黒ギャルとパパ活始めたら人生変わった

Hatton

文字の大きさ
上 下
32 / 51

SSスポッチャ(後編)

しおりを挟む
勝負は一球で終わった。バッター負傷による退場で、ゲームセットだ。

「あははははwうけるわーw」

年齢と日々の運動不足を顧みないスイングによって、いわせた腰の痛みに耐えきれず、俺はベンチで寝そべっていた。杏子はそんな俺を見下ろし、痛む腰をツンツンと刺激して遊びながら、宣言通り大笑いしている。

まあ、これは確かに笑うしかないよな。くそ。

一通り笑い終えた杏子は息を整えて、機嫌よく言った。

「ふー、喉乾いたから飲みもん買ってくんね、岩城さんはなんかいる?」

「いや、おれはいいよ」

「じゃ、戻ったら罰ゲームね」

この状況がすでに罰ゲームみたいなものだが、どうやら容赦する気はないらしい。

痛みは徐々にマシになっているから、たぶんギックリ腰ではなさそうだ。もう少し休めば、なんとか歩ける程度には回復するだろう。

俺は寝返りを打ち、無意味にバッティングセンターの黄ばんだ壁を眺めた。

数分ほど経過し、杏子がやけに遅いことが気になってきた。何かあったのかと思ったところで、若い男の声が耳に届く。

「じつわ前から話してみたくてさあ」

「そうそう、俺ら同クラなのに全然絡みなかったし」

「そーかもね」

二人の男と杏子が話しているようだ。内容からして、クラスメートと偶然再会したといったところだろうか。

「え?てか一人?」

「まあ、ひとりっつーか」

「よかったら下のカラオケとか一緒にどう?男だけだとさみしくってさあ」

「えっとねー」

杏子は煮え切らない返事だ。ツレがいるとは言わなかった。

そりゃそうか。こんなオッサンと一緒だなんて、クラスメートに知られたくないだろう。

俺はこのままバッセンで昼寝してる、さみしいオッサンになりきるべきだ。若者同士の親交を邪魔する権利なんてない。

そう、俺はおとなしくするべきなのだ。なのになんで俺は、腰の痛みをこらえて立ち上がり、ネットをつかんで、体を引きずりながら、三人の元に歩みを進めているんだ?

10メートルほど先に、二人の男子高校生の後ろ姿が見えた。二人とも明るい茶髪で、目立つグループにいそうな雰囲気のある子たちだ。

近づく俺に、少年たちの前に立っている杏子がいち早く気づいた。

「ぷっ!ちょwなにやってんのw」

老人のような足取りがよほどおかしかったのか、彼女は吹き出す。少年二人が振り向き、困惑の表情を浮かべた。

しまった、近づいたはいいが、なんて声をかければいいんだ?

スマートに彼女の腰に手を回し「ごめんよ坊やたち、今日は俺が先約なんだ」ってスマートに言えたら良いのだが、この腰じゃ無理だ。いや腰どうこう以前の問題か。

なんて言うべきかわからない俺に、少年の一人が戸惑い気味に聞いた。

「えっと…お父さん、ですか?」

まあ、そうなるわな。ぜんぜんショックなんかじゃないし。

答えるより前に、杏子が駆け足気味に俺に近寄り、彼女の方が俺の腰に手を回し、支えてくれた。

そしてなぜか手のひらで頭を抱え、自分の胸に俺の頭をおしつけた

「お父さんじゃないよ、アタシのカ・レ・シ」

「は!?」

男子たちは驚愕で目を見開く。直後に俺の頭でムニュんと潰れる彼女の胸にその目が奪われた。

「童貞捨てさせてもらおうと思ったんだろうけど、ごめんね」

杏子はさらにギュッと俺を引き寄せ、ほぼ抱きしめるみたいな体勢になる。

「アタシ、同級生にキョーミないからさ」

図星だったのか、二人の少年は顔が真っ赤になり、しどろもどろに何かを言いながら、そそくさと去っていった。なんだか気の毒なことしちゃったかな。


ふたたびベンチに寝そべる俺。杏子は今度は優しく腰をさすってくれていた。

「なんかごめんな」

「なにが?」

「クラスメートの前でしゃしゃり出ちゃってさ。変な噂がたったら…」

「べつにいーよ、アタシがパパ活してることなんて、けっこうみんな知ってるし」

「そうだったのかい?」

「そーだよ、だからたまにああいう童貞がワンチャン狙って声かけてきたりすんだけどさ」

「でも…」

「ん?」

「一人なのか聞かれた時、なんか困ってたから」

「それは…岩木さんに迷惑かかるかなって」

そうか、そうだったな。彼女はこういう子だ。憎たらしいし生意気だけど、パパ活JKだけど、めちゃくちゃ良い子だったんだ。

照れ臭さを紛らわすように、杏子が手を叩いてイキイキと告げる。

「そうだ!罰ゲームしなきゃね』

「お、お手柔らかにお願いします」

すると杏子は無言で俺の頭をもちあげ、滑り込ませるように座り、自分の膝の上に乗せた。

「また誰かに声かけられんのも面倒だから、しばらく虫除けになってよ」

「これが罰ゲーム?」

「そ、恥ずかし?」

「かなり」

「だよね、でも罰ゲームだからやめてやんない」

制服姿のJKに膝枕される見た目40代のアラサーか。尊厳も何もあったもんじゃないし、知り合いに見られたら終わる。でも、ちっとも罰ゲームになっていなかった。

現役女子高生の、それも杏子のようなスーパー美少女JKの膝枕なんて、金払ってでもしてもらいたいやつは大勢いるだろう。そんな高級オプションを無料で体験できるなんて、おれはいったい前世でどんな徳を積んだんだろうか?

杏子は俺の頭を優しく撫でたり、耳をふにふにといじったりした。くすぐったさと羞恥で顔が染まる。

俺はその手から、逃れるように寝返りを打った。

「腰どう?」

「…だいぶマシになったよ、そろそろ歩けると…思う」

「じゃあ最後はカラオケで締めんべ」

「い、いいね」

仰向けになった俺の視界には、バンと張り出した見事な双丘が広がり、杏子の顔を覆い隠していた。眼福を通り越して、もはや絶景だ。

俺はたぶん、前世で国でも救ったんだろうな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件

石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」 隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。 紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。 「ねえ、もっと凄いことしようよ」 そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。 表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

処理中です...