多分きっと俺は君が好きだった

さくらんこ

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大学生編(受けの高校時代の記憶がありません。受け攻め共に他キャラと結ばれます)

かざなみランデブー②

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∞∞ nayuta side ∞∞


「すいません、荷物持ってもらって」
「お…………おう…………ジュース溢れてるかもしれねぇけど……」

密着してたら緊張感と朝飯を食べてなかった事もあり盛大に腹が鳴った。
それを晴生が逃すはずも無く、休憩と昼飯も兼ね合わせてハンバーガーのセットを買ったんだけど、バイクだと入れるとこも無くて間に挟むという俺がまた落下に近づくポジションになるわけだ。
もちろん晴生もそれが分かってるのでゆっくりめに走ってくれて近くの海岸沿いに直ぐに停車した。
排気口が熱くなってるので気をつけながら降りるとヘルメットを外す。
バイクのミラーでチラッと見たけど癖っ毛が更に酷い事になっていた。
それが浜風に煽られてもう何とも言い難い。

「思ったより、風強いッスね………」

晴生もせっかく決めたセットがぐしゃぐしゃになってはいたが、イケメンは乱れてもイケメンだった。
この世は絶対不公平だと思う。

「晴生、フィッシュバーガーだよな?」
「……ッス。あとナゲットのセットのやつ…です」
「そういや、おもちゃ付きのセット頼んでたよな。おもちゃなんだっけ……“魔女っ娘 なゆちゃん”?」
「……そうッス、欲しいのがあったんスけど……。
あ、ラッキー!なゆちゃんゲットじゃねぇか!」
「そういや好きだったよな、お前」
「この絶妙なコントラストが溜まんないんスよね…髪の色と言い、主人公なのにどっかドジで、人を惹きつける魅力を持て余してるって感じが………!ってすいません、熱が入っちまいました、食いますか」
「……ん。」

段差に座ってハンバーガーを食べ始める。
晴生はおもちゃ付きのセットを頼んでいたので女子みたいだとか思ったけど、目的はそのオモチャだったみたいだ。
金持ちのあいつがなんでそんなちゃっちぃヤツが欲しいか理解できないが、推しキャラが当たったのか嬉しそうにしていた。
晴生は始終笑顔で大学に一緒に行ったりもするんだけど、デートの効果かいつもより楽しげに見えた。
他愛ない話が膨らみ、色々話し合ってると自然と俺の心がざわつく。
不思議な感覚に身を任せてしまうと、なんつーか、キュッと胸を締め付けられるというか不思議な感覚に包まれた。
それを隠すように照り焼きバーガーに齧り付いていると、俺に手が伸びてきた。
そういやさっきもキスしたし、もしかしてまた、……とマスターと対面した時のようなドキドキが蘇るが親指で口元を拭っただけだった。

「付いてますよ……」
「……ッ、そう言うのは言えよな」
「すいません、つい……あ、ちょっと待っててください」

と、言って晴生はそのままその指を喰んだ〈はんだ〉。
駄目だ。
普通なら気持ち悪いのにイケメンは何をしてもイケメンだった。
なんかもう、色々、色々頭が追い付かねぇけど、俺がもし女だったらコイツ最高の彼氏なんじゃねぇかって思ってたら、晴生が急に海沿いを歩いてる人のところに行ってしまった。
最高の彼氏だが、俺に媚び過ぎて鬱陶しいところと、突拍子もない行動をする所は絶対マイナス点だ。
人見知りのアイツが珍しいなっと思っていたらなんか顔面蒼白の細身の男性を連れて戻ってきた。

「千星さーん、よろしくお願いしまーす!」
「え!?はぁ!?!?……ヒィ!!ちょ!マジで……ぶっふぅ!!!!」

晴生の目が何処か血走って居たので絶対に良くないことが起きると慌てて逃げようとしたけど、遅かった。
俺の顔面に、血の気のない男の顔が近づく。
変な声が出たけど晴生は躊躇いなく俺の唇に押し付けた。
その瞬間、スン……となんの音もなくその男が消えてしまう。
たぶん《紅い魂─あかいたましい─》  だったんだと思う。
そして俺は《食霊─しょくれい─》 しちまったんだと思う。
毎回思うが野郎とのキスは慣れない、慣れたくない。

「どうっスか?溜まりましたか?………あー、あんまりっスね………」

そう言って晴生は俺のスマートウォッチの数値を見ていたけど、俺は色んな意味で放心状態だ。
もう、どうとでもなれ。

「あ゙!写真…!忘れてたぜ!!千星さん、九鬼オーナーから写真頼まれてたので………そ、その、撮りますね!!」
「……………………………………………おう」

俺の思考回路は完全に停止されたが、視界に映った晴生はちょっと照れくさそうに俺へ写真の許可を取っていた。
その表情なんとなくそそられはしたけど……。

ヌルっとした唇の感触が気持ち悪くて何度も手の甲で唇を拭った。



ΞΞ haruki side ΞΞ


雑誌撮影の景品のチケットは売れ行きが良くて手に入らないものだった。
非売品と書かれたやつだったので、九鬼が手回しして手に入れたものだろう。
まぁ、使えりゃなんでもいいので俺はその恩恵に与る〈あずかる〉事にした。
天夜もなんか貰ってた見てぇだけど、それよりも今日だ!久々に千星さんと二人っきりで、で、で、デート出来るなんて、なんていい日だ。
一応九鬼オーナーに言われたミッション的な事は熟しておく。
俺が写真をほしいつーのもあるけど。

千星さんの《idea─イデア─》 化テストもしたかったのでエネルギーを貯めるために見つけた《紅魂》を 《食霊》してもらったんだが、何故か凄く表情が暗かった。
《紅魂ーあかたまー》 が消えてしまって哀しいと思われるのだろうか、相変わらずお優しい方だ。

二人共ハンバーガーを食べ終えているところもインカメで写真に収めていき、食事が終わると砂浜の方へと向かう。
最近は栄養ドリンクとか、エナジーバーとかばっかり食っていたのでB級グルメは久々だった。
魚系を頼んでも胃もたれしてる気がして腹を擦っていると、また強く風が吹いた。

髪が弄ばれる。

変に気合を入れてセットしたのが間違いだったな、つーくらい髪はグチャグチャだけど千星さんはそういう所を貶したりしない。
テトラポッドを飛び映るようにしながらどうせ写真を取るなら海が入る位置にしようと奥へと進んでいく。

「おわっ!晴生ッ!!待て!!ここ、普通の人間は際どい……ッ!!」
「………と、すいません。なんか、駄目ッスね……俺、千星さんとデートしてると思ったらつい舞い上がっちまって……」

千星さんは能力関係、(裏)生徒会関係の記憶が殆ど飛んでしまっているのを、直ぐに忘れてしまうのは俺の悪い癖だ。
よろけてしまった千星さんの手を繋いで引っ張り重心を戻す。
そうすると元の勘を取り戻したように俺の横まで来たのでそのまま手を繋いで進んだ。
暫くすると平坦な道まで来たけど風も強いので繋いだままにしていると、千星さんが複雑そうな顔で俺を見ていた。

「手………もう、大丈夫なんだけど」
「あ、嫌ッスか?」
「………そ、そこまで言ってねぇよ…ッ」
「なら、危ないのでこのままでお願いします。と、ここ、よさそうですね」
「んー…………。つか、お前、表情ガチガチのやつばっかりじゃねぇ?」
「は?…………そうッスか?俺わりと精一杯営業スマイルしてますけど」
「まー、いいけど……俺も撮ろ。九鬼オーナー煩そうだしな。
あ、このアングルイイかも……つないだ手とかだかもいいな…男同士だけど……。
あ、どーせなら後で砂浜ジャンプするやつも撮ろうぜ!」
「あ、はい。千星さんとならなんでも……」


正直写真は好きじゃ無いが、俺と一緒に撮って後で千星さんだけを切り抜けばいいと絶景ポイントでどんどん携帯の撮影ボタンを押していく。
雑誌の撮影とタイアップすると言っていたので、なるべくプライベート寄りの写真がいいだろう。
なんたってタイトルが『カフェで味わう彼らの素顔』だしな。
そんな事を考えていると天夜との撮影を思い出して鳥肌が立った。
催眠術を掛けてもらったのに朧気に記憶があるのが憎い。
神功はそういう所の配慮が足りねぇ。
まぁ、全部無くなって後から写真で見ても嫌だけどよ。
千星さんも写真を撮り始めると乗ってきたのか、色々なところを撮っていた。
繋いでいる手まで撮られて、少しこっちが気恥ずかしくなった。


陸地が繋がる一番端までくると、ザッバーンと大きく波が岩に打ち付けていた。
天気はいいが風が強いので海は荒れており、白い泡が色んなところで舞っていた。
久々にゆっくりと眺める景色に静かに息を逃していると、横の千星さんが一歩前に出た。


「なぁ、晴生………前もこんな事無かったっけ?」
「あ、は───────」

そこで一度俺の唇は制止した。
「はい、有りました」とは言う事ができなかった。
千星さんが言っているのは高校時代に彼の誕生日を祝うためにクルージングしたときのことだと思う。
その時は千星さんがセックスのトラウマを忘れられる様にと尽力したけど、結局記憶が消えてしまい、今現状は天夜がやっているストレス緩和の方が効果があると思われる。
まぁ、アイツも千星さんと関係があった事は知っているが、それはお互いもう口を挟まない事にしている。
そして、あの時は船の上で…………シた。

若かったし、記憶も朧気だけどシた事には変わらねぇ。
懐かしく何処かこそばゆい記憶に、俺は自然と困った様な笑みを浮かべてしまった。

「……いえ、気のせいじゃないッスか………」  

“カシャッ!”

「あ!千星さん今、俺の顔だけ撮りました!?」

そして、その写真をバッチリ千星さんは撮っていた。

「ヘヘッ、これ割といい顔してるぞ?」
「酷いっス、千星さん…俺写真苦手なの知ってるのに!」
「駄目だ、俺に無理やり《食霊》させた罰!」
「え…あれは千星さんの体内に《idea─イデア─》 エネルギーを溜めたかったからで……」
「わかってる、わかってるけど!もーちょっと、選択肢つーもんがあるだろ!口と…口を合わせるんだからよ…!」
「は………?いや、でも、あれは人じゃないですし……、口直しします?俺飴持ってるんで」
「ちがっ!そう言う……あー、もー!貰う!!」

あ、丁度いいや。
飴型の《idea─イデア─》 化装置を試すチャンスだ。

ポケットから飴を取り出すと俺の口に先ずは入れる、それから繋いでいた手を引いて千星さんに顔を寄せた。

「ぇ!………ちょ!!」
「《idea─イデア─》 化装置第二弾ッス……」
「はぁ!?……お………ぃ…………ん………ッ」

唇を合わせると調度口が開いたところだったので角度を傾けて深く合わせると舌を絡めるようにしてレモン味の飴玉を押し込んでいった。



∞∞ nayuta side ∞∞

ファーストキスはレモン味つーけどさ!!
またもや晴生の意味のわからない実験が始まった。
俺の溜まったエネルギーを巽じゃなくても取り出せるようにしてるんだろうけど。
しかも、俺が前に晴生とキスした時に、巽との《idea─イデア─》 化〈キス〉の為に練習してるとか言ったせいだけど!
自分が蒔いた種だけど、こんな事になるとは思わなかった。
嘘は吐くものではない。

それになんたって晴生とのキスは色々むず痒い。
もっとと求めてしまいたくなる。
キスがめちゃくちゃうまいとか気持ちいいとかそう言う意味合いでなく、本能的に……だ。
頭では俺のことを好きだと言う巽に罪悪感が浮かぶが、体は晴生を求めてしまう。
そんな感じだった。

大きめの飴が晴生の舌から転がってくる。
それを二人で舐めたり、転がしたり、俺の舌を吸い上げたりと晴生の舌は俺の口内でずっと動いていた。
自然と頬が紅潮する。

「は………ん、まだ………ッ………はっ」
「ん………もうちょっと……共有が、キーなんで………ッ、ん………」

レモンの味のせいなのか、晴生の電子タバコの味なのか、……晴生とするからなのか。
キスは物凄く甘酸っぱく感じてしまった。

「………ッ…………………ん♡」

キスの時間が長すぎて段々足が震えてくる。
腰も立たなくなって来て自然と晴生の服を握ると俺を支えるように手が回ってきた。
舌から頭が痺れるような感覚がして波の音が遠くにしか聞こえなくなる。
俺がもっとと追いかけたくなった瞬間、銀糸を引きながら晴生の唇が離れた。


「…………ふ……………すいません、無理そうッスね……。あ、今日はキスしてるからか《霊ヤラレ》 度は下がってますね。エネルギー的には今、40%ですね……エネルギーとして抜ける数値なんですが……んー……クソッ……」
「ッ!?………ま、んな焦んなって……、取り敢えず巽が居るんだし…」
「アイツしかできねぇってなんかムカつくんスよね……、あー、すいません、お時間取らせました。これ新しい飴です」

そう言って晴生は封が開いてない飴を俺に渡してきた。
そしてそれが当たり前のように俺の手を引いて、バイクへと戻っていく。

何か忘れていそうなそんな気配に、俺は遠ざかっていく海を肩越しに見つめた。

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