上 下
43 / 46
おふざけ有りのエレナやりなおしルート

【02】地下室に滑り込む。

しおりを挟む
 部屋にもどって、自力で風呂に入り、何事もなかったかのように着替える。
 そのタイミングで。黒髪の侍女・ナデラが部屋に入ってきた。

「お嬢様、申し訳ありません。時間通りに来たつもりですが、遅刻でしたでしょうか……!?」

「いいえ! いいのよ! 気にしないで!!」

「えっ……。ああ! 申し訳有りません!!」

「いいのよ、いいのよ!! ホント!」

 前世(仮)でおばさんがよく言ってそうなセリフになった。まあいいか。
 ナデラの顔がめっちゃ困惑してる。
 だろうね!!

「あ、そうだ。ちょっと行くとこあるから! 朝食はあとで部屋でもらうって両親には言っておいて!!」
「は、はい……!!」

 まるで、幽霊でも見たかのような顔のナデラを置いて、私は保身のため、地下室へとダッシュした。

 ミューラああああ、とりあえず、ミューラをなんとかしないとおお!!!

 ◆


 地下室をヒールで駆け降りると、怯えた顔でガエルとミューラがこっちを見た。

 そりゃそうだろうよ!! ごめんなあ!!

「ちょっとガエル!! なによその食事は!!」

 私はガエルに怒鳴った。

「は、はい……ミューラ様のお世話をするようにと言われたので……」

「それは貴方の食事でしょう!? それに使用人の食事をミューラに出すつもり!?」

「はい!?」
「ええ!?」

 ガエルとミューラが困惑する。

「とにかくガエル、それは自分の部屋に持ってって自分で食べなさい! こんな変なこと頼んで悪かったわ! あとでもっとちゃんと謝罪するから! この事はもう気にしないで! 無理だろうけど!!」

「は……はい……?」

 私はガエルの背中を押して、帰らせた。

 しばらくすると、気を取り直したミューラから言われた。

「エレナ、私をここから出して……」
「うん、いいよ」
「えっ」

「いや、もともとそのつもりで来たし」

 いやーほんと、鞭でぶっ叩く前で良かったよ。

 あれだけはまじでやばい。
 勇者ブチ切れだったもんな。
 あの時の勇者の目が忘れられんわ、怖い。


 そして私はミューラの前で土下座した。
 ――媚びろ!! 私!! 正統なる後継者様に!!!

「エレ……ナ……? なに、してるの?」
「ゴメンナサイ」
「えっ」
「今回のこともそうだし、今までの事全部。許してもらおうという甘えはないわ。でも、ごめんなさい」

 ジョリジョリ。
 私はひたいを、床にこすりつけて謝る。

「ちょっと!? エレナ!! あなたの顔が!! やめて!!」

 うわ……暴力まで振るった相手を心配するミューラ……なんて良い子なの!? 聖女かよ。

「わかったわ……ありがとう。……あ、そうだ手足の拘束を解くわね」
「う……うん」

 ミューラの背後にまわり、縛られている手足の縄をほどいていく。
 その際に後頭部の怪我を確認する。
 うあー。血濡れてるー!! すいません、本当にすいません!!

「後頭部が腫れてる。勇者様一行のなかに、多分治療師がいるでしょうから、あとで頼みましょう」

 ミューラなら絶対治療してもらえる!!
 手足が自由になったミューラは少し手足をプラプラっとさせた。
 ……なんだその仕草。可愛いな!

「……でも、エレナ、本当に一体どうしたの?」

 ミューラは状況に慣れてきたのか、ドン引きから、警戒は残してはいるものの、キョトンとした顔になっている。
 私はミューラの肩に手を置き、真剣な瞳で語った。

「……えーっと、目が覚めたの。急に。自分が目茶苦茶悪い人間だってことがね。あなただって心の中では私のこと、蔑んでたでしょう!?」
「あ……まあその……えっと……えっと……」

 なんか言いづらそう!!
 相手が謝ってくると強く出れない、根っからのお人好し善人だな!?

 その時!
 階段を駆け降りる激しい足音が!!

 キター!! ヤバいヤツがー!!

「ミューラ!! 大丈夫か!!」

 ミューラを心配しつつ、勇者は彼女のそばにいる私を睨んだ。

「あっ。エドガー」
「お、おそようございます、勇者さま」

 うわー、目が怖いー! すいませーん!!

「聞けば使用人に言って、君がミューラをここに閉じ込めたそうだな……」

「アッ ハイ!! でも、もう解放するとこでした! 思い直したので!!」

「嘘をつくな、今だってミューラに暴力を振るおうとしてたんじゃないのか!」

「あ、エドガー。それは違うわ。エレナは本当に私の縄を解いてくれてたのよ。ほら」

 自由になった手足を見せるミューラ。

「……え」

 肩透かしにあう勇者。しかし勇者は怯まず私を追い詰める! 当然だ!

「だが、どうしてこんな地下に拘束を……!! この件は通報させてもらうからな……!」

 通報はやばい。違う私がやったこととはいえ、これは今の私がやったことではない!
 なんとか回避しなくては!!

 い、言い訳……言い訳ぇ……。

「実は……私……ミューラのことが好きなんです!!」

 ああああああ!?

「ええ!?」
「ああ!?」

 自分でもおかしいと思いつつ口が止まらない。

「もうね、出会った瞬間から恋に落ちてしまって! でも私ちょっと恋愛表現が歪(いびつ)で!! 変な趣味思考で!! 愛情表現がおかしかったわ!! ごめんなさいね、あなたに振り向いて欲しかったのミューラ!! それなのにあなたの大事な人が男爵家にやってきちゃって、連れて行かれると思っちゃって!! つい、地下室に隠してしまったわ! でもこれって私の愛なの!!(ゴリ押し)」

「えええ!?」
「嘘をつくな!? ミューラ、本気にするんじゃないぞ!!」

「嘘じゃないわ!! ミューラ好きぃ!!」

 私はミューラの肩をガシッと掴むと、そのまま――。

「あ……っ?」

 キスした。 むちゅって音した。

「これからは……大事にするから」

 私はミューラに囁いた。

「うあ……!?」

 顔が真っ赤になるミューラ。

「………、……、……」

 凍りつく勇者のパーソナルスペース。
 3秒後、ミューラを私からひったくり、怒鳴る勇者。

「無理やりキスしておいて大事もクソもあるかあ!?」

「あ……やだ、私ったら思い余って! でもそういうことだったんです! 信じて下さい!」

「信じられるか!? あっ!! ミューラの後頭部から血がでてるじゃないか! ミューラ大丈夫か!!」

「あ、うん、ズキズキするけど……でも今は何故か唇のほうに心臓があるみたいに熱くて、ドクドクしてるの……何故かしら。なんか、変な感じ……」

 恥じらうように唇をそっと隠すミュ…… 
 ミューラぁあ!? 

「ミューラ!! それは気の所為だ!!」

 なんだか必死な勇者。ご、ごめん!! 私のこれからの生活がかかってるので必死になりすぎました!

 とりあえず、地下牢から出よう、という事になり、私達は階段を登ったが。

 勇者はミューラの手をひき、なんかブツブツ言ってた。

「……女同士だからノーカン……女同士だからノーカン……」

 ……なんか……ホント、ごめん……。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

性裸の密着エロエロ病棟24時【R18】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:24

大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,082pt お気に入り:2,258

【R18】BL短編集

BL / 連載中 24h.ポイント:3,551pt お気に入り:1,043

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,405pt お気に入り:3,813

公爵家のご令嬢は婚約者に裏切られて~愛と溺愛のrequiem~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:589pt お気に入り:586

処理中です...