最弱の魔法戦闘師、最強に至る

捌素人

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最弱の魔法戦闘師、門に着く

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そもそも、前世の記憶が残るなんてありえるのか?
だとしたら、俺にもある筈なのにな……。

『そうだな。俺様も確率的に低いと思うぜ?記憶が残ってるってことは、何らかの条件が必要なのかもな』

なるほど。その条件は分からないのか?

『分かってたら何らかの条件、なんて言わねぇだろ?』

そうだな。

『お前なりに色々と情報を集めようとしてるのは分かるが、俺様たちはこう言うのに疎いだろ?自分の考えが正しいことなんてそうそうないぞ?』

そうだな。今回は魔法関係だ。俺の専門外だしな。

「門番が居ない……」

俺は適当に王都の周りを囲う壁をよじ登って出入りするから気にしないが、門番が居ないなんて前代未聞じゃないか?

『所謂、籠城ってやつだな。多分、このあと魔法で結界を張る気だぞ。急いだ方が良い』

確かにな……。

「王女。急ぎましょう」
「そうですね。いやな予感がしますもの」

走ればだいたい一分ぐらいの距離か。間に合うか。

『どうだかな……。どれだけ腐ってても実力はあるんだ……質が悪いほどにな』

ホントだな。実力がある悪者が一番厄介だ。

『一番厄介なのは、その行動を正義だと思って行動してる野郎たちだよ』

ただの確信犯じゃねぇかよ。でもよ。その線でいくならば、無邪気な奴も厄介じゃねぇか?

『まぁ……けど、そんな無駄な話をしてる暇は無くなるぞ?』

知ってるよ。だから、今ぐらいは平和な話をしようじゃねぇか。

「もう少しだな」
「えぇ……これならばギリギリ間に合いそうですわ」

門番が居ないのが気になるが、どうせ気にする必要もないな。気にする意味がなくなる、の方が正しいか。


『!!!!魔力の波動を感じるぞ!結界の準備が整ったみたいだ!』

ホントかよ!?狙い打ちみたいなことしやがって!

『お前の見切りでどうにかしろよ!』

諦めた、っていう方の見切りならば充分にできるぞ!

『バカか?!そんな冗談言ってねぇでどうにかしろ!』

騒ぐな!考えがまとまらないだろ?

「王女。もう少しで結界が発動される。出られないかもしれない」
「大丈夫ですわ。わたくしが時間を稼ぎます。結界の破壊は任せましたわ」
「なに言って……」

!!!何か来る!

『相当な手練れだな』

ヤバイ。結界が完成しちまった。相当魔力を込めた結界を作りやがって。

これを破壊するのに……五分は掛かるな。

でも、流石の王女でも国の上層部……それもこの領域の手練れとなると、五分も持たないかもな。

「何処へ行かれるのですか?あなたを探すのに苦労したのですよ?」

よりによって魔法騎士とはな……。

団長と副団長も連れてきたというこは、本気だな。

「何をしに来たのですか?わたくしはもう、女王候補ではありませんのよ?付け狙う理由がありませんよ?」

戦闘になれば、不利なのは完全にこっちだ。相手も分かっているだろうな。

個々の実力もさることながら、頭数がこっちの八倍は居る。

「そんなの関係ありません。この国から出ることは国王様直々に禁止になされたのです」

どうする……どうすれば良いんだ。今、結界を破ろうものならば、俺は確実に死ぬ。

『はっ!あの一番強ぇ奴よ、嘘付いてるぞ』

どういうことだ?

『門番が居ない理由……それは、王女を誘き出すためだろうな』

なっ!?だとしたら、ここに来るのをあらかじめ知ってたのか?

『あぁ、多分な。お前が居るということ以外は計画通りだ。……意味分かるな?』

あぁ。俺という異物がどれだけ活躍するかでこの場の勢いが変わる!

「だとしても行かなくてはなりませんの。この結界を解除してください」
「なりません。さぁ、城に戻りましょう」

くっ。埒が明かないな。何かこの場を打開できる手立ては……。

『あるな……いや来るな』

はっ?どういうことだ?

『魔力の反応を感じた。王女の側近じゃねぇか?』

あぁ!王女と初めて喋った時にいたあいつか!

「『火炎竜』」

魔法騎士団の連中の周りを炎を纏った竜巻が囲っていた。

物凄い魔力量だ。

「フレミア様。遅れてしまい、申し訳ございませんでした」

やはり、あの側近か。

「あなたは……?」

こいつ……俺のことを忘れやがったのか?!

「……俺はレイトだ」
「…………レイト様。王女を任せましたよ」
「急に何を……!!」

その瞬間、ハイドにより結界が破られた。同時に火炎竜が消え、魔法騎士団の連中も姿を現した。

「これはこれは……ハイドではありませんか。そこをどいてくれませんか?あなたの大事な王女が逃げてしまいますよ?」
「フレミア様が望んだ事を出来るようにするのも………側近の役目ですから」

くそっ。あいつ一人では勝ち目はない。この圧倒的不利な状況下で戦おうなんて……。

「やめて!ハイド!あなたまで巻き込みたくないの!」

王女………。くそっ!これはまずいな。

結界がいつ復活するかも分からない、この状況で時間を使うのは得策とは思えない。

「えぇ。王女の言う通りですよ。ただの側近が分かった口を聞くなんて……烏滸がましいですよ?」
「『漆黒盤針しこくばんしん』」
「???」

聞こえなかったな……だが、何の魔法を発動したのかは分かった。

多分、漆黒盤針だろうな。影が強ければ強い程、範囲と威力が増す魔法だ。

「『月光領域·改』」
「!!!!」

王女の魔法か!夜のように暗くすることに特化した魔法。

ハイドに協力するってことか……。

「………それは、敵対行為ですよ?良いのですか?」
「………王女。今のうちに逃げてください」
「いやよ。あなたを失いたくないもの」

くそっ。俺だけ除け者にしやがって!

『お前は結界が修復できないようにしろ』

どうやってやるんだよ?

『結界の魔力の質が分かればこっちのもんだろ?』

そうだな!

「『見切り』」

………まぁ、いけるな。

込められた魔力の量は俺の魔力総量よりも少ない。なんとか、いけそうだ。

「『不動封殺』」

この分だと、定期的にやれば一時間は軽く持つか。

「じゃあ、俺も参戦するか……」
『なんてこった……』

どうし…………これは予想外だな。
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