上 下
70 / 72
6章 最後のルート

3話 最後のルート 3

しおりを挟む
『また、フッたのかい?』
「あぁ、そうだね」
『君は、何がしたいんだい?』
「さぁ?まぁ、ちょっと神様とお話があってね。手短に済ませてきたと言っておくよ」
『そうなのかい?それで、話って?』
「単刀直入に言うけど…………僕をもとの世界に戻してくれないか?」
『……………どう言うことだい?』
「ん?まだとぼけるのか?」
『知らないものは、知らないのさ』
「はぁ…………じゃあ、証拠を提示すれば、良いか?」
『そんなもの、あったかい?』
「まぁ、色々とね」
『じゃあ、さっそく御披露目願うよ、その証拠とやらを』
「そうだね、まずは父さんが母さんを呼ぶときの愛称かな。僕が知ってる父さんは、絶対に清子とは呼ばない」
『………断言できないだろう?』
「かもね」
『それが、君の言う証拠かい?少し弱い気がするけど』
「だから、まずはって言ったんだろう」
『じゃあ、次はなんだい?』
「次は、性格や一人称が少し雑になっていたってことかな」
『どう言うことだい?』
「美紗や零の性格が時々変わっていた。それに、僕が仕事場に突入したときに、零の一人称は俺と僕だったんだよ」
『き、気分かもしれないだろう』
「にしては、雑すぎだよ」
『で、でも!確証はないよね?他には何があるんだい?』
「次は………僕が美紗に失望したときだったかな」
『………………』
「神は言ったよね。架空の世界だからって」
『そ、そうだね………』
「もし、それが僕にそう思わせるための演出だったとしたら?」
『…………』
「つまり、僕がいままでやってきたこの全てが架空の世界だったってことだよね?」
『……………まだだよ。証拠不十分だよ』
「そうか?」
まったく、往生際がわるいぜ。
「次はね………ちょっとタイミングが良すぎることだよね」
『ん??』
「時間が良い例だよね。僕がそろそろと思ったとき、その物事が起きる。神が操作してるよね」
『……………』
「次は………神の力は僕たちの世界に作用できないと言うことだ」
『……!!』
「僕が美紗に言ったとき、大変なことが起きたよね。それって………神の力じゃないの?」
『………たまたまじゃないか?』
「まぁ、最後はね……」
『ま、まだあるのかい!?』
「美紗の運命についてかな」
『……………』
「神ははっきりとは言わなかったけど、美紗の運命って……僕と一緒にいると……辛い目に遭うって感じでしょ?」
『だとしたらなんだい?実際になってるだろ?』
「いや。重要なのは、なってるかどうかではなく、いつからなったとかって話だよ」
『意味がわからないよ』
「つまり、美紗がこんな酷い目に遭い始めたのは、神と出会ってからじゃないか?」
『たまたまだよ』
「三年間もかい?」
『ん?三年間?』
「僕が美紗と付き合ったのは、大体三年前なのさ。と言うことは、三年間は何もなかったのに、神と出会った瞬間からって言うのは、少し都合が良すぎじゃないか?」
『それで?』
「神の力が関与してると考えれば、そう考える必要もないだろ?」
『そうかもね』
「でも、神は僕らの世界に力を使えない。ならば、力の使える世界を創れば良いんだよな」
『何が言いたいんだい?』
「神は僕にヒントをくれたよ。神は架空の世界を創れる。ならば、持続することも可能だろう?」
『つまり?』
「神が僕を試すために、創った世界だろう?」
『……………完敗だよ』
「やっと認めたね」
『認めないわけにはいかないよね。それで、僕はなんのためにしたと思う』
「色々と考えたけど、僕が選ばれた理由は二つの要因があるんだ」
『そこまでわかるのかい?』
「一つはこのやり直しのできる世界が架空であると見抜ける頭脳」
『あと一つは?』
「ここに連れてくることができる理由だ。僕が丁度彼女をフッた。神はここに連れてくる適当な理由ができて、それをだしに、僕を釣ったんだろ?」
『その通りだよ。で?きみは何をしたいんだ?』
「もと居た世界に戻してくれれば別に良いよ」
『本当に良いのかい?ここに居ればいろんな障害はあるだろうけど、死なないし、幸せになれるだろう』
「だとしても、だよ………僕は……普通に暮らしたい」
『そっか。わかったよ』
「ありがと」 
『じゃあ、バイバイ』
「あぁ。いままでありがとうな」
『あっ。一つ言い忘れてたけど、君の世界だと、十一日過ぎてるからね』
「はぁ?!早く言ってよ!」
『君は精神だけをこっちに呼んでるから……本体は仮死状態だよ』
「はぁ……もっと早く言ってよね………」
『ごめん、ごめん……じゃあね、凱くん』
「…………!!あぁ、じゃなあ、クロノス」



「ん………んん……」
ここは………病院か?
「母さんに………父さん?」
寝てるのか?
「心配かけたね………ごめん」
美紗は……居ないか………しょうがない。だって、僕はフッたんだもんな。
今は午後五時か。
「ずっとありがとう、父さん、母さん」
なんだろうか……いままで抱えていたものがなくなって………緊張感が切れたのかな………?どっと疲れてるみたいだ。もう少しだけ、寝させてほしいなぁ。なんて……。

~~~~~~~~~~~~~~~
6章完結です!あとはエピローグのみとなりました。最後までお願いします!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~

卯月らいな
ファンタジー
魔法が歌声によって操られる世界で、男性の声は攻撃や祭事、狩猟に、女性の声は補助や回復、農業に用いられる。男女が合唱することで魔法はより強力となるため、魔法学園では入学時にペアを組む風習がある。 この物語は、エリック、エリーゼ、アキラの三人の主人公の群像劇である。 エリーゼは、新聞記者だった父が、議員のスキャンダルを暴く過程で不当に命を落とす。父の死後、エリーゼは母と共に貧困に苦しみ、社会の底辺での生活を余儀なくされる。この経験から彼女は運命を変え、父の死に関わった者への復讐を誓う。だが、直接復讐を果たす力は彼女にはない。そこで、魔法の力を最大限に引き出し、社会の頂点へと上り詰めるため、魔法学園での地位を確立する計画を立てる。 魔法学園にはエリックという才能あふれる生徒がおり、彼は入学から一週間後、同級生エリーゼの禁じられた魔法によって彼女と体が入れ替わる。この予期せぬ出来事をきっかけに、元々女声魔法の英才教育を受けていたエリックは女性として女声の魔法をマスターし、新たな男声パートナー、アキラと共に高みを目指すことを誓う。 アキラは日本から来た異世界転生者で、彼の世界には存在しなかった歌声の魔法に最初は馴染めなかったが、エリックとの多くの試練を経て、隠された音楽の才能を開花させる。

処理中です...