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最弱の魔法戦闘師、合流する

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「んん………ここは?」
「気付いたか……お前、意外と重いな」
「……唐突だな」

体を鍛えていたからか?まぁ、どうだろうと関係ないか。体格は戦闘に置いて有利に働くからな。

「で、ここは?」
「もう少しでカインドと合流できるだろう。フレミアは寝てる」
「ん?……ホントだ」

起きるまでは行動はしないだろう。

起きたばかりで、少し気分が悪いし休めるのは嬉しい。

「言おうか迷ったが、カインドと合流するにあたって、一つ言っておくことがある」
「なんだよ、そんなに改まって」
「お前の魔力の質がカインドに似ている……まるでカインドの魔力が浄化されたような……不純な魔力がない」
「ん?どういうことだ?」

魔力の質……。魔力の淡濃にだけ使うのかと思ったが、魔力の色にも使うのか。

『似てる………他人同士で似てるなんて聞いたこともない。血縁関係者じゃないのか?』

はぁ?俺がカインドと?ないない。だったらワーストワンなんて呼ばれなかっただろうよ。

『確かにな』
「まぁ、だから魔力の質に干渉するぞ」
「な、なんでだよ?」
「厄介事にしたいか?嫌ならば言われたままにしろ」
「お、おう……」

何かまずいことでもあるのか……?

『さぁな』

俺も、さっぱりわからねぇよ。

「『魔力隠蔽ハイディング』」
「ん?これは……」

なにも変わってないな。どういうことだ?

「相手に対して見え方が変わるだけだ。魔法を使えば当然バレる。故に、戦闘は避けろ」
「わかったよ」

つまり、表面上しか変わってないと言うことか。

カインドと戦闘になったら終わるな。真っ先に狩られるだろうな。

「………久方ぶりの魔物だ」
「魔物……」

実物を見るのは、なんやかんや初めてだな。

「赤色狼」
「他の色の奴も居るのか?」
「知らん。見たまんまを名前にしただけだ。こいつの名前なんざに興味はない」

おかしいな……俺も初見の筈なんだが……どこかで見たような、変な感覚だな。

烈火大狼れっかだいろう………」
「急にどうした」
「いや……なんか出てきた」
『もしかして、前世の記憶か?』

えっ?どういうこと?俺にも前世の記憶があるの?

『じゃなきゃ、初見の魔物の名前なんて分かるわけないだろ』

で、でもよ?あの名前が当たってるかなんて分からないよ?

『確かにな………今のことを忘れてくれ』

お、おう。

急に態度変わったな……。やりづらいったらありゃしねぇよ。

「狼って群れじゃなかったか?」
「しらねぇよ」
「そ、そっか……」

ホントに塩対応だな。俺たちをイジメてた時とは天と地の差だな。

何か悟ったような……まぁ、人はそんなに変わらないか。

どうせ、態度をでかくしたら、主人の俺に何を言われるか分からないから、出来るだけ感情を殺してるんだろうな。

「『空間切削』」
「……!!!」

今までは距離を詰めるだけだったのに……まさか、狼が居る空間を削ぎ取って存在を消すなんてな……。

空間系と時空系の魔法戦闘師は異常に強いと聞いたが、これ程までに強いとはな……。

はっきりと言って、異次元だろ。

カインドは武器によって能力値を上昇させる強化系の魔法戦闘師だ。

基礎部分だけで言えば、断然カインドよりもグロスの方が強いだろう。

あの強さに至るには、相当実戦経験を積んだのだろうな。

「お前が変なこと言うからだぞ」
「えっ?あぁ……」

こいつ、狼が多数現れたのを俺のさっきの言葉のせいにしやがった。

「今度は俺の番だ。お前ばっかに任せるわけにゃいかねぇんでね」
「止めとけ。どうせ恥を晒すだけだ」
「お前なぁ!」

こいつ!妙に気にしてるところを突いてきやがって!

「取り敢えずだ!ここで待ってやがれ!お前が気絶するぐらいすげぇの見せてやる!」
「さっきの変な炎よりもか?」
「変とはなんだよ!」

刹那眼、発動!
『的探の構え』『刹那の先手』
『鋭撃』
合技! 『刹那の導き』!

的探の構えで急所を見付け、刹那の先手により、確実に急所を突く。鋭撃でその場所を一気に切る!

「どうだ?」
「…………普通だな」
「驚いただろ?」

なんてたって刹那の時間だぜ?

「……そろそろ行くぞ」

ふっ。勝ったな。

『ガキか、お前は。変なところで勝負するな』

見たかよ?あいつ、悔しそうな顔してたぜ?

『はぁ……わかったわかった。取り敢えず落ち着け』

お前は嬉しくないのかよ?

『嬉しい嬉しくない以前の問題だ。俺様はそもそもそんな事は気にしてない』

そうかよ。

「フレミア、起きろ」
「んん……なんですか?」
「レイトが起きた。出発するぞ」
「えっ!レイトさんが起きたのですか?」
「…………よっ」

こう言う時ってなんて返したら良いか分からなくなるぜ。

『なぁ……王女の固有能力はなんだ?』

確か、だ。強化系の魔法戦闘師だ。

『王女から、神聖な魔力を感じる……。この魔力の波動からして、天恵から発せられる魔力だと思う』

天恵から?でも、そんなバカな……。だって、神聖な魔力って…。それは、魔法戦闘師にはあり得ない筈……。

『そうなんだが……この感じだと『神の権化』だろうな』

神の権化?初めて聞くような気がするけど……。けど、それって天恵が二つあるってこと?

『さぁな?俺様にはさっぱりだな』

「見つめ合ってないで行くぞ。この辺には魔物が出るんだぞ」
「あ、あぁ……すまん」
「申し訳ございません……行きましょうか」

これは、聞いてみた方が良いよな?

『どうだろうな。王女が認めるかどうかも分からないし……疑われた時の対処が難しそうだ』

なるほどな。じゃあ、今はその時ではないか。

「あと十分も歩けば着くだろう」
「意外と近いんだな」
「お前からしたらだろ。俺とフレミアはお前が倒れてから、ひたすら歩いてたんだぞ」
「そ、そうか……これは失礼した」

塩対応と言うか、もはやトゲだな。言葉一つ一つが俺に向けられた刃物みたいだ。

「グロス様。それは言いすぎですよ?と言いましても、わたくしはなにもしていないので、グロス様の苦労は分かりませんが……」
「レイト……」
「ん?なんだ?」
「言い過ぎたな」
「なっ!?!」

あ、あいつが謝っただとぉお!?!

てか、俺と王女で態度変わりすぎだろ!!

素直に謝られても違和感しかなくて、こっちが素直に受け取れないんだが!?

「なんだ、その態度は。謝っただろ」
「あ、あぁ……すまん。少し取り乱したな」

どうなってんだ?主人よりも王女の方が言うことを聞くなんて……。

まぁ、主人と言っても仮初めの主人だしな。

忠誠心をむき出しにされた方が、逆に怖いもんな。

「すみません、レイトさん」
「王女が謝ることじゃないだろ?グロスだって謝る必要はないと思うしな……あれは完璧に俺の失言だ」

本能。俺さ、ある違和感を覚えたんだけど……何か分かるか?

『あぁ。俺様も感じた。グロスと俺様とで呼び方が違うな』

そうなんだよ。俺に対しは、さん、なのにグロスに関しては、様、なんだよ。

『お前はレイト様って呼ばれたいのか?』

本能なんだろ?それぐらい察しろ。

『まぁ、お前がそんな事を思うはずもないよな』

分かってるなら、からかわないでくれ。

「あの洞窟の中にカインドは居る」

凄く強い魔力を感じる。これがカインドの……。

「入るぞ」
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