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過去編(高校生)

幸福な時間②

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【日当瀬 晴生】


了解を得れた……………!!!


千星さんの頭だ。
人間にとっては大切な場所だ、丁重に扱わないと…。
つーか、頭ってどうやって。
近くないか……。

犬を洗うみたいに。
犬とか失礼だよな…。
あ、あくまでもたとえだ。
つーか、俺犬洗ったことねーよ。 

結構な時間頭の中で色々ぐるぐるしていた。
いや、時間にしたら大したことねぇのかもしれねぇけど。

ふと、兄貴に頭を洗って貰ったことを思い出した。
彼は怖々と俺の頭に触っていた記憶が有る。
それでも俺は満足していたことを思い出して、シャワーを元の位置に戻すと、シャンプーを泡立ててからゆっくりと髪を洗っていく。
流石に前には出れなかったので、後ろから洗うことにした。
恐る恐る柔らかめのタッチで、でも、ぬかりなく髪を洗っていく。
全て終わるとシャワーで流し、次はリンスを付けて行く。

それも終わると次はスポンジを泡立てる。

「背中だけ流しますね。」

そう告げると顔を真っ赤にしながら背中を洗った。
勿論柔らかい手つきだったけど。
そこで、俺の限界は来た。
下半身がヤバい。
背中だけ洗うと千星さんにスポンジを手渡す。

彼が体を洗ってる間にマッハで自分を洗うことにした。
俺も洗ってあげる、とかの展開になったらきっと俺は倒れてしまうから。 


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【千星 那由多】


晴生の優しい指先が正直…くすぐったい!!!!
これはまずい、なんかまずい。
美容室に行った時思い出してしまいそうでまずい!!!

しかも後ろの背中に度々触れる腕や身体に反応してしまう。
頭の中で違うことを考えていたが、けれど考えれば考えるほど下半身に集中してしまう自分がいた。
早く終われと眉間に皺を寄せながら全て済むのが待つ。

了承してしまったさっきの自分を呪った。
バカバカ俺のバカ天パ!!!!!

頭を洗い終えてもらうと、次は背中を洗ってくれた。
正直もうやめてほしかった。
目の前の鏡が曇っているおかげで多分俺の表情は見えないだろう。
自分のやり方と違うスポンジのソフトな感触に肩を小さく竦めた。

俺の背中を洗い終わると、泡立ったスポンジを手渡してくる。
一瞬晴生の身体を洗ってあげようかと思ったが、さすがに熱が下に移動しているので、洗おうか?なんて言えるわけもなく。
それに、そんなことを言うよりも早く、晴生は自分の身体と髪をさっさと洗い終えると、湯船につかった。
俺は自分の卑猥な妄想を抑え込むようにゆっくりと身体を洗った。


晴生が先にあがったので、着替え終わったのをすりガラスの影で確認すると少し逆上せそうな身体を湯船から出した。
すっかりあったまってしまった…色々と。

でも、なんかこれじゃいつも通りお互い緊張してしまっている気がする。
特に晴生は二人っきりになると俺より緊張しているのがわかってしまうので、どうにかしてほぐしてやらないといけない。
身体を拭き、下着とガウンを羽織ると、意を決して晴生が待つ部屋へと向かった。
晴生はソファに座り、売店で買ったお茶をもうすでに半分以上飲んでいた。
俺も正直風呂上りと緊張で喉が渇いていたが、それよりも、それよりもだ!!

一直線に晴生の隣へと座った。
多分今の表情はめちゃくちゃ強張ってると思う。

晴生はペットボトルに口をつけながら、少し驚いたような表情をした。

俺は深く深呼吸をすると、晴生のペットボトルを持っていた腕を掴みあげ、唇へとキスを落とした。
晴生の口端から、飲み込めなかったお茶が零れる。
唇から水分を奪い取るようにちゅっちゅ、と音を立てながら啄んだ。 


やばい、気持ちいい。


本当はちょっと緊張をほぐすため、と思ってたんだけど、なんか、そんなのどうでもよくなってきた…。
息を少し荒げつつ軽いキスを続け、晴生に抱き着く様に身を寄せた。 


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【日当瀬 晴生】


あー。色々駄目だ。
タバコが吸いてぇ
色々シュミレーションしてきたんだけど、やっぱり目の前に本人となるとどうしても緊張する。
俺は風呂で逆上せた体を覚ます様に買ってきたお茶を飲んでいた。
千星さんが上がってくるまでにポットのコンセントを入れたり、空調をいじり直したりしてからまた、ソファーに座る。
もう、お茶が無くなりそうだ。

そんなことを考えていると千星さんが上がってきた。


「千星さ……―――――――――――!!!」


なんと彼は俺のすぐ隣に座った。
緊張に声が掠れてでなくなった。
なんだ、どうした、と、色々考えているとそのまま唇を奪われてしまう。

なんだかとても情けない気持ちになったがそれも忘れるほど彼とのキスは気持ちがいい。
今までキスが嫌いだったのが嘘のようだ。

そうだ、俺は彼を助けたくてセックスするんだ。
そこを忘れないようにしないとな。

改めて相手の頬に手を掛けて口付けを深めようとした時部屋のチャイムが鳴った。


「――――!!!!?あ、飯ですね。俺、行ってきます。」


惜しいことをした!!
そう思ったが、これ以上続けていたら飯どころじゃなかったかもしれないから、これはこれで良かったかも知れねぇ。
シェフがワゴンを持って入ってくると俺達の前で簡単な調理をしてくれた。
千星さんは初めは慌てていたようだが、最後は楽しそうに見てくれた。
そして、コックは俺の意図を汲むように最後に夜景が見える奥のカーテンの自動ボタンを押してから去って行った。
ソファーに座りながら見えるので都会の町でもこれはこれで綺麗だ。


「さ、食べましょうか。」 


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【千星 那由多】


キスをしている途中でチャイムが鳴った。
驚いて身を離すと、晴生はドアの方へと向かった。
大きく跳ねる心臓と下半身を隠す様にガウンの前をきつめに整えた。
結局、俺のがんばりは晩御飯に消えてしまったのだ…。

けれど、その晩飯も今まで経験がしたことがないようなものだった。
シェフの調理を見ながら美味しそうなディナーに喉がなる。
何かの記念日かと思ってしまうほどで少し気後れしてしまったが、こういうのもたまにはいいかもしれない。

そして、大きな窓の向こうの夜景を見ながら俺達は食事をとった。

料理はとても美味かった。
よく知らない料理もあったので基本的な味がわからないが、とにかく美味かった。
自然と晴生との会話も増えて、笑顔になる。

食べ終わった後は夜景がもっと近くで見えるようにと、窓の方へと場所を移動した。
さっきまでの豪雨が嘘のように晴れ、雲も無くなっていた。
実はちょっと高い景色が怖かったが、自分の住んでいる街の綺麗さにそんなことはどうでもよくなっていた。


「なんか…今日特別な日みたいで照れるなー」


食後のコーヒーに口をつけながら三角座りで窓の外を眺める。
そうだ、特別な日、みたい…で……そう言った後にハッとした。 


いや、もしかして今日、そういう意味での記念日になってしまうのではないだろうか。 


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【日当瀬 晴生】


窓際のソファーに移動し、コーヒーを嗜む。

千星さんが、特別な日みたい。と、言われたのでてっきり俺はソファーコースかと思ったがそう言った意味で言ったのではないらしい。
その後に顔が赤くなるのを見てしまったから。

俺はコーヒーを机に置くと、千星さんの膝の上に有る片手をそっと握った。

そのまま、少し空いた距離を詰め、コーヒーを奪うように手に取ると机の上に置く。
先程彼からしてくれたおかげか、すんなり距離を詰めることができた。
手を握り締めながら唇を寄せる、数度啄んでから、先程しようと思ってた様に舌を伸ばす。

ゆったりと千星さんの下唇を舐めてから、差しこんでいく。
緩慢に歯列をなぞった後相手の舌をつついた。
すっかり、パーマに戻ってしまった柔らかい髪をなでる様に後ろに流す。
上半身を完全に捻る様にして向かい合い、深いキスを繰り返す。
永遠に続きそうな、それを途中で切ると俺は彼に声を掛けた。


「ベッド、行きましょうか?」 


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【千星 那由多】


晴生に手を握られる。
思わず身体が跳ね、晴生の顔が近づいたことに顔がますます熱くなった。
唇を重ねられると、受け入れるようにそっと目を閉じた。

「ん…ぅ……」

先ほどと違い深く口づけられると息が漏れる。
繋がった唇から鼓動が伝わってしまいそうだった。
舌を絡ませ、うっとりと濃厚なキスを続けて行く。
静かな部屋に二人の小さな吐息が響いていた。

唇を離されると、晴生からの言葉に更に心臓が跳ねた。
ついにくるのかと、頭はどこか冷静だったが、想像で腰が疼き始める。

「ん…いく……」

そう言うと二人分では大きすぎるベッドへと手を繋いだまま移動し、晴生の股の間に座る体勢になった。
両手を繋ぎ彼の瞳を見つめると、翠の瞳が暖色のライトで少し柔らかく光っている。
頬は照れとキスの火照りからか薄ピンク色になっていた。

相変わらず綺麗で整った顔だ。
半分が髪で隠れてしまっているのがもったいないほどに。

そして再びどちらともなく唇を重ね合う。
指を絡め合い、身体を密着するまで寄せる。
なんだか酷く甘くて溶けてしまいそうだった。

巽との酷い行為が続いていることを忘れてしまうような。

そう言えばこいつは俺のトラウマを無くす手伝いをしてくれる、とか言ってくれてたな。
…トラウマは消えても、巽とのセックスが続く間は、晴生とのこんな行為は罪悪感でしかない。
けれど、やっぱり嬉しかった。
気持ちよくて、幸せで、いつまでも続けばいいとさえ思ってしまう。 


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【日当瀬 晴生】


ベッドにあるスイッチで照明を暗くする。
再び口付けをしながら千星さんのバスローブの前を解いていく。
また彼は下着を履いていたので少し笑みを零した。

最近の彼は実力がついて、どんどん俺の知らないところに行ってしまいそうな気がしたけど、
こんなところを見ると近くで居てくれるのかと思う。

そのまま、彼からバスローブを剥がした、下着にも手を掛けると彼は恥ずかしそうにしながらも腰を浮かせてくれる。
俺もバスローブを脱いだところで鞄に手をやる。
流石にローションは持ち歩いていないので、使えるものと言えば刺激が無いハンドクリーム位しかなかった。
それを手に俺は枕を一か所に集めそこに千星さんを凭れかからせてやる。
太腿を撫でる様に足を開かせると少し反応しているペニスが見え、先端に口付けた。

「リラックスしておいてくださいね。」

ハンドクリームを多めに手に取ると確りと練り込み温めたからアナルへと指を伸ばす。
まずは人差し指をゆっくりと挿入していくと、思ったよりは簡単に入った。
しかし、彼は緊張している様子だったので和らげるために空いている手でペニスを扱いていく。


行為中の彼は普段と違い色っぽくて俺の下半身も自然に熱を持ってしまった。


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【千星 那由多】


晴生にどんどんと脱がされていく。
やっぱり数度こういう行為をしても、自分の裸を見られてしまうのは恥ずかしかった。
照明が暗いと言っても、目が慣れてくると晴生の白い肌は目立った。
小さく喉を慣らし身体を隠す様にもじもじとしていると、晴生は何かを取り出したようだった。

そのまま無駄にあった枕の上にもたれかけさせられると、足を開かれ身体がピクリと反応した。
いつも以上に物凄く緊張してしまっているのか、身体が少し強張っている。
そんな俺に気づいたのか、露わになったペニスの先端へと晴生の唇が落ちた。
リラックスしていて、と言われて、こんな状況でできるかよ…と思いながら大きく深呼吸を繰り返す。

晴生が取り出したのはどうやらハンドクリームだった。
それをこねた後、アナルへと指がゆっくりと挿入される。

「んっ…ぅ……」

晴生の細い指が侵入してきただけでも、かなり興奮してしまっていた。
それと同時にペニスを扱かれ、甘い小さな吐息が漏れる。

「あ…っ……」

口に手を当てながら、深呼吸を繰り返すが、心臓の高鳴りは収まらなかった。

どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。
俺の局部を見つめるように下を向いている晴生の顔を薄く目を開きながらじっと見つめた。 


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【日当瀬 晴生】


ゆっくりと指を動かしていく。
千星さんの好きなところはもう既に心得ているので、指を二本に増やしたところで腹側に有るポイントを擦り上げる。
千星さんから甘い声が漏れるとずっと聞いていたくなるくらい下半身が疼いた。

「声、我慢しなくていいですよ。
いっぱい、気持ち良くなってくださいね。」

そのまま少し早めに指を抜き差しする。
それから、空いている手でペニスを握り一定のリズムで擦り上げて行く。
俺の手の中で喘いでくれる彼が愛おしくて仕方が無い。

先に一度いかせてしまおうと思って、俺は手を速めて行った。
ハンドクリームの香りが辺りに充満し始める。
下げていた顔を上げて、チュッと乳首へと口付けを送った。 


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【千星 那由多】


晴生は的確に俺の前立腺を突いてきた。

「ひっ!」

身体が跳ね、上ずった声が漏れる。
擦られる度に気持ちよさで声が小さくあがっていった。
恥ずかしくてなるべく抑え込んでいたが、声を我慢しなくていいと言われると、なんだかすごく照れてしまったが、小さく頷き返した。
晴生の指が俺の中を優しく擦りあげていき、ペニスも上下に扱かれると、声なんて我慢する余裕なんてなくなっていった。

「いッ、あっ…はる、っ、んんッ…!」

喘ぎ声とともに、ペニスを扱く手が早くなっていく。
優しい手つきがたまらずに、ペニスはもう完全に勃起していた。

乳首へとキスを落とされると、ぞわっとそこから全身に快感が広がる。
晴生の頭に手をあて、髪を撫でるように軽く押さえこんだ。
何をされても彼の行為は胸がいっぱいになるほど気持ちがよかった。
快感と一緒に満たされていく感覚。
こういうのが幸せというのだろうか。

晴生の身体を確かめるように指を這わせていく。

「あッ、はっ…はるき…ぁっ…顔、…こっちっ……向いて…」

胸元に顔を埋めている晴生に言葉を落とす。
いつもならこんな状況だと恥ずかしくて顔も見れないが、なんだか今日は彼の顔、瞳を、ずっと見つめていたかった。 


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