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最弱の魔法戦闘師、仮契約をする

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さて、次期女王が居なくなると静かに感じる。
よし、最低限の準備でもするか。どうせ一朝一夕ではあいつとの実力差は埋まらないだろう。ならば明日のために英気を養うのも手段だ。

となれば、瞑想でもするか。今までやったことはないが、きっと簡単だろう。

ようは無心で静かに、何も考えなければ良いんだろ?

座布団の上だとケツが痛くなりそうだし、ベッドにでも移動するか。

まぁ、少し後ろに下がるだけだから移動と言えるかは分からないが。

正座じゃ………足が痺れそうだな。胡座をかくか。

~~~~

『強くなりたいか?』
「……………誰だ?」

俺は確か瞑想中……だよな?
あれ?けどこんなにも意識が覚醒してるのに、目が覚めないなんて………。

だが、現実とは言えないな。ここは何処を見ても真っ白だ。

「ここはどこなんだ?」
『俺様はお前の本能とでも言うべきかな』
「俺の………本能?」
『あぁ。で、ここはお前の心の中だ』

ここが、俺の心の中だと?何もないじゃないか。俺の心が空っぽとでも言いたいのか?

「で、なんのようだ?」
『表面上は諦めてるみたいだが、実際は、奴に勝ちたいんだろ?』 「なに言ってんだ?」

俺は本当に諦めているんだよ。ここに居る意味すら無いしな。

『俺様は簡単に言えばお前の可能性だ。強くなりたいなら……強くなれる』

あやふやな存在だな。こいつは俺の可能性であり本能なのだろう?俺自身の可能性なんて高が知れている。

「俺自身ならば、そう強くはなれないだろうな」
『はぁ………これだから理性とか言う壁はうぜぇんだよなぁ』

こいつは何言ってるんだ?可能性と理性、どう関係があるってんだ。

『まぁ、お前が信じられないのは仕方がねぇな。論より証拠何て言うし、今からスゲェの見せてやるよ』

どうせ、俺だし。そんなスゴいものではないだろう。

『どこ見てんだ?』
「!!!!!!」

いつの間にか俺の目の前に居た宙に浮かんで居た俺は後ろに居た。

「い、いつの間に……」
『俺はただゆっくりとお前の後ろに回っただけだが?』

あくまでも黙秘するのか。だが、そんなことはどうでも良い。

「それは、俺でも可能なのか?」
『そうだなぁ………今のお前には無理だ』 
「えっ?」

クソッ……希望を持った俺がバカだった。こんな奴を一瞬でも信じてしまった自分が恨めしい。

『そうムカムカするなよ。お前がちょっと強くなれば出来るようにはなる』
「ほ、本当か!?」
『俺様の条件を呑むなら良いぞ。お前を鍛えてやる。さぁ、どうする?』

条件を聞かずして答えるのは安易すぎるか。だが、果たして教えてくれるのか?

「その条件、教えてもらえないか?」

ここで教えないと言うのであれば、あまりよろしくない条件の可能性が浮上する。

この場合の黙秘は良いほうには転ばない。本能ならば俺の考えくらいお見通しのはず。

『お前は俺様のちっぽけな条件よりも強さを手に入れたいんじゃないのか?』

くっ……そうくるか。だが、ここで引いては後悔するかもしれない。

「俺自身に関わることなら聞かなくてはならない。強さを手に入れてもそれを使えなければ意味をなさないからな」
『なるほどな。そんなに心配性なら教えてやるよ』

おっ!教えてくれるのか?やっとか。てか、あいつもあいつで心配性だな。

条件を伏せるって事は俺がその条件を呑まない可能性があるからだろう?

『俺様の条件はたった一つ。グロスとの決闘、俺にやらせろ』
「えっ?」

なんでそんなことを?

『あいつをボコしたいんだろ?俺様なら勝てる』

確かに、俺よりも強いのは明確だ。だが、グロスよりも強いかと言われると………。

「俺の能力値はお前の能力値の半分ぐらいだろう。だが、グロスは俺の五倍は強いぞ?」

俺があいつに勝てるのたったの一つ。それも決闘ではほとんど意味をなさない。

『はぁ………まぁ、詳細は後々話し合おう。だがな、これだけは言っておこう』
「なんだ?」

他にも色々と言われないといけないのか?

『お前は自分の天恵や固有能力についてもっと知った方が良い』
「なんでだ?」

別に知ったところで強くなるわけでもないし。それに、基本的なことはしっかりと知ってるつもりだ。

今更教えてもらうことなんて、ないんじゃないだろうか?

『まず、お前の天恵はなんだ?』
「俺の天恵は、魔法戦闘師だ」
『そうだ。じゃあ、魔法戦闘師とはなんだ?』

魔法戦闘師とは何か?
あまり考えたことはないが、教えてもらったから、分かることには分かる。

「魔法戦闘師とは補助天恵にがあって、神武とは人によって異なる。また、固有能力と言うものがあり、その人専用の能力の事を指す。また通常の魔法が使えない代わりにその固有能力がある」

まぁ、このくらいかな。因みに俺の固有能力は『見切り』と呼ばれるものだ。使い方は俺自身も良く分からない。

『ほぉ。意外と知ってるな。まぁ、お前の場合は固有能力の使い方を知らないみたいだけどな』

こいつ、俺なだけある。俺が知らないと言うことを知ってる。

「それについても教えてくれるのか?」
『まぁな。俺様としてはお前が強くなってくれないと困るからな』
「???」

まぁ、いいか。それよりもここまで言わせたのだ。俺だって決断しなければならないな。

「おい」
『なんだ?』
「お前がグロスと戦ってくれ」
『ほぉ。どういう風の吹き回しかは知らなねぇが、後戻りはできない。分かってるな?』
「あぁ」

そんな心境ならばこんな決断しなかっただろうな。

それにしてもこいつ、ずっとぷかぷか浮かんでやがるな。精神体だからか?

『じゃあ、仮契約成立な。本契約の詳細は決闘後な』

仮契約だと?どういう意味だ?
…………いや、今更何を思おうと意味ないか。後戻りはできないからな。

「じゃあ、明日は任せた」
『ふっ。俺様の戦いぶりを見てやがれ』
「あぁ」
『じゃあ、もう眠れ。時間が来たら起こしてやる』
「そんなこともできるんだな」

その時、だんだんと意識が遠退くのが分かる。俺の本能?や周りの空間がぼやけてきた。

もう潮時か。
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