そしてまた、僕は君と付き合う

捌素人

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4章 卑屈ルート、美紗の幸せルート、凱の超超超頑張りルート!

6話 卑屈ルート 6

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「美紗、別れよう」
「えっ?…………な、なんで?」
カラン
「スプーン、落ちたよ?」
「そんなこと………じゃないけど……なんで、急に別れようなんて………」
ダラダラと話しても縺れるだけだ。簡潔に話すのがベスト。
そして、僕自身のネタでは弱い。なら………。
「美紗、僕は君が嫌いだ。もう姿を見たくない程に」
全くの嘘だ。そんな事はない。好き過ぎて辛い程に……もう、失いたくない……だから………!!
嘘だろうがワガママだろうが、何だってやる。それが大切な……最愛の人を助ける道だから……。
「わ、わたし………」
そう。美紗は人に尽くしたいタイプの人間だ。もし、自分自身の内容なら、こちらが不利になるのは火を見るよりも明らかだ。なら、相手の内容にすれば良い。考える暇を与えてはいけない。
「いつもだ。君は狙ってかは分からないが………可愛いんだよ……」
ダメだ……。彼女に不満があるやついるか?居ねぇよな、そんなの。
「か、凱君?」
もう、本心で……伝えよう。美紗は何時だって僕に真剣に向き合ってくれる。それなのに、僕は……僕は嘘で固めた武器で……真剣に向き合っていない。恥ずべきことだ。
僕は真剣に美紗を見据える。もう、逃げないと決意するために。
「美紗。ごめん、僕は君のことが大好きだ、だから………別れよう」
「えっ?い、意味が分からないよ……私たち、相思相愛じゃないの?じゃあ、それで良いんじゃないの?」
「そう、だね。でも……僕には譲れないものがある」
美紗を、失いたくないから……。
「そ、そんなのおかしいよ!なんで、好きなのに別れるの?好きなら好きって堂々としてれば良いじゃん。なんで、そんな私と向き合わないで、逃げようとするの?私、何かした?」
「君じゃないんだよ………問題は」
僕は天井を見る。白色でとても綺麗だ。もし、僕の心があんなんなら、きっと悩まずに居られるのに……人ってめんどくさいな。 
「問題は僕にある」
自嘲気味に笑みを浮かべ、ポツポツと言葉を並べる。
「僕さ、辛いんだよ………君には色んなものをもらった……僕は君に何をしてあげられたかぁ……?」
僕は手のひらで顔を覆う。彼女に泣き顔なんて、見せられないから……。
「凱君は……私に色んなものをくれたよ」
美紗は立ち上がると、僕の方へ歩み寄って、こう言ったのだ。
「私さ、凱君と出逢う前は、いじめられてたんだ。それはもう辛くてさ、だからあの中学校に行ったの。凱君も似たような環境だったって聞いて凄い親近感が湧いたんだよ?私に………世界に色をくれたんだぁ、私の生きる意味は……生まれた意味は凱君と一緒に居ることだって、そう思ったんだよ?きっと、凱君と別れたら、私きっとこの世に何も意味を見出だせなくなる。私の世界は、凱君で構成されてるからね」
僕は……ずっと自分だけが被害者かと思っていた。なんで僕がこんな目に遭わなければ、といつも思っていた。でも、それは違ったのだ。美紗はいつも明るい。でも、その過去はどす黒い記憶で支配されている。もし、僕という無価値な人間が………美紗という世界に存在して良いのなら……僕は、世界に価値があるのでは、ないだろうか……。それが許されるのなら……
「ありがと、美紗。でも………答えは変わらない」
僕は、美紗の世界の汚物だ。だから美紗は勘違いしている。僕のせいで視野が狭くなっている。それは致命的なものだ。美紗の世界の価値なんて、存在しない。して良い筈がない。
「美紗、夢から覚めなよ?僕が君の世界だよ?失笑だね。正直に言ってバカだよ、君は」
「………バカで良いよ、それで凱君が別れないでくれるならさ」
美紗……僕が美紗を見ると、うっすらと笑みを浮かべていた。見てるだけで優しくなるような、まるで包まれているみたいだ。
「僕は、美紗を守りたい。僕と居ても、君は幸せにならない」
「私の幸せは凱君の側に居ること。凱君が幸せなら私も幸せ。凱君、私の幸せを決め付けないで?それできっと、悲しむ人が居るから……」
美紗は……大バカだ。なんで僕にそこまでこだわるんだ。僕という無意味の人間に……
「僕は……無価値な人間さ。生きる意味を失くし、色も生きる理由も無い。こんな人間のどこが………っ!!」
パチンッ!
「…………ごめんね。でも、そんなこと………言わないで、絶対に……とても不安になったって、そんなこと言わないで!私、悲しいよ!なんで、そんなこと言えるの!君を好きな人の事を考えられないの?」
僕は頬にそっと自分の手を添える。美紗に思い切りビンタされた。
「僕では、君に相応しくないから」
美紗の顔を見ることが出来ず、俯いてしまう。目線が合わせられないのは後ろめたさがあるからかなぁ。
「私、怒るよ?」
「…………僕は、君に叱られるほど……立派な人間じゃない。正しい道なんて……とっくに見失ってる」
「なんでそこまで卑屈になってるの分からないけど………何がしたいの?私を困らせて楽しい?」
「理由なんて無いよ。君を守るため、それだけさ。僕では君を守れない」
二度も経験して……学ばない筈がない。
「凱君、私の目を見て」
僕の両手を美紗が掴み、目線を合わせてきた。
「凱君、言ったよね?私を守れないって……」
「……うん」
「でもさ、私、笑ってないよね?凱君、言ってくれたよね?私の笑顔が好きだって。なのに、私の笑顔すら守れないのに……凱君に何が守れるの?私は辛くたって、凱君が居れば笑えるよ?凱君の心を救うために」
「…………」
あの時、あんな状況で笑っていたのは……僕を、救おうと………。僕は、一番重要な事を見落としていたのかも、しれない……。
「どうしたら、良いのかなぁ……」
僕は目線を上に上げ、美紗から反らした。
『君にできる精一杯のことすれば良い。そうすれば自とおのずと結果はやってくる。神は、君をまだ見限ってはない。それだけは、覚えておいてね』
か、み………様。
めげてる場合じゃないみたいだね。
「美紗。ごめん………僕、一生掛けて君の笑顔を守るから……迷ったら、助けて欲しい。君の笑顔で」
「………うん!」
目からは数敵の涙が浮かんでいる。でも、だからこそ彼女のその笑顔はいつもよりも可愛く見えた。
「僕はやることがある」

「凱君?」
「待っててね、美紗」
クロノス、クロノス、クロノス、クロノス、クロノス。


『久し振りだね』
だね、神。

~~~~~~~~~~~~~~~

卑屈ルートなのに………もう少し頑張れ!
本文、長くてすみません。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
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