最弱の魔法戦闘師、最強に至る

捌素人

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最弱の魔法戦闘師、帰還する

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「では、最終試験をはじめる」
「たのむ」

賢者の魔力の全てが人形へと注がれた。

「お前さんも固有能力と魔眼を使うことができる。こいつも然り」
「………」

「では、はじめ!」

どう来る……。魔法か?それとも距離を詰めてくるか?

「!!!!」

消えた!?

いや、落ち着け。消えたとしてだ。

すぐに攻撃を仕掛けてはこない。
と言うことは、何らかの制限があるものなのだろう。

姿を消しただけか………ん?

気のせいか?一瞬、微かな風を感じた……。

退避すべきか。

「!!!!かはっ!」

なんで急に攻撃が!?
これは……斬撃か?

一撃がとてつもなく重い。立っているのもギリギリだ。

「刹那眼」

!!!!まさかな……。

刹那の時間のなかで、ゆったりと歩く人形。

あいつも刹那眼を……?いや、刹那眼は初撃のみ刹那の時間で行動できるだけだ。

初撃後も刹那で行動できていると言うことは、もともとの速さがこの領域なのか?

いや、さっき二分の一と戦った。
あの速さを二倍しても刹那の時間での行動は不可能だろう。

つまり、魔法か。

強化系だろうけど………強化系はそもそも種類が少ない。俺が知ってるのは身体強化ぐらいしかない。

でも、身体強化ならば、初撃で斬撃はしてこないだろう。

刹那眼のように刹那の先手であれば、一撃いれない限り、刹那で行動できるから人形の戦法は強いだろうが……。

つまり、利点がない、ということだ。

となると………一つだけか。この可能性は低いが、魔法として存在し、唯一の効果を発揮する魔法………

魔法の効果を行うと、その効果を使用していない状態に戻す。

つまり、刹那の先手という行動が回帰の発動条件を、満たして回帰の効果の刹那の先手をにする。

この魔法は回帰の発動条件となる行動を全て、とするため、を与えても、初撃扱いにならない。

初撃を放っていないから、刹那の先手は発動する。

この人形は慈悲が全くねぇからやりそうだぜ。

これは、刹那眼がなければ、負けしかなかっただろう。

この人形……さっきから俺の周りに斬撃をしていやがる。

一撃で決める。でなければ、俺の刹那の先手は効果を無くして、人形の動きを視認できなくなる。

神武発現。

「『瞬鋭の陣』」

俺の辺り一帯を一瞬で削ぎ切った。

「なっ?!」

人形の片腕は切り落としたが、あとは、かすり傷程度しかついていない。

「くっ………」

俺は、左前に移動し、神武発現をした。

「………かはっ!」

しかし、移動した瞬間、俺は上を見ていた。痛みの場所からして、蹴りを腹にくらったみたいだ。

「刹那とか………回帰とか……反則だろ」

刹那を視認するなんて不可能だろう。時間を表す単位で一番小さいと聞いた。

「降参だ……」

俺は地面に背中を着け、倒れた。

~~~~

「降参だ………」

軽く百回は負けたか?

今のところ、多少の損傷は見られるが、決定打を与えるまでには至らなかった。

技術をどれだけ磨こうとも、刹那の速さに付いていこうとも、常に一歩届かない。

まるで、一緒に成長してるかのようだ。

「そう言えば………」

最近、本能が全く喋らない。

「賢者」
「どうした?」
「俺の本能が喋らないんだが………」
「はぁ………」

呆れた、と言いたげた顔をされた。

俺が何をしたってのだ。なにもしてないぞ?逆になにもしてないのが原因か?

「お前さんはすでに我の最高傑作である、あの人形を凌駕する力を持っている」
「………………は?」

はっ?なに言ってんだ?だったら勝てるはずだろ……。それに、本能との関連性が見えないぞ?

いや………まさか。

「その人形に本能が居るのか?」

だとすれば、本能が喋らないのも、常に一歩届かない理由も分かる。

「その通りだ」

ん?てことは、俺はもう最終試験合格してるんじゃねぇか?

「お前さんは最終試験を合格した」
「………やっとか」

すごく長い道のりだったな。

「俺はどのくらいこの空間に居たんだ?」

疑問だった。俺の中では物凄く時間が経っていた。

それはもう、はっきりと過ぎた時間が分からないほどに。

「五百年ほどか」
「五百、年………??」

あぁ、たったの五百年か……。いや、おかしいだろ!?

「まぁ、もの申したいのは分かるが、この空間は時間に規則性がない。故の五百年だ。外では一日も経ってはおらん」

はぁ……聞けば聞くほどおかしか空間だな。

「そう言えば、なんで俺の本能が人形に?」

何事でもないように言うから見逃しかけたけど。

本能なのに他の人にとかに移れるのか? 

「あぁ……ただ、本能に焦点を当てて、無形転移をしただけだ」

古い言い方だな……。無形転移は空間魔法の転移系の一つの『魔法転移』という魔法を転移させる魔法だ。

まぁ、無形移転はその過程で、魔法を一度魔素にすることだ。これを無形転移させる、という。

転移先でもう一度魔法として形成される。

で、無形転移は魔法以外のもの………そう、魂にも干渉できる。

勿論、そんなのが簡単に出来てしまったら、その魔法だけで勝ててしまう。

この魔法には二つの条件がある。

一つは対象の意識が弱い状態。睡眠や疲労中、怪我をしているときなどでしか発動できない。

そして、もう一つは、術者の魔力総量が対象の二倍以上なければならない。

この二つの条件が揃うと発動可能になる。

多分、俺が寝ている時にやられたのだろう。

賢者の魔力は俺の十倍はあるからな。

「けど、なんでだ?」
「お前さんならば、すぐに最終試験を受かると思ったからな」

本当に思ってたんだか……。まぁ、賢者に何を求めてるわけでもないしな。

「じゃあ、お前さんに本能を返すとしよう。人形だから、眠らせる必要もない」
「そうか?じゃあ、たのむ」

~~~~

「終わったぞ」
「速いな……」

本能?

『久し振りだな』

あぁ。まったくだ。まさか、本能と戦っていたなんてな。

『「「!!!!」」』

なんだ、このおぞましい魔力の塊は!?

「人形が……暴走してる!?」
「なに?!」
『くそっ!あの人形が逃げたら面倒だ!』

分かってる!食い止めなくては!

「『不壊の風門』」
「「『人形が喋った!?』」」
「………去らばだ」
「あっ!待てっ!」

くそっ!行っちまった。てか、この空間を切り裂いて行くなんて……。

それに、あの魔法を見る限り、俺が戦った時よりも断然強いのではないか?

「最悪の事態だ…」
「どうするんだよ、賢者」
「我は、あいつを無に返す魔法を創る。それまで、あいつを頼めるか?」
「……………わかっ……」
『止めろ!』

な、なんでだよ?今、この状況を知っていて、すぐに動けるのは俺だけだ。俺が適任だろ。

『今のあの人形……お前じゃ、一分と立っていられないぞ?』

………そんなに強いのか?

『はっきりと言って、正真正銘の化け物だ。異次元過ぎる』

…………だとしても、俺がやらないと。

『今の聞いてたか?!お前じゃ無駄死にするだけだ!』

だとしてもだ!そんなに強いのに、モタモタしていたら、いつ世界が……。

「俺、やってやる。だから……絶対に成功させてくれよ、賢者」
「……約束する」
「行くぞ」


「…………………頑張ってください、師匠」

~~~~

『お前!俺様の忠告を無視するのか?!』

お前が居るだろ。俺一人じゃ勝てないことぐらい知ってる。

でも、お前なら……いけるだろ?

伊達に俺の本能はやっていないだようしな。

『…………わかった。だが、無理するなよ?この体はお前だけじゃない。俺様のでもある。それを肝に命じとけ』

「あぁ!」

あの空間を出ると、久し振りの風景があった。

良かった。まだ、何も起きてはいなそうだ。

『ブゥ………ブゥ………この国の戦闘向けの天恵所持者に告ぐ。未確認飛行物体がこの大陸の中枢地区である殿に向かった。未確認飛行物体の力が分かり次第、精鋭隊を組み、討伐にあたる予定だ。カムイ学院の生徒は強制参加とする!では、各自、城に集まるように!』

はぁ………。こんなに早く、召集をかけるとは……。

「やるしかないか」
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