上 下
8 / 358
第2話「アマゾンがくるまで」

アマゾンがくるまで(1)

しおりを挟む
 やわらかな唇を押し入って、口腔に舌が侵入する。

 迎えるそれの反応の乏しさに戸惑ったか、男は一旦唇を離した。

「……有夏?」

「ん……んん?」

 感触を楽しむ余裕はあるらしい。

 有夏と呼ばれた青年の舌先がチロリと自らの唇をなぞる。

「なにぃ、幾ヶ瀬?」

「何じゃなくて……」


 再び重ねられる唇。

 狭い1DKのアパートの室内。
 空気を揺らすのは次第に荒くなる呼吸音と、動く舌と唇がたてるなまめかしい音の微動のみ。

 煌々とつけられた灯かりを気にするでもなく、男が二人折り重なっていた。

 床に足を投げ出しベッドにもたれるように座る若い男──有夏は指先までだらりと垂らし、されるがままという体勢だ。

 右手に有夏の細い肩、そして柔らかな薄茶の髪を左手で撫でて、口づけを繰り返すのは幾ヶ瀬と呼ばれた黒髪の男。

「痛った」

 有夏に言われ幾ヶ瀬は少し笑った。
 眼鏡を外し、側の座卓に置く。

「痛ったいし」

「ごめんごめん」

 眼鏡の縁が額に当たったのだろう。

 顔をしかめておでこをさする有夏の手首を、幾ヶ瀬はつかんだ。

「有夏……」

 低い声で名を呼ぶと、有夏の肩が微かに震える。

 幾ヶ瀬の唇が有夏の耳たぶを甘く噛み、ゆっくりと舌が顎のラインを降りていく。

「はぁっ……どうしよう、幾ヶ瀬」

 有夏の声が揺らいだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

遊園地の帰り、車の中でおしっこが限界になってしまった成人男性は

こじらせた処女
BL
遊園地の帰り、車の中でおしっこが限界になってしまった成人男性の話

処理中です...