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最弱の魔法戦闘師、大陸最強と戦う
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「賢者。こいつは誰だ?」
召喚されたのは一つの人形のようなものだった。
流石に賢者でもこの人形単体が強いと言いたいわけではないだろう。
となると、その人物の強さをあの人形が再現できるという感じだろうな。
「こいつはな………現、この大陸最強のカインドだ」
「!!!!」
カインドは魔法戦闘師ならば誰でも憧れる人物だろう。
何故ならば、数多とある天恵の中で魔法戦闘師、それもこの大陸で右に出るものは居ないと言われる程に圧倒的な戦闘センスがある人物なのだ。
「それも、こいつにはおまけを付けておいたのだ」
「おまけ?」
「通常、魔法と魔法戦闘師は交わらないが………我の力により、すべての天恵を使用できる化け物となったのだよ」
「……………」
はっ?それってつまり、魔法戦闘師でありながら魔法を使えるってことだろ?
そんなの反則だろ。それ以外にも使えるんだろ?
「ん?じゃあ、剣聖でもあるのか?」
剣聖は剣を使用する天恵のなかで最強だ。カインドの固有能力は『変則武装』だ。発現時に思い描いた武器を使用できる。
特出してる点は無いが、使用者であるカインドにより、その固有能力は最大限以上に発揮されていると言えるだろうな。
天恵や固有能力は個人にあったものを授かると言っていたが、本当みたいだな。
「勿論、はじめから全天恵と全力では一秒と持たないだろう。この人形は力の動き………予備動作が完璧に無くなっているから、お前さんの見切りも効果がないしな」
……………本格的に俺を倒しに来てるじゃねぇかよ。
「なので、強さと天恵の使用を、五段階に分けた」
五段階か………後半の方は絶対に異次元だろうな。
「一段階目はそもそも天恵を使えない。強さは百分の一だ」
「うぅん……」
天恵なしで百分の一か……。この大陸で最強の相手が、その程度の制限で俺に負けるか?
いや、勝てる未来すら見えないぞ。
「さっそくやってみようか。現段階でお前さんがどれだけちっぽけな存在かが分かるだろう」
賢者が魔力を人形に注いだ瞬間、もの凄い圧が俺を襲った。
体全体がヒリヒリして、緊張か恐怖か、体の震えが止まらない。
「お前さんが準備が出来次第戦闘が始まる」
「……ふぅ」
大丈夫だ。どうせ相手は人形だろ?天恵も力もない。びびる必要なんて全くない。
「始めてくれ、賢者」
「……わかった」
その賢者の言葉の後、俺は天を見上げていた。体は地に横たわり、なんの衝撃すら感じることが出来なかった。
「は………??」
人形の動きを視認することすら許されなかった。
カインドがどれだけ化け物か、この身をもってしっかりと感じた。
大陸だけでなく、世界にすら強大な影響を及ぼしている人物だ。
俺程度の実力では張り合うことすらかなわない。
「案ずることはない。こうなるのはお前さんも理解していただろ?」
「……そうなんだけどなぁ」
なんと言うか、はっきりと言って納得出来ない。何をされたんだ?
武器を持っている様子はなかった。それに人形が後方に移動していると言うことから、近接での攻撃だろう。
しかし、視認不可の速さで動き、攻撃を仕掛けてきたと言うのに、痛みを感じないなんてあるのか?
普通に考えて不可能ではないだろうか?
それに、攻撃だけではない。この地も固いわけであり、倒れれば痛みを伴う。それすらも感じないと言うことは……。
「賢者……不正は良くない」
「………なんと?」
「不正したろ?」
俺は上半身だけを起こして、賢者を見据えた。ポーカーフェイスで突き通そうとしてるが、落ち着きが無くなっている。
図星を付いたと思って良いだろうな。
「な、なんのことだ?」
「そもそもな話だ。なぜ、その人形と関わりのない俺の言葉で動き始めるんだ?」
初めは賢者が魔力で抑制してるのかと思った。
しかし、あの人形の動きが俺の言葉で本当に反応したのであれば、はっきりと言って賢者でも動きを停めるのは不可能だろう。
俺は賢者と戦ったことがあるから分かる。
だが、これだけでは不正したとは言えない。情報が少なすぎるからだ。
「それは……お前さんが負けた言い訳か?」
「どう捉えられようとも構わないが……」
少なくとも、言い訳をしたくてこんなことを言ってると言うわけではない。
「速さとは攻撃の威力に直結するものがある。視認できない程の速さでの攻撃に対して痛みが生じない、なんてあると思うか?」
「それは、我が痛みを無くしていたからだ」
全く……まさか、魔法戦闘師は魔法について疎いとでも思ってんのか?
魔力の流れに関して言えば、魔法戦闘師は意外と敏感なんだぜ?
神武は魔力の塊だ。発現時の魔力使用量で神武を形成する魔力総量は決まるが、どの部位にどの程度の魔力を割り振るかは、術者が決められる。
つまり、戦闘において、魔力を細かく調整してる魔法戦闘師は、魔力の流れに対して敏感だ、ということだ。
「賢者は魔法において召喚後、展開も解除もしていない……」
解除もしていないと言うことは、現在も痛みを感じないと言うことだ。
「つまり……幻覚だ」
召喚後には魔法の展開は見られなかった。しかし、召喚されたばかりの人形に魔力が付与されていることは無い。
召喚したと同時に幻覚魔法の付与をしていたとしたら……。
「俺の勝手な被害妄想が俺自身を倒した、と言うことになるだろうな」
賢者は戦闘前から俺の精神を揺さぶっていた。
結果としてこんな事態を招いてしまった。
「………勘だけは一丁前なんだな」
「はっ。言ってろ」
「今回の件はすまない。では、幻術を解くとしよう」
俺の後方にいた人形は霧となり消えた。
しかし、賢者の隣に人形が姿を現した。
「気を取り直し、やってみてくれ」
「今度はなにもすんなよな」
「分かっておる」
よし、絶対に負けねぇ。
召喚されたのは一つの人形のようなものだった。
流石に賢者でもこの人形単体が強いと言いたいわけではないだろう。
となると、その人物の強さをあの人形が再現できるという感じだろうな。
「こいつはな………現、この大陸最強のカインドだ」
「!!!!」
カインドは魔法戦闘師ならば誰でも憧れる人物だろう。
何故ならば、数多とある天恵の中で魔法戦闘師、それもこの大陸で右に出るものは居ないと言われる程に圧倒的な戦闘センスがある人物なのだ。
「それも、こいつにはおまけを付けておいたのだ」
「おまけ?」
「通常、魔法と魔法戦闘師は交わらないが………我の力により、すべての天恵を使用できる化け物となったのだよ」
「……………」
はっ?それってつまり、魔法戦闘師でありながら魔法を使えるってことだろ?
そんなの反則だろ。それ以外にも使えるんだろ?
「ん?じゃあ、剣聖でもあるのか?」
剣聖は剣を使用する天恵のなかで最強だ。カインドの固有能力は『変則武装』だ。発現時に思い描いた武器を使用できる。
特出してる点は無いが、使用者であるカインドにより、その固有能力は最大限以上に発揮されていると言えるだろうな。
天恵や固有能力は個人にあったものを授かると言っていたが、本当みたいだな。
「勿論、はじめから全天恵と全力では一秒と持たないだろう。この人形は力の動き………予備動作が完璧に無くなっているから、お前さんの見切りも効果がないしな」
……………本格的に俺を倒しに来てるじゃねぇかよ。
「なので、強さと天恵の使用を、五段階に分けた」
五段階か………後半の方は絶対に異次元だろうな。
「一段階目はそもそも天恵を使えない。強さは百分の一だ」
「うぅん……」
天恵なしで百分の一か……。この大陸で最強の相手が、その程度の制限で俺に負けるか?
いや、勝てる未来すら見えないぞ。
「さっそくやってみようか。現段階でお前さんがどれだけちっぽけな存在かが分かるだろう」
賢者が魔力を人形に注いだ瞬間、もの凄い圧が俺を襲った。
体全体がヒリヒリして、緊張か恐怖か、体の震えが止まらない。
「お前さんが準備が出来次第戦闘が始まる」
「……ふぅ」
大丈夫だ。どうせ相手は人形だろ?天恵も力もない。びびる必要なんて全くない。
「始めてくれ、賢者」
「……わかった」
その賢者の言葉の後、俺は天を見上げていた。体は地に横たわり、なんの衝撃すら感じることが出来なかった。
「は………??」
人形の動きを視認することすら許されなかった。
カインドがどれだけ化け物か、この身をもってしっかりと感じた。
大陸だけでなく、世界にすら強大な影響を及ぼしている人物だ。
俺程度の実力では張り合うことすらかなわない。
「案ずることはない。こうなるのはお前さんも理解していただろ?」
「……そうなんだけどなぁ」
なんと言うか、はっきりと言って納得出来ない。何をされたんだ?
武器を持っている様子はなかった。それに人形が後方に移動していると言うことから、近接での攻撃だろう。
しかし、視認不可の速さで動き、攻撃を仕掛けてきたと言うのに、痛みを感じないなんてあるのか?
普通に考えて不可能ではないだろうか?
それに、攻撃だけではない。この地も固いわけであり、倒れれば痛みを伴う。それすらも感じないと言うことは……。
「賢者……不正は良くない」
「………なんと?」
「不正したろ?」
俺は上半身だけを起こして、賢者を見据えた。ポーカーフェイスで突き通そうとしてるが、落ち着きが無くなっている。
図星を付いたと思って良いだろうな。
「な、なんのことだ?」
「そもそもな話だ。なぜ、その人形と関わりのない俺の言葉で動き始めるんだ?」
初めは賢者が魔力で抑制してるのかと思った。
しかし、あの人形の動きが俺の言葉で本当に反応したのであれば、はっきりと言って賢者でも動きを停めるのは不可能だろう。
俺は賢者と戦ったことがあるから分かる。
だが、これだけでは不正したとは言えない。情報が少なすぎるからだ。
「それは……お前さんが負けた言い訳か?」
「どう捉えられようとも構わないが……」
少なくとも、言い訳をしたくてこんなことを言ってると言うわけではない。
「速さとは攻撃の威力に直結するものがある。視認できない程の速さでの攻撃に対して痛みが生じない、なんてあると思うか?」
「それは、我が痛みを無くしていたからだ」
全く……まさか、魔法戦闘師は魔法について疎いとでも思ってんのか?
魔力の流れに関して言えば、魔法戦闘師は意外と敏感なんだぜ?
神武は魔力の塊だ。発現時の魔力使用量で神武を形成する魔力総量は決まるが、どの部位にどの程度の魔力を割り振るかは、術者が決められる。
つまり、戦闘において、魔力を細かく調整してる魔法戦闘師は、魔力の流れに対して敏感だ、ということだ。
「賢者は魔法において召喚後、展開も解除もしていない……」
解除もしていないと言うことは、現在も痛みを感じないと言うことだ。
「つまり……幻覚だ」
召喚後には魔法の展開は見られなかった。しかし、召喚されたばかりの人形に魔力が付与されていることは無い。
召喚したと同時に幻覚魔法の付与をしていたとしたら……。
「俺の勝手な被害妄想が俺自身を倒した、と言うことになるだろうな」
賢者は戦闘前から俺の精神を揺さぶっていた。
結果としてこんな事態を招いてしまった。
「………勘だけは一丁前なんだな」
「はっ。言ってろ」
「今回の件はすまない。では、幻術を解くとしよう」
俺の後方にいた人形は霧となり消えた。
しかし、賢者の隣に人形が姿を現した。
「気を取り直し、やってみてくれ」
「今度はなにもすんなよな」
「分かっておる」
よし、絶対に負けねぇ。
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