81 / 382
第9話「かきまぜる行為」
かきまぜる行為(5)
しおりを挟む
「ハハ……ごめん」
名前を間違えてごめん。有夏の部屋のあまりの汚さにキレて、勢いで捨てちゃってごめん──二重の意味である。
有夏は怒りの矛先を見失ったか、ふくれっ面のままその場に座り込んだ。
「あーあー、そんな話してたらホントに読みたくなってきたしぃ」
ちらりと幾ヶ瀬を見上げると、心なしか顔色が悪い。
「だ、駄目だよ? こないだブリーチ全巻買ったんだから。74冊ってびっくりしたよ。3万ちょっとしたんだからね」
「有夏、持ってたんだけどなぁ。すごい好きで何回も読んだなぁ。中学ん時からこづかい貯めてちょっとずつ買ってさ。有夏のこづかい、いくらだったか知ってるよな」
「た、たしか月500円?」
「高3の時はな。中学ん時は月200円だったからな」
「う……」
「もう一回読みたいなぁ。もっかい買いたいなぁ。せめてネカフェ行って読もうかなー、ああ……ムリだった」
100%脅しである。
有夏にしては回りくどい言い方だ。今回の件では自分には全く非がないと分かっているが故の余裕の表れか。
「分かったよ!」
案の定、幾ヶ瀬が折れた。
有夏の腕をつかんで立ち上がらせると、顔を突き合わせるようにして宣言する。
「分かったよ、有夏! 鋼の錬金術師、全27巻! 買ってあげるから」
「ちゃんと巻数まで覚えてるし」
有夏が俯く。
ニヤニヤを隠す為なのは明らかだ。
「その代わり……」
幾ヶ瀬が唾を呑み込む。
声のトーンが変わったからか、有夏は半笑いのまま顔をあげた。
その頬を幾ヶ瀬の両手が包む。
有夏が何か言うより先に唇は塞がれ、舌が口腔内を蹂躙した。
久しぶりの口づけは数分間に及んだろうか。
ようやく顔を離した2人の呼吸は荒く、唇はまたすぐに求め合う。
名前を間違えてごめん。有夏の部屋のあまりの汚さにキレて、勢いで捨てちゃってごめん──二重の意味である。
有夏は怒りの矛先を見失ったか、ふくれっ面のままその場に座り込んだ。
「あーあー、そんな話してたらホントに読みたくなってきたしぃ」
ちらりと幾ヶ瀬を見上げると、心なしか顔色が悪い。
「だ、駄目だよ? こないだブリーチ全巻買ったんだから。74冊ってびっくりしたよ。3万ちょっとしたんだからね」
「有夏、持ってたんだけどなぁ。すごい好きで何回も読んだなぁ。中学ん時からこづかい貯めてちょっとずつ買ってさ。有夏のこづかい、いくらだったか知ってるよな」
「た、たしか月500円?」
「高3の時はな。中学ん時は月200円だったからな」
「う……」
「もう一回読みたいなぁ。もっかい買いたいなぁ。せめてネカフェ行って読もうかなー、ああ……ムリだった」
100%脅しである。
有夏にしては回りくどい言い方だ。今回の件では自分には全く非がないと分かっているが故の余裕の表れか。
「分かったよ!」
案の定、幾ヶ瀬が折れた。
有夏の腕をつかんで立ち上がらせると、顔を突き合わせるようにして宣言する。
「分かったよ、有夏! 鋼の錬金術師、全27巻! 買ってあげるから」
「ちゃんと巻数まで覚えてるし」
有夏が俯く。
ニヤニヤを隠す為なのは明らかだ。
「その代わり……」
幾ヶ瀬が唾を呑み込む。
声のトーンが変わったからか、有夏は半笑いのまま顔をあげた。
その頬を幾ヶ瀬の両手が包む。
有夏が何か言うより先に唇は塞がれ、舌が口腔内を蹂躙した。
久しぶりの口づけは数分間に及んだろうか。
ようやく顔を離した2人の呼吸は荒く、唇はまたすぐに求め合う。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる