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3章 天国からの地獄ルート、罪深ルート、現実は非情ルート
16話 現実は非情ルート 6
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「ありがと。最高の日になりそうだよ」
「僕の方こそ。これからもよろしくね」
「うん」
僕と美紗の唇はもう少しでつくと言うところで、急にガラスが割れた音がした。
「急になに?」
「ホントにね。興醒めだよ。でも、危ないから離れないで」
「うん」
僕の後ろに隠れるようにして左側から腕を掴みながらひょっこりと顔を出している。
「父さんたちが喧嘩したとか?」
いや。それはないか。音的に。
「それはないと思うけどなぁ。割れる時の音が内側からって感じじゃなかったし」
「だよね………だとすると………」
ここから離れるのが賢明だ。人の命が懸っているのだから。
「ここから、離れよう。危ない気がする」
「だね。幸いにして、玄関から近いし」
「うん」
音は多分、家の奥………物置の方からだと思われる。父さんたちの部屋に少し近い。大丈夫だろうか。いや、この状況ではたとえ家族であっても自分の命を大切にしなければ。
「静かに行こう」
「ううん。もう、遅いかも……」
「えっ?」
「静かに」
「う、うん……」
どう言うことだ?
タ、タ、タ、タ、タ。
ゆっくりだが、こちらに近付いている。
親の可能性は…否定できないが、可能性でしかない。迂闊な行動は避けるべきか。
「隠れよ。近場に良い場所かある」
「うん」
声を極力殺しながら言った。
僕らはキッチン近くのタンスの中に隠れた。
「こんな状況なのに少し興奮してるよ。やっぱり、おかしい?」
「仕方がないよ。この密着度ならば」
「ふふっ。ありがと」
「静かにしよう。そろそろ、来る」
「うん」
怖いよな。僕だって怖いよ。身体の震えが止まらない。
ガラガラ
来た。
ドアを開けたあと足音がしないから、きっと探しているのだろう。
「あ、あぁ…………」
言葉が出なかった。タンスのちょっとしたこと隙間から見てた人影。その人には血が付着していた。
「居ねーか。くそっ!」
行ったか?ドアを閉める音はした。だが、そんなことで迂闊に出る程、バカではない。
「美紗、電話かけられる?」
「ん?うん」
「よろしく」
「誰に」
「110番だよ」
「な、なんで……」
「事情は後で話す。だから、お願い」
「凱君のじゃ、ダメなの?」
「電話の音が少し大きくてね」
美紗の電話は小さな音で、短い。だから、大丈夫な筈。最悪、僕が時間を稼ぐ。たとて、この命が尽きようとも。
「住所、分かる?」
「うん」
「頼んだよ」
僕は少し、状況を確認しよう。
あの人………あいつは誰なんだ?会ったことがない。父さんと母さんの友達は良く来るからだいたいは把握しているが、あんな奴は知らない。
フードで良く顔を見ることが出来なかったが、身体の骨格は男性だろうか?
動機はなんだ?どうして僕らの両親だったんだ?なんで、僕らの両親は殺されたんだ?
「電話、かけ終わったよ」
「あっ。ありがと」
ドタドタドタドタ
ブスッ
また、この音。もう、聞きたくない、最悪な………音だ。
「見ぃ付けたぁ」
聞き覚えのある声だ。
タンス越しに包丁で刺してきた男。
この男は、また美紗を刺した。今度は包丁で。
僕は思い切りタンスのドアを蹴破り顔面に蹴りを入れた。
「はがっ!」
勢い余って、もう一撃。今度はみぞおち辺りに。その後、倒れた男はテーブルの角に頭をぶつけた。
「頑丈だな」
「おめぇを殺すまで死ねねぇよ!!」
こいつ、格闘技やってたな。動きが素人じゃない。
だが、身体のスペックが違うんだよ!背負ってるものが、違ぇんだよ!!
男が包丁を左側から僕の頭目掛けて切り付いてくる。だけど、その間に足を封じる。足はリーチが長いから、勝負において使わない理由はない。弁慶の泣き所を思い切り蹴ったのだ。不意打ちで。大抵は………
「んなっ!?」
そう、痛さよりもバランスがとれなく倒れる方が速い。そして、その後追い討ちだ。
「借り、返すよ」
全力の右ストレートが男の顔面に入る。
「あっ………が……」
「ホントに頑丈だな」
まだ意識があるなんて。一応だけど。
「聞きたいことがある。あんた、警察に捕まったよな。なんでここ
に居んだよ」
そう。こいつの正体は僕がショッピングセンターで捕まえた強盗だ。まさか、殺人まで犯すなんて……。
「これで、晴れて処刑だな。確か二人か三人で処刑だったよな?あんた、五人殺してんだからよ」
僕の両親、そして、浜枝家全員を殺した。
「ここで殺してやろうか?」
オレは一瞬で力なく握っていた包丁を抜き取り男の首に突き付けた。
「なぁ?死にてぇか?殺してやろうか?」
「ひ、ひぃ!!?」
さっきまでの威勢は皆無。
ポロポロ。
「へっ?」
「お前を殺してぇよ。でもな。それじゃお前と同じになっちまうんだよ!」
「…………」
「お前を殺したって誰も帰っては来ねぇんだよ………自覚しろよ、お前がしたことを……。どれだけ血迷っても人を殺すのはダメなんだよ……考えろよ………そのせいで誰かが悲しむんだぞ?普通、出来ねぇだろ」
「説教か?ガキが」
「そうだよ………オレ、悲しいんだよ……。あんたが殺した……美紗はな!超可愛いんだよ!容姿だって性格だって!やっと、やっと……みんなに認められたと思ったのに………。なんでこんなことばっか起きんだよ……あんな状況でも暗くならないように、明るく………」
涙がだんだんと止まらなくなる。だが、きっと。言わなければならないことがある気がして。
「あんた、好きな人、居んのかよ?居ねぇだろ?だからこんな事でんだよな?」
「…………そう、だな」
男は説教されて威勢がないのではない。いつ包丁が自分を切るかが分からなく、怖いんだ。オレの手が震えてるから。
「教えてくれよ。どうやったらそんな非情になれんだ?」
サイレンが聞こえる。オレは、もう持たないかもしれない。死にたい。殺してくれ……。いっそ、ここで死んでこいつのせいにするか?ダメだ。逃げるかもしれない。こいつが捕まるまでは……生きないと。
~~~~~~~~~~~~~~~
ふむ。レパートリーが少なすぎますねぇ。なんで死んで終わるエンドだったのでしょうか?これ、一回出てますよね。はぁ、本当に申し訳ないです。次回からは気を付けていきます。男がここに居る伏線はありませんでしたね。まぁ、簡単に説明すると、この男、ナイフを色んなポケットに入れていて、警察を殺し、凱たちの後を付けて侵入したと言うことです。なかなか来なかったのは、位置を確認するためと、どこからなら武器を確保できるか確認するためです。ナイフだとバレる可能性があるので、家の包丁を使うことで、同じ人物とは結びつかないようにしたということです。この男は窓を石で思い切り割り、大きな石で撲殺しました(親を)。そのため、血の付着が多かったということです。
長々とすみません。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
これにて、3章終わりです。
※次の章に入る前に本文ではなかった美紗と凱の会話を入れます。インパクトの問題上なので、読む必要はありません。飛ばしてくれて構いません。出来るだけ、早めに4章を出します。
「僕の方こそ。これからもよろしくね」
「うん」
僕と美紗の唇はもう少しでつくと言うところで、急にガラスが割れた音がした。
「急になに?」
「ホントにね。興醒めだよ。でも、危ないから離れないで」
「うん」
僕の後ろに隠れるようにして左側から腕を掴みながらひょっこりと顔を出している。
「父さんたちが喧嘩したとか?」
いや。それはないか。音的に。
「それはないと思うけどなぁ。割れる時の音が内側からって感じじゃなかったし」
「だよね………だとすると………」
ここから離れるのが賢明だ。人の命が懸っているのだから。
「ここから、離れよう。危ない気がする」
「だね。幸いにして、玄関から近いし」
「うん」
音は多分、家の奥………物置の方からだと思われる。父さんたちの部屋に少し近い。大丈夫だろうか。いや、この状況ではたとえ家族であっても自分の命を大切にしなければ。
「静かに行こう」
「ううん。もう、遅いかも……」
「えっ?」
「静かに」
「う、うん……」
どう言うことだ?
タ、タ、タ、タ、タ。
ゆっくりだが、こちらに近付いている。
親の可能性は…否定できないが、可能性でしかない。迂闊な行動は避けるべきか。
「隠れよ。近場に良い場所かある」
「うん」
声を極力殺しながら言った。
僕らはキッチン近くのタンスの中に隠れた。
「こんな状況なのに少し興奮してるよ。やっぱり、おかしい?」
「仕方がないよ。この密着度ならば」
「ふふっ。ありがと」
「静かにしよう。そろそろ、来る」
「うん」
怖いよな。僕だって怖いよ。身体の震えが止まらない。
ガラガラ
来た。
ドアを開けたあと足音がしないから、きっと探しているのだろう。
「あ、あぁ…………」
言葉が出なかった。タンスのちょっとしたこと隙間から見てた人影。その人には血が付着していた。
「居ねーか。くそっ!」
行ったか?ドアを閉める音はした。だが、そんなことで迂闊に出る程、バカではない。
「美紗、電話かけられる?」
「ん?うん」
「よろしく」
「誰に」
「110番だよ」
「な、なんで……」
「事情は後で話す。だから、お願い」
「凱君のじゃ、ダメなの?」
「電話の音が少し大きくてね」
美紗の電話は小さな音で、短い。だから、大丈夫な筈。最悪、僕が時間を稼ぐ。たとて、この命が尽きようとも。
「住所、分かる?」
「うん」
「頼んだよ」
僕は少し、状況を確認しよう。
あの人………あいつは誰なんだ?会ったことがない。父さんと母さんの友達は良く来るからだいたいは把握しているが、あんな奴は知らない。
フードで良く顔を見ることが出来なかったが、身体の骨格は男性だろうか?
動機はなんだ?どうして僕らの両親だったんだ?なんで、僕らの両親は殺されたんだ?
「電話、かけ終わったよ」
「あっ。ありがと」
ドタドタドタドタ
ブスッ
また、この音。もう、聞きたくない、最悪な………音だ。
「見ぃ付けたぁ」
聞き覚えのある声だ。
タンス越しに包丁で刺してきた男。
この男は、また美紗を刺した。今度は包丁で。
僕は思い切りタンスのドアを蹴破り顔面に蹴りを入れた。
「はがっ!」
勢い余って、もう一撃。今度はみぞおち辺りに。その後、倒れた男はテーブルの角に頭をぶつけた。
「頑丈だな」
「おめぇを殺すまで死ねねぇよ!!」
こいつ、格闘技やってたな。動きが素人じゃない。
だが、身体のスペックが違うんだよ!背負ってるものが、違ぇんだよ!!
男が包丁を左側から僕の頭目掛けて切り付いてくる。だけど、その間に足を封じる。足はリーチが長いから、勝負において使わない理由はない。弁慶の泣き所を思い切り蹴ったのだ。不意打ちで。大抵は………
「んなっ!?」
そう、痛さよりもバランスがとれなく倒れる方が速い。そして、その後追い討ちだ。
「借り、返すよ」
全力の右ストレートが男の顔面に入る。
「あっ………が……」
「ホントに頑丈だな」
まだ意識があるなんて。一応だけど。
「聞きたいことがある。あんた、警察に捕まったよな。なんでここ
に居んだよ」
そう。こいつの正体は僕がショッピングセンターで捕まえた強盗だ。まさか、殺人まで犯すなんて……。
「これで、晴れて処刑だな。確か二人か三人で処刑だったよな?あんた、五人殺してんだからよ」
僕の両親、そして、浜枝家全員を殺した。
「ここで殺してやろうか?」
オレは一瞬で力なく握っていた包丁を抜き取り男の首に突き付けた。
「なぁ?死にてぇか?殺してやろうか?」
「ひ、ひぃ!!?」
さっきまでの威勢は皆無。
ポロポロ。
「へっ?」
「お前を殺してぇよ。でもな。それじゃお前と同じになっちまうんだよ!」
「…………」
「お前を殺したって誰も帰っては来ねぇんだよ………自覚しろよ、お前がしたことを……。どれだけ血迷っても人を殺すのはダメなんだよ……考えろよ………そのせいで誰かが悲しむんだぞ?普通、出来ねぇだろ」
「説教か?ガキが」
「そうだよ………オレ、悲しいんだよ……。あんたが殺した……美紗はな!超可愛いんだよ!容姿だって性格だって!やっと、やっと……みんなに認められたと思ったのに………。なんでこんなことばっか起きんだよ……あんな状況でも暗くならないように、明るく………」
涙がだんだんと止まらなくなる。だが、きっと。言わなければならないことがある気がして。
「あんた、好きな人、居んのかよ?居ねぇだろ?だからこんな事でんだよな?」
「…………そう、だな」
男は説教されて威勢がないのではない。いつ包丁が自分を切るかが分からなく、怖いんだ。オレの手が震えてるから。
「教えてくれよ。どうやったらそんな非情になれんだ?」
サイレンが聞こえる。オレは、もう持たないかもしれない。死にたい。殺してくれ……。いっそ、ここで死んでこいつのせいにするか?ダメだ。逃げるかもしれない。こいつが捕まるまでは……生きないと。
~~~~~~~~~~~~~~~
ふむ。レパートリーが少なすぎますねぇ。なんで死んで終わるエンドだったのでしょうか?これ、一回出てますよね。はぁ、本当に申し訳ないです。次回からは気を付けていきます。男がここに居る伏線はありませんでしたね。まぁ、簡単に説明すると、この男、ナイフを色んなポケットに入れていて、警察を殺し、凱たちの後を付けて侵入したと言うことです。なかなか来なかったのは、位置を確認するためと、どこからなら武器を確保できるか確認するためです。ナイフだとバレる可能性があるので、家の包丁を使うことで、同じ人物とは結びつかないようにしたということです。この男は窓を石で思い切り割り、大きな石で撲殺しました(親を)。そのため、血の付着が多かったということです。
長々とすみません。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
これにて、3章終わりです。
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