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放課後の秘めごと

第二話 女教師 直美

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「ではこれで帰りの会は終了します。先生お願いします」
「宿題などは先程言ったとおりです。忘れる方なんていないとは思いますが、ご注意ください」

静かだけれどすごみの効いた声に、生徒たちは「はいっ」と元気よく返事をした。
担当の女教師、城田直美はストレートロングの黒髪を一つに結び、眼鏡をかけたきつめの美人で、授業につまずいたり生活態度に問題のある生徒への指導は厳しいが、クラスの皆に直美先生と呼ばれて尊敬されている。
保護者からの信頼も厚く、直美先生が担任だと良いクラスになると評判だった。

「みんな寄り道などせず真っ直ぐ帰ること。それと、三和絵利子さんは体育の補習です。体操服に着替えて体育館へ来ること。分かりましたね」
「は、はいっ」

突然指名され、余所見をしていた絵利子は飛び上がって教卓を見た。
優等生の絵利子はいつも手がかからない生徒なので、担任の教師はこれまで少々遠い存在だった。

それが、教師と二人きりの居残り補習。
絵利子の苦手科目は体育なのである。


「起立ー、礼!」

日直の号令が終わると祥子とマリイと、真澄が一斉に駆け寄ってきた。

「一人で補習って、どうしたの?大丈夫?」

心配そうな祥子に、絵利子はこくりと頷いた。

「わたしも分からないんだけど、たぶん跳び箱が全然できないからかな……今日も一度も成功しなかったし」
「図書委員は? あたし楽しみにしてたのにぃ~」
「そうだよぉ、今日はもっとたくさんエッチな……んんっ」

祥子の手が、真澄の口を光速で塞いだ。

「それは秘密の話。じゃあ今日は私たち先帰るね。補習頑張って」
「跳び箱なんて気合いだ! 絶対飛ぶって思ったらできるんだからねっ」
「あたしも苦手なのに補習しなくていいのかなー。絵利子ちゃん、先生に聞いてみてね」

ランドセルを背負い、教室を出て行く3人を見送った絵利子は、体操服に着替えて直美に言われたとおり体育館へ向かった。

    ◆

体育館は人気がなく、シンと静まりかえった隅にぽつんと跳び箱が用意されていた。
傍らに黒のジャージ姿で立つ直美が見える。
スタイルの良い直美が着ると、ジャージでもボディラインが際だち迫力があった。

「遅いですよ、三和さん。 気を付けっ」
「すみません、直美先生」

全速力で走ると自分の上履きの足音だけが体育館に響き、奇妙な感じがした。

緊張しながら、直美の前で気を付けの姿勢を取る。
濃紺色のブルマーと白い体操服を着た絵利子が胸を張ると、小さな二つの突起が柔らかい布地の下でポチッと目立っていた。

上から下まで厳しくチェックするような直美の視線に、絵利子は思わず小さくなってしまう。

(直美先生って、やっぱり少し怖い…)

もじもじしている内に「休め」と号令が飛んだので、一歩脚を開いて長身の彼女を見上げた。

「呼ばれた理由は分かっていますね!? このクラスで、跳び箱3段の台上前転ができないのはあなただけ。他の子達は少なくとも4段はマスターしているのですから、せめて3段はできるようになりなさい。分かりましたね」
「は、はいっ」

「じゃあ、取り敢えず飛んでみて。隣で補助します」
促すように絵利子の肩を抱いて、耳元に話しかける。
「………怖いことなんてないのよ」

突然のボディタッチと柔らかくなった直美の声に絵利子は驚きつつ、素直に「はい」と答えた。

「そんな緊張しないで。三和さんは真面目でいい子。補習の間はリラックスできるように絵利子ちゃんって呼ぼうかしらね。いいでしょ?」
口調まで親しげに変わり、絵利子はどぎまぎしながらこくりと頷いた。

「ありがとう、私たち仲良くできそうね。じゃあ、頑張りましょう」
肩から背中を撫でるように降りた手が、ぽんと腰のあたりを叩いた。

線のところまで下がり、跳び箱へ向かって走る。
こんな低いんだから大丈夫、と思って跳び箱に手をついて前転しようとした瞬間、脅えが先に立って姿勢がぐらついた。

「ああっ!」
「危ないっ」

前転の途中で跳び箱から落ちた絵利子を、直美が支えて床に座らせる。

「大丈夫だった? 痛くない? どこも打ってないわよね」

心配そうな声と共、直美の手が絵利子の小さなお尻を優しく撫でまわした。

「だ、大丈夫です…」

(先生に、お尻触られちゃった)

直美の手はすぐに離れていった。

友人たちの小さな手と違う、大人の大きな手で触れられるのは初めてだった。
絵利子は落ち着かないように小さなお尻をもじもじさせて体育館の床に目を落とした。

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