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プロローグ
プロローグ 7
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「まぁ、お前は昔から香菜一択だもんな」
「おまっ!バカにすんなよ!」
でも、陽太のその言葉は明確に的を射ていた。せめてもの抵抗で少し声を荒らげるものの、その言葉に耳を傾ける者は居なかった。
図星を突かれ、虫の居所が悪くなった僕は少しキツめに言葉を発した。
「で?他に聞きたいことは?」
「そう怒るなって。悪かったって」
「絶対思ってないだろ?」
陽太は、仲の良い間柄だと、少し調子に乗る癖がある。いつもは窓の外の方を見て黄昏ているというのに。
「そうだ。オレ、コンビニでこれ買ったんだ」
なんとも言えないタイミングでそんなことを言い出した昂也。
どんな意図があるかのか、わからずポカンとしてしまった。
少しずつ頭が冷静になってきて、次第にさっきのやり取りのバカ加減に笑いが込み上げてきた。
「あははははは」
「うお!ビクッた……急に笑うなよ」
「どうかした?」
おかしなことに二人もつられるようにして、笑い始めた。
最初に笑い始めた僕の腹筋がとてもつもなく痛くなったのは、また次の日の話だ。
「はぁ、笑った笑った。取り敢えず、折角買ってきてもらったんだ。開けようぜ」
ポテチの袋をパーティ開きにした。
「スゲェズレたけどさ」
「ん?」
陽太は僕の方に視線を向けてきた。その眼差しはやけに真剣で、僕もなんだか緊張してきた。
「結婚式は呼べよ?」
「!!ケホ、ケホ……急に、なんだよ?」
いきなり過ぎた、予想だにしなかった言葉に僕はポテチを喉に詰まらせた。そして、咳き込んでしまった。それほどに、意外すぎたのだ。
「そ、そんなに突然だったか?」
「文脈ってもんがあるだろ!」
「すまんすまん。まぁ、これから色々と楽しみだな」
「ん?」
昂也は蚊帳の外にされて、一人寂しくポテチの袋に手を伸びしていた。
「あぁ」
そうだ。言わねばならないことがあった。手遅れと言われても言わなければならないことがあった。
僕は意を決した。
「この事は出来るだけ口外しないで欲しい……」
最後の方になるにつれて言葉が小さくなっていった。語尾なんて聞き取れているかすらわからない。
「……理由を聞いても良いか?」
深く考えなかった。理由なんて……。でも、何となく嫌だった。
強いて言えば、他人に知られたくなかった。でも、一つだけ明確な理由があることに気が付いた。
「……恥ずかしいんだ」
「「……は?」」
予想外の答えに二人は硬直してしまった。僕はそんな二人に構わずポテチに手を伸ばした。
「本気で言ってんのか?」
「うん。だから出来るだけ……これ以上は広めないで欲しい」
みんなに言うべきことなのだろう。でも、僕にはそんな勇気がなかった。だから、友達にだけは僕の感じてることを……本当は嫌なんだってのを知って欲しかった。
僕が視線を下げ、俯いていると、昂也が静かに手を僕の肩に乗せた。
「ごめん。本当にごめん」
また、昂也に謝られてしまった。謝罪なんて聞きたくない。言って欲しいなんて思ってない。なんでこうも上手くいかないのか。
僕は昂也の方を向けず、ずっと下の方を見ていた。
「ありがとな」
「……えっ?」
意味がわからなかった。感謝の言葉なんて言われる筋合いはない。
僕はなぜ、ありがとと言われたのかわからず、勢い良く視線を陽太の方に向けたものの、そこから動く事は出来なかった。
「結構勇気いるだろ?自分の意見を言うのって」
「……!!」
心を見透かされたようだった。
「わかった。俺らから他の人には言わねぇよ。それと、友達にも広めるなって言っとくよ」
僕は驚いて言葉が出なかった。詰まったと言うよりも、思い浮かばなかった。
僕が咄嗟に出した言葉は飾り気がなく、相手を気遣うような言い回しすら出来なかった。
でも、一番しっくりときた言葉だった。
「陽太……ありがとう」
昂也も人懐っこい笑顔を浮かべて、僕の方を見つめてきた。
「オレも協力するよ」
どうやら、僕は相当友達に恵まれているようだ。
「おまっ!バカにすんなよ!」
でも、陽太のその言葉は明確に的を射ていた。せめてもの抵抗で少し声を荒らげるものの、その言葉に耳を傾ける者は居なかった。
図星を突かれ、虫の居所が悪くなった僕は少しキツめに言葉を発した。
「で?他に聞きたいことは?」
「そう怒るなって。悪かったって」
「絶対思ってないだろ?」
陽太は、仲の良い間柄だと、少し調子に乗る癖がある。いつもは窓の外の方を見て黄昏ているというのに。
「そうだ。オレ、コンビニでこれ買ったんだ」
なんとも言えないタイミングでそんなことを言い出した昂也。
どんな意図があるかのか、わからずポカンとしてしまった。
少しずつ頭が冷静になってきて、次第にさっきのやり取りのバカ加減に笑いが込み上げてきた。
「あははははは」
「うお!ビクッた……急に笑うなよ」
「どうかした?」
おかしなことに二人もつられるようにして、笑い始めた。
最初に笑い始めた僕の腹筋がとてもつもなく痛くなったのは、また次の日の話だ。
「はぁ、笑った笑った。取り敢えず、折角買ってきてもらったんだ。開けようぜ」
ポテチの袋をパーティ開きにした。
「スゲェズレたけどさ」
「ん?」
陽太は僕の方に視線を向けてきた。その眼差しはやけに真剣で、僕もなんだか緊張してきた。
「結婚式は呼べよ?」
「!!ケホ、ケホ……急に、なんだよ?」
いきなり過ぎた、予想だにしなかった言葉に僕はポテチを喉に詰まらせた。そして、咳き込んでしまった。それほどに、意外すぎたのだ。
「そ、そんなに突然だったか?」
「文脈ってもんがあるだろ!」
「すまんすまん。まぁ、これから色々と楽しみだな」
「ん?」
昂也は蚊帳の外にされて、一人寂しくポテチの袋に手を伸びしていた。
「あぁ」
そうだ。言わねばならないことがあった。手遅れと言われても言わなければならないことがあった。
僕は意を決した。
「この事は出来るだけ口外しないで欲しい……」
最後の方になるにつれて言葉が小さくなっていった。語尾なんて聞き取れているかすらわからない。
「……理由を聞いても良いか?」
深く考えなかった。理由なんて……。でも、何となく嫌だった。
強いて言えば、他人に知られたくなかった。でも、一つだけ明確な理由があることに気が付いた。
「……恥ずかしいんだ」
「「……は?」」
予想外の答えに二人は硬直してしまった。僕はそんな二人に構わずポテチに手を伸ばした。
「本気で言ってんのか?」
「うん。だから出来るだけ……これ以上は広めないで欲しい」
みんなに言うべきことなのだろう。でも、僕にはそんな勇気がなかった。だから、友達にだけは僕の感じてることを……本当は嫌なんだってのを知って欲しかった。
僕が視線を下げ、俯いていると、昂也が静かに手を僕の肩に乗せた。
「ごめん。本当にごめん」
また、昂也に謝られてしまった。謝罪なんて聞きたくない。言って欲しいなんて思ってない。なんでこうも上手くいかないのか。
僕は昂也の方を向けず、ずっと下の方を見ていた。
「ありがとな」
「……えっ?」
意味がわからなかった。感謝の言葉なんて言われる筋合いはない。
僕はなぜ、ありがとと言われたのかわからず、勢い良く視線を陽太の方に向けたものの、そこから動く事は出来なかった。
「結構勇気いるだろ?自分の意見を言うのって」
「……!!」
心を見透かされたようだった。
「わかった。俺らから他の人には言わねぇよ。それと、友達にも広めるなって言っとくよ」
僕は驚いて言葉が出なかった。詰まったと言うよりも、思い浮かばなかった。
僕が咄嗟に出した言葉は飾り気がなく、相手を気遣うような言い回しすら出来なかった。
でも、一番しっくりときた言葉だった。
「陽太……ありがとう」
昂也も人懐っこい笑顔を浮かべて、僕の方を見つめてきた。
「オレも協力するよ」
どうやら、僕は相当友達に恵まれているようだ。
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