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最弱の魔法戦闘師、時を迎える 3

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ついに、討伐隊の見送りの時間だ。

大丈夫、出来ることはやってきただろ?あとは、俺の問題だ。なんとしてでも乗り切る。

『お前の労力が無駄にならないようには祈っとくよ』

俺が適当に村を散策したとでも言いたいのか?

『違うのか?何かやってる素振りは見当たらなかったが?』

今から何をやるってんだ?最終的な確認みたいなもんだよ。

『だから、結局何をやったんだよ?』

ただ、村の構造を覚えただけだ。

『それだけか?そんなの覚えても意味ねぇだろ』

まぁ、村の構造自体は重要じゃねぇからな。重要なのは、見通しの良さと道幅だけだからな。

『ホントに何をしてんだよ……そんなことやるなら、修業してた方が充分有意義だろ』

俺は、この騒動が意図的なものだと思ってる。

『それは前も聞いたぞ?結論から言え。時間が惜しい』

せっかちだな……まぁ、結論から言えば、魔物を召喚するためには、召喚場所を視認して指定するか、あらかじめ魔方陣を描くかの二択だ。

道幅が狭ければ小さい魔方陣になる。ゆえに、魔物の脅威度は下がる。

問題は視認の方だ。利点としては、術者が近くに居るということだが、逆に魔物だけに集中できない。

視認での召喚は魔力消費量が多少増えるとは言え、気にならない程度だ。

もし、強い魔物が出てきた場合、前と同じことの繰り返しになる。

『なるほどな。でも、解決法を見付けたんじゃねぇのか?』

……なんでそう思うんだ?

『いつも、そう言うときは解決策があったろ?』

ない。

『はっ?』

解決策なんて、存在しないんだ。今回は本当に運任せだ。どうしようもない。

『じゃ、じゃあ……!どうやって切り抜けるんだよ!?』

分からない……頑張るしかねぇだろ?俺は希望は捨てちゃいない。

最後の最後まで抗ってやる。

「みんな、行っちゃったね」
「えっ?あぁ……そうだね」
「このあとどうする?」

この村に残ってるのは全員で十二人。それもみんな小さい子どもだけ。大人はみんな行っちまった。

「みんなを集めて何かやろうよ」
「いいね。何をやろっか?」
「僕に良い案があるんだ。だから、みんなを峠に集めてくれない?」
「ん?わかった」

猶予はほとんどないだろう。俺が出来るのは、最低限の人を守ることだけだ。

全員を守る必要はない。みんなが戻ってくる前にケリを付ける必要があるが。

魔物の数が分かれば結構やる気も起こるのだが……。

「連れてきたよ」
「あっ。ありがと。じゃあ、みんで、峠まで競争しようよ!」
「負けないよ?」

この頃の子どもは負けず嫌いだから、一生懸命走ってくれるだろう。時間短縮になって良いな。

「さて。僕も行くか」

~~~~

「みんな速いなぁ……」

よし。一ヶ所に集めることは成功した。まぁ、実際にはこの場所に集めることに成功した、の方が良いか?

「何をして遊ぶ?」

時間の把握ができない。でも、この周辺に魔力の気配はない。ここに魔方陣が描かれた形跡はなかったから、奇襲されないという安全面は確保した。

あとは、前と同じように村の中央に現れてくれれば、なおのこと良い。

「………来る」
「?何が………!!!」

案の定……村の中央に出現したか。

「ま、魔物がなんで村に……!!」
「みんな、よく聞いて!」

うるさくすると気付かれかねない。気付かれてしまったら、全ておしまいだ。

「騒がしいと、魔物がこっちに来るかもしれない。取り敢えず落ち着いて」

ふぅ……。取り敢えずは静まった。魔物が来ると言うのは、効果抜群だな。

「怖いかもしれないけれど、この裏側にみんなで降りよう」
「えっ?ホントに言ってるの?」
「うん。一度行ったけれど、安全だと思う。木の根っこの影に隠れれば、見付からないと思う」

根っこが地面から出ていた木々も多かった。俺の全体重を掛けてもビクともしなかったから、潰されることはないだろう。

「で、でも……」
「自信が付くまでここに居ても良い。僕が時間を稼ぐ」
「あ、危ないよ」
「何のために修業したと思ってるの?安心して。僕は死なないから」

見た感じ、そこまで強力な魔物はいない。相当下手なことをしなければ死ぬことはないだろう。

「けど、この峠に長居はしない方が良いよ。魔物が出現するかもしれない」

ここまで言えば、行動を起こし始めるだろう。

「大丈夫。死なないから」

これは、みんなに向けてもだが、俺自身に向けて言ったようなものだ。

俺も無意識のうちに言っていたものだからな。

「じゃあ、また峠の裏で会おう」
「ま、待って……」

待つ筈がないだろ。俺は決めたんだ。何があっても守り切るって。

~~~~

「おかしい……」
『何がだ?』

もしかしたら、この魔物たちは襲撃が目的じゃないってことだ。

『まぁ、そうだろうな。何て言ったて家が一つも破壊されてないんだからな』

おかしいと思わないか?一体、何を探しているんだ?だが、これも好都合だ。

あの魔物たちが他のものに気を引かれてるうちに奇襲を仕掛ける。

強い雰囲気もないし、一匹ずつ、確実に仕留めていくぞ。

こう言うときに魔眼が欲しくなるな。最悪魔法ぐらいは使いたかったな。

けど、神武発現の速度は変わらなかった。それだけでも充分だ。

「神武発現」

三匹居るから……手前の魔物から順番、と言うわけにはいかないか。

二匹ぐらいならばそう言う方法でも良いが、三匹以上となるとこの広さでは抵抗できない。

それに、他にも魔物が潜んでいる可能性も視野に入れなくてはならない。

静かに鎮圧するしかない。

『なんか方法はあんのか?』

俺に出来るかは知らないが、カインドの技を使おうと思う。

『カインドの技?どんなやつなんだ?』

神武を多重で発現させるはやつだよ。あれが出来れば倒せる筈……。

『それは面白そうだが……もっと現実的な方法があるぜ』

俺に出来ることでか?

『あぁ』

どんな方法だ?

『瞬鋭の陣と五月雨を合わせるんだ』

なるほどな。あいつらを俺の間合いに全員入れることが出来れば、可能だな。

『やってみる価値はあるだろ?』

あぁ。カインドの神武の多重発現はやり方が分からないからな。

あいつらは探す時は分散してるが、移動中は固まっている。だから、移動中が狙い目だ。

だが、見切り歩方を使っても、隙が見付からなかった。

周囲の警戒が万全ということだ。

『こう言う時こそ刀身合だろ?』

あぁ……そういえばな。でも、変な方向に飛んでいったら終わるぞ?

『まぁ、その時はその時だ』

仕方がねぇか。そろそろあいつらも移動するだろうし、俺らも行動を起こすか。

『なぁ』

ん?どうした?

『もっと面白いこと思い付いたぜ』

面白いこと?今はそんなことを言ってる場合じゃ……。

『まぁ、聞け。神武を投げたら気付かれるだろ?』

でも、それは仕方がないんじゃねぇか?たとえ、気付かれようが、攻撃して仕留めるだけだ。

『これだから脳筋は……』

はぁ?じゃあどうすれば良いんだよ?てか、この方法を考えたお前が一番、脳筋だろ。

『展解を使えば良いんだよ。上からの奇襲なんて考えてないだろうしよ』

それ、絶対に痛いだろ。奇襲できる高さって言ったら、相当高い場所からじゃないと……。

『いや、展解で近付いて行けば良いだろ。最後は少し跳ぶぐらいでよ』

それじゃあ、意味をなさいって言ってるだろ?

『わざと大きな音を立てたら?』

……なるほど!確かに奇襲になるな!背後から音がしたら振り向きたくなるもんな。

『だろ?あとは音に注目してる間に瞬鋭の陣と五月雨の合わせ技でケリを付ける!』
「やってやるよ」

気付かれなければ、俺の勝ちだ。
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