最弱の魔法戦闘師、最強に至る

捌素人

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最弱の魔法戦闘師、最強に至る

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「フレミア王……女王、また飽きもせずここに居るのか?」
「……なんですか?悪いですか?」
「いや、悪いとまではいかねぇが……三年間もよく同じこと繰り返せるなって」
「言ってろ、です」

人形ひとがた騒動から早三年の月日が経ち、この大陸は昔のように落ち着いてきました。

「今日からは女王なんだか、しっかりやれよ?」
「カインドさんに言われなくともやりますよ」

あの騒動の功績でこの地位に着くことを余儀なくされてしまいました。

わたしは何もやってないのに……レイトさんの功績なのに……。わたしはまた彼を救えなかった。

カムイさんの時も見てることしか出来なかった。守られてばかりいて……。せっかく手に入れた力も結局は役に立たず……。

今世では役に立ちたいと思ったのに……。カムイさんを裏切ったことを謝り、本当の事を言いたかった。

わたしの頬に涙が伝っていく感触があり、そこで初めて泣いていることに気づきました。

「………オレだってよ……悔しいんだぜ。自分の力を過信していたのかもな」
「あなたは頑張りましたよ。だから、今は大陸一強だなんて言われてるではありませんか」
「……オレなんかが、有り得ねぇよ。レイトとの約束、破るところだった」

三年経った今も後悔を残したまま過ごし、過去を振り返るほど涙が止まらない。

「オレ、グロスのとこ行ってくるわ」
「グロスさんはまた訓練場ですか?」
「あぁ、熱心なもんだよ」
「わたしももう少ししたら行きますね」
「そりゃいいな。あいつらも女王が見てるとなれば、覇気が増すだろうよ」

ドアの方に向かうカインドさんの背中を笑顔で送り出した。こうでもしなくては涙腺が崩壊するかもしれませんから。

わたしは前にある箱に視線を落とし、中の物を取り出しました。

「……ごめんなさい……ごめんさない……」

箱から取り出したそのを胸に当てひたすらに泣きました。


「もう一度だけでも良い……あなたに合わせて……まだ伝えてないことがいっぱい……あるのですよ」

こんな姿、誰にも見せられません。レイトが居たらきっと笑われてしまいますね。

「私のお守り、ずっと持っててくれて、ありがと」

それだけを言いお守りを箱に戻し、涙を拭いました。

立ち上がり、ドアの方に向かおうとした時、後方の窓から開く音がしました。

「……誰です?」

振り返ると、そこには一枚の紙切れがありました。

恐る恐るその紙を拾うと、文字が書いてあることに気付きました。

「『門前に来てください』」

明らかに怪しい手紙でした。普通ならば行かないところです。しかし、なぜか行かなくてはならないような、そんな使命感じみたものに襲われました。

わたしは急いで門前に向かいました。

~~~

門前に着くと一人の男性が壁に寄り掛かりながら空を見上げていました。

今日はとても天気が良く、暖かい日でした。

「あなた、ですか?」
「……!!王、女……だよな?」
「あなたは、誰です?」
「あっ!俺はシルだ」

シル………聞いた事のない名前ですね。

「どんなご要件ですか?」

彼は壁に寄り掛かるのを止め、こちらに少し近付き跪き、目線を合わせてきました。

「少し会わなかっただけなのに、綺麗になったな、王女。びっくりしたぞ」
「!!急になんですか!?」

頭に手を置かれ撫でられてしまいました。

「元気そうで何よりだ」
「何様のつもりですか!」
「すまんすまん。ただ、少しお前に会いたくなっただけだからよ。俺はしばらくの間隣町に居るから、よろしくな!」
「えっ!ちょっと!」

それだけを言い残し訳が分からないまま、その人は姿を消していきました。

その場に一人取り残されたわたしは、ただ呆然と立ち尽くしていました。

「一体……何が目的だったのでしょうか……?」

その場にいる必要が無くなり、わたしもその場を後にすることにしました。

~~~

あれからしばらくして、いつも通りに過ごしていると、騒がしい足音が近づいて来ました。

わたしは、少し呆れながらもその足音が止まるのを待ちました。

「フレミア女王様!至急お伝えしたいことあります!」
「入って良いですよ。一段と騒がしかった理由はなんですか?」

こういうのあまり言いたくないが、あまり重要な事を言われた試しがない。もちろん、だからと言って蔑ろにするという訳でもない。

「あのベヒーモスが討伐されました!」
「えっ?」

わたしは衝撃のあまり絶句してしまいました。

「い、今なんと?」
「ベヒーモスが討伐されました」
「…………」

昔、カムイさんが討伐を行ない、その討伐戦に失敗した、あのベヒーモスを?

カムイさんの封印が破られたのも衝撃的ですが、まさか、あのカムイさんを上回る人物が現れるとは……。

「一体誰が討伐したというのですか?」
「シル、と言う人物です」
「!!!それは、本当ですか?」
「はい。間違いありません」

あの時の彼が?まさか……。

「えっ?ちょ!どこに行かれるのですか!」
「急用なのです!」

確証も根拠もない。ただ、感じただけ。そう願いたかっただけかもしれない。

………………彼はレイトの生まれ変わりなのではないか、と。

~~~~~~~~~~~~~~~~

これにて完結とさせていただきます!投稿の合間がとても開きすぎたこと、誠に申し訳ありません。

作者もここまで長引くとは正直思いませんでした。当初の予定では遅くとも九月には終わらせる予定だったのですが……。

ここまで読んで頂き心から感謝申し上げたいと思います。

本当にありがとうございます!

また、次の作品でお会いしましょう!
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