上 下
40 / 50

最弱の魔法戦闘師、下準備をする

しおりを挟む
自由時間だし、何をするべきか。魔力総量はそう簡単には増えないからなぁ……。

筋肉量も一朝一夕でどうこうできるものではない。

つまり、この体でどのくらい思い通りに動くことができるのか。

俺がすべきことはこの体を知る。その上でこの体に慣れなくてはな。

「レイ?考え事?」
「ん?うん。もっと強くならないとってね」

俺だけが知る秘密の場所なんて無いからな。どこでやれば良いのやら。

「何か出来ることある?」
「そうだなぁ……」

流石に練習相手って訳にはいかないしな……。そうだ。秘密の場所がないか聞いてみるか。

「修業ができる場所って知ってる?出来ればあまり知られてないような場所」
「うぅん……そうだねぇ……」

少し考えてから何を思い付いたようで。俺には全くの当てがないと言うのに……。

「そう言えば、さっき居た峠の裏側……あまり人を見ないよ」

裏側……。あの険しい山道か。あっちは傾斜も凄いから魔物も来なかったな。

不意打ちも無さそうだし、最適か……?あとは、移動手段が分かれば……。

これは自分で考えるか。そんなに頼るのもな。

「ありがと。もっと強くなって……フィアを守るから。絶対に」
「うん。期待してる!」

少し照れくさいが、俺がすべき事だ。絶対に強くなって、過去を変える。

そうすれば、この空間からも抜けられる筈……。

こっちの時間とあっちの時間が同じならば……。これだけは考えないようにしよう。

これが、俺の中の最悪の事態だからな。

戻れさえすれば、どうとでもなる。

「五日間でどの程度この体に馴染めるか。これが肝か」

本能。本能はこの体の間合いは把握出来たか?

『微妙だな。けど、大体は掴めた』

じゃあ、少し動きを見せて欲しいんだけど、良いか?

『別に良いぜ。じゃあ、移動しようぜ』

そうだな。

~~~~

「さっきぶりだな……さて、どう降りたものか」

急な斜面と鬱蒼とした木々。視界も悪ければ、足場も悪い。

だが、贅沢は言っていられないし、この環境に慣れなくてはな。

「取り敢えず、滑って行くか!」

ちょっと楽しそうだな。

『まぁ、ミスをしたら最悪死ぬけどな』

スリルがあって良いだろ?俺はこう言うの案外好きだぞ。

『それを言われちゃぁなぁ……俺様だって、ワクワクしてるぜ!』

だろ?じゃあ、思い切り行くぜ!

「うぉ!うぉぉおお!?うわぁぁあ!!」

想像以上に地面が湿っぽいな!停止できるか不安になってきたぞ。

「『神武発現』」

やっぱり……なんでか神武はカムイのものなんだよなぁ……。まぁ、こっちの方が使いやすいし、良いけどな。

『なぁ、ふと思ったんだが、カインドは居ないのか?』

居ないけど……なんで?

『前に、お前の村が魔物に襲われたって言ってたろ?』

あぁ……。俺の記憶が正しければ、この襲撃で二度目なんだ。

『えっ?』

おかしいよな。頻繁に出る筈がない魔物に……それも襲撃されるんだぜ?

俺は魔物に好かれてるのかなぁ。

『んな冗談言うなよな』
「おっ!ここにも平地はあるのか!」

適当な場所を平地にしようと思ってたから、その分の時間を短縮できるのは嬉しいな。

「少し木を斬り倒すか」

ついでに感覚を掴むためにな。

「ふぅぅ……はっ!」
『………あはははははは!!!』

わ、笑うなよ!仕方がないだろ?!まだ慣れてないんだからよ!!

『す、すまんて……。でも、仕方がないだろ?あれだけ気合い入れて……思い出したら、あはははは!!』

一回空振っただけだろ?!そんなに笑うなよな!てか、そんなに笑うならお前がやれよ!

『良いぜ、やってやろうじゎねぇかよ』

出来なかったら、覚えてろよ?壮大に笑ってやるからな。

『そうはならねぇと思うがな!』

~~~~

「ふむふむ……実体持って確信した」
(何をだよ?)
「この体………雑魚過ぎるな」
(………ぶちのめすぞ?)
「まぁ、待て待て」
(話し合いの余地は無いな)

落ち着けよ!何も弱いからって、欠陥って訳じゃねぇからな?

(いや、欠陥しかねぇだろ?本格的にバカになりやがったな)

まぁ、見てろ。前に言ったろ?お前の体の使い方は熟知してる。

それに、お前にはまだ教えてないことがあるだろ?

(教えてないこと?)
「これの事だ」
(……っ!!それは!?)

昔……っても二日三日前ぐらいかな。お前と出会ったばっかりの時に見せた、瞬間転移。

(でも、なんでそれを?)

これな……。魔力が一定以上あると出来ないんだ。

(えっ?)

人間が一度に放出できる魔力は限られているんだ。魔力総量が少なければ少ないほど、その限度は少なくなる。

(そりゃ考えればな……でも、それと何が関係あるんだ?)

少ないと言うことは魔力操作がしやすいんだ。魔力を一点から放出しやすいんだ。

(もう、焦れったいな。結論から言え)

つまり、こう言うことだ。

(はっ?)

まぁ、魔力総量が少ないのに、物凄い威力だよな。

(それもそうだが、大気が割れたぞ!空気が一瞬消えたぞ!?)

これを使えば空気抵抗無しに動けるし、相手の意識が一瞬飛ぶ。

すると、瞬間転移したように見える。

(じゃあ、魔力操作を練習すれば魔力総量が増えても出来るんじゃねぇか?)

あんな物をそう易々と出来るわけねぇだろ。

まぁ、魔力を相当使って一定以下にすれば出来るだろうがな。

「練習あるのみだ」
(んで……結構ズレたけど、やれ)
「な、なんの事だか……」
(やれ)

くそっ!もうどうにでもなれ!

「はっ!」
(まぁ、そんなもんだろ……落ち込むなよ)
「バカにしやがって!」

取り敢えず、間合いから覚えていくぞ!

(はいよぉ)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...