上 下
39 / 50

最弱の魔法戦闘師、挑戦する

しおりを挟む
『にしても、高い峠だな』

だろ?ここからの眺めが好きでな……。昔は良く来たんだがな。

『んで。これからどうするんだ?当てもなく行動する訳じゃないんだろ?』

流石にな。取り敢えず、今があの事件から何日前なのか知らなくてはな。

じゃないと、対策が立てられない。

『あの事件ってなんだ?』

この村は四方八方木々に囲まれてるからな。

魔物を定期的に倒さないといけないんだ。

戦闘できる人たちが村を離れた時に、村の中で魔物が急に発生したんだ。それで……。

『なるほどな……。でも、村の人たちもみんな死んじまったんだろ?』

あぁ。戦闘が出来るとは言っても、魔物の強さにもよるだろ?

みんな帰ってきたもののその魔物のせいで死んじまったんだよ……。

俺だけが何とか生き残れた……。物凄い罪悪感だけが残ったよ。

『なんか、すまない……』

良いんだよ。これを機に昔と決別しないとな。いつまでも過去に固着する必要もない。

『小さな村だな』

あぁ。でも、良い村だったよ。

「おい。どこに行ってたんだ?まさか逃げるつもりか?」

この声は……。

「ランス?」
「なんだよ?」

この村の子供の中で最年長。天恵はなんだっけな。

「まさか、忘れたわけじゃないだろ?」
「何を?」
「おまっ!ふざけんのも大概にしろよ?お前が懇願してきたんだろ!」

何をしたのかさっぱりだ。そこまで仲が悪い訳じゃなかったと思うが。

「お前が討伐隊に入りたいって言ったんだろ?」
「ん?………あぁ。そう言えばな」

フィアに格好良い姿を見せたくてそんな事を言っていたな。今思えば馬鹿馬鹿しいけどな。

だが、ここで棄権するのは面白くない。

俺の今の力がどれ程なのか、しっかりと把握しなくてはな。今の記憶を使えば対抗出来るだろう。

「じゃあ行くぞ」

怪しまれないように極力昔の自分を装おうしかなさそうだな。

「じゃあ、始めるぞ」

村の中央でやるとはな……。記憶になかったぞ。

村の人たちが見てる中で戦うなんてな。

『そもそもお前がワガママを言ったからだろ?』

あぁ。でも、ここの人たちは優しいから、傍観してくれているんだ。

普通なら色々言われても仕方がないだろうに。

「後悔するなよ?」
「僕に言ってるの?」

確か、昔は自分の事を僕って呼んでたよな……。これで間違ってたら……。まぁ、気付かないだろうが。

「行くぞ!」
「いいよ」

ん?なにもない空間から剣が……。ランスは魔法戦闘師だったのか?いや、違うと思うが……。

何よりも、この年であの早さは凄いだろう。

「お前、いつからそんなに神武発現が早くなったんだ?」
「ん?まぁ、いつも練習してたからね」

あの剣……。まさか、勇者か?

『いや、剣聖だな』

剣聖?始めて聞くけど。

『どんな相手でも、武器が剣であれば勝てるものは居ないと言われる、無双剣士だな』

強すぎるでしょ。

「くっ……。でもホントかもね」

凄い速い剣撃だ。目で負うのがやっとで、反撃は厳しいな。

「どうした?その程度で挑戦してきた訳じゃないだろ!」
「もち……ろん!」

なんとか弾くことが出来た……。でも、体力の消耗がひどい。

「おらぁ!」
「くっ……!!」

さっきのよりも重い!だが……!!

「こんなところで負けられるかぁ!」
「!!!やるなぁ!」

魔力総量が少なくて乱発はできそうにないが、勝つためには仕方がないだろう。

「『瞬撃』」
「…………っ!!!」

魔眼は……無理そうだな。炎天眼が使えればとても楽になるんだがな。

「『刀身合』」
「!!!なっ!」

久々に使ったけど、大丈夫そうだ。速くこの剣を弾かないと……。

「つぅぅう!」

振動が凄いな。けど、弾くことはできた。

「俺が……負けただと……??」

今のホントにヤバかった。長期戦になればこっちが不利になるな。

なんで、剣を使う天恵が不利なのか分かったよ。まさか、戦闘の中で急成長し続けてるなんてな。

確かにこれじゃあ、どれだけ実力差があっても最終的には負けるだろうな。

これには流石に、周りもざわつくか。

まぁ、俺が勝つなんて予想もしてなかっただろうからな。

だが、一つハッキリとした。

『今のでか?一体何が……』

この決闘はあの事件から五日前の事だった。つまり、五日後には………。

『いけそうか?』

ハッキリと言って厳しいだろうな。今の実力では普通の魔物すらも危ういだろう。

さて、どうすれば良いんだか……。

「レイ……大丈夫?」
「あっ……フィア」

同い年とは思えないな。今でも十分に美人なのに、成長していたら……。

『もしかしたら、なんて考えるな。現実を受け止めろ』

分かってるよ。

「お……僕は大丈夫。それよりもランスの心配をしてあげて」
「そう?良かった……私、凄く心配したんだからね?」
「レイト。強くなったな」
「ランス……」

言い訳とかされると思ったが……。年上である前に剣士と言うわけか。

「うん。ありがと」
「討伐隊でも頑張れよ」
「その事なんだけど……一つ良い?」

俺が討伐隊に参加してしまったら、魔物を止められなくなる。剣聖のランスは対剣で無くては成長の早さはそこまでだ。

「なんだ?」
「討伐隊、ランスに任せて良い?」
「……俺を愚弄してるのか?」

そう思われても仕方がないだろう。俺から仕掛けたのに、討伐隊を任せるなんてな。

「いや……僕はランスだったから勝てただけだよ」
「俺が弱かったと?」
「ううん。実は、ランスに憧れてて、君の練習風景を見てたんだ。だから、癖みたいのが分かったんだ」

ホントに子供なのか疑うな。今の俺と三才しか違わないのにな。

「そう言うことか……まぁ、確かにこの俺の剣撃を受けられたしな……」

やっぱり、憧れの対象になるのは嬉しいよな。こう言うところは相手が子供で良かったと思う。

「だから……頼める?」
「まぁ、そう言うことなら良いぜ。俺から言っておいてやるから、修行でもしてな」

取り敢えずは、大丈夫そうかな?

あとは、残りの日数でどれだけこの体に慣れるかが肝だな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...