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【後日談】寒がりSubにあたたかな贈り物(ギフト)を
しおりを挟む『明日は市街地でも雪がちらつくことがあるでしょう』
そんなテレビからの言葉を聞いて、暁翔は、雪かあ、とぽつりと呟いて、隣で同じようにテレビを見ていた央樹を見やった。
週末、今日は央樹の家に泊まりに来ていた。暁翔の家よりもリラックスした表情を見せてくれるので暁翔は央樹の家に泊まるのが好きだったのだが、この時の央樹の表情はなんだか少し硬くなっている。
「央樹さん?」
「え、あ……明日、雪だって」
「ですね。じゃあ、明日は外行きましょうよ」
雪と聞いてワクワクしていた暁翔が言うと、央樹の表情が更に歪む。
「あれ、もしかして央樹さん、雪嫌いですか?」
「雪が嫌いなわけではないが……寒いのが苦手だ」
そういえば央樹の部屋はこちらが暑いと感じるほど暖められている。暁翔がTシャツ姿でビールを飲んでいるのに対し、央樹は厚手のカーディガンを着て、温かいコーヒーを飲んでいる。
「寒いって、そうでもないですよね。プラス気温だし」
「いや……北国と一緒にしないでくれ」
央樹がコーヒーの入ったカップを抱えるように手の中に包み、答える。
「一緒になんてしてないですけど、そこまで寒くないと思いますよ」
「いや、もう寒いし」
今夜から冷えるとテレビでも言っていたが、こうも体感が違うと思うと、暁翔の中の苛めてみたい気持ちがむくむくと湧いてくる。
「央樹さん、ちょっとプレイ、しません?」
「……さっき、風呂でしたじゃないか」
いつものように央樹の全身を洗い、そのまま風呂で央樹を抱いた。そのせいだろう、央樹がまた抱かれるのではと思っているようで、少し赤くなっている。
「軽くです。ね?」
にこりと笑ってお願いすると、央樹は断らない。これを央樹はあざといと言うが、央樹だって甘いと思う。この時も、軽くなら、とため息まじりに頷いてくれた。
「じゃあ、『stay』だよ、央樹」
暁翔が央樹を見つめる。央樹の表情がいつもより甘くなるのは、こちらのコマンドを心地良く感じているからなのだと、付き合い始めてから知った。ただの上司である時は、この人のこんな表情を見ることが出来るなんて考えてもいなかった。だからこそ、今が嬉しいし、幸せだと思う。
暁翔は央樹のカーディガンのボタンに手を伸ばした。それを外し、カーディガンを肩から落とす。ふるり、と央樹の肩が震える。
「寒い?」
「寒い、よ」
央樹の言葉に暁翔は、そっか、と答えるが、更に着ていたパジャマのボタンも外していく。央樹の表情が不機嫌に歪む。寒いと言っているのに脱がし続けるからだろう。
開いたパジャマの隙間から央樹のキレイな肌が見える。暁翔はテーブルに置いていたビールの缶を央樹の胸に当てた。
「冷たっ……あ、きと、冷たい」
央樹の肌が粟立つ。暁翔はその肌に指を滑らせた。冷たい缶ビールを持っていたので、この指も冷たいはずだ。央樹が少し泣きそうな顔をする。
その表情が堪らなくて、暁翔の背中がぞくぞくと戦慄いた。本当に理想の反応をしてくれる。
暁翔は央樹の言葉を無視してパジャマを脱がせた。コマンドを聞いている為だろう、央樹はぐっと我慢して暁翔を見上げる。本当に寒いらしく、央樹の乳首もつんと尖っている。それすらも色っぽい。
「暁翔……もう……」
央樹の体がカタカタと震えだす。寒さからなのか、これ以上の我慢が難しいのかは分からないが、央樹の目から涙が零れ始めたので、暁翔はそっと央樹の体を抱きしめた。
「『goodboy』、ありがとう央樹」
暁翔が耳元で囁き、央樹を強く抱きしめる。
「暁翔、ホントに寒い」
央樹が暁翔の胸で小さくなる。暁翔はそんな可愛らしい央樹を抱え上げた。
「ご褒美に、たくさん暖めます……ベッドで」
突然抱え上げられた央樹が驚いて暁翔を見上げる。それから、服着せてくれれば、と慌てたが、もう遅い。
「大丈夫、すぐ暖かくなりますから」
央樹をベッドに組み敷き、上から布団を被る。それを見上げる央樹は諦めたように息を吐いてから、それでも優しい顔で両腕を伸ばした。
「冬は苦手なんだ。暁翔が暖房代わりになってくれるか?」
「いくらでも。これからはずっと、おれの体温を央樹さんにあげますよ」
暁翔が微笑んで央樹を抱きしめる。
寒がりな恋人と寄り添える理由になるなら、ずっと冬でもいい――そう思う暁翔だった。
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本編最終話まで読みました!
ときに切なく、ときに甘く、ときに執着が見えて、とても好みなお話でした…!
央樹さんが上司なのに僕って一人称で、仕事中とプレイ中の態度がガラッと変わるところや、暁翔くんがわんこ系なのにDomの顔を覗かせるとき…くぅ〜っとなりながら読んでました!
まだ番外編があると期待しつつ、応援しています!
個人的にはお兄さんが納得するかが気になります…
糸さん、お読み頂きありがとうございます!
二人とも普段とプレイ中のギャップを意識して書いてたのでそう言って貰えると嬉しくてニヤニヤしちゃいます笑
お兄ちゃんね!お兄ちゃんは多分暁翔が無視してしまうんだろうけど、きっと央樹が誠実に対応していくんだろうなあと思ってます。
そんな話もまた書きたいですね
今日番外編の後半を更新してこちらでは全て完結にします。最後まで楽しんで貰えたら嬉しいです♡
毎日楽しく拝読させていただいてます
わたし!!
猪塚さんは柏葉主任のことが好きなのだと思ってました
しかもSubだったなんて!
2重にビックリ
コンテストも投票させていただきました
応援してます
とらやさん、お読み頂きありがとうございます!
驚いていただいてなによりです😊
猪塚さんにはわちゃわちゃとかき回して貰いました笑
投票も、ありがとうございます!!
最後まで楽しんで頂けたら嬉しいです♡
こんにちはー
14-4まで読ませていただきました。
年下ワンコ、良きです😍
優しくて気遣いできるのに、来るときはグイグイっとくるのが、また良い!
無理やりプレイより、甘々に甘やかすプレイが好きなので、ニヤニヤしちゃいます💕
このまま二人恋人になればいいのにーと思うけど、ちょっと気になるのが3人ほどいますね。
⁝( `ᾥ´ )⁝ウヌヌ…
麻紀さん、こんにちは!
感想ありがとうございます✨
暁翔は頭のいい大型犬がイメージなのでそう言って貰えると嬉しいです✨
央樹がぐるぐる考えるタイプなので乗り越えることはなかなか多そうですが、見守ってもらえると嬉しいです!