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第1章 僕の子供が神ってマジですか?
9話 決断する
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「聞き捨てならないって?どの口が言ってるの?」
僕は顔だけを蓮の方へ向け、聞いた。図星だったのだろうな。
「いつから、そんな面倒な奴になったんだよ?」
「蓮の相手をするようになってからかな」
「はぁ……前置きはこんぐらいで良いよな?」
「……?」
こちらを見ているようで、違うような違和感を感じた。
まるで、僕以外にそこに居るかのようだった。
僕は体も蓮の方へ向け、訝しげな眼差しを向けた。
「単刀直入に言うが、お前じゃ、香菜ちゃんを幸せにはできない……気付いてるんじゃないのか?」
また……それかよ。そんなの自分が一番知ってる。不釣り合いなのはヒシヒシと感じてるんだよ……。
自分以外の方が幸せにできるんじゃないかって……。でもさ。
「僕はまだガキだ。そんな幸せとか、不幸だとか……そんな背伸びなんかしないで、今を楽しみたい。外野がとやかく言う必要なくない?」
自分勝手なのは百も承知。これは僕の都合だ。僕が幸せなら良いと言う、言わば自己満足だ、エゴだ。
でも、それの何が悪いんだ?
不穏な空気が僕たちを包む中、僕はただただ蓮の方を見据えたまま立っていた。
香菜に告白した時もこんな感じだったけど、あの時とは状況もこの場を支配する雰囲気も何もかもが違う。
「香菜ちゃんのことが好きなんだ。行動に移すことが出来なかった。あまつさえお前に先を越された」
さっきとは違う。まるで、別人になったかのようだ。
「お前よりも、香菜ちゃんを好きだと、はっきりと言える!お前は不釣り合いだ!」
自暴自棄、か。
ハッキリと言って、僕は少し呆れていた。
「頼む、魁斗……別れろ」
「残念だけど、無理だよ」
「これはしたくなかったが……」
まだ、何か隠していたようだ。しかし、この期に及んで一体何が出来ると?
「お前を脅す」
「脅す?どうやって?」
「簡単さ」
蓮の口角が上がった。それは、なんとも下品な笑みだった。鳥肌が立つほど、蓮の纏う雰囲気は怖かった。
「もう後戻りは出来ねぇぞ?最後のチャンスだ。別れろ、魁斗。そうすりゃあ、自分たちも仲直りだ。万事解決だろ?」
何が……何が万事解決だよ!脅して彼女を奪おうとする奴が!
中学生でこんな事が出来るのか?こんなに頭の回る奴だったか?いや、現に僕は手も足も出ない。
「時間が惜しい、五秒やるよ」
この場で出来る最善はなんだ?脅しの内容にもよるが…僕だけが被害を被るならまだしも、香菜にまで被害が及んだら?
そんなの……僕が耐えられない。もともと選択肢などなかったのか。
僕らのいざこざで香奈まで傷付くのダメだ。それだけは阻止しなければ。
「……わかったよ」
「ふっ。それで良いんだ。最初からそうしてればこんなに長く話す必要も自分たちの仲も悪くならなかった」
クソッ。情けない。ホントならば、自分の意思を貫くべきなのに……。何があっても香菜を守らなければならないのに……。
「今までのことは水に流そう。色々とごめんな、魁斗」
「…………あぁ」
僕は無理に笑みを浮かべた。この場を穏便にやり過ごすものでは無い。
自分自身に失望した自分に対してだ。情けなさすぎて、今にも涙が込み上げてきそうだ。この場を凌ぐのでやっとだった。
「今日、香菜ちゃんをフれ」
「!!!」
「どうなるか、分かっててその反応か?」
「っ……」
蓮はうっすらと笑みを浮かべながら、僕の肩を叩いて言った。
「逃げようとか、考えない方が良いぜ?じゃあ、先行ってるわ」
階段を昇る音がした。僕はその場に座り込んでしまった。
物凄い罪悪感と情けなさ、怒りが自分に対してフツフツと湧き上がってきた。
結局、僕は自分の保身に走ってしまった、クズだ。
結局言い訳をして逃げただけじゃないか……。
僕は顔だけを蓮の方へ向け、聞いた。図星だったのだろうな。
「いつから、そんな面倒な奴になったんだよ?」
「蓮の相手をするようになってからかな」
「はぁ……前置きはこんぐらいで良いよな?」
「……?」
こちらを見ているようで、違うような違和感を感じた。
まるで、僕以外にそこに居るかのようだった。
僕は体も蓮の方へ向け、訝しげな眼差しを向けた。
「単刀直入に言うが、お前じゃ、香菜ちゃんを幸せにはできない……気付いてるんじゃないのか?」
また……それかよ。そんなの自分が一番知ってる。不釣り合いなのはヒシヒシと感じてるんだよ……。
自分以外の方が幸せにできるんじゃないかって……。でもさ。
「僕はまだガキだ。そんな幸せとか、不幸だとか……そんな背伸びなんかしないで、今を楽しみたい。外野がとやかく言う必要なくない?」
自分勝手なのは百も承知。これは僕の都合だ。僕が幸せなら良いと言う、言わば自己満足だ、エゴだ。
でも、それの何が悪いんだ?
不穏な空気が僕たちを包む中、僕はただただ蓮の方を見据えたまま立っていた。
香菜に告白した時もこんな感じだったけど、あの時とは状況もこの場を支配する雰囲気も何もかもが違う。
「香菜ちゃんのことが好きなんだ。行動に移すことが出来なかった。あまつさえお前に先を越された」
さっきとは違う。まるで、別人になったかのようだ。
「お前よりも、香菜ちゃんを好きだと、はっきりと言える!お前は不釣り合いだ!」
自暴自棄、か。
ハッキリと言って、僕は少し呆れていた。
「頼む、魁斗……別れろ」
「残念だけど、無理だよ」
「これはしたくなかったが……」
まだ、何か隠していたようだ。しかし、この期に及んで一体何が出来ると?
「お前を脅す」
「脅す?どうやって?」
「簡単さ」
蓮の口角が上がった。それは、なんとも下品な笑みだった。鳥肌が立つほど、蓮の纏う雰囲気は怖かった。
「もう後戻りは出来ねぇぞ?最後のチャンスだ。別れろ、魁斗。そうすりゃあ、自分たちも仲直りだ。万事解決だろ?」
何が……何が万事解決だよ!脅して彼女を奪おうとする奴が!
中学生でこんな事が出来るのか?こんなに頭の回る奴だったか?いや、現に僕は手も足も出ない。
「時間が惜しい、五秒やるよ」
この場で出来る最善はなんだ?脅しの内容にもよるが…僕だけが被害を被るならまだしも、香菜にまで被害が及んだら?
そんなの……僕が耐えられない。もともと選択肢などなかったのか。
僕らのいざこざで香奈まで傷付くのダメだ。それだけは阻止しなければ。
「……わかったよ」
「ふっ。それで良いんだ。最初からそうしてればこんなに長く話す必要も自分たちの仲も悪くならなかった」
クソッ。情けない。ホントならば、自分の意思を貫くべきなのに……。何があっても香菜を守らなければならないのに……。
「今までのことは水に流そう。色々とごめんな、魁斗」
「…………あぁ」
僕は無理に笑みを浮かべた。この場を穏便にやり過ごすものでは無い。
自分自身に失望した自分に対してだ。情けなさすぎて、今にも涙が込み上げてきそうだ。この場を凌ぐのでやっとだった。
「今日、香菜ちゃんをフれ」
「!!!」
「どうなるか、分かっててその反応か?」
「っ……」
蓮はうっすらと笑みを浮かべながら、僕の肩を叩いて言った。
「逃げようとか、考えない方が良いぜ?じゃあ、先行ってるわ」
階段を昇る音がした。僕はその場に座り込んでしまった。
物凄い罪悪感と情けなさ、怒りが自分に対してフツフツと湧き上がってきた。
結局、僕は自分の保身に走ってしまった、クズだ。
結局言い訳をして逃げただけじゃないか……。
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