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2章 後悔ルート、絶望ルート、失望ルート
4話 後悔ルート 4
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放課後
「みんな帰るの速いね」
「そうだね」
僕らは、教室に居る。僕らを除いて人の気配は皆無だ。彼女は急かすような雰囲気を出している。きっと、遊びに行きたいんだろう。ソワソワしている。
「本当にキレイだ」
「えっ?」
窓側に立つ彼女。きっと、夕暮れならばもっとキレイだったのだろうな。
「美紗」
「なぁに?」
分かった。何でソワソワしているのかを。彼女は遊びに行きたいんじゃない。
腕を後ろに回し、自分の指同士を絡めている。視線も少ししたの方を向き、白い頬を薄い赤が占領している。彼女はきっと…………。
違うんだよ。確かに僕らは運命的な出逢いをし、どちらもこれ以上無いほどに好き合っていた。この決意が揺らぐか、そもそもこの気持ちに気が付かなければ、結婚をしていると確信できる。手を繋ぎ、キスをする。ファーストキスでさて、どちらも捧げるだろう。それ以上のことも。だから、彼女は照れているのだ。そして、期待している。そう思うと、とても申し訳ない。はぁ、なんて最低な野郎なんだろうか、僕って奴は。
君の期待に背くことになる。本当にごめん。
「美紗。別れよ」
「……え?」
その瞬間、窓から風が吹く。彼女の髪がなびく。今の彼女の心情を現すように。なびいた前髪で顔を見ることはできなかった。彼女の状態と僕の身体能力を使えば、この場に彼女を置いたままこの場から逃げることもできる。けどこれは、そんな行為であやふやに出来るようなことではない。真剣に向き合わなければならない。
「なんで?」
彼女の瞳には涙が浮かぶ。もう少しで決壊する勢いだ。
「なんでなの?ねぇ?」
「君に後悔しては欲しくないから」
「ねぇ?意味が分からないよ。私は後悔なんてしてないし、凱君と居れば、後悔なんてしないよ」
彼女の瞳には涙が浮かぶ。だが、同時にその瞳には強い意志があった。そんな彼女も素敵でキレイだ。心が歪んでいる訳ではない。
「僕は、君の隣には相応しくないから」
誰もがそう言うだろう。きっと、あの運命的な出逢いも、運命でないんだ。あれは、奇跡であり、偶然だ。たまたま僕だっただけだ。違う人の可能性だってあった。
結果は僕だったのだ。それはどう足掻いても変えることは出来ない。受け入れなければならないものだ。
「そんなの関係無いよ!私は凱君が好き!それで、凱君も私のこと好きでしょ」
「勿論だよ」
未練がましいかもしれない。別れようなんて言いながら、大好きだなんて。
「じゃあ、それで良いんじゃないの?誰が何て言ったってさ。それに、凱君はとても素敵だよ。かっこいいよ。誰も相応しくないなんて思わないよ!自分のことを悲観しないで!」
「ごめん。僕は、君の側にこれ以上は居ることが出来そうにない。調子の良いことを言っているのは百も承知だよ。でも、もう決めたことだから」
「零君に言われたの?」
「なんで?」
ここで何で零の名前が?
「彼さ、私のお父さんの会社の上司なんだよね。それでさ…………ううん。何でもないよ」
「ん?」
「でもさ。別れる理由はないよ。私たちは私たちだから。考え直して。お願い。別れたくないよ」
僕だって、本当は別れたくないよ。でも、僕は相応しくないから。
「一日だけ………。いや。ダメだよね。やっぱり。君とこれ以上付き合うことは出来ない。これからは他人同士だ。必要以上に絡むのは止めてくれ。じゃあ」
「ま、待ってよ!」
僕はこれだけ言う彼女に背を向け走った。待ってと聞こえたが、これ以上あの空間に居るのは無理だ。一瞬、決意が揺らいだ。彼女の寂しそうな眼を見てしまったから。何かを訴えているあの眼。自分を甘やかすところだった。
「結局、逃げちゃったな。………あれ?おかしいな」
涙が止まらないよ。やはり、別れるのは辛い。でも、戻ることは許されない。
僕は、止まることを知らない涙を腕で拭いながら廊下を走った。昇降口まで一切の躊躇いもなく。その間に一人だけ。一人だけ、人影を見付けた。こんな時間に僕ら以外に居るとは。
~~~~~~~~~~~~~~~
気分次第では美紗視点を書くかも。その場合は1話には含まれません。視点交換の頻度でご意見があれば、コメントお願いします。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
「みんな帰るの速いね」
「そうだね」
僕らは、教室に居る。僕らを除いて人の気配は皆無だ。彼女は急かすような雰囲気を出している。きっと、遊びに行きたいんだろう。ソワソワしている。
「本当にキレイだ」
「えっ?」
窓側に立つ彼女。きっと、夕暮れならばもっとキレイだったのだろうな。
「美紗」
「なぁに?」
分かった。何でソワソワしているのかを。彼女は遊びに行きたいんじゃない。
腕を後ろに回し、自分の指同士を絡めている。視線も少ししたの方を向き、白い頬を薄い赤が占領している。彼女はきっと…………。
違うんだよ。確かに僕らは運命的な出逢いをし、どちらもこれ以上無いほどに好き合っていた。この決意が揺らぐか、そもそもこの気持ちに気が付かなければ、結婚をしていると確信できる。手を繋ぎ、キスをする。ファーストキスでさて、どちらも捧げるだろう。それ以上のことも。だから、彼女は照れているのだ。そして、期待している。そう思うと、とても申し訳ない。はぁ、なんて最低な野郎なんだろうか、僕って奴は。
君の期待に背くことになる。本当にごめん。
「美紗。別れよ」
「……え?」
その瞬間、窓から風が吹く。彼女の髪がなびく。今の彼女の心情を現すように。なびいた前髪で顔を見ることはできなかった。彼女の状態と僕の身体能力を使えば、この場に彼女を置いたままこの場から逃げることもできる。けどこれは、そんな行為であやふやに出来るようなことではない。真剣に向き合わなければならない。
「なんで?」
彼女の瞳には涙が浮かぶ。もう少しで決壊する勢いだ。
「なんでなの?ねぇ?」
「君に後悔しては欲しくないから」
「ねぇ?意味が分からないよ。私は後悔なんてしてないし、凱君と居れば、後悔なんてしないよ」
彼女の瞳には涙が浮かぶ。だが、同時にその瞳には強い意志があった。そんな彼女も素敵でキレイだ。心が歪んでいる訳ではない。
「僕は、君の隣には相応しくないから」
誰もがそう言うだろう。きっと、あの運命的な出逢いも、運命でないんだ。あれは、奇跡であり、偶然だ。たまたま僕だっただけだ。違う人の可能性だってあった。
結果は僕だったのだ。それはどう足掻いても変えることは出来ない。受け入れなければならないものだ。
「そんなの関係無いよ!私は凱君が好き!それで、凱君も私のこと好きでしょ」
「勿論だよ」
未練がましいかもしれない。別れようなんて言いながら、大好きだなんて。
「じゃあ、それで良いんじゃないの?誰が何て言ったってさ。それに、凱君はとても素敵だよ。かっこいいよ。誰も相応しくないなんて思わないよ!自分のことを悲観しないで!」
「ごめん。僕は、君の側にこれ以上は居ることが出来そうにない。調子の良いことを言っているのは百も承知だよ。でも、もう決めたことだから」
「零君に言われたの?」
「なんで?」
ここで何で零の名前が?
「彼さ、私のお父さんの会社の上司なんだよね。それでさ…………ううん。何でもないよ」
「ん?」
「でもさ。別れる理由はないよ。私たちは私たちだから。考え直して。お願い。別れたくないよ」
僕だって、本当は別れたくないよ。でも、僕は相応しくないから。
「一日だけ………。いや。ダメだよね。やっぱり。君とこれ以上付き合うことは出来ない。これからは他人同士だ。必要以上に絡むのは止めてくれ。じゃあ」
「ま、待ってよ!」
僕はこれだけ言う彼女に背を向け走った。待ってと聞こえたが、これ以上あの空間に居るのは無理だ。一瞬、決意が揺らいだ。彼女の寂しそうな眼を見てしまったから。何かを訴えているあの眼。自分を甘やかすところだった。
「結局、逃げちゃったな。………あれ?おかしいな」
涙が止まらないよ。やはり、別れるのは辛い。でも、戻ることは許されない。
僕は、止まることを知らない涙を腕で拭いながら廊下を走った。昇降口まで一切の躊躇いもなく。その間に一人だけ。一人だけ、人影を見付けた。こんな時間に僕ら以外に居るとは。
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気分次第では美紗視点を書くかも。その場合は1話には含まれません。視点交換の頻度でご意見があれば、コメントお願いします。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
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