一度盛大な溜息を吐くことになった。
更に密着する体。
なんとなく分かっていたが彼にとってはセックスは日常の一環になってしまっているのだろう。
友達とすることなんてきっと普通の事なのだ。
そう、彼にとっては普通。
それを自分に言い聞かせると、真っ直ぐに見詰めていた視線を一瞬だけ伏せる。
そして、唇の上に有った親指にガジリと噛み付いてやる。
一瞬彼がたじろいだ間にその腕の中からひらりと抜け出る。
ガウンのような白い服の前を緩めながらシャワー室へ向かう。
前に連れて行かれた為に場所は把握していた。
「シャワー浴びてきます。
テレビでも見て置いてください。」
最後と言うならしてやらないことも無い。
別にヤって減る訳でも無いからだ、早々にシャワー室の前に来ると服を脱ぎ捨て包帯を取って行く。
腹に有った傷口は塞がっていて、小さく息を吐いた。
それでも、全快している訳ではないので、スッとその傷跡を撫でる。
なんだか、この傷が消えてしまうのは勿体無いと思う辺り僕もだいぶ彼の毒牙に犯されているのだろうか。
小さく満更でも無い笑みを浮かべてからシャワー室へと姿を消す。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
成功した。
という言葉はおかしいかもしれないが、左千夫クンがその気になってくれた。
抵抗されないのはなんだか物足りないが、やっぱり嬉しい。
ボクが彼の中で受け入れられている気がするから。
ま、彼にとってはセックスなんて簡単な作業、なのかもしれないけれど。
左千夫クンが出てくるまでボクは服を全部脱ぐ。
傷はもうほぼ塞がっていた。
貫かれた痕だけがそこに残り、さっきまでの闘いの事を思い出し、身体がゾクリと震えた。
ボクも相当現金な奴だ。
昨日の今日、どころか、さっきの今、でこの行為だ。
シャワーを終えて左千夫クンが出てくる気配を感じ、いそいそとベッドの中へと入る。
ベッドの端へ寄り、一人分のスペースを開けてその部分をポンポンと叩いた。
「さ、おいで♪」
そう言うと髪をタオルで乾かしながら出てきた左千夫クンは物凄く嫌な顔をしたけど、それさえも特別な表情に思えて愛おしい。
ボクは本当に左千夫クンバカだ。
彼はため息を吐きながらベッドへと歩み寄ってきた。
相変わらずボクはニコニコというかニヤニヤと笑いながら、彼が座ったのを確認すると、後ろからすぐさま抱き着く。
制止の言葉が飛んだ気がしたが、かまわずまだ濡れている首元へと顔を埋め、舌を這わせた。
そのまま身体を密着させるように寄せていき、彼の顔を覗き込む。
「なんだか恋人みたいだネ」
「恋人」なんて冗談口調なら、簡単に言えるのに。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
元から来ていたガウンのようなものを肩から羽織り、髪を乾かしながら出てくると、九鬼は既に全裸だった。
その姿に自然に眉が寄るが、彼の表情は何ら変化が無かった。
ベッドに腰かけると直ぐに体を抱きすくめられ、首筋に彼の息が掛る。
ねっとりと這わされる舌に自然と息が詰まった。
「本当に、節操なし…ですね。」
そう呟いていると顔を覗きこまれた、静かにその表情を見つめていると突拍子もないことを言うので、小さく目を見開いてから表情なく肯定してやる。
「そうですね。」
別に、否定する理由は無い。
だから肯定してやった。
笑みは浮かべてやらなかったが。
そのまま体を返す様に相手をベッドに押し倒すと、口角を上げながら彼の首筋に吸いついてやる。
「恋人みたいに…が。お望みですか?」
唇を離し、下から狡猾に笑みながら挑発的に言ってのける。
そう言うなり、首筋に無数のキスマークを刻んでいく。
制服を着ると見えない位置にしか刻まないが。
これで、彼は暫くセックスができないだろう。
いや、彼ならキスマークなど気にすることなく、するかもしれないが。
首から鎖骨にかけて、無数の鬱血ができると、僕は満足そうにその肌を見つめる。
僕の肩にかけていたガウンが落ちる。
これだけの行為で満たされている自分の心を認めなくなくて、そのまま相手の下半身へと下がって行く。
徐にペニスを握るとそのまま唇を寄せた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
「恋人みたいだ」という言葉を淡々とした口調で肯定されてしまって自分から言い出したものの、何故だか傷ついてしまった。
そのまま押し倒されると、首元に無数の痕を残される。
いくつもの小さな刺激に小さく吐息が漏れた。
「その言葉、義務っぽくてヤダ」
お望みですか、と言われ口先を尖らすように怒った表情を見せた後、彼にされるがままになる。
いくつも付けられて行く刻印が少し嬉しかった。
そして彼が下半身へと顔を落とすと、それを追う様に上半身を起こす。
「シテくれるんだ?もう指輪は返したヨ?」
彼の吐息と唇がペニスに触れる。
冷えた唇が熱を持ち出していたペニスに触れて気持ちがよかった。
そのまま彼の行為を見ながら、背中をなぞるように指を這わせて行く。
白い肌にボクの指が這うのは何度目だろう。
捕虜の時は痣だらけだったが、今はもう薬のおかげで多少残ってはいるものの、ほとんど消えてしまっている。
本当に透き通るような綺麗な肌を見るだけで、腰が疼いてしまう。
その背中に爪を立て、彼を見下ろしながら呟いた。
「傷つけたくなるほど、キレイだネ、君は」
大切にしたいと思うほど、色んな彼を見たくなる。
そして、誰にももうこの肌を、こんな彼を見せたくない独占欲が沸いてくる。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
義務的にこの行為をさせる様に仕向けたのは誰だと一瞬眉を顰めるが、なにも言わないでおく。
皮肉のように言葉を返されてもゆったり笑みを浮かべたまま、口淫を進めて行く。
「最後ですからね。良い思いしたいでしょう?」
ゆったりと返していたら背中に痛みが走る。
彼の爪が当たっているのだと分かると少し見上げるが好きにさせてやる。
これくらいで、どうにかなる体では無いし。
そう言う気分だったから。
他の誰に綺麗だと形容されても、なんとも思わないのに彼だけは違う。
それはきっと彼が僕に対して一番初めに綺麗だと言ったからだろう。
純粋な意味で…だ。
あの地下で会った彼は本当に僕を欲していてくれていた。
それが純粋に嬉しかったことを僕は覚えている。いや、思いだした…か。
「はッ……後で、ちゃんと、手当てしてくださいね。
九鬼、ローション取ってください。」
そう言うと彼はベッドサイドからローションを出してくれた。
ペニスの先端だけ啄んだり、舌を這わしたりしながら、片手にべったりとローションを垂らすとそれを温める様に両手で練る。
それから、右手は九鬼のペニスに塗り広げる様に扱きあげ、左手は自分の前を通してアナルへと持っていく。
少し、逡巡してしまったが僕はそのまま自分のアナルに指を挿入していく。
感じないようにポイントを外しながら、ローションを馴染ませるように指を動かして行った。
ペニスに塗り広げたローションは彼が気遣ってくれたのか甘い味がしたので、僕はそのまま深くまで咥えて吸い上げた
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
彼の行為を眺めながら、小さく甘い息を吐く。
ボクは最後にするつもりなど到底なかったが、どうやら彼は本気でこれが最後だと思っているらしい。
困った。
しかし、そんなことを考える余裕がないほどに彼の舌技や咥内は気持ちがよかった。
ローションを手渡すと、ボクのペニスと自分のアナルをほぐすように行動を起こす。
「淫乱だネ、そんな左千夫クン大好きだヨ」
熱の籠った表情で彼を見下げる。
深く咥えられるペニスが彼の口の中で大きく硬くなっていくのがわかる。
更にローションのおかげか余計に感じてしまって、どんどんと余裕のない表情になっていくのがわかった。
少し彼の喉奥を突くように腰を動かしてみる。
本当はこのまま思い切り腰を打ち付けてやりたかったのを我慢しながら、口角を上げる。
「恋人だったら毎回こんなコトしてくれるの?
左千夫クンの恋人になる人は羨ましいネ」
ペニスを咥えたままの彼の顔を少し上げるようにして頬を両手で支え、腰を動かすとともに彼の顔も軽く動かしてやる。
ピンク色の唇から抜き差しされるローションや唾液でぐちゃぐちゃのペニスを見て、興奮が昇って行った。
「…フェラも自分からしてくれたんだから、挿入だって自分からしてくれるんだよネ?」
ふにふにと支えた頬を指で撫でながら、イタズラに笑った。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
ただただ胎内を掻きまわす行為は苦痛なので夢中でペニスを舐める。
その甘さに酔うように彼の性器を唇で擦り上げ、顔を前後させる。
そうすると彼からも小さく腰を揺らしてきたので吸い上げる様に喉を窄めてやる。
上を向かされると視線が絡んだ彼はどこか切羽詰まった表情をしていて腰が疼いてしまった。
指が馴染むように胎内が収縮を始めたのでペニスから唇を離す。
このまま一度イかしても良かったんだが…。
余り行為を長引かすのは嫌だから、と、自分に言い訳をしながら指を引き抜く。
はやく繋がりたいなんて死んでも思いたくなかった。
「まさか。ただ、貴方が今まで付き合ってきた女性はこんな感じかと思っただけですよ。」
ローションに汚れた手を近くのティッシュで軽く拭ってから座っている彼の肩に手を置く。
平坦な声で言ってのけながら相手にまたがる様に膝立ちになり、右手でペニスを支える様にしてからゆっくりと腰を落としていく。
何度してもこの挿入の際の圧迫には慣れない。
「ク……ッ………ン。――は……僕は今まで貴方の恋人の中で、行為をシてきた中で…何番目…に良かったですか?」
序盤で聞くことでは無いなと思いながらも挿入の苦痛から気を逸らすためにそんな質問を掛ける。
今まで散々抱かれてきたんだから具合くらいは分かるだろう。
ゆっくりと見せつけるように腰を落としていくが、質量のでかさに自然と前屈みになる。
雁首を挿入しきったところで、一度彼の肩に額を預ける様に体を丸めて、大きく息を吐いた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
左千夫クンがボクの上に跨った。
下で何もせずに待ち構えているだけなことに優越感を覚えてしまう。
彼が進んでここまでしてくれるなんて、もしかしたら相当この行為が嫌なのかもしれない。
窮屈な彼の中へと勃起したペニスが挿入されていくのと同時に小さく息を漏らした。
眉を顰め、歪んだ表情を見せる彼の表情をじっと見つめる。
そして、彼らしからぬ質問に、ボクは少し笑いつつも肩に顔を埋める彼の頭を撫でながら耳元で囁くように答えた。
「じゃあ逆に聞くけど、ボクは君の何番目?」
そう言うと彼はくすぐったそうに肩を竦めた。
その仕草に少しイジワルをしたくなってしまう。
彼の腰へ両手を当てると、雁首まで挿入されていたペニスを奥まで一度突き上げるように無理矢理挿入させた。
何度か彼の身体を思い切り突きあげるように腰を動かす。
「ッ…君が、一番って…言ってほしい?言ってあげるからっ、早く、動きなヨ…っ」
跳ねるように飛び上がる彼の身体の重みで、ズブズブと根本までペニスが挿入される。
卑猥なローションの音が室内に響き渡り、更に興奮に身体が震えた。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
耳に掛る息がくすぐったい。
皮肉に返される言葉に自然と眉が寄った。
九鬼なら嘘でも一番だと返してくれる、そう思ったから。
そんな不意を突かれてペニスが奥まで挿入される。
「――――はっ!!あ!!んん!!」
彼が動くと的確に前立腺を捉えられてしまった声が漏れた。
ビクビク体が震えるがそれに耐える様に足裏をベッドに付け直す。
彼の腰使いが緩まると気を取り直すように腰を前後に揺らし、陰毛に擦り付けるように動く。
「……もう…いいです。貴方が……一番な訳が、無い…でしょう?」
挑発に乗る様に口角を上げる。
腰を回す様にペニス全体を刺激していく。
余り、気持ちいいところに当てると動きづらくなるので、括約筋でアナルを締めることを意識しながらペニスを咥え、
空いている手でその、整った胸から腹にかけての筋肉を撫で上げた。
本当に、僕を相手にする理由が彼にはなく思えた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
突き上げると彼から甘い声が響いた。
やっぱり彼が啼いている声はたまらない。
もっと聞いていたかったが、腰の動きを緩めて行くと彼は前後にゆっくりと動き始めた。
この位置から眺めていると、とても卑猥な腰つきだ。
思わず息を飲みながら、うっとりと彼を眺めた。
「ボクが…一番な訳無いか…酷いネ、その一番の男を思って、ボクの上で腰を振るの…?」
自分で口にしたものの、少し苛立ちが生まれる。
抱いて来た女や男達は、大体がボクを一番だと言う。
別にそんな奴らに一番だと思われても嬉しいだとかそういう感情は一切起きない。
ただ、彼が口にした言葉には、少し胸が抉られてしまうような感覚が沸き起こった。
ゆるやかに腰を振っている彼を眺めながら、ボクは枕の裏へと手を入れた。
そこからさっき密かに仕込んでいたブジーとローションを取り出し、彼に見せつける。
そのブジーはS型で今まで彼に挿してきたものより太いモノだった。
「これ挿れられてもそんなこと言ってられるの?」
左千夫クンの表情が歪んだが、気にせずローションを塗り込んで行く。
彼の軽く勃起しているペニスを掴みあげ、そこにも余ったローションを塗り込むように少し扱きあげると、彼の顔に自分の顔を近づけイタズラに笑った。
「…久々に挿れるんじゃナイ?入るかナ?」
そう言うと尿道へとブジーの先をあてがい、上下に擦るようにゆっくりと挿入していった。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
誰が一番と言われてもピンと来なかったけど、友人とすることは有ったなと思考が働く。
何にせよ、常識など一切通用しない場所に僕は居た。
普通の人間とは過ごしてきた環境が違う。
そう考えると彼はまだ近い部類になるかもしれない。
相手の膝の上に乗っている分背筋を張ると見下ろす体勢になる。
そこから視線を下げていると彼は異なる動きをした。
「――――――――――ッ!!!」
目の前に出されるものに表情が硬直していく。
本当に久しぶりだそんなものを挿れるのは。
拒否をしそうになったがそこはグッと堪えた。
最後くらい好きにさせてやりた。
彼は幼いころの僕が唯一関心を持ったものだから。
尿道に入れこまれる際の悲鳴を掻き消す様に相手の首を手に回し、唇を塞いだ。
キスは余り好きではないが彼とのキスは特別。
ただ、いつも辛い味がするのだけは少し苦手だったけど。
それ以外は、満足してしまう。直接彼の言葉が聞けているみたいで…。
舌を絡める行為を繰り返す、彼の舌を夢中で吸い上げた。
「―――ン!!!!……ッ、―――っっ!ん……は、………ぅ、……ク。」
声無き悲鳴が上がり、全身から汗が噴き出る。
体がガクガク震え始め、ブジーの挿入のせいで、腰がうまく動かせない。
S字になっているせいで中を開く様に抉られ背中がしなりそうになった、それでも唇を離さずに首の手に力を入れる。
最後の最後に背中に爪を立て、唇を離すと同時に彼の耳元で囁いてやる。
「九鬼………―――――――――気持ちいい。」
僕のペニスは完全に勃起していた。
ブジーを根元まで咥えながら。
浅ましいなと自分でも思いながら一気に腰を上下に揺らし始めた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
奥へとゆっくり挿入していくと、彼が唇を重ねてくる。
叫ぶような喘ぎを聞きたかったんだけど、これも悪くないか。
彼に応えるように舌を絡め取っていく。
キスだけでも相当気持ちいい。
脳内が全て彼の味で満たされていき、麻痺してしまいそうだった。
久々のブジーはまるで彼の意思かのように尿道の中へと入り込んでいった。
長いそれが前立腺の方へと飲み込まれて行く。
背中に小さな痛みが走り、彼の腕がきつくなった。
そして、耳元で囁かれた言葉に、自分のペニスが更に膨張してしまったのが腸壁から伝わる。
この言葉も「恋人らしいセックス」の一環なのだろうか。
そうだとしても、もっと聞きたい。
嘘でもいいから、何度でも。
「ボクも気持ちいいヨ?」
小さく甘く囁き返した。 そして、前立腺に達したブジーを突き上げるように上下に動かし始める。
一瞬腰の動きが止まったが、促すように自分も腰を軽く打ち付けてやった。
喘ぎを我慢しているようだったので、抱き着いてる彼を突き離すように胸を押しやり、じろじろと顔を眺める。
「いっぱい気持ちいいって言ってヨ、乱れてる左千夫クンが見たいなー」
そう言うと刺激を送るようにさらにブジーを抜き差しさせた。
彼の仕草、喘ぎ、快感、ひとつ残らず逃してなんかやらない。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
突き離されてしまうと彼の後ろに反る様な体勢になり、彼の膝辺りに手を着いた。
尿道のブジーを動かされるとその曲線が前立腺を抉って狂いそうだった。
彼も腰を動かし始めると、もう、僕には余裕が無くなってくる。
「―――ッ、はっ!!ぁああ!!く、……九鬼、九鬼ッ!きもち……いいっ、きもち……はぁ、…―――ンンっ!!」
限界が弾ける様に声が上がる、ガクガクと体を震わせ、背を反らせながらも顎を引くようにして腰を動かす。
後ろに反った体勢では余りはやく動けなかったが、彼のペニスが前立腺を持ち上げて気が狂いそうだった。
そのおかげでアナルもギュッと腸壁を絡みつけペニスを締め上げて行く。
「く……き…、くっ……ぁ!あ!!…………ッ……ん。」
恋人のふりをしているんだ、好きだと言っても問題ない筈。
逆に言ったほうが彼は喜ぶかもしれない。
しかし、僕はどうしても、その言葉が唇から出ない。
唇は震えるばかりだ。
泣きそうに表情を崩しながら相手を見つめる。
ビクンっと体を揺らしてから膝が辛く、腰を振るのが限界になった為相手の上に座り、腰に足を絡めてそこを支点にしながら腰を揺らめかす。
「駄目ですね…僕は……こんなんじゃ、ゼロ点だ……」
気持ちいいと言われてもお世辞にしか聞こえなかった。
好きだともいえない、相手を翻弄してやれない。
せめて、感情じゃなく体だけでも気持ち良くしてやろうと、ブジーの手を自分の手で絡めた。
もう片方でブジーを握ると自然と寝転ぶような体勢になってしまう。
相手の腰に足を絡めたまま腰を揺らす、そのまま尿道の奥をグリっと抉った。
痛みと快楽が上がり更に彼のペニスを締め付ける様に腸壁が波打つ。
「――――っう!!……イ………、ぁ。ああ!!ほんとうに…きもちい……九鬼……あなたと、繋がれて……ぅ、ああ!!」
もう彼の顔を見れなくて、僕は夢中で腰を振った。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
ブジーで前立腺を突きあげてやると、彼はボクが想像した以上に喘ぎ叫んだ。
その声にゾクゾクと身体を震わせると、自然と息が荒くなっていく。
自然と突き上げる速さと強さが増していき、彼の腸壁を抉るように突きあげた。
乱れている彼が愛おしかった。
胸が詰まって感情がはじけてしまいそうな思いをぐっと堪える。
「っ…すっごい…エッチだね、左千夫クンは…」
彼がボクの手に手を絡め、自分でブジーを抜き差ししていく。
その行為とアナルの締め付けでボクにも限界が訪れようとしていた。
が、まだもっと彼の痴態を眺めていたい。
ぐっと射精を我慢しながら絡められた手を離し、彼の手をボクの背中へと回す。
「ちょっと移動しよっか」
余裕のない表情で彼にそう言うと、彼を上に乗せたままベッド脇へと移動し、両足を掲げ持ち上げる。
そのまま度々彼を上下に動かしながら大きな姿見の前へと移動した。
彼はボクに顔を向けているのでまだ気づいていない。
そして床にまた座り込むと、彼の身体をボクを向いている方から鏡の方へと向けるように促す。
そこでやっとどこに連れてこられたのかわかったのか、鏡に映った赤らんだ顔が小さく歪む。
「鏡見ながらしよっか、ほら、自分でブジー動かして」
そう言うと腰を浮かせてアナルの方から前立腺を何度も抉る。
彼の横から覗き込むように鏡を見ると、赤く卑猥な結合部分が鏡に映り込み思わず息が漏れた。
鏡に映る彼の顔を微笑みながら期待を持った視線を送った。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
体を持ち上げられると、まだそんな余力が有るのかと目を見開いた。
僕では感じないのかと思うと自然と気がめげる。
そう考えているうちに体が宙に浮いたので慌てて九鬼の首に回した手を強めた。
「………あ!!……は、ぅ、……………どこへ。」
自重で彼のペニスを深く咥えこんでしまう。
それなのに彼は動いている最中ですら僕を揺すぶる。
それだけ、体力が有り余っているんだ、さっき吐血していたくせに。
これ以上声を漏らしたくなくて、彼の首筋にまた一つ、鬱血を刻んだ。
「ぅ………く、……ン。ここ…はっ……っ!?九鬼……!ぁ!……も。分かりましたから。」
本当は鏡を見ながらなんてしたくなかった。
顔に自分の気持ちが出ているかもしれないのに。
しかし、今日は彼の言うことを聞いてやると決めたばかりだ、挿入を浅くして鏡の方を向き背面座位になる。
浅くなっていた挿入を沈めて行くと先程より自然と深く入ったので思わず悩ましげに息を吐いた。
彼に動かされる方が恥ずかしかったのでつま先を床に伸ばしながら、言われるままにブジーで中を荒らしていった。
「ぁあああ!!!……深いッ!九鬼……も。……は、ん。余り……長くは……あ!……ぅあ!」
ローションが泡立つ結合部が露わになる。
尿道も真っ赤でヒクヒクとわなないている。
そんな痴態を見たくなくて僕は頬を肩に当てる様に斜めに顎を引き目を閉じた。
絶頂は直ぐそこまで来ているが、ブジーが有る限り出せない。
ドライになりそうだったがあれはあれで快楽が強すぎるのでなるべくは普通にイきたい。
そう、思いながら、キュゥっとアナルを締め上げた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
ボクの言う通りに動いてくれる左千夫クンがかわいい。
余裕の無い声が響くと、それさえ興奮材料になってしまう。
彼がそっぽを向いて鏡を見ようとしないので、顎を掴み無理矢理鏡へと顔を向けさせた。
そのまま奥を突きあげる動きをし、生々しい結合部を見せつける。
「ほらっ…もっとちゃんと見て…っボクと君…繋がってるヨ?」
息を吐く様に彼の耳元で囁いた。
ペニスを締め付けてくる腸壁が気持ちいい。
…やっぱり気持ちも欲望も、色々と限界だ。
そのまま暫く彼の痴態を眺めていたが、突然彼を抱えるようにして結合したまま立ち上がる。
彼の後ろから覆いかぶさるようにして、ブジーへと手を伸ばした。
「今日は一緒に射精しよっか…そろそろボクも限界だし…」
ブジーで少し前立腺を突いた後、ゆっくりと引き抜いて行く。
全部抜けきると床へ無造作に放り投げ、彼を少し前かがみにすると両手を鏡へと着かせた。
バックだと顔は見えないが、鏡があれば彼の顔が見れる。
もちろん彼からボクの顔も見えるだろう。
そのまま鏡の中の彼を見つめながらイタズラに微笑む。
「…ちゃんと最後までボクの顔見ててヨ」
そう言うと前立腺を擦るように腰を打ち付ける。
彼の身体が揺れる度に、甘い息が漏れた。
視線を外さないまま彼の快感で歪んだ表情を眺め、口角をあげた。
こんなにどうしようもなく好きなのに、これで最後なんて無理な話だ。
誰にも渡したくない、寧ろこのままずっと繋がっていたい。
心が無理なら、身体だけでもイイ。
激しく腰を打ち付けながら、思考が飛んで行く。
「ん、…は…っ、やっぱり…これでこんなに気持ちいい、関係が終わるのって…勿体ないよネ」
かなり余裕のない表情だっただろう、鏡に映った自分が酷く寂しそうなことに驚いてしまったが、隠している余裕なんてなかった。
「でもっ…君は…嫌なんだよネ…?」
腰の動きは止めずに鏡に映る彼の赤く潤んだ瞳を見つめた。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
「ぅ、ああっ!!くッ!……趣味……が……悪…い。……ぅ、わ……な……に?」
九鬼と繋がっているところなんて出来れば見たくなかった。
離れたくなくなりそうだから、だ。
それだけ、僕の記憶の中で彼のウエイトは大きい。
急に持ち上げられる体に変な声が出てしまった。
ブジーを抜かれる際に身震いが起きる。
限界だと言う言葉を聞くとなんだかホッとした。
鏡へ両手を着くと、僕は顔を背けたかったのだが、顎に添えられた手が許してくれない。
瞼を落とそうとするが、彼から落とされた言葉にもう逃げ道は無かった。
だから、僕は自分の痴態じゃなくて、彼の表情を見ることにする。
そもそもそれが間違いだったのだ。
彼の鏡に映る表情は余裕など微塵も無く、幼い子を僕に晒した寂しげな表情そのものだった。
クラスではあんなに友好的な彼は本当にまだ孤独の泥沼から抜け出せていないと言うのか。
もし、この表情が、僕に対してなら嬉しい限りだが。
仮に僕に向いているとしても、きっと勘違いしているだけだろう。
昔、手に入れそびれたおもちゃが手に入った。僕と彼はそんな関係だ。
きっといつか飽きる日が来る、それが明日なのか、一年後なのか、それ以上かは分からないが。
そうなると僕は耐えきれない。
だから友達のままがいい、でも、それは彼が許してくれない。
そんな顔をしながらそんなことを言うのは卑怯だ。
「はっ!!……っん!!……貴方が…僕とセックスして……いる間、…副会長と…して、手伝って…くれるな…ら、
体の…関係を……続けて…あげても……いい。」
ずるいと思った。
鏡越しですら目を合わせることは出来なかった。
そして、一番してはいけないことだと分かっているのに僕はそれを告げた。
なぜなら体の関係だけなら、仮に彼が僕に飽きても、きっと…友達のままで入れるからだ。
加えてこの関係も続けられる。彼は誰とでもセックスするのだろうけど、そこの仲間に入れる。
彼の玩具の一つでも、僕はきっと満足なんだ。
九鬼が幼いころに僕に落とした爪痕の大きさに静かに笑んだ後、小指に光る指輪を見つめた。
後、どれくらい、僕の手の中にこれはあるんだろうか。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
彼はボクが副会長として手伝ってくれるのなら、この関係を続けてもいいと言った。
けれど、鏡の中の彼はボクと目を合わさなかった。
そんな取引をしなければ、この関係は続けることができないのだろうか。
鏡の中のボクがイタズラに笑った。
こんな時でも笑えるようにできている自分が、少し嫌だった。
どちらにせよ副会長は辞めるつもりはなかった。
折角彼を見つけたんだ、一緒にいられるなら地獄にだってついていく。
「ん、いーヨ…わかった…っこれからよろしくネ、会長」
それだけ言うと、ボクは鏡の彼から目を逸らした。
そして感情を吐きだすかのように更に腰を激しく打ち付ける。
室内に肌と肌がぶつかる音と、卑猥に濡れた音が響き渡った。
息を荒げながら彼の背中に密着し、勃起したペニスへと手を伸ばす。
それをゆっくりと扱きあげながら、彼の顔を覗き込むように囁いた。
「っは…左千夫クン………好き、だヨ」
本当はもっとちゃんと言いたかったけど、ボクはずっと心の中に閉まっておいた気持ちを解放させる。
「大好きっ好き…っもう絶対離さないからっ…」
恋人ごっこの一環として、彼は捉えるだろうか。
でも、この言葉は嘘ではない。
彼と出会った時からずっとずっと、思い続けてきた。
これがトモダチから派生した感情なのだとしても、構わない。
ボクは、彼を愛している。
何度も「好き」と言う言葉を落とす。
それと同時にペニスを扱いている手を速めていき、打ち付けも更に彼の奥へ奥へと届く様に貫いていった。
もう、さすがに身体も心も限界だ。
恋人としての偽りのセックスも、そろそろお終い。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
九鬼は僕の取引に頷いた。
簡単に。
少し複雑な感情でいっぱいなったけど、それは突き上げによって薄れて行った。
「ぁぁああ!!あっ!!ンン!!は、……中ッ、が…ッ」
密着するように背中を逸らせて喘いでいると、彼から言葉が落ちる。
全身が震えて肌が、粟立った。感情を隠すのが大変すぎて喉が引き攣る。
体の反応は隠せないので、自分の欲を現す様にアナルが締まった。
「はぁ、あああ!九鬼……僕も…ッ!!ン、ンン――――――ッ!!」
それ以上の言葉はキスではぐらかす。
体を捻る様にして唇を塞ぐ、そうすると彼からの言葉も途切れた、そうして直ぐに僕はイってしまったので、 自然と胎内が締まる。
鏡を体液で汚しながら、唇の隙間から彼の本名を呼ぶ。
無理矢理絡めた指同士同士の指輪がぶつかった。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
彼からボクが一番欲しい言葉は聞くことができなかった。
はぐらかすようなキスが、少し悲しい。
そのまま彼が果てると同時に、腸壁が更にペニスを捉えて離さない。
彼の奥を突きあげながら、ボクも間もなく彼の中へ欲望を放った。
「……ん……――――――ック!!」
身体が反り上がりガクガクと腰が震え、快感が全身を駆け巡っていった。
射精のように、気持ちも素直に吐きだすことができればいいのに。
そんなことを思いながら、余韻を感じるようにゆっくりと腰の動きを緩めていく。
彼とボクの汗で濡れた背中にキスを落とし、小さくひとつ、赤い印を残し、その痕を見て小さく笑む。
荒い息を整えながら、ペニスを引き抜かずに繋がった状態で床へと座り込んだ。
彼の背中にぴったりと抱き着く様に密着すると、早い鼓動が伝わってくる。
きっとボクの心音も早いのだろう。
「…どう?今までやった中で…ボクが一番になった?」
彼の肩に顎を乗せながら、鏡に白濁色の体液が伝っているのを指で伸ばしながらイタズラに笑った。
自分の笑顔を隠す様に彼が放った精子を伸ばしていく。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
射精後の突き上げは辛い。
快感が長引くからだ。
僕の体は完全に馴染んだように九鬼のペニスを咥えていて、それがすこし滑稽だった。
律動がおさまる、と言うことは、もう恋人ごっこはおしまいだ。
再び引き込まれるように膝の上に座らせると小さく声が漏れる。
「ぁ、ん…………、ふふ、逆に僕は一番になりましたか?」
答えることなく疑問で返してやる、先程の彼のように。
自分の体液を塗り広げられたせいで彼の表情は見えなかったが、先程奪うように絡めた手を強く握り締め、瞼を落とす。
自分で自分に確りとこれからの関係性を言い聞かせて、僕は瞼を開き、寂しく笑んだが…。
「これから、よろしくお願いしますね、――――――九鬼。」
その表情も鏡に映ることは無かった。
【神功 左千夫】
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう意識が戻る。
瞼を開くと天井が広がった。
この天井は見たことが有る。
少なくとも、病院では無いことは確かだ。
そう、ここは九鬼の私室。
戦いを終えてからの記憶が欠落しているので多分また僕は意識を失ったのだろう。
あの状態で柚子由の体を借りたのだから当たり前の結果なのだけど。
「――――――――――ッ。」
意識がはっきりしてくると全身の痛みに体が強張った。
しかし、想像していたよりもはるかに傷が軽度だ。
どうやら、九鬼の仲間の能力によって手当を施されたらしい。
体中に巻かれている包帯から不思議なエネルギーを感じた。
僕は上半身を起こすと両腕に刺さっている輸血と点滴を忌々しげに睨みつけてから早々に引き抜いて捨てる。
「駄目だよ。外しちゃ、一応キミ、重症なんだから。」
声がした方を見ると、ソファーに腰掛けた九鬼が居た。
彼も僕と同じように点滴を付けていた。
しかし、その表情は先程までの黒鬼と呼ばれていた欠片もなくニコニコと僕を見つめていて不快だった。
「もう充分です。ありがとうございました。
折角の御招待ですが、色々やることが有るので帰っていいですか?」
余り長居するといいことが無い、僕の本能はそう告げている。
僕はそれに従い、疑問の様に告げながらも早々に腰を上げる、視界が歪むが気にせず彼の横を通り抜けようとした。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
闘いが終わった後、左千夫クンを連れてマンションへと戻った。
彼が眠っている間にフリーデルの薬でお互いの治療を終え、目を覚ますまでソファでじっと待つ。
目覚めた彼はやはりふてぶてしく、闘っていた時の楽しそうな笑顔はまったく見せなかったった。
点滴を取って横をすり抜ける彼の腕を掴む。
掴んだ手を振り払われた勢いで自分に刺していた点滴が抜けた。
「もーなんでそう無茶ばっかりするのカナ」
深くため息を付くと、ボクはポケットから小さなケースを取り出した。
眉を顰めた彼に向かって見えるようにケースを開くと、口端をあげて笑う。
「ほら、約束の物」
それは、彼に返すと約束したピンキーリングだった。
実のところ、これはボクが持っていたものなので、彼が大事にしていたピンキーリングはすでにボクの左小指にはめられている。
サイズは手直ししているが、デザインは一緒なので、彼はこれがボクがつけていたものだと気づくことは多分ないだろう。
ボクの家系では生まれた時にこのピンキーリングを二つ渡されている。
婚約者に渡すという名目があり、実際これもボクの婚約者へ渡さなければならないものだったが、周りには無くしたと嘘をついていた。
もちろん父親には酷いお仕置きを受けたが。
ケースから指輪を取り出すと、彼の左手を掴み小指へゆっくりとはめていく。
「ん、サイズぴったりダネ!ボクからの愛のしるし♪」
そう言って指輪がはめられた小指へとキスを落とした。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
嗚呼。やはり僕の嫌な予感は当たったようだ。
彼は僕の手を掬い上げるそして小指にリングが嵌められた。
前のものは小さくて指には入らなかった。
しかし、質感は同じなので、サイズを直したのだろう。
そう、これは彼に奪われた、幼い僕が彼から貰った指輪。
僕にとってはこれは既に役目を終えたものだ。
ずっと持っていたのは、彼に返したかったから持っていただけだ。
そして、本当に友達になりたかった。
幼い僕の思いはそうだ。
いや、もっと大きな欲が有ったのかもしれないが。
指にキスされると慌てて手を引く、その勢いでぴったりと嵌っているリングを指から引き抜く。
そのまま、それを壁に向かって投げようとしたが、思いとどまった。
…と、言うよりは投げることが出来ない。
小さな僕でもこの高価さは分かった。
大きくなった今はこれの意味が分かるからだ。
彼がそう言った意味で渡しているとは思えないが…。
彼の小指にも同じリングが嵌っている。
これは彼がかの有名なマフィアの後継だという証拠。
僕は九鬼のところから逃げ帰った後、彼について調べた。
彼の父親はマフィアのドンだ、その父親の小指にも同じようにピンキーリングが嵌っていた。
デザインは異なっていたが、きっと、産まれたときか、祝いの時かに作られるものだろう。
投げ捨てようとして握った手をゆっくりと開き、手の中のリングを見つめる。
シンプルなデザインでその裏に石が嵌めこまれたものだ。
小さな僕はこれを九鬼に返したい一心で必死に持っていた。
そして、それと同じくらい欲しかったものが今、僕の手の中にある。
「いりません。何度も言ってますがこんな高価なもの受け取れません。
それに、重たすぎます。」
思いつく限りの辛辣な言葉と一緒に勢いに任せて相手の胸に突き返す。
表情はかなり真剣だったかも知れない。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
やっぱり指輪は突き返されてしまった。
ボクは更にそれを彼へと突き返す。
「酷い!せっかくの愛の告白だったのに、なんでそんなこと言うの!
愛の告白は重いに決まってるでショ!!」
頬を膨らませて怒ったような表情を見せた。
しかし彼は更にまた指輪を突き返してくる。
「受け取れません」
「あげるってば!!」
「受け取れません」
「貰ってよ!!!」
突き返せば突き返される、その行動を数度繰り返すと、傷は治って来ているとも言えどさすがに疲労で息があがってくる。
「はっ…はぁ…っ……お願いだから…受け取って…ゲホッゴホッ」
突き返された指輪をぐっと彼の胸元へ押し込むように渡したと同時に、ボクは咳き込みながら口元を抑えた。
口端から血が流れ、手のひらにべっとりと血が付く。
「ほら…素直に受け取らないからボクの状態悪化したじゃんか……」
息を荒げながらじとっとした瞳で彼を見つめた。
まぁ、これ血じゃなくてケチャップなんだけどネ。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
僕の息も自然と上がる。
暫く押し問答を繰り返していると、急に彼が吐血した。
僕、同様彼もかなりの傷を負っていたのでそれに触ったのかと手を緩める。
結局指輪は自分の胸の前の手の中にある。
仕方なく溜息を落としてから、それを指に嵌める。
勿論、無くしたら駄目なので嵌めるだけでずっとここにしておく気は無い。
「仕方がないので預かっときますよ。
返してほしくなったらいつでも、言って下さい。」
いつか、これは僕以外の手に渡ることになるのだろう。
それを大切に保存する自分の滑稽さに思わず、俯いたまま苦笑してしまう。
彼がこれを返してと言うときは、やはり、いつものように笑って言われるのだろうか。
「それだけですか?なら、僕は帰りますが。」
そんな無駄なことを考えた後にさらっと言葉を告げて僕はまた歩き出す。
しかし、用はまだ終わっていないのか、無理矢理腕を引っ張られた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
なんとか受け取ってはくれた。
まぁかなり嫌々な感じは漂ってるけど。
ピンキーリングが小指にはめられると、自然と笑みが零れた。
でも、彼に本気で愛の告白をしても、きっと届かないんだろう。
それはやっぱり少し寂しい気もする。
冗談口調じゃないと告げることができないボクも、相当ずるいのかもしれないが。
「待ってヨ」
帰ろうとする左千夫クンの手を掴み、口元のケチャップを拭うフリをして、一緒に増血剤をいくつか口に含んだ。
「指輪をはめた後って何するか知ってる?」
そう言いながら笑うと、彼の口の中へ無理矢理増血剤を押し込むようにキスをした。
舌を絡め、奥へと押しやり飲み込ませる。
飲み込んだのを確認した後も、彼は抵抗していたが、そのままベッドへと押し倒すように座り込ませた。
「んっ……」
彼の下半身に自分の下半身を擦りつけながら、咥内を無茶苦茶に犯していく。
頭を押し付けるように指に髪を絡め、離さないようにしっかりと抱き寄せた。
珍しく酷い抵抗は見せなかったが、唇を離した時、彼の赤い瞳はボクを睨みつけていた。
その瞳にさえ腰が疼いてしまう。
「セックスしよっか」
イタズラににっこりと笑うと、彼は深くため息をついた。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
彼の質問には正直答えたくなかった。
その考えが彼に届いたかのように、僕は口を塞がれる。
まるで指輪の礼をくれと言わんばかりにキスをされる。
一緒に口内に送り込まれた増血剤は今、僕には必要なものだったので仕方なく貰うが、
もっと、他の方法で渡してくれてもいいと思った。
「――――はっ、………ふ、……ン。」
いなすように舌を絡め、ベッドへと腰を下ろす。
深く、呼吸さえ奪うような口付けに酔いそうになるが、それはその後の言葉にかき消された。
僕は盛大に溜息を吐いた。
「僕はもう、貴方の捕虜ではありませんよ。
会長、副会長と言う存在に、セックスは必要ありません。
それに、…そんなことをしなくても、貴方から離れて行ったりしませんので安心して下さい。」
男を抱いて何が愉しいと言うのだ。
彼の思考が全く分からなかった。
新しいおもちゃが欲しいだけなのか?
それならば、それで少し複雑な気分なので、僕は冷たい言葉を返す。
ただ、彼が、昔の様に僕がどこかに行くのを体で繋ぎ止めようとしているなら、その必要は無いと告げてやった。
本当は今すぐにも蹴り飛ばしてやりたかったが、また吐血されたら困るのでそこは大人しくしておく。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
「セックスなんてしなくても、ボクから離れて行かない」といった左千夫クンの言葉にボクはにやけるように口角があがってしまう。
そうか、ボクと彼はきちんとトモダチになれたんだ。
今日、切れて無くなった後ろ髪を無意識に撫でた。
「彼を見つけて絶対にトモダチになる」と願掛けのように伸ばして長くなっていた髪は、もうそこにはない。
ボクはにやついてしまう顔を俯いて隠す。
「別に君はもう捕虜でもなんでもないヨ、でもさ、会長副会長以前にボク達は人で男で…トモダチでショ?
ま、だからってセックスする必要も意味も無いって言うかもしれないけどサ。
存在を確かめる作業だって必要だよ、ボクはとっても寂しがり屋だからネ。
…だから…お願い。したい。これが本当に最後でいいから」
切羽詰まった声で彼に問いかけた。
なるべく真剣な表情で。
正直このセックスが最後とは微塵も思ってはいない。
うまくセックスへ持っていくつもりの言葉だったが、少し本心も交じっていた。
彼がいるから、もう寂しくなんてないはずなんだけどネ。
彼の髪を指に絡ませながら、顔の輪郭を指先でなぞっていき濡れた唇を親指で優しく押さえる。
間近で見る彼の瞳にうっすらとボクが映っているのが見えた。
彼の返答を促すように、細い腰へと手を伸ばし、抱く様に彼と密着する。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
彼の言い分に僕はもう一度盛大な溜息を吐くことになった。
更に密着する体。
なんとなく分かっていたが彼にとってはセックスは日常の一環になってしまっているのだろう。
友達とすることなんてきっと普通の事なのだ。
そう、彼にとっては普通。
それを自分に言い聞かせると、真っ直ぐに見詰めていた視線を一瞬だけ伏せる。
そして、唇の上に有った親指にガジリと噛み付いてやる。
一瞬彼がたじろいだ間にその腕の中からひらりと抜け出る。
ガウンのような白い服の前を緩めながらシャワー室へ向かう。
前に連れて行かれた為に場所は把握していた。
「シャワー浴びてきます。
テレビでも見て置いてください。」
最後と言うならしてやらないことも無い。
別にヤって減る訳でも無いからだ、早々にシャワー室の前に来ると服を脱ぎ捨て包帯を取って行く。
腹に有った傷口は塞がっていて、小さく息を吐いた。
それでも、全快している訳ではないので、スッとその傷跡を撫でる。
なんだか、この傷が消えてしまうのは勿体無いと思う辺り僕もだいぶ彼の毒牙に犯されているのだろうか。
小さく満更でも無い笑みを浮かべてからシャワー室へと姿を消す。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
成功した。
という言葉はおかしいかもしれないが、左千夫クンがその気になってくれた。
抵抗されないのはなんだか物足りないが、やっぱり嬉しい。
ボクが彼の中で受け入れられている気がするから。
ま、彼にとってはセックスなんて簡単な作業、なのかもしれないけれど。
左千夫クンが出てくるまでボクは服を全部脱ぐ。
傷はもうほぼ塞がっていた。
貫かれた痕だけがそこに残り、さっきまでの闘いの事を思い出し、身体がゾクリと震えた。
ボクも相当現金な奴だ。
昨日の今日、どころか、さっきの今、でこの行為だ。
シャワーを終えて左千夫クンが出てくる気配を感じ、いそいそとベッドの中へと入る。
ベッドの端へ寄り、一人分のスペースを開けてその部分をポンポンと叩いた。
「さ、おいで♪」
そう言うと髪をタオルで乾かしながら出てきた左千夫クンは物凄く嫌な顔をしたけど、それさえも特別な表情に思えて愛おしい。
ボクは本当に左千夫クンバカだ。
彼はため息を吐きながらベッドへと歩み寄ってきた。
相変わらずボクはニコニコというかニヤニヤと笑いながら、彼が座ったのを確認すると、後ろからすぐさま抱き着く。
制止の言葉が飛んだ気がしたが、かまわずまだ濡れている首元へと顔を埋め、舌を這わせた。
そのまま身体を密着させるように寄せていき、彼の顔を覗き込む。
「なんだか恋人みたいだネ」
「恋人」なんて冗談口調なら、簡単に言えるのに。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
元から来ていたガウンのようなものを肩から羽織り、髪を乾かしながら出てくると、九鬼は既に全裸だった。
その姿に自然に眉が寄るが、彼の表情は何ら変化が無かった。
ベッドに腰かけると直ぐに体を抱きすくめられ、首筋に彼の息が掛る。
ねっとりと這わされる舌に自然と息が詰まった。
「本当に、節操なし…ですね。」
そう呟いていると顔を覗きこまれた、静かにその表情を見つめていると突拍子もないことを言うので、小さく目を見開いてから表情なく肯定してやる。
「そうですね。」
別に、否定する理由は無い。
だから肯定してやった。
笑みは浮かべてやらなかったが。
そのまま体を返す様に相手をベッドに押し倒すと、口角を上げながら彼の首筋に吸いついてやる。
「恋人みたいに…が。お望みですか?」
唇を離し、下から狡猾に笑みながら挑発的に言ってのける。
そう言うなり、首筋に無数のキスマークを刻んでいく。
制服を着ると見えない位置にしか刻まないが。
これで、彼は暫くセックスができないだろう。
いや、彼ならキスマークなど気にすることなく、するかもしれないが。
首から鎖骨にかけて、無数の鬱血ができると、僕は満足そうにその肌を見つめる。
僕の肩にかけていたガウンが落ちる。
これだけの行為で満たされている自分の心を認めなくなくて、そのまま相手の下半身へと下がって行く。
徐にペニスを握るとそのまま唇を寄せた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
「恋人みたいだ」という言葉を淡々とした口調で肯定されてしまって自分から言い出したものの、何故だか傷ついてしまった。
そのまま押し倒されると、首元に無数の痕を残される。
いくつもの小さな刺激に小さく吐息が漏れた。
「その言葉、義務っぽくてヤダ」
お望みですか、と言われ口先を尖らすように怒った表情を見せた後、彼にされるがままになる。
いくつも付けられて行く刻印が少し嬉しかった。
そして彼が下半身へと顔を落とすと、それを追う様に上半身を起こす。
「シテくれるんだ?もう指輪は返したヨ?」
彼の吐息と唇がペニスに触れる。
冷えた唇が熱を持ち出していたペニスに触れて気持ちがよかった。
そのまま彼の行為を見ながら、背中をなぞるように指を這わせて行く。
白い肌にボクの指が這うのは何度目だろう。
捕虜の時は痣だらけだったが、今はもう薬のおかげで多少残ってはいるものの、ほとんど消えてしまっている。
本当に透き通るような綺麗な肌を見るだけで、腰が疼いてしまう。
その背中に爪を立て、彼を見下ろしながら呟いた。
「傷つけたくなるほど、キレイだネ、君は」
大切にしたいと思うほど、色んな彼を見たくなる。
そして、誰にももうこの肌を、こんな彼を見せたくない独占欲が沸いてくる。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
義務的にこの行為をさせる様に仕向けたのは誰だと一瞬眉を顰めるが、なにも言わないでおく。
皮肉のように言葉を返されてもゆったり笑みを浮かべたまま、口淫を進めて行く。
「最後ですからね。良い思いしたいでしょう?」
ゆったりと返していたら背中に痛みが走る。
彼の爪が当たっているのだと分かると少し見上げるが好きにさせてやる。
これくらいで、どうにかなる体では無いし。
そう言う気分だったから。
他の誰に綺麗だと形容されても、なんとも思わないのに彼だけは違う。
それはきっと彼が僕に対して一番初めに綺麗だと言ったからだろう。
純粋な意味で…だ。
あの地下で会った彼は本当に僕を欲していてくれていた。
それが純粋に嬉しかったことを僕は覚えている。いや、思いだした…か。
「はッ……後で、ちゃんと、手当てしてくださいね。
九鬼、ローション取ってください。」
そう言うと彼はベッドサイドからローションを出してくれた。
ペニスの先端だけ啄んだり、舌を這わしたりしながら、片手にべったりとローションを垂らすとそれを温める様に両手で練る。
それから、右手は九鬼のペニスに塗り広げる様に扱きあげ、左手は自分の前を通してアナルへと持っていく。
少し、逡巡してしまったが僕はそのまま自分のアナルに指を挿入していく。
感じないようにポイントを外しながら、ローションを馴染ませるように指を動かして行った。
ペニスに塗り広げたローションは彼が気遣ってくれたのか甘い味がしたので、僕はそのまま深くまで咥えて吸い上げた
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
彼の行為を眺めながら、小さく甘い息を吐く。
ボクは最後にするつもりなど到底なかったが、どうやら彼は本気でこれが最後だと思っているらしい。
困った。
しかし、そんなことを考える余裕がないほどに彼の舌技や咥内は気持ちがよかった。
ローションを手渡すと、ボクのペニスと自分のアナルをほぐすように行動を起こす。
「淫乱だネ、そんな左千夫クン大好きだヨ」
熱の籠った表情で彼を見下げる。
深く咥えられるペニスが彼の口の中で大きく硬くなっていくのがわかる。
更にローションのおかげか余計に感じてしまって、どんどんと余裕のない表情になっていくのがわかった。
少し彼の喉奥を突くように腰を動かしてみる。
本当はこのまま思い切り腰を打ち付けてやりたかったのを我慢しながら、口角を上げる。
「恋人だったら毎回こんなコトしてくれるの?
左千夫クンの恋人になる人は羨ましいネ」
ペニスを咥えたままの彼の顔を少し上げるようにして頬を両手で支え、腰を動かすとともに彼の顔も軽く動かしてやる。
ピンク色の唇から抜き差しされるローションや唾液でぐちゃぐちゃのペニスを見て、興奮が昇って行った。
「…フェラも自分からしてくれたんだから、挿入だって自分からしてくれるんだよネ?」
ふにふにと支えた頬を指で撫でながら、イタズラに笑った。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
ただただ胎内を掻きまわす行為は苦痛なので夢中でペニスを舐める。
その甘さに酔うように彼の性器を唇で擦り上げ、顔を前後させる。
そうすると彼からも小さく腰を揺らしてきたので吸い上げる様に喉を窄めてやる。
上を向かされると視線が絡んだ彼はどこか切羽詰まった表情をしていて腰が疼いてしまった。
指が馴染むように胎内が収縮を始めたのでペニスから唇を離す。
このまま一度イかしても良かったんだが…。
余り行為を長引かすのは嫌だから、と、自分に言い訳をしながら指を引き抜く。
はやく繋がりたいなんて死んでも思いたくなかった。
「まさか。ただ、貴方が今まで付き合ってきた女性はこんな感じかと思っただけですよ。」
ローションに汚れた手を近くのティッシュで軽く拭ってから座っている彼の肩に手を置く。
平坦な声で言ってのけながら相手にまたがる様に膝立ちになり、右手でペニスを支える様にしてからゆっくりと腰を落としていく。
何度してもこの挿入の際の圧迫には慣れない。
「ク……ッ………ン。――は……僕は今まで貴方の恋人の中で、行為をシてきた中で…何番目…に良かったですか?」
序盤で聞くことでは無いなと思いながらも挿入の苦痛から気を逸らすためにそんな質問を掛ける。
今まで散々抱かれてきたんだから具合くらいは分かるだろう。
ゆっくりと見せつけるように腰を落としていくが、質量のでかさに自然と前屈みになる。
雁首を挿入しきったところで、一度彼の肩に額を預ける様に体を丸めて、大きく息を吐いた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
左千夫クンがボクの上に跨った。
下で何もせずに待ち構えているだけなことに優越感を覚えてしまう。
彼が進んでここまでしてくれるなんて、もしかしたら相当この行為が嫌なのかもしれない。
窮屈な彼の中へと勃起したペニスが挿入されていくのと同時に小さく息を漏らした。
眉を顰め、歪んだ表情を見せる彼の表情をじっと見つめる。
そして、彼らしからぬ質問に、ボクは少し笑いつつも肩に顔を埋める彼の頭を撫でながら耳元で囁くように答えた。
「じゃあ逆に聞くけど、ボクは君の何番目?」
そう言うと彼はくすぐったそうに肩を竦めた。
その仕草に少しイジワルをしたくなってしまう。
彼の腰へ両手を当てると、雁首まで挿入されていたペニスを奥まで一度突き上げるように無理矢理挿入させた。
何度か彼の身体を思い切り突きあげるように腰を動かす。
「ッ…君が、一番って…言ってほしい?言ってあげるからっ、早く、動きなヨ…っ」
跳ねるように飛び上がる彼の身体の重みで、ズブズブと根本までペニスが挿入される。
卑猥なローションの音が室内に響き渡り、更に興奮に身体が震えた。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
耳に掛る息がくすぐったい。
皮肉に返される言葉に自然と眉が寄った。
九鬼なら嘘でも一番だと返してくれる、そう思ったから。
そんな不意を突かれてペニスが奥まで挿入される。
「――――はっ!!あ!!んん!!」
彼が動くと的確に前立腺を捉えられてしまった声が漏れた。
ビクビク体が震えるがそれに耐える様に足裏をベッドに付け直す。
彼の腰使いが緩まると気を取り直すように腰を前後に揺らし、陰毛に擦り付けるように動く。
「……もう…いいです。貴方が……一番な訳が、無い…でしょう?」
挑発に乗る様に口角を上げる。
腰を回す様にペニス全体を刺激していく。
余り、気持ちいいところに当てると動きづらくなるので、括約筋でアナルを締めることを意識しながらペニスを咥え、
空いている手でその、整った胸から腹にかけての筋肉を撫で上げた。
本当に、僕を相手にする理由が彼にはなく思えた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
突き上げると彼から甘い声が響いた。
やっぱり彼が啼いている声はたまらない。
もっと聞いていたかったが、腰の動きを緩めて行くと彼は前後にゆっくりと動き始めた。
この位置から眺めていると、とても卑猥な腰つきだ。
思わず息を飲みながら、うっとりと彼を眺めた。
「ボクが…一番な訳無いか…酷いネ、その一番の男を思って、ボクの上で腰を振るの…?」
自分で口にしたものの、少し苛立ちが生まれる。
抱いて来た女や男達は、大体がボクを一番だと言う。
別にそんな奴らに一番だと思われても嬉しいだとかそういう感情は一切起きない。
ただ、彼が口にした言葉には、少し胸が抉られてしまうような感覚が沸き起こった。
ゆるやかに腰を振っている彼を眺めながら、ボクは枕の裏へと手を入れた。
そこからさっき密かに仕込んでいたブジーとローションを取り出し、彼に見せつける。
そのブジーはS型で今まで彼に挿してきたものより太いモノだった。
「これ挿れられてもそんなこと言ってられるの?」
左千夫クンの表情が歪んだが、気にせずローションを塗り込んで行く。
彼の軽く勃起しているペニスを掴みあげ、そこにも余ったローションを塗り込むように少し扱きあげると、彼の顔に自分の顔を近づけイタズラに笑った。
「…久々に挿れるんじゃナイ?入るかナ?」
そう言うと尿道へとブジーの先をあてがい、上下に擦るようにゆっくりと挿入していった。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
誰が一番と言われてもピンと来なかったけど、友人とすることは有ったなと思考が働く。
何にせよ、常識など一切通用しない場所に僕は居た。
普通の人間とは過ごしてきた環境が違う。
そう考えると彼はまだ近い部類になるかもしれない。
相手の膝の上に乗っている分背筋を張ると見下ろす体勢になる。
そこから視線を下げていると彼は異なる動きをした。
「――――――――――ッ!!!」
目の前に出されるものに表情が硬直していく。
本当に久しぶりだそんなものを挿れるのは。
拒否をしそうになったがそこはグッと堪えた。
最後くらい好きにさせてやりた。
彼は幼いころの僕が唯一関心を持ったものだから。
尿道に入れこまれる際の悲鳴を掻き消す様に相手の首を手に回し、唇を塞いだ。
キスは余り好きではないが彼とのキスは特別。
ただ、いつも辛い味がするのだけは少し苦手だったけど。
それ以外は、満足してしまう。直接彼の言葉が聞けているみたいで…。
舌を絡める行為を繰り返す、彼の舌を夢中で吸い上げた。
「―――ン!!!!……ッ、―――っっ!ん……は、………ぅ、……ク。」
声無き悲鳴が上がり、全身から汗が噴き出る。
体がガクガク震え始め、ブジーの挿入のせいで、腰がうまく動かせない。
S字になっているせいで中を開く様に抉られ背中がしなりそうになった、それでも唇を離さずに首の手に力を入れる。
最後の最後に背中に爪を立て、唇を離すと同時に彼の耳元で囁いてやる。
「九鬼………―――――――――気持ちいい。」
僕のペニスは完全に勃起していた。
ブジーを根元まで咥えながら。
浅ましいなと自分でも思いながら一気に腰を上下に揺らし始めた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
奥へとゆっくり挿入していくと、彼が唇を重ねてくる。
叫ぶような喘ぎを聞きたかったんだけど、これも悪くないか。
彼に応えるように舌を絡め取っていく。
キスだけでも相当気持ちいい。
脳内が全て彼の味で満たされていき、麻痺してしまいそうだった。
久々のブジーはまるで彼の意思かのように尿道の中へと入り込んでいった。
長いそれが前立腺の方へと飲み込まれて行く。
背中に小さな痛みが走り、彼の腕がきつくなった。
そして、耳元で囁かれた言葉に、自分のペニスが更に膨張してしまったのが腸壁から伝わる。
この言葉も「恋人らしいセックス」の一環なのだろうか。
そうだとしても、もっと聞きたい。
嘘でもいいから、何度でも。
「ボクも気持ちいいヨ?」
小さく甘く囁き返した。 そして、前立腺に達したブジーを突き上げるように上下に動かし始める。
一瞬腰の動きが止まったが、促すように自分も腰を軽く打ち付けてやった。
喘ぎを我慢しているようだったので、抱き着いてる彼を突き離すように胸を押しやり、じろじろと顔を眺める。
「いっぱい気持ちいいって言ってヨ、乱れてる左千夫クンが見たいなー」
そう言うと刺激を送るようにさらにブジーを抜き差しさせた。
彼の仕草、喘ぎ、快感、ひとつ残らず逃してなんかやらない。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
突き離されてしまうと彼の後ろに反る様な体勢になり、彼の膝辺りに手を着いた。
尿道のブジーを動かされるとその曲線が前立腺を抉って狂いそうだった。
彼も腰を動かし始めると、もう、僕には余裕が無くなってくる。
「―――ッ、はっ!!ぁああ!!く、……九鬼、九鬼ッ!きもち……いいっ、きもち……はぁ、…―――ンンっ!!」
限界が弾ける様に声が上がる、ガクガクと体を震わせ、背を反らせながらも顎を引くようにして腰を動かす。
後ろに反った体勢では余りはやく動けなかったが、彼のペニスが前立腺を持ち上げて気が狂いそうだった。
そのおかげでアナルもギュッと腸壁を絡みつけペニスを締め上げて行く。
「く……き…、くっ……ぁ!あ!!…………ッ……ん。」
恋人のふりをしているんだ、好きだと言っても問題ない筈。
逆に言ったほうが彼は喜ぶかもしれない。
しかし、僕はどうしても、その言葉が唇から出ない。
唇は震えるばかりだ。
泣きそうに表情を崩しながら相手を見つめる。
ビクンっと体を揺らしてから膝が辛く、腰を振るのが限界になった為相手の上に座り、腰に足を絡めてそこを支点にしながら腰を揺らめかす。
「駄目ですね…僕は……こんなんじゃ、ゼロ点だ……」
気持ちいいと言われてもお世辞にしか聞こえなかった。
好きだともいえない、相手を翻弄してやれない。
せめて、感情じゃなく体だけでも気持ち良くしてやろうと、ブジーの手を自分の手で絡めた。
もう片方でブジーを握ると自然と寝転ぶような体勢になってしまう。
相手の腰に足を絡めたまま腰を揺らす、そのまま尿道の奥をグリっと抉った。
痛みと快楽が上がり更に彼のペニスを締め付ける様に腸壁が波打つ。
「――――っう!!……イ………、ぁ。ああ!!ほんとうに…きもちい……九鬼……あなたと、繋がれて……ぅ、ああ!!」
もう彼の顔を見れなくて、僕は夢中で腰を振った。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
ブジーで前立腺を突きあげてやると、彼はボクが想像した以上に喘ぎ叫んだ。
その声にゾクゾクと身体を震わせると、自然と息が荒くなっていく。
自然と突き上げる速さと強さが増していき、彼の腸壁を抉るように突きあげた。
乱れている彼が愛おしかった。
胸が詰まって感情がはじけてしまいそうな思いをぐっと堪える。
「っ…すっごい…エッチだね、左千夫クンは…」
彼がボクの手に手を絡め、自分でブジーを抜き差ししていく。
その行為とアナルの締め付けでボクにも限界が訪れようとしていた。
が、まだもっと彼の痴態を眺めていたい。
ぐっと射精を我慢しながら絡められた手を離し、彼の手をボクの背中へと回す。
「ちょっと移動しよっか」
余裕のない表情で彼にそう言うと、彼を上に乗せたままベッド脇へと移動し、両足を掲げ持ち上げる。
そのまま度々彼を上下に動かしながら大きな姿見の前へと移動した。
彼はボクに顔を向けているのでまだ気づいていない。
そして床にまた座り込むと、彼の身体をボクを向いている方から鏡の方へと向けるように促す。
そこでやっとどこに連れてこられたのかわかったのか、鏡に映った赤らんだ顔が小さく歪む。
「鏡見ながらしよっか、ほら、自分でブジー動かして」
そう言うと腰を浮かせてアナルの方から前立腺を何度も抉る。
彼の横から覗き込むように鏡を見ると、赤く卑猥な結合部分が鏡に映り込み思わず息が漏れた。
鏡に映る彼の顔を微笑みながら期待を持った視線を送った。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
体を持ち上げられると、まだそんな余力が有るのかと目を見開いた。
僕では感じないのかと思うと自然と気がめげる。
そう考えているうちに体が宙に浮いたので慌てて九鬼の首に回した手を強めた。
「………あ!!……は、ぅ、……………どこへ。」
自重で彼のペニスを深く咥えこんでしまう。
それなのに彼は動いている最中ですら僕を揺すぶる。
それだけ、体力が有り余っているんだ、さっき吐血していたくせに。
これ以上声を漏らしたくなくて、彼の首筋にまた一つ、鬱血を刻んだ。
「ぅ………く、……ン。ここ…はっ……っ!?九鬼……!ぁ!……も。分かりましたから。」
本当は鏡を見ながらなんてしたくなかった。
顔に自分の気持ちが出ているかもしれないのに。
しかし、今日は彼の言うことを聞いてやると決めたばかりだ、挿入を浅くして鏡の方を向き背面座位になる。
浅くなっていた挿入を沈めて行くと先程より自然と深く入ったので思わず悩ましげに息を吐いた。
彼に動かされる方が恥ずかしかったのでつま先を床に伸ばしながら、言われるままにブジーで中を荒らしていった。
「ぁあああ!!!……深いッ!九鬼……も。……は、ん。余り……長くは……あ!……ぅあ!」
ローションが泡立つ結合部が露わになる。
尿道も真っ赤でヒクヒクとわなないている。
そんな痴態を見たくなくて僕は頬を肩に当てる様に斜めに顎を引き目を閉じた。
絶頂は直ぐそこまで来ているが、ブジーが有る限り出せない。
ドライになりそうだったがあれはあれで快楽が強すぎるのでなるべくは普通にイきたい。
そう、思いながら、キュゥっとアナルを締め上げた。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
ボクの言う通りに動いてくれる左千夫クンがかわいい。
余裕の無い声が響くと、それさえ興奮材料になってしまう。
彼がそっぽを向いて鏡を見ようとしないので、顎を掴み無理矢理鏡へと顔を向けさせた。
そのまま奥を突きあげる動きをし、生々しい結合部を見せつける。
「ほらっ…もっとちゃんと見て…っボクと君…繋がってるヨ?」
息を吐く様に彼の耳元で囁いた。
ペニスを締め付けてくる腸壁が気持ちいい。
…やっぱり気持ちも欲望も、色々と限界だ。
そのまま暫く彼の痴態を眺めていたが、突然彼を抱えるようにして結合したまま立ち上がる。
彼の後ろから覆いかぶさるようにして、ブジーへと手を伸ばした。
「今日は一緒に射精しよっか…そろそろボクも限界だし…」
ブジーで少し前立腺を突いた後、ゆっくりと引き抜いて行く。
全部抜けきると床へ無造作に放り投げ、彼を少し前かがみにすると両手を鏡へと着かせた。
バックだと顔は見えないが、鏡があれば彼の顔が見れる。
もちろん彼からボクの顔も見えるだろう。
そのまま鏡の中の彼を見つめながらイタズラに微笑む。
「…ちゃんと最後までボクの顔見ててヨ」
そう言うと前立腺を擦るように腰を打ち付ける。
彼の身体が揺れる度に、甘い息が漏れた。
視線を外さないまま彼の快感で歪んだ表情を眺め、口角をあげた。
こんなにどうしようもなく好きなのに、これで最後なんて無理な話だ。
誰にも渡したくない、寧ろこのままずっと繋がっていたい。
心が無理なら、身体だけでもイイ。
激しく腰を打ち付けながら、思考が飛んで行く。
「ん、…は…っ、やっぱり…これでこんなに気持ちいい、関係が終わるのって…勿体ないよネ」
かなり余裕のない表情だっただろう、鏡に映った自分が酷く寂しそうなことに驚いてしまったが、隠している余裕なんてなかった。
「でもっ…君は…嫌なんだよネ…?」
腰の動きは止めずに鏡に映る彼の赤く潤んだ瞳を見つめた。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
「ぅ、ああっ!!くッ!……趣味……が……悪…い。……ぅ、わ……な……に?」
九鬼と繋がっているところなんて出来れば見たくなかった。
離れたくなくなりそうだから、だ。
それだけ、僕の記憶の中で彼のウエイトは大きい。
急に持ち上げられる体に変な声が出てしまった。
ブジーを抜かれる際に身震いが起きる。
限界だと言う言葉を聞くとなんだかホッとした。
鏡へ両手を着くと、僕は顔を背けたかったのだが、顎に添えられた手が許してくれない。
瞼を落とそうとするが、彼から落とされた言葉にもう逃げ道は無かった。
だから、僕は自分の痴態じゃなくて、彼の表情を見ることにする。
そもそもそれが間違いだったのだ。
彼の鏡に映る表情は余裕など微塵も無く、幼い子を僕に晒した寂しげな表情そのものだった。
クラスではあんなに友好的な彼は本当にまだ孤独の泥沼から抜け出せていないと言うのか。
もし、この表情が、僕に対してなら嬉しい限りだが。
仮に僕に向いているとしても、きっと勘違いしているだけだろう。
昔、手に入れそびれたおもちゃが手に入った。僕と彼はそんな関係だ。
きっといつか飽きる日が来る、それが明日なのか、一年後なのか、それ以上かは分からないが。
そうなると僕は耐えきれない。
だから友達のままがいい、でも、それは彼が許してくれない。
そんな顔をしながらそんなことを言うのは卑怯だ。
「はっ!!……っん!!……貴方が…僕とセックスして……いる間、…副会長と…して、手伝って…くれるな…ら、
体の…関係を……続けて…あげても……いい。」
ずるいと思った。
鏡越しですら目を合わせることは出来なかった。
そして、一番してはいけないことだと分かっているのに僕はそれを告げた。
なぜなら体の関係だけなら、仮に彼が僕に飽きても、きっと…友達のままで入れるからだ。
加えてこの関係も続けられる。彼は誰とでもセックスするのだろうけど、そこの仲間に入れる。
彼の玩具の一つでも、僕はきっと満足なんだ。
九鬼が幼いころに僕に落とした爪痕の大きさに静かに笑んだ後、小指に光る指輪を見つめた。
後、どれくらい、僕の手の中にこれはあるんだろうか。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
彼はボクが副会長として手伝ってくれるのなら、この関係を続けてもいいと言った。
けれど、鏡の中の彼はボクと目を合わさなかった。
そんな取引をしなければ、この関係は続けることができないのだろうか。
鏡の中のボクがイタズラに笑った。
こんな時でも笑えるようにできている自分が、少し嫌だった。
どちらにせよ副会長は辞めるつもりはなかった。
折角彼を見つけたんだ、一緒にいられるなら地獄にだってついていく。
「ん、いーヨ…わかった…っこれからよろしくネ、会長」
それだけ言うと、ボクは鏡の彼から目を逸らした。
そして感情を吐きだすかのように更に腰を激しく打ち付ける。
室内に肌と肌がぶつかる音と、卑猥に濡れた音が響き渡った。
息を荒げながら彼の背中に密着し、勃起したペニスへと手を伸ばす。
それをゆっくりと扱きあげながら、彼の顔を覗き込むように囁いた。
「っは…左千夫クン………好き、だヨ」
本当はもっとちゃんと言いたかったけど、ボクはずっと心の中に閉まっておいた気持ちを解放させる。
「大好きっ好き…っもう絶対離さないからっ…」
恋人ごっこの一環として、彼は捉えるだろうか。
でも、この言葉は嘘ではない。
彼と出会った時からずっとずっと、思い続けてきた。
これがトモダチから派生した感情なのだとしても、構わない。
ボクは、彼を愛している。
何度も「好き」と言う言葉を落とす。
それと同時にペニスを扱いている手を速めていき、打ち付けも更に彼の奥へ奥へと届く様に貫いていった。
もう、さすがに身体も心も限界だ。
恋人としての偽りのセックスも、そろそろお終い。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
九鬼は僕の取引に頷いた。
簡単に。
少し複雑な感情でいっぱいなったけど、それは突き上げによって薄れて行った。
「ぁぁああ!!あっ!!ンン!!は、……中ッ、が…ッ」
密着するように背中を逸らせて喘いでいると、彼から言葉が落ちる。
全身が震えて肌が、粟立った。感情を隠すのが大変すぎて喉が引き攣る。
体の反応は隠せないので、自分の欲を現す様にアナルが締まった。
「はぁ、あああ!九鬼……僕も…ッ!!ン、ンン――――――ッ!!」
それ以上の言葉はキスではぐらかす。
体を捻る様にして唇を塞ぐ、そうすると彼からの言葉も途切れた、そうして直ぐに僕はイってしまったので、 自然と胎内が締まる。
鏡を体液で汚しながら、唇の隙間から彼の本名を呼ぶ。
無理矢理絡めた指同士同士の指輪がぶつかった。
-----------------------------------------------------------------------
【九鬼】
彼からボクが一番欲しい言葉は聞くことができなかった。
はぐらかすようなキスが、少し悲しい。
そのまま彼が果てると同時に、腸壁が更にペニスを捉えて離さない。
彼の奥を突きあげながら、ボクも間もなく彼の中へ欲望を放った。
「……ん……――――――ック!!」
身体が反り上がりガクガクと腰が震え、快感が全身を駆け巡っていった。
射精のように、気持ちも素直に吐きだすことができればいいのに。
そんなことを思いながら、余韻を感じるようにゆっくりと腰の動きを緩めていく。
彼とボクの汗で濡れた背中にキスを落とし、小さくひとつ、赤い印を残し、その痕を見て小さく笑む。
荒い息を整えながら、ペニスを引き抜かずに繋がった状態で床へと座り込んだ。
彼の背中にぴったりと抱き着く様に密着すると、早い鼓動が伝わってくる。
きっとボクの心音も早いのだろう。
「…どう?今までやった中で…ボクが一番になった?」
彼の肩に顎を乗せながら、鏡に白濁色の体液が伝っているのを指で伸ばしながらイタズラに笑った。
自分の笑顔を隠す様に彼が放った精子を伸ばしていく。
-----------------------------------------------------------------------
【神功 左千夫】
射精後の突き上げは辛い。
快感が長引くからだ。
僕の体は完全に馴染んだように九鬼のペニスを咥えていて、それがすこし滑稽だった。
律動がおさまる、と言うことは、もう恋人ごっこはおしまいだ。
再び引き込まれるように膝の上に座らせると小さく声が漏れる。
「ぁ、ん…………、ふふ、逆に僕は一番になりましたか?」
答えることなく疑問で返してやる、先程の彼のように。
自分の体液を塗り広げられたせいで彼の表情は見えなかったが、先程奪うように絡めた手を強く握り締め、瞼を落とす。
自分で自分に確りとこれからの関係性を言い聞かせて、僕は瞼を開き、寂しく笑んだが…。
「これから、よろしくお願いしますね、――――――九鬼。」
その表情も鏡に映ることは無かった。
2
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。


いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる