そのヒロインが選んだのはモブでした。

ぷり

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44 ■ Let's go home 01 ■――おうちにかえろう

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 ――部屋に、ライラック殿下が潜んでいた。

「ラ、ライラック殿下……!?」

 どうして私の部屋に!? しかもこんな夜遅くに!?
  てか、闇魔法怖い……影とかから人が出てきたらさすがに怖い。

「闇魔法の反応は、ブラウニーだけじゃなかったってことか」
 アドルフさんが低い声で言った。

「チッ。アドルフさんにバレたのはあいつのせいか。おかしいと思ったんだ」
「ブラウニー……おまえ。……これが反抗期……」
 ブラウニー、アドルフさんが泣きそうだよ?

「ココリーネが聞いたらどうするかな? ねえ、ギンコ。小さな頃から信用している教師が、不穏分子に心移りしたなんて……」

「心移りなどしていない。そんな事よりライラック。何故その不穏分子のプラムの部屋に? おまえは今日、別棟に宿泊のはず」

 ギンコが眉間に皺を寄せてライラック殿下に問う。
 今日、公爵家に宿泊してたんだ、この人。

 そういえばギンコはライラック殿下のこと呼び捨てなんだね。
 エルフは許されるのかな?

 リンデンはリンデン殿だった気がする。
 基準がわからない。

「それは僕の自由じゃない?」
 にっこり私に微笑む。

 背中がなんだかゾクッとして、私はブラウニーの服をギュッとした。
 この人に昼間された話を思い返すと、まともな用事な訳がない……。

 ブラウニーがそんな私を見て、その後、ライラック殿下を見た。
 ……ブラウニーの顔が険しくなった。
 あ、やばい。私は別の意味でブラウニーの服をギュッとした……。どうどう。

「こんな夜更けに?ココリーネは許可したのか?」

「どうしてココリーネの許可が必要なのかな? 王宮の外では僕がなにしようと僕の自由だ。
僕より階級が上の人間なんていないからね。それに君だって今プラムの部屋にいるじゃないか?」

 ……なんて傲慢な人なんだろう。見た目の美しさとは正反対だ。

「私はプラムの……この部屋の警護と見張りの一環だ。ココリーネに任されている」

「精霊でしか見張ってないからこんなに……3人も男を部屋に通しちゃうんじゃないの? ふふ、プラム、ビッチだね」

「はい!?」 いきなりなじられた。
「うわ……」 アドルフさんが呟いた。
「……」 ブラウニーが無言で怖い。

 更に、ブラウニーの拳が震えてる。
 これ……王子相手に飛び掛からないよね……?
 アドルフさんがさりげなく、ブラウニーの肩に手を置く。
 よかった、アドルフさんも気がついてくれた。

「……いつからこの部屋に?」
ギンコが厳しい視線で問いかける。

「君がこの部屋の扉を開け放つ寸前くらいかなあ……ハァ、さてと、帰って寝るかな。ギンコ、君のことはココリーネにちゃんと伝えるからね。君はもうこれでここにはいられないね。
これで余計なライバルが減ってせいせいするよ。
それにしても…」
 私を蔑むように見た。

「……今のうちに手をつけておこうと思ったら、先に間男が部屋にいたとか萎えちゃったね。寝よ寝よ」

 え……?
 つまりそれ、今日ブラウニーが来なかったら、私は……

 ゾッとした。

「まさか、こんな子供に……」
 アドルフさんが怒気を含んだ声をあげ
「ライラック…!おまえは…!!」
 ギンコが苦言を呈そうとした――その時。

「あっ!?」
 ――私は、足の力がガクッと抜けて――

 ――ブラウニーを中心に光と風が沸き起こった。

「うおっ」
「な……」
「なんだ!?」
 アドルフさんとギンコ、ライラック殿下の驚嘆の声が聞こえて――

  ――― connected…―――
 瞬きすると銀色に輝く文字が脳裏の文字が浮かび上がるのが視えた。……えっ!?


  ――― the Sacred  ―――
  ――― the Absolute ―――

 パーーーーーーーーーン!!
 次の瞬間、私の腕の封印が強い光を帯びた後、全て粉々になって舞い散った。

「きゃ!?」

 え、なに!? 『絶対圏』への接続がいきなり始まった!
 ――と思った刹那、

 ドゴォ!!!!

 すごい音がして、私の部屋の壁に穴が開いた!
 ふぁーーーーー!?

 ……ライラック殿下の姿が消え……そしてブラウニーが。
 ――今まさに殴り飛ばしましたって体勢の銀髪のスパダリが、眼前に立っていた……。

「ころす……」

 だ、第二王子殴り飛ばしたーーーー!?

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