49 / 50
最弱の魔法戦闘師、決着する
しおりを挟む
「まぁ、まぁ……落ち着けよ、お前ら」
「「「!!!!」」」
なかなかカッコイイ登場だったんじゃねぇか?まさに、物語の主人公と同格ぐらいにはな。
「まさか……即席で初見の魔法を……」
「はぁ……お前には一つ言いたいことがあんだよ」
「…………」
「てめぇだけは絶対に許さねぇぞ?」
あの時は許してやった。だが、あくまでも利害が一致しただけだ。
こっちの賢者には何の躊躇いもない。
「今更何を仰るのですか?もともとでしょ?」
「そうだな……まぁ、確認だと思っててくれ」
それと、手短にな。俺には残り時間があまりないものでな。
「カインド、グロス。何度も言うが……王女を守れ。そして、今まで守ってくれて、ありがとな」
面と向かって言うのは気恥しいものだが、言わなければ後悔するだろうしな。
まぁ、ちゃんと言えることに越したことはないだろうけどな。
「はあ……友情ごっこは済みましたか?見ていて気持ち悪いですね、ホントに」
「ほら、来いよ?」
あと五撃だ。五撃以内に仕留める。できなければ、終わりだな。
「『多重発動·基属網』」
基本属性を四方八方に広げて動きを制限する気か……。
効率と効果、どちらを取っても素晴らしい魔法だな。
だが、基本属性のみで発動したのが悪かったな。
「『空間·切削』」
「!!!」
グロスの空間切削とは似て異なる技。どちらも任意の場所を一瞬消すというのは同じ。だが、空間·切削は、範囲が物凄く広い。
俺の周囲の魔法を無効化する。俺を中心に発動してる故、俺が動けば一緒に動く。
「魔力が馬鹿げたほどあるようで……では、これもいけますか?『氷剣武装』」
「なるほど……魔力密度もなかなか悪くない……でも、発動に時間が掛かりすぎだ」
「くっ!」
範囲外に行かれたか……。まぁ、この空間·切削を発動してるうちは近付きたくないだろうな。
あいつごと消えちまうからな。
「『刹那眼·発動』『先見』」
刹那眼の覚醒により、一瞬先の未来を先取りできる。
「『樹海の根』」
「!!!」
束縛系の上位に入る魔法。束縛時間はもって三十秒程度。
俺には充分すぎるぐらいだ。
「レイグル……俺は楽しかったぞ?なんでこんな風になっちまったんだ?」
ずっと疑問だった。どれだけ記憶が戻ろうとも、俺が死ぬ瞬間以外に、こいつが俺に負の感情を一切見せなかった。
隠していたと言うのであれば、それだけだが。なんだが、そんな気はしない。
俺は死ぬ前日にある事を言った。それが原因なのかもしれない。
「俺が……『宮廷魔術師になる』って言ったからか?」
「………」
宮廷魔術師。一握りの魔術師のみがなれる、まさしく目標だ。
だが、これは俺自身を……こいつを否定するようなものだったな。
「お前が俺に付いてきたのは、自由に冒険をするためだったよな」
もともと家柄のせいで制限が多かった俺らは、自由に憧れてたんだ。
「ありがとな……俺がどうかしてたよ……だがな」
これは違うだろ?俺から何もかも奪って……。転生したと思ったら、また奪おうとする。
「それは、もう……お前じゃねぇよ」
負の連鎖。そうかもしれない。俺がやろうとしてるのは、こいつがやったことと同じだからだ。
「お前がこれ以上外道に走る前に……俺がケリを着けてやる」
残り三秒程度か……。充分だな。
「次会えたならば、もっと良い関係を築きたいな……じゃあな『刹那生滅』」
刹那の間に生と死を永久的に繰り返す。自分では死ぬこともできない。
「すぐ楽にしてやる」
まさか、レイグルを俺の手で殺める時が来るとはな。
「レイト?」
「……王女か。どうした?」
向ける面なんか持ち合わせてない。何て声を掛けるべきか。なんて返答すべきか。
俺には何も分からない。
「本当なら、悲しみの別れってなるだろうが……」
こんなところで死ぬなんてゴメンだな。
「待って!」
「………なに?」
「最後に言いたいことがあるの……」
「………俺もあるよ」
前世でも伝えられなかった。今言わないと、後悔して死にきれないだろうからな。
「わたし……昔からあなたが……」
「知ってるよ。俺もだから」
「………」
本能……。最後までありがとな。なんやかんやあったけど、楽しかったぜ?
『……魔力は大体回復したろ?テレポートでも使っとけ』
最後までお節介がすぎるな。
「じゃあな。元気にしてろよ?『テレポート』」
あと一度王女の声を聞いちまったら、俺の決断が揺らいでしまうだろう。
~~~~
「……レイト……」
何もかもが急だった。レイトが現れたと思ったら颯爽と去ってしまった。フレミアは、ずっとあの様子だ。
グロスも状況に着いていけてないだろう。
実際にオレもだ。
ただ一つ分かるのは……。
「オレらの前では死ねないってか?」
多分、賢者の言ってることは正しかったのだろう。
「最後ぐらい……兄を頼れってんだ……」
人知れず死んでいくのか……。常に救世主とは世に知られないものなのか?
「カインドさん、グロスさん……戻りましょうか」
「……そうだね」
「あぁ……」
その強がる姿があまりにも痛々しい。見ていられない。
一番辛いのはフレミアだろうに……。
笑顔の裏はどれほど悲しみに溢れているのか。その涙にはどれほどの後悔を溜めているのか。
オレには検討もつかない。
「俺、影薄すぎるよな……」
「「「!!!!」」」
なかなかカッコイイ登場だったんじゃねぇか?まさに、物語の主人公と同格ぐらいにはな。
「まさか……即席で初見の魔法を……」
「はぁ……お前には一つ言いたいことがあんだよ」
「…………」
「てめぇだけは絶対に許さねぇぞ?」
あの時は許してやった。だが、あくまでも利害が一致しただけだ。
こっちの賢者には何の躊躇いもない。
「今更何を仰るのですか?もともとでしょ?」
「そうだな……まぁ、確認だと思っててくれ」
それと、手短にな。俺には残り時間があまりないものでな。
「カインド、グロス。何度も言うが……王女を守れ。そして、今まで守ってくれて、ありがとな」
面と向かって言うのは気恥しいものだが、言わなければ後悔するだろうしな。
まぁ、ちゃんと言えることに越したことはないだろうけどな。
「はあ……友情ごっこは済みましたか?見ていて気持ち悪いですね、ホントに」
「ほら、来いよ?」
あと五撃だ。五撃以内に仕留める。できなければ、終わりだな。
「『多重発動·基属網』」
基本属性を四方八方に広げて動きを制限する気か……。
効率と効果、どちらを取っても素晴らしい魔法だな。
だが、基本属性のみで発動したのが悪かったな。
「『空間·切削』」
「!!!」
グロスの空間切削とは似て異なる技。どちらも任意の場所を一瞬消すというのは同じ。だが、空間·切削は、範囲が物凄く広い。
俺の周囲の魔法を無効化する。俺を中心に発動してる故、俺が動けば一緒に動く。
「魔力が馬鹿げたほどあるようで……では、これもいけますか?『氷剣武装』」
「なるほど……魔力密度もなかなか悪くない……でも、発動に時間が掛かりすぎだ」
「くっ!」
範囲外に行かれたか……。まぁ、この空間·切削を発動してるうちは近付きたくないだろうな。
あいつごと消えちまうからな。
「『刹那眼·発動』『先見』」
刹那眼の覚醒により、一瞬先の未来を先取りできる。
「『樹海の根』」
「!!!」
束縛系の上位に入る魔法。束縛時間はもって三十秒程度。
俺には充分すぎるぐらいだ。
「レイグル……俺は楽しかったぞ?なんでこんな風になっちまったんだ?」
ずっと疑問だった。どれだけ記憶が戻ろうとも、俺が死ぬ瞬間以外に、こいつが俺に負の感情を一切見せなかった。
隠していたと言うのであれば、それだけだが。なんだが、そんな気はしない。
俺は死ぬ前日にある事を言った。それが原因なのかもしれない。
「俺が……『宮廷魔術師になる』って言ったからか?」
「………」
宮廷魔術師。一握りの魔術師のみがなれる、まさしく目標だ。
だが、これは俺自身を……こいつを否定するようなものだったな。
「お前が俺に付いてきたのは、自由に冒険をするためだったよな」
もともと家柄のせいで制限が多かった俺らは、自由に憧れてたんだ。
「ありがとな……俺がどうかしてたよ……だがな」
これは違うだろ?俺から何もかも奪って……。転生したと思ったら、また奪おうとする。
「それは、もう……お前じゃねぇよ」
負の連鎖。そうかもしれない。俺がやろうとしてるのは、こいつがやったことと同じだからだ。
「お前がこれ以上外道に走る前に……俺がケリを着けてやる」
残り三秒程度か……。充分だな。
「次会えたならば、もっと良い関係を築きたいな……じゃあな『刹那生滅』」
刹那の間に生と死を永久的に繰り返す。自分では死ぬこともできない。
「すぐ楽にしてやる」
まさか、レイグルを俺の手で殺める時が来るとはな。
「レイト?」
「……王女か。どうした?」
向ける面なんか持ち合わせてない。何て声を掛けるべきか。なんて返答すべきか。
俺には何も分からない。
「本当なら、悲しみの別れってなるだろうが……」
こんなところで死ぬなんてゴメンだな。
「待って!」
「………なに?」
「最後に言いたいことがあるの……」
「………俺もあるよ」
前世でも伝えられなかった。今言わないと、後悔して死にきれないだろうからな。
「わたし……昔からあなたが……」
「知ってるよ。俺もだから」
「………」
本能……。最後までありがとな。なんやかんやあったけど、楽しかったぜ?
『……魔力は大体回復したろ?テレポートでも使っとけ』
最後までお節介がすぎるな。
「じゃあな。元気にしてろよ?『テレポート』」
あと一度王女の声を聞いちまったら、俺の決断が揺らいでしまうだろう。
~~~~
「……レイト……」
何もかもが急だった。レイトが現れたと思ったら颯爽と去ってしまった。フレミアは、ずっとあの様子だ。
グロスも状況に着いていけてないだろう。
実際にオレもだ。
ただ一つ分かるのは……。
「オレらの前では死ねないってか?」
多分、賢者の言ってることは正しかったのだろう。
「最後ぐらい……兄を頼れってんだ……」
人知れず死んでいくのか……。常に救世主とは世に知られないものなのか?
「カインドさん、グロスさん……戻りましょうか」
「……そうだね」
「あぁ……」
その強がる姿があまりにも痛々しい。見ていられない。
一番辛いのはフレミアだろうに……。
笑顔の裏はどれほど悲しみに溢れているのか。その涙にはどれほどの後悔を溜めているのか。
オレには検討もつかない。
「俺、影薄すぎるよな……」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる