珈琲の匂いのする想い出

雪水

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背伸びした味(光輝視点)

双葉の絶叫

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寝癖をなおし、口をゆすいで部屋に戻るとインターホンが鳴った。

何事かと思い玄関まで出てみると朝食を運んでくれただけだった。

「ご朝食をお持ちいたしました」

「ありがとうございます」

「本日の朝食の内容のご説明は控えさせていただきます、どうぞごゆっくり...お召し上がりください。」

説明を控えるって何だ?とか思うところはあるが絶対キスマーク見られた。

目元が首元に行ってたしなんか言葉に詰まってたし。

とりあえず双葉が戻ってくるまで待っておく。

ほどなく双葉が戻ってきたので1つだけ来た3段重を開いてみる。

1段目にはフルーツサラダが、2段目にはスープが2皿とトーストされたパンが2つずつ入っていた。

この段階で朝ごはんとしては完成してるよな、と思いながら3段目を開くとそこには折りたたまれた1枚の紙が入っていた。

なにかと思いその紙を開くと

「ご卒業おめでとうございます。勉学に励み部活に打ち込み良い3年間となりますように青い桜の押し花をプレゼントいたします。桜といえば春、青い桜とはつまり青い春、青春を意味しております。どうぞ悔いのない3年間となりますようスタッフ一同願っております。」

サービスがすごすぎて俺も双葉も何も言えなくなっていた。

美味しい朝食を食べ終えたら荷物を持ってフロントにチェックアウトをしに行く。

とてもいいサービスでびっくりしっぱなしのいい宿だったのでまた大阪に旅行に来るときは利用しようとおもう。

そして今からついにユニバに向かう!

まずは大阪メトロで西梅田まで行き、そこから数分歩いてJR大阪駅に行く。

その後は西九条に行き乗り換えて数分でユニバーサルシティ駅だ。

西九条まで行き双葉から

「今どこに向かってるの?」

と聞かれたので

「そろそろわかるよ」

と返しておいた。

双葉の不安も高揚感もMAXになった頃に車内アナウンスが流れた。

『次はユニバーサルシティ、ユニバーサルシティ駅でございます』

「双葉、降りるよ」

「え?」

「今日はユニバで遊びます」

「ええええええ!?」

「ほら行くよ双葉、はぐれないように手繋いどいてね」

「ユニバ...?」

もう双葉は状況が飲み込めていなかった。

駅から歩いて数分するとすぐにユニバの入口が見えてきて双葉にも実感が湧いてきた。

「ユニバは嬉しい!…けど僕絶叫系苦手なの光輝さん知らなかったっけ?」

「知ってるよ?」

「え?」

「一緒に乗ろうね」

「やだ」

「乗ってる時怖かったら手繋いでていいから」

「帰ってからもちゅーしてくれるなら乗る」

「じゃ乗るの決定だね」

「うわああああああああああああああああ」

「まだ乗ってないでしょ」

もう既に乗ったかのような双葉の絶望的な絶叫に笑いながら先に買っていたチケットを双葉に渡す。

「これ、そこにタッチしたらいいやつ」

「便利だねぇ」

「ねー、あ、順番来たよ双葉」

おっかなびっくりという様子だったが無事に双葉も俺もパーク内に入ることが出来た。

「じゃ、行こうか」

「もういい、僕は覚悟を決めた」

「いいね、後で美味しいもの買ってあげるからもうちょっとだけ俺のわがまま聞いてね?」

「う...いいけどぉ」

「じゃあ今から乗るのと合わせて3つ乗ろうか」

「ねぇ光輝さん、絶叫苦手な僕に対して思慮が足りてなくない?」

「さすが中学受験をあっさり合格した双葉くん、思慮が足りないなんて難しい言葉しってるじゃん」

「別にあっさり合格したわけじゃ...ていうか合格できたの光輝さんのおかげだからね」

「別に俺何もしてないよ?」

「勉強教えてくれたじゃん」

「そんなの双葉の努力次第だったけどね」

「あと、合格したら光輝さんに告白しようとおもってたから...」

「...」

「...黙られるのが一番きつい」

「ご、ごめん。恥ずかしくて」

「僕のほうが恥ずかしい!!!!」

「じゃあ早速乗って恥ずかしさを吹き飛ばそうか」

「え?」

「喋ってると並んでる時間も気にならないね」

「え、いつの間にアトラクションの乗る場所まで来てたの...」

「乗るよ双葉」

「念の為聞くけどこれは...?」

「ザ・フライング・ダイナソー」

「はぁ!もぉ!光輝さんのばかっ!!!!」

「はいはい、荷物置いて座るよ」

座った頃にはもう双葉も静かになっていた、というか怯えていた。

ま、もう遅いんですけどね。

そっからはもう俺は楽しんだ記憶しかない。

後で写真を買える場所で見てみると双葉が全力で怖がっていてとても面白かった。

双葉のお母さんへのおみやげに買って帰ろう。

その後はバックドロップとジョーズに乗った。

ジョーズに乗ったときは双葉がサメとライフルにビビりまくっててめっちゃ可愛かった。

燃料タンク撃って炎が上がるときに双葉が「ひゃぁっ」ってちっちゃく悲鳴あげて抱きついてきたのが今んとこ1番のユニバでの思い出だな。

その後は約束通りスヌーピーまんとかチュロスとか色々美味しいものを食べて回った。

やっぱり待ち時間が長い分1回のアトラクションでだいぶ時間を使うのでもう暗くなり始めた。

帰りのフェリーが23:19発だから南港には22:30くらいに着けばいいか。

とするとユニバーサルシティ駅21:50発の電車だな。

「あと時間ちょっとしか無いけどどうする?なんか乗りに行くかその辺見て回るかなにか食べるか」

「光輝さんとなら何してても楽しいから決められないよ...」

「かわいいこと言うじゃん、じゃあまぁその辺歩きながら決めようか」

「あ、やっぱ乗り物乗るのは無しで」

「あ、先に断られた」

「乗せるつもりだったんだ」

「はーい、そんな目で俺を見るのをやめてくださーい」

「むー...」

「じゃ、パーク内歩こうか」

「手、繋ご」

「はいはい」

満足気に俺の手を引っ張りながら興味のある方にふらふらと歩いていく。

パシャ

「今写真撮ったでしょ」

「撮った」

悪びれもせずそう言い放った俺を双葉はまたジト目で見てきた。

「手引っ張っていくの可愛くてつい」

「つい、じゃない!」

「ご、ごめん」

「...まぁ僕を可愛いと思ってくれるのは嬉しいけど」

「そういうとこもめっちゃかわいい」

暗くなり始めたパーク内はカップルで溢れてきた。

あらゆる場所が光で装飾されて輝いていた。

双葉は輝いてるものが好きなのか時々立ち止まって光っているところを眺めていた。

よし、クリスマスまでにツリー買っとこう。

そう心に決めた俺。

ユニバは見ているだけでも見ごたえがあってだいぶ満足感がある。

時間いっぱいパークを楽しんで軽く船の中で食べる用の食料をコンビニで買ってから電車に乗った。

「双葉、ユニバ楽しかった?」

「うん!」

「またいつか来ようね」

「約束だよ?」

「今からまたフェリーに乗って家に帰るよ」

「またフェリー乗れるの!」

「乗れるよ~」

時間もちょうどいい、もしかしたらフェリーを外から眺める時間もあるかもしれない。

電車を少し乗り継いで大阪南港フェリー乗り場に到着した。

フェリーは入港していたがまだ乗船手続きが開始される時間ではなかったので少し外からフェリーを眺めることにした。

最初にフェリーに乗ったときはすでに乗船手続きが開始されていたのでそのままフェリーに乗ったから外からフェリーを見るのは双葉は初めてだった。

「わぁぁ!おっきいね、船って」

「ね、大きいでしょ?いっぱい人とか荷物とか運ばないといけないからね」

「船ってすごいんだねぇ」

「昔の人の移動方法はだいたい船だったんだけど、今は自家用車とか新幹線、飛行機が主流になってきて利用者が減ってきているらしいんだよね」

「えー、船って楽しいのに...」

「そう、実はまた船舶ブームがきてるんだよ」

そんな話をしながら船に乗り部屋に行く。

荷物をおいて晩ごはんを済ませ、お風呂に入る。

「お風呂どうする?大浴場にする?それとも部屋のお風呂に入る?」

「どっちでもいいよ~、光輝さんはどっちがいい?」

「俺もどっちでもいいよ、2人きりで入りたいなら部屋のお風呂だけど」

「部屋のお風呂」

「はや」

「だって光輝さんとふたりきりで入れるんでしょ?部屋のお風呂一択だよ」

「じゃあ部屋のお風呂入ろうか」

「うん!」

「でもあれだよ?頭はいいけど体は自分で洗いなよ?」

「えーなんで?」

「だってそれはほら、いくら付き合ってるといえど...ね?」

「光輝さんのえっち」

「そんなんじゃない...とは言い切れないかも」

「ほら、えっちだ」

「ごめんなさい」

「別にいいよ」

「ありがとうございます」

「なんか無いの?お詫び」

「なんか欲しいものあるの?」

「ない」

「無いの?」

「してほしいことはある」

「お、何?」

「体洗ってほしい!」

「駄目」

「なんで」

「俺はほら、えっちだから」

「僕もえっちだから別にいいよ」

そういうことじゃないんだよなぁ、

どうしたものか、ニヤニヤが止まらない。

相手は年下、子供なのに

まぁ好きなんだから仕方ないか、

最低な開き直り方だな。

まぁいっか、恋人だし。

「じゃ、お風呂入ろっか、双葉」

「うん!」

つくづく自分の意思の弱さを感じながら、ただただ双葉が可愛いんだよなぁ...そう思ってしまう俺はもう駄目な大人だろうか。

部屋のお風呂だからユニットバスで二人で入るには少し狭いように思えたがよくよく考えると双葉は俺の上に座って湯船に浸かるのが好きだから狭さはあまり問題ではなさそうだ。

まぁその狭さで困るのは俺なんだが。

「双葉ってユニットバス入ったことある?」

「ない」

「じゃあわかんないか、まずお湯張る前に湯船の中で頭と体を洗ってからお湯貯めて浸かるっていう方法で入るんだけど」

「とりあえず僕は湯船に入ればいいんだよね?」

「そうそう、そんでその中で頭と体を洗えばいいんだよ」

「でも今日は光輝さんが洗ってくれるんでしょ?」

「そんなこと言ってたっけ」

「...」

「ごめんなさい」

「いいよ、お詫び追加ね」

「本当にすみませんでした」

「はいはい、お風呂はいるよ」

「もうどっちが大人かわかんないな、これじゃ」

「そんなことないよ、僕はまだまだ子供」

言いながら服を脱いだ双葉の体は、うん、たしかにまだだ。

もう双葉を洗うのも2回目、流石に平常心で洗えた、

わけがなかった。

もうずっと双葉の体を触っていたい。

そう考えていたのが見透かされたのか、双葉に

「触るのはお風呂上がってからね」

と、釘を刺されてしまった。

双葉を洗い終わってから自分の頭と体を洗い、一旦浴槽の中をお湯で流してから貯め始める。

もうすでに双葉は俺と向かい合う形で俺の太ももにまたがっていた。

濡れて掻きあげられている少し長めに切り揃えられた黒髪、肌荒れなんて知らないだろうなと思わせるほどの白い柔肌、吸い込まれそうなほど黒々と輝いている眼、体が温まって上気した頬、柔らかいことを知ってしまった唇、平らかな喉、まだ未熟な鎖骨から伸びている首筋、一切の毛が生えていない薄い体、細い腕、しなやかな脚、縦長のへそ、大阪でつけたキスマーク

すべてがユニットバス特有の曇ったような温かみのある光に照らされ、双葉は言いようもなく可愛らしく、それでいて妖艶な気配すら感じさせている。

そんなことを考えていると不意に双葉と目があった。

「光輝さんのえっち」

バレていた。

「双葉がえっちすぎるかr」

言い訳がましく開いた口は双葉の小さい唇によっていともたやすく塞がれた。

お湯を張っている音の他に耳に直接響いてくる艶めかしい水気のある双葉の音。

すべてが、今この状況のすべてが双葉を、俺を昂らせている。

特に双葉はもうすでに下腹部に熱が集まってるいるようで、だんだん顔にも余裕がなくなってきている。

正直自分の理性がここまで強いとは思っていなかった。

いや、実際には理性は崩壊しているが変なところで引っかかっているだけかもしれない。

そのひっかかりがなくなったときには、

いや、考えないでおこう。

いつの間にか双葉の唇は俺から離れていた。

お湯もちょうど胸くらいまで貯まっていたので止める。

光の加減のせいか、はたまたお湯に浸かっているせいか、もしくは昂っているせいか

双葉の白い顔は刷毛でうっすら塗ったように桃色が散っている。

髪の掻きあげられた頭を撫でてやると幸せそうな表情をして俺に抱きついてきた。

双葉が少し身を引いたかと思えば俺に首筋にまた1枚、花弁を落として離れていった。

照れくさそうな、満足そうな顔をしていた。

お風呂から出たあとに俺は双葉へのご褒美を渡すことにした。

「双葉、これ」

「ん?」

「絶対今じゃないと思うけど喜んでほしくて」

そう言って俺が差し出したのは双葉(はっぱの方)が描かれたマグカップ。

「え!僕だ!!いや僕じゃないんだけど、僕だね」

「そう、双葉にぴったりでしょ?」

「うん!また家帰ったらいっぱい使う!」

そんな会話をしながらもう慣れたように同じベッドに入って、双葉は俺に抱きつきながら囁く。

「帰ったらえっちしようね」

俺はそれを聞き流して眠りについた。

明朝、俺たちは大阪から帰ってきた。

家に帰って少し休憩してから双葉のお母さんたちにお土産を渡しに行った。

たいそう喜んでくれたので俺も一安心だ、

またこれから仕事をする日々が続くが、双葉と一緒に暮らしているうちはそんな時間ですら苦ではないだろう。

夏休みが終わるまでの同居生活を俺は未だに楽しみにし続けている。

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更新が遅れてしまい大変申し訳ありません。

雪水は今年受験生なので模試を始めとした試験勉強や受験本番に向けた対策等、勉学に割く時間が大変多くなっており、こちらの長編小説に割ける時間があまり取れていな状況となっております。

しかしながら授業で1年ぶりにパソコンを触る授業を取ったので打つ速度(この小説は主にパソコンで書いています)が格段に上がっていますのでちょくちょく書き進めては保存、進めては保存を繰り返しています。

ゆっくりの更新となってしまいますがどうぞ気長にお待ち下さい。

また、ショートショート(1話完結)の小説は息抜き程度に書いていこうと思っていますのでぜひそちらの方も合わせて読んでいただけると幸いです。

ちなみに短編の中だと「オムライス」が1番のお気に入りです(小声)

あの小説はいつかショートショートではなくきちんとした小説として書き直したいと思っているのでぜひショートショートのままの今、お読みください!!
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