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⑧無人島生活3日目01▶ ぱふぱふ代金ツケときますね。そして風呂作りたいです。

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「……う」
 朝起きると、私に抱きついて寝ているミーシャの顔が私の胸の谷間だった。
 むにゃむにゃ、と幸せそうな顔で寝ている……。

 くっそ! 中身が幼児だと思うと、怒れない!

 こいつが将来、成人男子として精神が成長し、王子に戻ることがあったら、ぱふぱふ代金(謎)を頂いてやる……!
 
 だいたい、実年齢はこの子のほうが私より、上のハズ。
 第二王子が私とタメだから。おそらく1歳上。
 そんな人を子供扱いして、変な感じだ。

 私は寝床を抜け出して、制服のシャツとスカートに着替えると、顔を洗いに外へ出た。
 私もズボンほしいな……やっぱ一着もらおう。

 ミーシャの樹の家から一番近くの湧き水へ向かう。
 タオルもゲットしたし、顔洗うのが楽しみ。

「~~♪」
 鼻歌歌いながら、ルンルンと湧き水へ向かう。
 そういえばお風呂も作りたかったんだ。
 あとでミーシャに相談しよう。

 じゃぶじゃぶと顔を洗って、顔を拭く。
「気持ちいい……」
 こんななんでもない事を幸せに感じられるなんてね。

 その時ガサガサ!と大きな音がした。
「!?」
 私は警戒しながら振り返ると――涙でいっぱいのミーシャだった。

 ミーシャは泣いてる。
「う……」
「ミーシャどうしたの?!」
「おねえさああああん!! 良かった! どっか行っちゃったかと思った!!」

 ドッ!!

「ごふ!」

 成人男性が思いっクソ抱きついてきた!! そして押し倒された! ずっしり重たい!!
 抱きつくのはいいけど、タックルすんな! 成人男子!! ……って言いたい! 言えない!!

 私は倒れる際に魔力変質――魔力を使って筋力を補ったり、ダメージを軽減する技を使って自分を守った。

 ……そしてまた胸の谷間に顔突っ込んでるよこいつ!!
 わざとやってるんじゃないでしょうね?
 ミーシャに限ってそんなことはないと思うけど!
 畜生、将来絶対パフパフ代ry

「あ、あー……えっと。起きたら私がいなかったからびっくりしたんだね。大丈夫だよ、黙っていなくなったりはしないから」
 私はミーシャの頭をなでた。

「うん……」
 ぐすぐす泣いてる。

 うーん、まだ出会って間もないのに、この懐きよう。
 人恋しさがヒートアップしている。

 王宮に……王妃様のもとへ返せたらいい、かな?
 王妃様は厳しい方だけれど、ドミニクス殿下にも温かい対応をしていた。
 心底は温かい愛情をお持ちの方だ。

 しかし、いまさら王宮へこの子を戻したら……どうなる?
 神鳥を降臨させてるこの子は確実に王太子になる。
 そうしたらドミニクス殿下は納得するだろうか?
 派閥は?
 ……うわー考えたくない。 王宮は絶対に混沌とするぞ……。

 だからと言って……私が連れてどこかで隠しして住むというのも誘拐に当たる……。
 そしてそこまでの義理もない。

 そして、私にも事情がある。
 一度公爵家へも戻る羽目になるに違いない。困る。私はもうこのまま海外逃亡したいのに。
 婚約破棄の件もあるし、一度国に戻るとなると、その後の自分の身がどうなるかわからない。

 誰かにミーシャを託せたらいいのだけど、この島にいる奴らは信用できるヤツいない。

「ところでミーシャ。ほら、泣いちゃったらイケメンが台無しだよ、ついでだから顔洗おうね」
「イケメンってなに?」
「あー……。うん、ハンサムってことだよ」
「あ、それならわかる。僕ってハンサムなの?」
「うん、とっても」
「そっかー。えへへ……。あ、ごめんなさい。また酷い抱きつき方して……怪我しなかった?」
 ようやく剥がれ……じゃなかった離れた。
「大丈夫だよ。お姉さんつよいから。さ、顔洗いなさい」

 お姉さんというより、もう気分はお母さんになってきたけど。

 洗顔を終えて、朝ごはんを準備した。
 大体果物だ。
 魚や貝を取りに行くかなぁ。

 そうだ、食べながらお風呂の相談しよ。

「えっとね、お姉さんお風呂作りたいんだけど」
「お風呂?」
「うん」
「滝壺のとこで水浴びするのじゃだめなの?」
「それでもいいんだけど、たまには湯に浸かりたいなって」
「ふうん……ふふ」
「ん?」

「そういうの作るってことは、長く一緒にいてくれそうだなって」
 ミーシャが頬杖をついて微笑む。
 くそ、イケメンめ。

「だって、最終的には船を作らないといけないかもだし……長期戦になるかな、とは思ってるよ。お姉さんは」
「お船かぁ……」
「前にも言ったかも知れないけど……もし、その時に君が島を出てもいいなら、とりあえずは一緒に行こうね」
「……うん!」
 ミーシャは嬉しそうに頷いた。

「ところでお姉さん、お湯が湧いてるところはあるよ」
「え、それって温泉があるってこと?」
「うん、そう」
「へえ! そっちはそっちで行きたい。でもやっぱりお風呂場は作りたいんだ。この樹の下とかに小屋たてて、お風呂場つくってもいい?」
「それって火を使うよね。ちょっと火が心配。……うーん。じゃあこの樹の向こうに岩壁があるでしょ。あそこに穴をあけてあげる。岩を削ってお風呂つくろ?」

 ……森の火事を心配している!
 賢い!
 
 しかし、岩を……削る?
 

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