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 ミチとこうして抱き合うのは二度目だけれど、前回よりも千沙樹は緊張していた。
「……そういえば前もそうやって隠れていたな」
 ミチの長い指が自分の後孔の中を拓いていく水音が部屋に響いている中、ミチが小さく笑う。千沙樹は、だって、と枕に埋めていた顔を少しだけミチに向け、眉を下げた。
「やっぱり、はずか、しい……です」
 着ていたものを全て脱がされ、脚を開かされて秘所をさらけ出している姿は自分でも見ていられない。できることなら自分で準備したいのに、ミチはそれを許さないのだ。
「慣れて、としか言いようがないな。きっと、そのうちこれがいつものことになるはずだ」
 ぐちゅ、と粘着質な音をさせてミチの指が千沙樹の内壁をぐるりとなぞる。千沙樹の中にぞくぞくとした快感が走り、高い声が出てしまって、千沙樹は自分の口を手のひらで覆った。自分から出たとは思えない甘い声に動揺する千沙樹に、ミチが微笑む。
「おれ相手じゃないと出ない声だな、もっと聞きたい」
 ミチがこちらに近づき、千沙樹の手にキスをする。千沙樹はゆっくりと口から手を離した。その手をミチが取り、指を絡めて繋ぐ。
 『おれ相手』とミチがわざわざ言うということは、佑と比べているということなのだろう。感じていることが全然違うのだから、声だって違うはずだ。
「く、らべないで、ください」
 義務に近い感覚で抱かれていた時と、好きな人に自ら抱かれに行っている今を比べられるのはやっぱり嫌だ。佑のことを嫌ったことは一度もないけれど同じ行為だとは思われたくない。
「……うん、そうだな」
 ごめん、と耳元でミチがささやき、そのまま耳朶にキスをする。千沙樹の喉から甘い声が漏れる。もうどこを触られても気持ちがいい。きっとこれは好きな人としているからなのだろう。
「千沙樹が今までされてきたことはただの暴力だ。だからちゃんと覚えて、抱き合うってどういうことか」
 ミチの手が解かれ、するりと千沙樹の胸を滑る。さっきもさんざん愛されてミチの唇の痕が付いているというのに、千沙樹はそれでももっと触れてほしいと思ってしまう。
 それが伝わったのか、ミチの指が尖って赤く熟れた乳首に触れてくれた。
「あ、そこ……」
「触ってほしそうだった。もっと、言葉にしていいんだよ。触ってって言って」
「そんな、の……」
 今こうして喘がされているだけでも恥ずかしいのに、自分からして欲しいことなど言えない。千沙樹が小さく首を振ると、そうか、とミチが少し考えてから、後孔に入っていた指を抜いた。自分の中を埋めていたものが抜けた突然の喪失感に、千沙樹が戸惑いながらミチを見上げる。
「どうしたの? 千沙樹」
 いつもよりも優しい顔のミチが甘い声で尋ねる。
「どうって……」
 もう気づかれていると分かる。それでもミチは千沙樹に言わせたいのだろう。
「言って、どうして欲しいのか」
 千沙樹があまりに恥ずかしがるから言わせたいのだろう。
 意地悪な人だなと思うけれど、嫌いにはならなかった。
「……ここに、ミチさんの、ください」
 千沙樹が手を伸ばし、自らの後孔に触れる。指の先を入れ、ミチを見上げるといつもよりも精悍な顔のミチが、満点、と呟いた。
 そのまま千沙樹の腰を抱き寄せ、自らの熱を一気に千沙樹の中へ埋め込む。
「んんっ……!」
 突然中を満たされて千沙樹の視界に星が飛ぶ。苦しいけれど、千沙樹が感じているのはそれだけではなかった。
 好きな人と繋がっているという充足感と幸福は、苦しさも痛みも打ち消してしまう。
「千沙樹、おれを受け入れてくれてありがとう」
    ミチの腕が背中に廻り、そのまま強く抱きしめられる。耳元でささやかれた言葉に、千沙樹は、ミチの背中に腕を回し、抱きしめ返すことで応えた。
「愛してる」
    甘い言葉が耳の奥で溶けていく。
    千沙樹はその言葉が何より嬉しくてミチの肩にぎゅっと顔を埋めて頷いた。
「僕も……ずっと、愛してます」
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