最弱の魔法戦闘師、最強に至る

捌素人

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最弱の魔法戦闘師、決着する

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「まぁ、まぁ……落ち着けよ、お前ら」
「「「!!!!」」」

なかなかカッコイイ登場だったんじゃねぇか?まさに、物語の主人公と同格ぐらいにはな。

「まさか……即席で初見の魔法を……」
「はぁ……お前には一つ言いたいことがあんだよ」
「…………」
「てめぇだけは絶対に許さねぇぞ?」

あの時は許してやった。だが、あくまでも利害が一致しただけだ。

こっちの賢者には何の躊躇いもない。

「今更何を仰るのですか?もともとでしょ?」
「そうだな……まぁ、確認だと思っててくれ」

それと、手短にな。俺には残り時間があまりないものでな。

「カインド、グロス。何度も言うが……王女を守れ。そして、今まで守ってくれて、ありがとな」

面と向かって言うのは気恥しいものだが、言わなければ後悔するだろうしな。
まぁ、ちゃんと言えることに越したことはないだろうけどな。

「はあ……友情ごっこは済みましたか?見ていて気持ち悪いですね、ホントに」
「ほら、来いよ?」

あと五撃だ。五撃以内に仕留める。できなければ、終わりだな。

「『多重発動·基属網きぞくもう』」

基本属性を四方八方に広げて動きを制限する気か……。

効率と効果、どちらを取っても素晴らしい魔法だな。

だが、基本属性のみで発動したのが悪かったな。

「『空間·切削』」
「!!!」

グロスの空間切削とは似て異なる技。どちらも任意の場所を一瞬消すというのは同じ。だが、空間·切削は、範囲が物凄く広い。

俺の周囲の魔法を無効化する。俺を中心に発動してる故、俺が動けば一緒に動く。

「魔力が馬鹿げたほどあるようで……では、これもいけますか?『氷剣武装』」
「なるほど……魔力密度もなかなか悪くない……でも、発動に時間が掛かりすぎだ」
「くっ!」

範囲外に行かれたか……。まぁ、この空間·切削魔法を発動してるうちは近付きたくないだろうな。

あいつごと消えちまうからな。

「『刹那眼·発動』『先見』」

刹那眼の覚醒により、一瞬先の未来を先取りできる。

「『樹海の根』」
「!!!」

束縛系の上位に入る魔法。束縛時間はもって三十秒程度。

俺には充分すぎるぐらいだ。

「レイグル……俺は楽しかったぞ?なんでこんな風になっちまったんだ?」

ずっと疑問だった。どれだけ記憶が戻ろうとも、俺が死ぬ瞬間以外に、こいつが俺に負の感情を一切見せなかった。

隠していたと言うのであれば、それだけだが。なんだが、そんな気はしない。

俺は死ぬ前日にある事を言った。それが原因なのかもしれない。

「俺が……『宮廷魔術師になる』って言ったからか?」
「………」

宮廷魔術師。一握りの魔術師のみがなれる、まさしく目標だ。

だが、これは俺自身を……こいつを否定するようなものだったな。

「お前が俺に付いてきたのは、自由に冒険をするためだったよな」

もともと家柄のせいで制限が多かった俺らは、自由に憧れてたんだ。

「ありがとな……俺がどうかしてたよ……だがな」

これは違うだろ?俺から何もかも奪って……。転生したと思ったら、また奪おうとする。

「それは、もう……お前じゃねぇよ」

負の連鎖。そうかもしれない。俺がやろうとしてるのは、こいつがやったことと同じだからだ。

「お前がこれ以上外道に走る前に……俺がケリを着けてやる」

残り三秒程度か……。充分だな。

「次会えたならば、もっと良い関係を築きたいな……じゃあな『刹那生滅』」

刹那の間に生と死を永久的に繰り返す。自分では死ぬこともできない。

「すぐ楽にしてやる」

まさか、レイグルを俺の手で殺める時が来るとはな。

「レイト?」
「……王女か。どうした?」

向ける面なんか持ち合わせてない。何て声を掛けるべきか。なんて返答すべきか。

俺には何も分からない。

「本当なら、悲しみの別れってなるだろうが……」

こんなところで死ぬなんてゴメンだな。

「待って!」
「………なに?」
「最後に言いたいことがあるの……」
「………俺もあるよ」

前世でも伝えられなかった。今言わないと、後悔して死にきれないだろうからな。

「わたし……昔からあなたが……」
「知ってるよ。俺もだから」
「………」

本能……。最後までありがとな。なんやかんやあったけど、楽しかったぜ?

『……魔力は大体回復したろ?テレポートでも使っとけ』

最後までお節介がすぎるな。

「じゃあな。元気にしてろよ?『テレポート』」

あと一度王女の声を聞いちまったら、俺の決断が揺らいでしまうだろう。

~~~~

「……レイト……」

何もかもが急だった。レイトが現れたと思ったら颯爽と去ってしまった。フレミアは、ずっとあの様子だ。

グロスも状況に着いていけてないだろう。

実際にオレもだ。

ただ一つ分かるのは……。

「オレらの前では死ねないってか?」

多分、賢者あいつの言ってることは正しかったのだろう。

「最後ぐらい……兄を頼れってんだ……」

人知れず死んでいくのか……。常に救世主とは世に知られないものなのか?

「カインドさん、グロスさん……戻りましょうか」
「……そうだね」
「あぁ……」

その強がる姿があまりにも痛々しい。見ていられない。

一番辛いのはフレミアだろうに……。

笑顔の裏はどれほど悲しみに溢れているのか。その涙にはどれほどの後悔を溜めているのか。

オレには検討もつかない。

「俺、影薄すぎるよな……」
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