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しおりを挟む果てた体の熱は、ミチが離れてもすぐに冷めることはなく、千沙樹は幸福感に満たされたまま、ベッドを降りて衣服を身に着けるミチを見上げていた。
「僕……やっぱり死神になります。ミチさんと居たいから」
このままミチと別れて次の人生に行くなんて、絶対に嫌だと思った。もっとミチと居たい、もっとミチを知りたい。できることならずっと一番傍に居たい。
「……おれと居たいから? ホントに?」
千沙樹の言葉を聞いて、ミチが振り返る。千沙樹は体を起こして頷いた。
「はい。僕の未練って何か分かったんです。僕、ミチさんと……」
「千沙樹は転生した方がいい」
千沙樹の言葉に被るように、ミチが強く言い放ち背中を向ける。驚いた千沙樹はそのまま何も言えず黙り込んだ。
「……一週間の約束だから、そこまでは居てもいい。でも、千沙樹は死神にはならない方がいい……なってほしくない」
ミチがゆっくりと言葉を繋ぐ。それからこちらを一度も振り返ることなく、シャワー浴びてくる、と千沙樹の前から立ち去った。
「……僕、ふられ、た……?」
告白をする前から、ミチには千沙樹の気持ちが伝わっていたのだろうか。千沙樹に告白をさせまいと、拒絶するような言葉を挟んだのならもう何も望みはないということだろう。
だったらどうして抱いてくれたんだろう。キスだって優しかったし、恋人みたいに扱ってくれた。さっきまでは本当に幸せだった。
死んでも悲しくなったり涙が出たりするんだな、と思いながら、千沙樹は自身の膝を抱え、ため息を零した。
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