上 下
74 / 358
第8話「ヘンタイメガネの変態たる所以」

ヘンタイメガネの変態たる所以(10)

しおりを挟む
「俺が悪かった! ここを開けてくれ、有夏!! 許してくれーっ!!!」

 アタシもスタッフもドン引き。

 周りの個室も異様な静けさで静まり返っている。

 ジュースを啜る音も、ページをめくる音もしやしない。

 ゾッとするような空気の中、ヘンタイメガネが個室の前で何やら喚き散らしている。

「もう中島の悪口は言わないから! あの疎ましき中島の悪口!! 有夏が隣りのクソビッチに安い駄菓子貰ってるとこも監視しないから! 俺が留守の間に有夏が何してるか気になるけど、盗聴器しかけたりもしないからぁぁ! 有夏とヤッてるとこ録画しといて1人の時ヌこうかと思ってたけど、それもしないからぁぁぁっ!!!」

 このヘンタイメガネ、何言ってんだろうか、この変態は!

 扉はピクリとも動かない。

 当然か。

 有夏チャン、これは出れないわ。

 怒ってるとかじゃなくて、このタイミングで出るに出られんわ。

 しばらくの間、その場に正座した変態メガネは泣き喚く。

 時間にして3分くらいだったろうか。

 この時間の何と長かったことか。

 地獄のような一瞬一瞬の積み重ねの後、扉がほんの少しだけ開いた。

 2cmほどの隙間。

 そこから目だけが覗いている。

「有夏!?」

 飛び上がったヘンタイメガネに一言。

「うるさい。死ね」

 すっごい低い声でそう呟いて、彼は意を決したように出てきた。

 今まで見たことないくらいにフードを目深にかぶっている。

 ありかぁ……と泣き出すメガネを無視して、そそくさと清算を済ませると非常階段を脱兎のごとく駆け下りていった。

 ヘンタイメガネも慌ててエレベーターに駆け込む。

「あ、ちょっと……!」

 残されたのはポカンと口を開けたままのアタシ1人。

 清算のタイミングで、瞬間的に通常業務に戻ったスタッフさんたちは凄いと思う。

「や、もう……すみませんねぇ。いやはや、参りましたねぇ」

 胡麻化しながら? エレベーターを待つ時間の長いこと。

 全然関係のないアタシなのに、これは絶対ヘンタイメガネの連れだと思われたな。

 キツイ…キっついなー、この事態は。

 もうこのネカフェ来れないよ。

     ※
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

遊園地の帰り、車の中でおしっこが限界になってしまった成人男性は

こじらせた処女
BL
遊園地の帰り、車の中でおしっこが限界になってしまった成人男性の話

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

処理中です...