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「もう、こんなにしちゃってさあ」
「うん」
「めっちゃ出んじゃん、溜めすぎだよ」
「…ごめん」
杏子はカーテンレール上の埃をハンディモップでさらいながらボヤいた。俺は机や床のゴミを袋につっこみながら、肩を落とす。
荒みきった生活を、女子高生に諭されるオッサンか…田舎の親父がみたら頭を抱えるだろう。
こんどは心中で親父に謝罪した。
「ところでさ、本当にアレでよかったの?」
「ああ、近藤さんのことかい?」
「人が良すぎだよ」
杏子はこちらを振り返り、いくぶん非難めいてはいるものの、おおむね心配そうな面持ちで尋ねた。
彼女の言いたいことはわかる。結局俺は被害届をださなかったのだ。
二度と家に来ないこと、連絡もしないことを約束させ、警官もろともお引き取り願ったのである。
だがそれは、人情的な理由というよりは…
「おおごとにして、逆恨みでもされたらいやだろ?むしろ借りを作っといたほうがいいかなと」
「あー、たしかに。失うもんなくなったら、なにするかわからんもんね」
「そういうことだよ」
そして杏子は思い出したようにニマッと笑った。
「なにせ、地雷系おじさんだしw」
「やめてくれよw」
俺たちはまた笑いあった。杏子といると、俺はよく笑う。
出会ってまだ一日、時間にすれば5~6時間しか共に過ごしていないわけだが、それでも杏子がくれた笑顔の数は、ここ一年をすべて合わせた数よりも多い。
「ほらほら、ちゃっちゃっと終わらせるよ」
「かしこまりました」
近藤さんの件が片付き、一息つこうかと思ったが、杏子に尻を叩かれ、部屋の大掃除をすることなり、いまに至る。
尻といえば、さきほどから見事なソレが目の前で揺れていて、どうにも落ち着かない。
窓の下の方を雑巾で拭くために、やや前のめりの姿勢となっている杏子のソレは、キュッキュッと動く手と連動するかのように、ユラユラと振れていた。
一生懸命掃除してくれている杏子に対し、なんて不義理な視線なんだろうと自分でも思うが、控えめに言って一級品な桃尻は、俺の理性をグラグラと揺らした。今日の俺は揺れてばかりだな。
さらにいえば、短丈のタンクトップから覗く素肌のウエストも見事だ。しっかりと引き締まっていて、それでいて筋肉の影は薄く、柔らかそうな質感を保っている。
だからこそ、なおさらその下にある白鳳ー桃のブランド品種である。横綱ではないーの丸みと大きさがより際立って…
「岩木さん、手が止まってる」
「はひっ!?」
「ついでに口も開いてるし、ヨダレも出てる」
「よ、ヨダレはまだでてなくないか?」
「ふーん、まだねえ」
「…すいません」
いつの間にか振り向いていた杏子に、しっかりと叱られる俺。
女子高生の尻に見惚れ、ヨダレをたらしそうになるオッサンか…田舎に残っている妹に見られたら、兄妹の縁を切られかねないな。
俺は心中で…以下略。
そんなこんなで1時間後。
「やっと見れるようになったねー」
「ほんとにありがとう」
俺の部屋は、見違えるように綺麗になっていた。廊下にある大量のゴミ袋が、いかに酷い有様だったかを物語っている。
それにしても、と俺はタオルで汗を拭く杏子を見やる。
テキパキと手際よく掃除していた彼女の姿は、失礼ながらとてつもなく意外だった。どちらかというと、家庭的なスキルとは無縁な感じがするのにな。
「…なんか失礼なこと考えてる?」
「へ!?」
いったいなんなんだ?どうして彼女は俺の頭の中が読めるんだ?
「わかりやすいんだよねえ、岩城さんってさ」
「俺の心の声に答えないでくれよ」
うなだれる俺を、彼女はおかしそうにクスクスと笑う。心の声がダダ漏れでも別にいいか、そんな風に思ってしまうほど、可愛らしい笑顔だった。
彼女はすっきりと片付いたソファに腰を降ろし、うーんと伸びをした。
「あーあ、なんかいろいろありすぎて腹減ったわー」
「そうだね、なんか頼もうか?」
俺はスマホを取り出し、デリバリーサービスのアプリを開く。
ここまでしてもらったんだから、せめて好きなものを好きなだけ食べてもらおうと思った。
ところが杏子は、またしても予想外の行動に出た。
「このへんにスーパーってある?なるべく大きいところ」
「ん?いちおう少し歩けば結構デカイのがあるけど?」
「おっけ、じゃあ行こっか!」
と杏子は立ち上がり、俺の手を取り、引っ張った。
「いや別にわざわざ買いに行かなくても…」
「なに?現役JKの手料理を食べたくないわけ?」
「え!?杏子が作るのかい?」
「そーだよ、悪い?」
「悪いっていうか、流石にそこまでしてもらうわけには…」
「アタシが作りたいんだからいいの」
彼女は料理までできるのか?
杏子はズケズケと廊下を歩き、壁にかけていたパーカを羽織り、スニーカーを履いてドアノブに手をかけた。
ドアが開くと、登りきった太陽の光が一気に流れ込み、眩しさに目が眩んだ。
「うん」
「めっちゃ出んじゃん、溜めすぎだよ」
「…ごめん」
杏子はカーテンレール上の埃をハンディモップでさらいながらボヤいた。俺は机や床のゴミを袋につっこみながら、肩を落とす。
荒みきった生活を、女子高生に諭されるオッサンか…田舎の親父がみたら頭を抱えるだろう。
こんどは心中で親父に謝罪した。
「ところでさ、本当にアレでよかったの?」
「ああ、近藤さんのことかい?」
「人が良すぎだよ」
杏子はこちらを振り返り、いくぶん非難めいてはいるものの、おおむね心配そうな面持ちで尋ねた。
彼女の言いたいことはわかる。結局俺は被害届をださなかったのだ。
二度と家に来ないこと、連絡もしないことを約束させ、警官もろともお引き取り願ったのである。
だがそれは、人情的な理由というよりは…
「おおごとにして、逆恨みでもされたらいやだろ?むしろ借りを作っといたほうがいいかなと」
「あー、たしかに。失うもんなくなったら、なにするかわからんもんね」
「そういうことだよ」
そして杏子は思い出したようにニマッと笑った。
「なにせ、地雷系おじさんだしw」
「やめてくれよw」
俺たちはまた笑いあった。杏子といると、俺はよく笑う。
出会ってまだ一日、時間にすれば5~6時間しか共に過ごしていないわけだが、それでも杏子がくれた笑顔の数は、ここ一年をすべて合わせた数よりも多い。
「ほらほら、ちゃっちゃっと終わらせるよ」
「かしこまりました」
近藤さんの件が片付き、一息つこうかと思ったが、杏子に尻を叩かれ、部屋の大掃除をすることなり、いまに至る。
尻といえば、さきほどから見事なソレが目の前で揺れていて、どうにも落ち着かない。
窓の下の方を雑巾で拭くために、やや前のめりの姿勢となっている杏子のソレは、キュッキュッと動く手と連動するかのように、ユラユラと振れていた。
一生懸命掃除してくれている杏子に対し、なんて不義理な視線なんだろうと自分でも思うが、控えめに言って一級品な桃尻は、俺の理性をグラグラと揺らした。今日の俺は揺れてばかりだな。
さらにいえば、短丈のタンクトップから覗く素肌のウエストも見事だ。しっかりと引き締まっていて、それでいて筋肉の影は薄く、柔らかそうな質感を保っている。
だからこそ、なおさらその下にある白鳳ー桃のブランド品種である。横綱ではないーの丸みと大きさがより際立って…
「岩木さん、手が止まってる」
「はひっ!?」
「ついでに口も開いてるし、ヨダレも出てる」
「よ、ヨダレはまだでてなくないか?」
「ふーん、まだねえ」
「…すいません」
いつの間にか振り向いていた杏子に、しっかりと叱られる俺。
女子高生の尻に見惚れ、ヨダレをたらしそうになるオッサンか…田舎に残っている妹に見られたら、兄妹の縁を切られかねないな。
俺は心中で…以下略。
そんなこんなで1時間後。
「やっと見れるようになったねー」
「ほんとにありがとう」
俺の部屋は、見違えるように綺麗になっていた。廊下にある大量のゴミ袋が、いかに酷い有様だったかを物語っている。
それにしても、と俺はタオルで汗を拭く杏子を見やる。
テキパキと手際よく掃除していた彼女の姿は、失礼ながらとてつもなく意外だった。どちらかというと、家庭的なスキルとは無縁な感じがするのにな。
「…なんか失礼なこと考えてる?」
「へ!?」
いったいなんなんだ?どうして彼女は俺の頭の中が読めるんだ?
「わかりやすいんだよねえ、岩城さんってさ」
「俺の心の声に答えないでくれよ」
うなだれる俺を、彼女はおかしそうにクスクスと笑う。心の声がダダ漏れでも別にいいか、そんな風に思ってしまうほど、可愛らしい笑顔だった。
彼女はすっきりと片付いたソファに腰を降ろし、うーんと伸びをした。
「あーあ、なんかいろいろありすぎて腹減ったわー」
「そうだね、なんか頼もうか?」
俺はスマホを取り出し、デリバリーサービスのアプリを開く。
ここまでしてもらったんだから、せめて好きなものを好きなだけ食べてもらおうと思った。
ところが杏子は、またしても予想外の行動に出た。
「このへんにスーパーってある?なるべく大きいところ」
「ん?いちおう少し歩けば結構デカイのがあるけど?」
「おっけ、じゃあ行こっか!」
と杏子は立ち上がり、俺の手を取り、引っ張った。
「いや別にわざわざ買いに行かなくても…」
「なに?現役JKの手料理を食べたくないわけ?」
「え!?杏子が作るのかい?」
「そーだよ、悪い?」
「悪いっていうか、流石にそこまでしてもらうわけには…」
「アタシが作りたいんだからいいの」
彼女は料理までできるのか?
杏子はズケズケと廊下を歩き、壁にかけていたパーカを羽織り、スニーカーを履いてドアノブに手をかけた。
ドアが開くと、登りきった太陽の光が一気に流れ込み、眩しさに目が眩んだ。
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