僕の背中

ハジメユキノ

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君との生活

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澄んだ青空が広がる乾いた大気が、木々を美しく色づける秋。赤く色づいた並木が美しい通りの一角に建つ瀟洒なマンションの一室に秀人と智也の家がある。

「僕、早く自分たちの家の設計したいんだ」
秀人は朝食のテーブルについて、智也の淹れてくれたコーヒーを飲みながらキッチンで朝ごはんを作る智也に話しかけた。
「どんな感じにするの?」
智也はお弁当用の卵焼きを菜箸でくるくる巻きながら答えた。
お皿の上には朝ごはん用のスクランブルエッグがほかほかと湯気を立てている。ちぎったレタスとスライストマト、カリカリに焼いたベーコンもスタンバイして、あとは食パンがいい色に焼けるのを待っている。今日はちょっと厚めの四枚切りで、耳を切り落とさないように切り目を入れる。真ん中にも井の形に切り目を入れ、バターをのせて焼くと、耳はカリッとパンの部分はふわもちっと美味しく焼ける…、とテレビの受け売り(笑)
おかずののったプレートにパンをのせると、秀人の待っているテーブルへ。
「わぁ!ホテルの朝食みたいだ!」
秀人が子供みたいに喜んでいる。
「今日は洋風にしてみました♪」
智也がドヤ顔で笑っている。
「昨日の僕の旅館風朝ごはんもよかったでしょ?」
眼鏡の奥の目が優しく垂れている。
「はい!だから今日は趣向を変えてホテル風です!」
秀人は智也を呼ぶと、人差し指でチョイチョイっと顔を近くに寄せさせて、
「ありがとう、ともや」
優しいキスをした。

テーブルについて食べ始めると、さっき途中で終わってしまった会話の続きを秀人が始めた。
「外観は平屋で片流れの屋根にして、軒は長く伸ばして…」
秀人は古民家再生を学んできていて、さらにそこから丁寧に解体して出た材料を使って新たな命を吹き込む建築を目指している。
「僕たちの家は、僕の集大成にしたいんだ!」
秀人は最近よくこの話をしてくれる。僕たちの家かぁ…。楽しみだなぁ…。って!
智也は時計を見て、
「あー!早く食べなきゃ間に合わない!」
せっかく時間をかけて美味しく作った朝食をかき込むように食べ、喉に詰まらせた。
うっ!胸を叩いていると、
「ともや!よく噛んで!ほら、牛乳飲みなさい」
まるで保護者…。牛乳でようやく流し込むと、
「あー美味しかった!」
「そんなんで味分かったの?」
秀人が呆れた顔をしてるのも気にせず、
「じゃあ、行ってきます!」
とバタバタと洗面所に駆け込んだ。
遠くから秀人が、
「朝からごめんな!長くなるような話して…」
と謝ると、智也は速攻歯磨きを終わらせて秀人のところに戻ってきて、肩に手を回すとほっぺにチュッとして、
「俺に建築の話をしてくれるのって、秀人の右腕に近づいてるってことじゃないの?」
ニッと明るい笑顔をチェシャ猫のように残して玄関に走った。
「いってらっしゃい」と言った時には、智也の姿はなかった。
でも、カウンターの上にはお弁当の包みが…。
「あぁ!」
秀人はサンダルをつっかけてエレベーターに乗り、智也の姿を通りに探した。
「ともや!忘れもの!」
秀人の声に、
「あ!おべんと!」
秀人が走って智也に追いつき、息を切らしながら、
「はい…。気を付けてね」
「はい!今日も頑張ってきます!」
行ってくるねと手をふりふり、智也はお弁当と鞄を抱えて通りに消えていった。


「さて、僕も朝ごはん食べて行かないと」
事務所は9時からなので、あと30分はゆっくりできる。食器は食洗機に入れておけば、先に帰った方が片付けるようにしてるし、食事の支度はだいたい交替でやることにしている。
智也が「俺がやる!」ってはりきっていたけど、秀人も料理は好きなので、交替で作ったり二人で一緒に作ったりして、楽しんで支度をした。
智也はホントに料理が上手くて、秀人はそこにも惚れ込んでいる。何作っても美味しくて、いつも智也をパートナーにして本当によかったと思ってるし、毎日のように口に出して伝えている。
そのたびに智也は嬉しそうにニコっとする。その笑顔がたまらなく好きだ。
「あー早く僕の事務所で働かせたいな…。そしたらずっと一緒にいられるのに…」
バカなこと考えてないで、さっ!仕事行かないと!と妄想を振り切って支度を始めた。

智也はモデルルームや住宅展示場の内装、インテリアを司る部門にやっと配属されるようになった。とは言え、まだ駆け出しのひよっこなので、先輩の補佐をして資料作りを手伝ったり、現場で使うサンプルを運んだり、毎日かけずり回っていた。
雑用みたいな仕事も多かったけれど、智也は現場が見られる事がうれしくてキビキビ働いていたので、先輩社員にも可愛がられていた。
智也の目標は将来、建築家隆秀人の右腕になること。それは何年経っても心の奥底にあって、智也を駆り立ててくれる。
そして、どんなに疲れても落ち込んでも、自分の傍らには必ず秀人がいてくれる。それを思うと失敗しようが怒られようが、じゃあ次はどうすれば上手くいくのか?何を今求められているのかと切り替えられる。
智也は秀人に出会って4年になるけれど、本当に一緒にいられて幸せだと毎日思っていた。自分がここまで変われるとは思ってもいなかった。
憧れの人の背中を追い続けていられることがいつも幸せだと思う。

「はぁ…疲れたぁ…」
智也は秀人より先に家に帰れたので、ソファに寝っ転がりながら夕ご飯のメニューを頭の中に思い浮かべた。作る順番をシミュレーション出来ると、えいっと起き上がってキッチンに立った。
最近お魚食べてないから、スーパーに寄ってカレイと大根、ゴボウを買って帰った。秀人には、買い物大丈夫だからまっすぐ帰ってきてねとラインをしておいた。
切り身になってるから、下処理は熱湯をかけて霜降りをして臭みを取り、煮汁に大根とゴボウを入れて煮始める。煮立ったらカレイを入れて、生姜のスライス、ネギの青いとこを入れたり火が通ったら完成!
残ったゴボウは豚汁ときんぴらに…。豚汁は大根、人参、こんにゃくにおじゃがも入れちゃうか!とーふに油揚げ、この前八百屋さんで見つけた芋がら、豚肉を入れて完成!
秀人にこの前、智也のお味噌汁って具沢山だよねと言われたばっかりだ!嫌なの?と聞くと美味しいよって言ってくれた。
ほうれん草の白和え、蕪の浅漬け、切り干し大根煮、ゴボウと人参、彩りのインゲンを入れたきんぴらも作った。
「こんだけ作れば、一口ずつ食べても野菜はたっぷりとれるはず…」
智也が野菜のおかずを沢山作るのは、秀人のためだ。
「意外と野菜食べないんだよね…」
ピンっとひらめいた!
小さい器、お猪口…。あと、あれあったかな…と棚をごそごそ。
平たい竹かごを出してきて、お猪口や小さい器に一口ずつ盛って籠に並べた。
そして、とっておきの日本酒を升酒にして…。
さらにピン!と来て、外に出て街路樹の赤や黄色の葉を拾ってきて、綺麗に消毒してテーブルに散らした。
「帰ってきたらびっくりするかなぁ?」

その時、玄関からドアの開く音がして、
「ともやーただいまー!ライン見たよ…!」
リビングのドアを開けた秀人は細い切れ長の目を思い切り見開いていた!
「旅館?」
テーブルにやってくると、升酒の準備もしてあるし、テーブルに秋がやって来てる!
「なんかすごく素敵なんだけど!今日って何かの記念日だっけ?」
秀人がワクワクしてるのが分かった。
「記念日…じゃないけど、一緒の夕ご飯はやっぱり嬉しいからさ!作り始めたら止まんなくなっちゃって。一口ずつ食べてもいろんな野菜取れるでしょ?秀人あんまり野菜食べないから…」
「あーもう!ともや!」
言葉にならない想いが溢れて、智也をベッドに連れて行こうとすると…。
「秀人💢美味しいうちに食べてもらえるように計算して作ったんだからね!俺はあとです!」
ぴしゃりと叱られてがっくり肩を落とす演技をするけど…。
「今食べてくれないと怒るよ!」
すっかり見抜かれていたので、仕方なく諦めた。

テーブルにつくと今日の食卓の艶やかなこと!
「さすがインテリアコーディネーターだねぇ…」
つくづく感心していると、
「明日は休みだから、純米大吟醸!奮発しました!」
「本当に何かの記念日じゃないよね?」
「ゆっくり一緒に夕ご飯食べられると思ったらうれしくなっちゃって…。どうせ食べるなら美味しそうに盛り付けたら、もっと食べてくれるかなって思ってさ」
食べて食べてと智也にすすめられ、お猪口や小鉢に少しずつ盛られたおかずを食べながら、飲み屋さんのように升にコップを入れて溢れるほどの日本酒をついでもらい、こぼれないように唇をつけて少しずつ飲んだ。
「!甘くて美味しい!」
「でしょ?」
智也は自分がそんなに沢山飲めないから、ちょっと高価でも美味しいお酒を少しだけ飲むのがすきだ。
秀人は元々強いので、倍のペースで冷や酒を飲みながら、智也の作ってくれたほうれん草の白和えを食べて、
「これ!柿も入ってる?このオレンジの…」
「あっ、気付いてくれた?甘みが加わっておいしいんだよ」
秀人は嬉しそうに話す智也が可愛くて仕方なかった。
「智也ももう少し飲んだら?」
にこっと魅力的な笑顔で日本酒をすすめる秀人に、
「酔っぱらってねむくなっちゃうから…」と言いつつ、やっぱり美味しさに負けていつもより多めに飲んでしまった。

テーブルで舟をこぎ始めた智也に自分の着てたカーディガンを着せ掛けて、秀人は食器を食洗機に入れてざっとテーブルを片付けると、智也を抱っこして寝室に連れて行った。
少し口を開けて気持ちよさそうに眠っている智也に、秀人はちょっとイタズラ心が湧き上がった。

ぴちゃぴちゃぴちゃ…。
智也は黒ヒョウに体中舐められている夢を見ていた。だんだん身体が熱くなってきて、腰がしびれるような感覚に襲われていた。
気付くといつの間にかパジャマに着替えていて、でも下半身がスースーしてる?
秀人が智也のアナルに舌を這わせていた。
「ひ、ひでと。ダメだよ…。汚いから…」
「ん?大丈夫だよ。ちゃんと綺麗にしてあげたからね」
音を立てて智也のお尻を舐める秀人に、智也は言い知れない気持ち良さで、
「ダメ…。ダメだってぇ…。がまんできな…」
高く啼きながら智也はイッてしまった。

「かわいいな。もうびちょびちょだよ。前触ってないのに…」
「あっ!待って。今イッたばっか…」
「だめ、欲しい」
グイッと挿しこまれた秀人の堅さに指の先まで快感走った。そのまま何度となく差し込まれるモノの形が、智也には目に見える気がした。
「ひでと…、ひでとの形が分かる…」
「どんな?」
「張ってる所と…くびれてるとこ…。あっそこやだ!」
ごりっと智也の好いところを見つけた秀人は、
「ここ?」
ゴリゴリと同じ所を責めた。
「やだってば!やだ!おかしくなるから…」
秀人は智也に深く深くキスをすると、
「いいよ、見せて」
激しく音を立てて責めた。
「あっあ、らめ…らめ…」
舌足らずな声で儚い抵抗をするも、秀人の激しさに負けた。
「ひでと…!」
「ともや、僕ももう…!」
二人はほぼ同時にイッた。智也は気持ち良すぎて意識を失いかけた。
「ひでと」
智也が秀人にしがみついてきた。
「ん?どした?」
上目遣いで秀人を見つめる智也が可愛くて、
「もう一回…」
珍しく秀人と同じ気持ちだった智也は、にこっとして秀人を迎え入れていった。
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