黒ギャルとパパ活始めたら人生変わった

Hatton

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アタシが初めて彼を見たとき、あの人に似てるなって思った。

いつだったっけ?たしか半月前くらいだっけ?

あの日、彼は電車に乗ってた。

斜め向かいに座るくたびれたおじさんを見て、似てるって思った。

なにが似てるんだろ?心配になるくらい痩せてるとことか?ハリも艶もない肌の感じとか?

たぶん、彼があの人と同じ目をしてたから、似てるとこを探したんだと思う。

彼はスマホを開くこともなく、本や新聞を広げることもなく、ただ座っていた。ただ空間を眺めてた。

ううん、っていうか目に何も映さないようにしてた。

感情をぜんぶ追い出したみたいな、空っぽの目。がらんどうの目だ。

私にがらんどうっていう言葉の意味を教えてくれたあの人も、最後はあんな目をしていた。

戻ってくる気もないのに「行ってきます」と言ったあの人も、彼と同じ、がらんどうの目をしていた。

「そのうち死んじゃうんじゃないかな」

斜め向かいの、あの人と同じ目をしたおじさんに対して、なんとなくそう思った。

だからってどうする気もなかった。このときはまだ、名前も知らないおじさんだったから。

どうせ二度と会わない人だと思っていたのに、そうはならなかった。

そういえば、アタシが小さいころ、クリスチャンだったママがよく言ってた。

「人との出会いは神様のお導きなの。ママもパパとそうして出会ったんだから」

「杏子も出会う人、ひとりひとりを大事にね」

と大きな手で、優しく頭を撫でてくれたのを、ボンヤリと覚えてる。

つまり神様の導きってこと?あの人も、そして目の前に突っ立てるおじさんも。

「2番線、電車が通過します」

再会?したおじさんは、アナウンスを合図に、一歩前に出た。

つまりそういうことなの?私になんとかしろっての?

助けられなかった、救えなかった、あの人の代わりに、この人を助けろって?

そんなのって、無いよ。だったら、あの日に戻って、あの人を助けさせてよ。

彼はもう一歩前に出た。

ああ、きっとあの人も、こんな感じだったんだろうな。

誰にも気づかれず、線を越えたんだろうな。

目の前に彼になんて言えばいい?あの人にはなんて言えばよかったの?

どうしたら、死しか映さない目に、ちょっとでもマシなモノを映してあげられるの?

彼はまた進んだ。もうその先は無かった。

アタシは足りない頭を絞って絞って、言葉をひねり出した。

「死ぬなら、一発ヤッてからにすれば?」

すると彼は、振り向いて、アタシを見つめた。

がらんどうの目に、少しだけ色が見えた気がした。

アタシが股を広げたら、わかりやすく目の奥が燃えた。

なーんだ、こんなんでいいんだ。こんなんで、死なずに済むんだ。

なら、あのときも、あの人に、同じことを言ってあげれば良かった。

「そんで?ヤルの?死ぬの?」

別にヤッても全然良かった。もっと汚くて、醜いおじさんとヤッたこともある。

でも彼は、岩城さんは、笑いながら首を振った。

「やめとくよ」

その顔は、やっぱりあの人と重なった。勘弁してよ。

ごめんね、ママ。アタシはやっぱり、神様が嫌い。

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