そしてまた、僕は君と付き合う

捌素人

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5章 最悪の詰め合わせルート

1話 最悪の詰め合わせルート 1

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「うっ………」
久し振りの外だ。まだ、太陽は高いし、目が慣れてないみたいだな。眩しいったらありゃしないよ。
「ん?あの人は………」
零の父親か。右手に何か紙を持っているみたいだけど……。けど、この世界線において関わりのない人物なのは確かだ。あっちが一方的に知ってるのはあり得るとして、僕が知ってる確率は皆無だね。実際だったら。
交差点を通り、零の父親の横を通り過ぎる。信号はそろそら変わりそうだと言うのに、渡らないのだろうか?
「君が、陽縞凱か?」
「………………僕のことですか?」
僕が振り返ると零の父親は会社を見据えていた。こちらをみる素振りは見られない。会話をするときは相手の目を見ろと教わらなかったのだろうか?今時、そこら辺の子供でも知ってるだろう。実際にやるかどうかは置いておいてね。
「君がここに居るということは、零は、君に負けたのか?」
半分は自問するような口振りの零の父親。なんなの、その態度は?世界線が変わっても上から目線なのな!
「人を詮索する前に、自分の名前ぐらい教えてくださいよ」
「君に名乗るほど、落ちぶれていないのでな」
「そ、そうですか………」
なんなの!マジでさぁ!!くっそムカつくわぁ!マジなんなの!
「それに、君は………知っているだろう?」
「なんのことですかね」
「しらを切るか……まぁ、良い。それよりも、美紗が零のことを好きなのは、知っているな?」
「え、えぇ………」
せっせと人の傷口を抉るのやめてもらっていいですかね?追撃は聞いてないですよ?
「それを知ってなお、ここに居るということは、諦めたと捉えて良いのか?」
「……………」
僕がここに来た目的は美紗の奪還。でも、勝負に勝って、戦いに負けた気分だよ。
「この紙は………婚姻届だ」
「は?」
いやいやいや。あの人たちは学生ですよ?婚姻届だなんて………無理でしょ。
「まぁ。と言っても婚約の印のようなものだ。あの二人は、この紙切れで青春の醍醐味を失くすことになる。だが、安定している。確実なものがあるんだ。誰も、不安定な方をとるバカは居ないだろう?」
その問いのあと、初めてこちらを見てきた。
「そっすか」
すみませんねぇ。こちとら、さっきから胸糞悪くて仕方がないんすよ。あんたの寛大な心で許してちょ。
「興味は無さそうだね」
「………いえ。ただ、むしゃくしゃしてるだけですよ」
「そうかい。では、そろそろ私は行くとしよう」
「そうですか」
勝手に逝ってろ!あっ………、まぁ、殺意しかないだけだから。安心安心。

~~~~~~~~~~~~~~~
1話目はほとんど動きません。平常運転です。次回から少しずつ凱くんに絶望を与えていきます。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
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