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4 勘違い
しおりを挟む放課後、いつものようにあいつらの溜まり場である体育倉庫に向かう。
どうやら今日は俺が一番乗りのようだ。
今日の体育の時間はサッカーでいつもよりハードだった。
その疲れからか少し眠い。
体育倉庫のマットの上で横になる。
あいつらが来るまで少し眠ろう。
目を閉じるとすぐに眠ってしまった。
遠くの方で微かに声が聞こえる。
「・・・だこれ・・・じゃん」
「まじ・・・キモ・・・」
だんだん大きくなるその声に呼ばれるかのように目を覚ます。
体育倉庫にはすでに橘を含む俺をいじめているギャル5人グループが揃っていた。
体育倉庫の真ん中で全員で囲んで何かを見ているようだ。
「これ、お前の?」
ギャルグループのリーダー格である梅澤が俺に言う。
俺は梅澤が手に持っているものを見た。
それは所属している美術部に提出しようとしていたデッサンや人物画。
こいつらのせいで幽霊部員だが、せめて絵だけでも書いて提出しようと考えていた。
最悪だ。これだけは見つかりたくなかった。
「そう・・・だけど」
え~まじ?やばー。
馬鹿にするような声が聞こえる。
「お前こんなの書いてんの?時間のムダだからやめとけよ」
梅澤が絵を床にバラまき踏みつける。
アハハッと笑い声が響く。
周りのやつらも一緒になって笑っている。
俺は踏まれている絵をただ見つめるだけしかできない。
時間をかけて描いた作品たちが踏まれてクシャクシャになっていく。
「それにこの絵、京子だろ?」
梅澤が俺の鞄の中から1枚の絵を取り出した。
黒髪ロングに切れ長な目に耳にイヤリングをしている。
橘をモチーフに描いた人物画。
「・・・違う」
咄嗟に嘘をついた。
それを見透かしたように梅澤がニヤニヤ笑う。
「おい京子、この絵破ってやれ!」
梅澤が橘に乱暴に絵を渡す。
絵を受け取り俺の顔を見る橘。
橘はなぜか悲しそうな顔をしていた。
「おい京子、何やってんだ、早く!」
梅澤が急かす。
橘が絵に手をかける。
ビリビリビリッ
綺麗に二つに破れた絵が床に舞い落ちる。
橘が絵を破るのも床に舞い落ちるのもすべてスローモーションのように見えた。
心が冷たくなるのがわかった。
最近優しかったから忘れてた。
橘も俺をいじめている一人だった。
優しくされたこと、俺に好意があると感じたこと、
すべて勘違いだったと気づいた。
俺の中の橘への想いが一気に下がるのがわかった。完全に心を閉ざした。
梅澤が床に落ちた絵を拾い、さらに細かく破いていく。
「あはっ!こんな下手くそな絵描いてどーすんだよ!」
周りはそれを見て笑っている。
こんな悪魔みたいなやつがいるのか。
こいつら全員同じ人間とは思えなかった。
「お前ら狂ってるよ」
自然と口から言葉が出た
「・・・は?」
梅澤の鋭い眼光が向けられる。
居ても立っても居られなくなった俺は鞄を持って体育倉庫から飛び出した。
すぐにでもこのおかしな場所から離れたかった。
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