4 / 5
4 勘違い
しおりを挟む放課後、いつものようにあいつらの溜まり場である体育倉庫に向かう。
どうやら今日は俺が一番乗りのようだ。
今日の体育の時間はサッカーでいつもよりハードだった。
その疲れからか少し眠い。
体育倉庫のマットの上で横になる。
あいつらが来るまで少し眠ろう。
目を閉じるとすぐに眠ってしまった。
遠くの方で微かに声が聞こえる。
「・・・だこれ・・・じゃん」
「まじ・・・キモ・・・」
だんだん大きくなるその声に呼ばれるかのように目を覚ます。
体育倉庫にはすでに橘を含む俺をいじめているギャル5人グループが揃っていた。
体育倉庫の真ん中で全員で囲んで何かを見ているようだ。
「これ、お前の?」
ギャルグループのリーダー格である梅澤が俺に言う。
俺は梅澤が手に持っているものを見た。
それは所属している美術部に提出しようとしていたデッサンや人物画。
こいつらのせいで幽霊部員だが、せめて絵だけでも書いて提出しようと考えていた。
最悪だ。これだけは見つかりたくなかった。
「そう・・・だけど」
え~まじ?やばー。
馬鹿にするような声が聞こえる。
「お前こんなの書いてんの?時間のムダだからやめとけよ」
梅澤が絵を床にバラまき踏みつける。
アハハッと笑い声が響く。
周りのやつらも一緒になって笑っている。
俺は踏まれている絵をただ見つめるだけしかできない。
時間をかけて描いた作品たちが踏まれてクシャクシャになっていく。
「それにこの絵、京子だろ?」
梅澤が俺の鞄の中から1枚の絵を取り出した。
黒髪ロングに切れ長な目に耳にイヤリングをしている。
橘をモチーフに描いた人物画。
「・・・違う」
咄嗟に嘘をついた。
それを見透かしたように梅澤がニヤニヤ笑う。
「おい京子、この絵破ってやれ!」
梅澤が橘に乱暴に絵を渡す。
絵を受け取り俺の顔を見る橘。
橘はなぜか悲しそうな顔をしていた。
「おい京子、何やってんだ、早く!」
梅澤が急かす。
橘が絵に手をかける。
ビリビリビリッ
綺麗に二つに破れた絵が床に舞い落ちる。
橘が絵を破るのも床に舞い落ちるのもすべてスローモーションのように見えた。
心が冷たくなるのがわかった。
最近優しかったから忘れてた。
橘も俺をいじめている一人だった。
優しくされたこと、俺に好意があると感じたこと、
すべて勘違いだったと気づいた。
俺の中の橘への想いが一気に下がるのがわかった。完全に心を閉ざした。
梅澤が床に落ちた絵を拾い、さらに細かく破いていく。
「あはっ!こんな下手くそな絵描いてどーすんだよ!」
周りはそれを見て笑っている。
こんな悪魔みたいなやつがいるのか。
こいつら全員同じ人間とは思えなかった。
「お前ら狂ってるよ」
自然と口から言葉が出た
「・・・は?」
梅澤の鋭い眼光が向けられる。
居ても立っても居られなくなった俺は鞄を持って体育倉庫から飛び出した。
すぐにでもこのおかしな場所から離れたかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
義妹のギャルに初恋を奪われた話
白藍まこと
恋愛
水野澪(みずのみお)は、先輩で生徒会長の青崎梨乃(あおざきりの)を尊敬していた。
その憧れの感情から自身も生徒会に入ってしまうくらいに。
しかし、その生徒会では度々だが素行不良の生徒として白花ハル(しらはなはる)の名前が挙がっていた。
白花を一言で表すならギャルであり、その生活態度を改められないかと問題になっていたのだ。
水野は頭を悩ませる、その問題児の白花が義妹だったからだ。
生徒会と義姉としての立場で板挟みになり、生徒会を優先したい水野にとって白花は悩みの種でしかなかった。
しかし一緒に生活を共にしていく中で、その気持ちに変化が生じていく。
※他サイトでも掲載中です。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる