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「ここ、感じるのか?」
「う、るさい。自分で察しろよ」
 頬が熱い。ストレートに感じるのか、なんて聞かれて、そうだなんて答えられるはずがない。ユズハはこの間初めて体を開かれたばかりなのだ、まだまだ恥じらいもある。
「そうか……俺はきっとそういうところがダメなんだろうな」
 アサギがユズハの体を抱き寄せ、胸に顔を埋める。唇で乳首を食み、ちゅっ、と音を立てて吸われると、ユズハの肌がぞくぞくと戦慄いた。
「んっ、それ……」
 優しい愛撫なのにこの前よりも気持ちいい。今日は怖いとも思わなかった。
「気持ちいいか? だったら続ける」
 唇を一度離したアサギがこちらを見上げ、微笑む。ユズハは真っ赤になって視線を泳がせた。再びアサギがユズハの胸に吸い付く。
「な、んか……アサギ、赤ちゃんみたい」
 ユズハの胸を吸うその姿が甘えているみたいで、ユズハが、くすりと笑う。するとアサギが顔を上げて真剣な目を向けた。
「俺はお前に、俺の子を産んで欲しい。前回のでは孕まなかったか?」
 アサギの言葉にユズハは、え、と聞き返してから、なにそれ、と笑った。
「待って、アサギ。オメガの男性体が妊娠できるのは発情期だよ。他も出来なくはないけど……すごく確率は低い」
 ユズハの言葉を聞いて、アサギが、そうなのか、と起き上がった。ユズハも起き上がり、うん、と頷く。
「もしかして、知らなかったの?」
「……勉強不足で済まない」
 アサギの顔が見る見るうちに赤くなり、それを見ていたユズハが笑う。
 昔から頭がよく、ユズハをばかにしていたアサギが、こんな常識ともいえることを知らなかったなんて、驚いた。
 けれどその男らしくて何でも卒なくこなしそうな容貌とのギャップなのか、少し可愛いと思えてしまった。
「だったら、ユズハの次の発情期はいつだ?」
「さあ……おれ、不定期なんだよね」
 そのうち来ると思うけど、と返すと、分かった、とアサギがベッドを降りた。
「……しないの?」
「今日は発情期ではないんだろ? だったらいい」
 アサギがネクタイを引き抜きながらソファに腰掛ける。それを見ていたユズハもガウンの襟を合わせ、ベッドを降りた。
 さっき落としたグラスを拾い、チェストの中からタオルを取り出す。
「せっかくのお酒が零れてるし」
 文句を言いながらユズハがアサギの足元に零れた酒を拭く。そこでふと顔を上げると、アサギの脚の間に自分がいることに気付いた。しかも、目の前のアサギの股間はふっくらとしている。
「アサギ……えっと……」
「いい。気にしないでくれ」
 落ち着いたら帰るから、と口元を手のひらで覆い、顔を背けるアサギに、ユズハはなぜか切なくなってしまった。
 ここは娼館。自分が買った男娼が目の前に居て、自分だって興奮しているというのに何もしないなんて、男娼としてもダメだと言われているようでなんだか嫌だった。
「……抱かないなら、おれがする」
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