そのヒロインが選んだのはモブでした。

ぷり

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67 ■ DanceParty 01 ■――ダンスパーティ

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 週末。
 入学パーティの日がやってきた。

 私はドレス選びとかは、もうぜーんぶ、侍女さんにお願いした。
 実は大人っぽいドレスとかあったら着てみたかったんだけど……。

 デザイナーさんが言うには、私の年齡や顔を考えると大人っぽいのは、もう少し年齡を重ねてからがよろしいですって言われてしまった。



 侍女さん達が……
「いいわぁ……。こんなフリフリドレス、まず似合う令嬢いないわよ……ふふ」
「あらら駄目よう。学校の入学パーティよう……派手なのは駄目って言ってたでしょ……」
「でもでもでも、着せたぁい……。じゃあこっちは?」
「アクサリーだけでも」
 って言ってるのが聞こえてきた。

 ちょっと変な雰囲気は感じるけれど、一生懸命選んでくれてる。
 私なんてこの人達よりずっと底辺の身分出身なのに、敬意を払ってくれてる。
 ブルボンスの侍女たちには、そのあたりで地味にいじめられてた。
 ココリーネのお気に入り、ってことで酷い傷とかはつけられることはなかったけど。

「わ、綺麗」
 着せてもらったドレスは、全体的に淡いブルーから紺色へのグラデーションがかかっていて、スカート部分が星空のような装飾がなされていた。
 裾は足が見えるデザインで歩きやすい。
 首の後ろにリボンがついているラウンドネックっていうデザインで可愛い。

 あ、ちょっとオトナっぽいかも。
 私の意見聞いて考えてくれたんだなあ。

 私のできるせめてものお礼を今日もしよう。
 実はこっそり皆が寝静まったあと、屋敷全体に感謝をこめて回復かけてる。
 だってみんな優しいんだもの、元気でいてもらいたい。
 今日も絶対忘れず回復しよう。

 髪は結い上げてもらって、水色の薔薇で飾り付けしてくれた。
 パーティは日が落ちてからだから、ちょうどいいデザインかもね。

 色が合わないということと、入学パーティには重すぎるということで、ブラウンダイヤは今回おやすみ。
 かわりにブラウニーの瞳に似た違う宝石を使ったアクセサリーセットになった。
 うん、ブラウニー色を身につけられるならなんだっていいのよ、私。

 リンデンは、フリージア様を迎えに行かないといけない、とのことで今日は一人で馬車に乗ろうとしたら、スーツを来たブラウニーがマロで飛んできた。

「一緒に行こうと思って来た。……乗せてくれますか? 姫」
「もちろん」

 珍しくブラウニーがきざったらしい事を言って紳士な態度を取られたので、ドキドキしてしまったわ。
 鼻血でてしまうわ!

 ブラウニーは基本顔が良い方なので、こんな格好してたら本当に良いとこのお坊ちゃんにも見え……
 ん、あれ。
 いや、いまや一応男爵家だから良いとこの坊っちゃんなんだよ。
 孤児精神が抜けない。

「ブラウニーは、髪は、どこかお店で整えてもらってるの?」
 髪とか綺麗に整えてる。こないだの婚約式でも思ったけど。

「お父さんの手腕だな」
「お父さん有能!? どれだけ色々できるのあの人!」
「お父さんは何気にすごい人だぞ。てか、お前。ほんとにドレスとか似合うな……というか綺麗で……心配だ」
「心配? ブラウニーしか見てないよ! 私は!」
「そうじゃなくて……他の男どもの視界に入れたくない」
頷き照れてそっぽ向く。可愛い。どうしよう。
「ブラウニー。今すぐ結婚して(真顔)」
「無茶を言うな、無茶を」
 チョップされた。むむむ。

「まあでもさあ。貴族の女の子、ホントに綺麗な子が多いから、流石に孤児の時と違って、私なんて埋没するよ。例がぶっとんじゃうけど、お母様なんてホント、物語から出てきたような……」
 ブラウニーがため息をついた。
「……それでも、なんだよ。とにかく今日は皇太子殿下には見つからないようにしないとな」
「うん……」

 私とブラウニーはこそこそと人の流れに身をまかせて入場した。
 学院長の有り難いお話と、生徒会長である皇太子殿下からの改めての祝辞。
 その辺のお硬い挨拶が終わったら、あとはダンスパーティだ。
 食事してもいいし。

 皇太子殿下は祝辞が終わったら会場を後にされたようだ。
 ヒソヒソ話が聞こえたけど、いつもダンスパーティには参加しないらしい。

 ココリーネがまだ学院にいなかったせいらしい。
 さらにココリーネの事件の話しが続き、ココリーネの悪口がいっぱい聞こえてくる。
 ……まあ、仕方ないんだけど、気分良くないなぁ。
 楽しい話すればいいのに。

 私とブラウニーは、というと、色気より食い気です。
 踊るよりもぐもぐタイムだ。
 レインツリーの祭りでも振る舞われる食事とかのほうに孤児たちは殺到するもんです。
 食える時に食っておかなくては、というやはり孤児精神が抜けない。
 もうこれは習性です。

「これ、美味しいと思うんだ~」
 ブラウニーの皿に盛る。
「これ食ってみ」
 ブラウニーが私の皿に盛る。
「ちょっと、盛りすぎだよ」
「まだいける」
「ちょっとちょっと多すぎる。お行儀悪いよ~」
「ははは。食えなかったらオレが食うし、心配するな」
 こういう時って食べるよりも食べさせたいってお互いなってしまう。

 しばらくそんな事をしていたら、
「ああ~こんばんわ~プラム様~~」
 とても綺麗な白茶髪の令嬢に話しかけられた。
 あれ……?? この喋り方はこの髪は……でも??

「ああ~メガネないからわからないですかね~。私ですよ~副委員長のオリビアです~」
「わ! 全然気が付かなかった! こんばんは、オリビア! ……あ、こっち婚約者のブラウニーだよ」
「まあ~こんばんわ~。プラム様にお世話になっております~」
ブラウニーに挨拶するオリビア。

「こんばんは。プラムがお世話になっております、フラグラント伯爵令嬢」
 ブラウニーがオリビアの手の甲にキスを落とした。
 えっ。
 なにそれどこで学んだの。てかなんでオリビアの名前知ってるの?

「まあまあ。お世話になっているのは私のほうでして~。ヒース男爵令息~」
 オリビアもなんでブラウニーの名前知ってるの!?
 ピン、ときた感じのブラウニーに言われる。
「プラム……おまえ。入学式でもらった生徒の名鑑はちゃんと見たのか……?」
 じと目だ。
「……!!」
 そ、そんなものが! あった気がする!

「あははー」
 むぅ、しかしオリビア、くっそかわいいな!
 私が男なら結婚したい!

「そういえばメガネなくて平気なの?」
「ああ~あれはおしゃれで伊達でして~」
 ほわ。
「チェスもメガネだよね? チェスも伊達なの?」
「ああ、彼は生まれつき目が弱いそうで~」
 ほわほわ。

「オリビアかわいい……結婚して」
 思わず声でた。
「まあ~。光栄です~。でも、背後のブラウニーさんのお顔が大変なことになってますよ~」
 ……ひっ。

「お前、さっきオレにも結婚してって言ったよな。誰にでも言っているのか……?」
 お、女の子どうしのたわいないジョークですよ……後ろでどんな顔してるのか怖くて振り返れませんけど!!

「イウワケナイ! オリビアトクベツ!」
「なんでどこかの秘境にいそうな喋り方なんだよ……。冗談だよ」
「あはは~」
 わきあいあい。

 そこへ
「オリビア! どこへ行った!!!」
 声を荒らげた令息がオリビアを探しに来た。

「あ~はい~こちらです~。ブッドレア様~」
「まったく!! 勝手にあっちこっちへと!! お前は僕の婚約者としての自覚があるのか!」
 ブッドレアと呼ばれた黒髪の少年は、いきなりオリビアの手首をガッ!! と強く締め上げるように掴んだ。

「……っ」
 オリビアが苦痛に顔を歪めた。
「……ちょっと!! やめて! その手を離しなさいよ!」
「あ?」
 そのブッドレアは私を見た。

「……あ、これは失礼…どちらのご令嬢でしょうか…」
 なんか私を見て赤面してしおらしくなった。
 態度が違う!!!

「ブッドレア様~その方はリーブス公爵令嬢ですよ~いたた」
「なっ……これは、失礼しました」
「大丈夫? オリビア!」
 私はオリビアの手を取って掴まれた所をみた。赤くなってる。
 ううん、癒やして上げたい。

「……プラム、回復魔法なら校則違反にひっかからない。大丈夫だ」
 ブラウニーが囁いてくれた。
 え、そうなんだ。
「ありがと、ブラウニー」
 私は軽く回復魔法をかけた。

「……プラム様、あ、ありがとうございます~」
「うおお、聖魔法……。すばらしいですね……」
 ブッドレアが私の手をとってキスしようとした。
 その手をブラウニーが拒否るように、奪い取る。

「プラム、踊りに行く時間だ。申し訳ないが失礼する」
 顔が怖くなってる!!
 挨拶の手の甲キスだめなの!?
 自分はオリビアにしたのに!!
 まあ、こいつにはされたくないけど!!

 ブラウニーに引っ張られるが、オリビアが心配だ……。

「お、オリビア、またね」
「はい~ありがとうございました~」
 ん? そのオリビアの背後に近づくチェスが見えた。
 チェス~頼んだよ~。

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